孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

フランス大統領選挙  「エリート対大衆」の構図に持ち込みたいルペン氏 マクロン氏に求められる“圧勝”

2017-04-25 23:14:04 | 欧州情勢

(仏大統領選、第1回投票における県別の得票率首位の候補者を示した図。【4月25日 AFP】
黄色がマクロン候補が制した県、灰色がルペン候補が制した県 右上の小さな図は前回2012年選挙で、ピンクがオランド氏、水色がサルコジ氏)

マクロン候補:シナリオどおりの展開に「はしゃぎすぎ」?】
フランス大統領選挙第1回投票は、最近では“珍しい”ほどに事前の世論調査とほぼ等しい結果となりました。
周知のようにEUを重視する中道系独立候補のマクロン前経済相が24%で首位、反EU・反移民の極右政党「国民戦線(FN)」のマリーヌ・ルペンが21.3%で第2位ということで、この両者が勝ち抜けています。

マクロン候補としては、第1回投票を首位でクリアし、国民に根強い抵抗感がある極右ルペン氏を相手に、反極右戦線を展開して2週間後の決選投票に臨むという、狙いどおりのシナリオです。

実際、敗退した右派野党・共和党のフィヨン元首相、左派与党・社会党のアモン前教育相、更にはオランド大統領が「反ルペン」の立場からマクロン支持を表明、経済界もマクロン支持となっています。

仏イプソスが公表した世論調査によると、決選投票に進んだ場合のマクロンの勝率は62%で、ルペンの38%を大きくリードしています。

そんなこんなで、マクロン候補もちょっと気も緩むところがあるのかも。

****マクロン氏が大はしゃぎ? 決選投票決定後に有名店で宴会 「成金候補」と批判****
フランス大統領選で23日に決選投票進出を決めたマクロン前経済相が同日夜、パリの有名レストランで支援者を集めて宴会をしたことから、「はしゃぎすぎ」とひんしゅくを買った。
 
この店は画家のピカソやモディリアニらが集った老舗。赤いビロード張りの椅子が置かれた豪華な内装で観光客にも人気がある。

マクロン氏は23日、投票結果を受けて演説した後、妻と店に向かい、経済学者や芸能人ら支援者約50人と24日未明まで歓談した。

その様子がテレビで生中継され、共に決選投票に進むルペン陣営の幹部から「まるでもう勝ったかのよう」と皮肉を浴びた。決戦投票に向けた世論調査では62%がマクロン氏を支持している。
 
フランスでは、サルコジ前大統領が2007年の大統領選の勝利後、パリの有名レストランで宴会を開いて「成金大統領」と批判を浴びた。

元投資銀行の行員のマクロン氏は「またも成金候補か」とやゆされ、陣営は24日、「そんなに高い店ではない」と沈静化に懸命となった。【4月25日 産経】
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なお、このレストランは“ステーキと付け合わせのポテトの値段は28ユーロ(約3350円)”【4月25日 AFP】だそうで、確かに「そんなに高い店ではない」のかも。

既成政治への不満を背景に「エリート対大衆」という構図で攻めるルペン候補
マクロン候補優勢の“楽観論”がある一方で、“独紙フランクフルター・アルゲマイネは第1回投票で左右の極端な候補の得票が計4割超に上ったことを受け、ルペン氏の大統領当選阻止で「仏国民がまとまれるか」と不安視している。”【4月24日 産経】といった慎重論もあります。

特に、19.6%を獲得した急進左派・左翼党のメランション共同党首は、決選投票では支持者各自の判断にゆだねるとしており、反EUという点でも、反既成政治という点でも、また経済政策でも、極右ルペン氏に近いものがある極左メランション支持層がどのような判断をするかは不透明です。

メランション支持層には、アメリカ大統領選挙におけるサンダース候補支持層が示したクリントン候補への抵抗感と似たようなものがあるように思われます。

当然に、保守層の一部もルペン候補に流れますので、メランション支持層の動向如何では、事前予想とは違う数字もでる可能性があります。

第1回投票は、アメリカ大統領選挙でリベラル色の強い東海岸・西海岸の大都市でクリントン候補が圧倒したものの、失業者の多いラストベルトに代表されるような既成政治への不満を抱える大都市以外の広範な地域でトランプ候補が勝利したのと非常に似通った結果を示しています。

****<仏大統領選>高失業率地域ルペン氏支持 大都市マクロン氏****
フランス大統領選で決選投票に進む中道・独立系のエマニュエル・マクロン前経済相(39)と極右・国民戦線のマリーヌ・ルペン前党首(48)。

第1回投票の得票率の分布からは、失業率の高い北部と南部の一帯を制したルペン氏に対し、マクロン氏はパリなど大票田の大都市を中心に、現与党の社会党が従来強い中部から西部にかけて支持を広げたことが特徴として浮かぶ。
 
仏内務省の発表によると、仏本土の全95県のうちルペン氏の得票率が最も高かったのは北部エーヌ県で約35.6%。次点のマクロン氏をダブルスコアで引き離した。

同県を含む北部の工業地帯は炭鉱業などで栄えたが斜陽化。都市部と比べて移民の割合は必ずしも高くないが、高失業率に直面する地域だ。

ルペン氏は同様に失業率が高い南部の地中海沿いの地域でも支持を広げ、地元メディアによれば高失業率上位10県のうち9県を押さえた。
 
一方、マクロン氏は約34.8%を獲得して首都パリを制したが、ルペン氏のパリでの得票率は5番目で約5%にとどまった。

またマクロン氏は社会党のオランド大統領を選出した前回大統領選(2012年)で同党が制した中部から西部にかけてのほぼ全域を制し、左派の切り崩しに成功したことを裏付けた。
 
今回、共和党のフランソワ・フィヨン元首相(63)が首位を獲得した県は本土で5県にとどまり、社会党のブノワ・アモン前教育相(49)はゼロ。保革2大勢力の衰退が浮き彫りとなった。【4月25日 毎日】
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冒頭に示した地図で見ると、“分断”の様相は一目瞭然です。
前回選挙との比較では、保守層の地盤をルペン氏が、社会党の地盤をマクロン氏が制したことがわかります。

ルペン氏としては、こうした「分断」を背景に、「エリートによる既成政治」批判という線で今後攻めてくると思われ、その戦略は保守層や極左メランション支持層の切り崩しにおいて相当に有効でしょう。

****<仏大統領選>「エリートと対決」ルペン氏、大衆側を強調*****
「フランスを自分の思いのままにしたい高慢なエリートから解放する時がきた。私は大衆の候補者だ」。フランス大統領選で決選投票進出を決めた極右・国民戦線(FN)のルペン党首は23日夜(日本時間24日未明)、地盤の北部エナンボーモンで支持者を前に「勝利宣言」した。

30代で政権中枢入りを果たした中道・独立系のマクロン前経済相との決選投票に向けて、「エリートとの対決」という構図を強調した。(中略)

ギリシャ移民の2世だというブリジット・ベランジェさん(58)は「差別主義者との批判は間違っている。フランスに秩序をもたらすただ一人のクリーンな候補だ」。左派・共産党支持からFN支持に転じたという男性(42)は「これまで国民は左派・右派どちらにも政権を託したが、良い方向に進まなかった。何かを変えることができる候補者はもう彼女しかいない」と語った。
 
またアントワーヌさん(20)は「経済政策が近い急進左派メランション氏の支持者の一部はルペン支持に回る」と述べ、決選投票に期待感を示した。
 
かつて炭鉱の街として栄えたエナンボーモンを含む一帯では1990年代にかけて閉山が相次ぎ経済は低迷。左派市長の汚職を機に2014年の地方選以降、FNが市政を担い、FN幹部も兼任するブリオワ市長は住民税減税や警察官増員を実施し、高い支持率を誇る。

市長は会場で報道陣に「我々は郊外や工業地帯で絶対的な支持を得た。決選投票はエリート対大衆の闘い」だと強調。第1回投票で敗れ、マクロン氏支持を表明した中道右派フィヨン氏の支持層切り崩しの必要性を訴えた。【4月24日 毎日】
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ルペン氏は「私は大衆の候補者だ」ということを、一時的に国民戦線党首を辞任することでアピールする戦略に出ています。

****党首業務を一時休止=「国民全体を結集」―極右ルペン氏・仏大統領選****
フランス大統領選の決選投票に進出した極右政党・国民戦線(FN)のルペン党首(48)は24日の地元テレビで、大統領選に専念するため同党の党首業務を大統領選終了まで一時休止すると発表した。
 
ルペン氏は「今夜から私はFNの党首ではない。国民全体の結集を望む大統領選の候補だ」と述べた。仏メディアによると、この間は別の同党幹部が暫定党首を務めるとみられる。【4月25日 時事】 
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党首の座から決選投票までの2週間降りたからといって、何が変わるものでもありませんが、そこはイメージの問題ということでしょう。

マクロン候補:「右でも左でもない」新たな政治実現のためには決選投票を圧勝し、議会を掌握することが必要
マクロン候補は、大統領として改革を実行するためには決選投票を大差で制することが求められていますが、有名レストランではしゃいでいると、こうした「エリートによる既成政治」批判に足をすくわれることにもなりかねません。

****マクロン氏、改革実行へ圧勝必須 下院選への基盤固め鍵に****
・・・・アナリストは、決選投票でマクロン氏の得票率が60%を割り込めば、分断されたフランス社会に対して経済改革を実行できると確信させることは難しいと指摘する。

そうなった場合、6週間後の6月に控える国民議会選で「前進」が過半数を獲得することは困難になる可能性がある。(中略)

調査会社ビアボイスのフランソワ・ミケマルティ氏は「見かけほど単純ではない。新たな選挙戦がスタートする」と述べ、「ルペン氏は、グローバル化時代を行くエリートとしてのマクロン氏と大衆の候補としての自身との対決という枠に当てはめて決選投票を戦うだろう」と指摘。「大当たりになり得る攻撃をルペン氏は用意している」と語った。

「持てる者」と「持たざる者」の分断から、仏労働者の職と権利を守ることができるのはルペン氏だけだという同氏のメッセージへの支持が拡大してきたフランスでは、主要政党からの支持がマクロン氏に不利に働く可能性もある。

ルペン氏は23日、「オランド大統領の後継者から変革が期待できないのは明白だ」と述べ、マクロン氏を衰える権力層の候補だと一蹴した。

ビアボイスのミケマルティ氏は「マクロン氏はより攻撃的なアプローチをとる必要がある」と指摘する。

この点についてマクロン氏は23日の演説でこう述べている。「今夜からの課題は、誰かに対する反対から投票するのではなく、30年以上にわたってフランスの問題に対処できなかったシステムから完全に決別することだ」──。【4月24日 ロイター】
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とにもかくにも、大統領の一歩手前まで上り詰めたマクロン候補の実績・政治姿勢については、以下のようにも。
(高校生のときのフランス語教師だった24歳年上の人妻との結婚・・・というエピソードは、3月13日ブログ“フランス大統領選挙 左右両サイドの偏り・混乱のなかで大きく空いた真ん中を走るマクロン前経済相”http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20170313で取り上げました)

****マクロン氏、規制緩和と弱者配慮のバランス政策を主張 EU重視で対露では強硬****
政党基盤も選挙経験もない若手候補が左右両派を中心とした政界の構図に独自の戦いを挑み、大統領へあと一歩に迫った。「左右の溝を超える」。マクロン氏が目指すのは経済改革を進めると同時に弱者も配慮する“バランス”型。欧州連合(EU)も重視する。
 
1977年、仏北部生まれ。エリート養成校「国立行政学院」(ENA)を卒業後、投資銀行勤務を経て2012年、大統領府入りした。14年から約2年間の経済相時代に長距離バス路線の自由化、日曜営業拡大など「マクロン法」と呼ばれる規制緩和を断行した。
 
オランド大統領の人気が低迷する中、昨年4月、独自の政治運動「前進」を立ち上げると、8月には政権を離れ、出馬を決めた。
 
「束縛もなく、弱者も守られる社会」を掲げる。経済政策では法人減税や週35時間労働制の運用柔軟化などで企業の競争力向上を図り、公務員12万人削減などによる支出削減で財政再建に努める一方、500億ユーロ(約6兆円)の投資も計画し、セーフティーネットの拡充にもあてる。
 
EUについては「欧州の戦略なしに成功できない」と明確に支持。ユーロ圏予算創設のほか、EUの防衛協力強化、エネルギーなど単一市場創設を掲げる。
 
警官の1万人増員などで治安を強化する一方、社会の「多様性」も重視し、貧困地区住民を雇用する企業への補助も設け、移民の社会統合を促す。外交ではルペン氏と対照的にロシアへの厳しい姿勢を堅持する。【4月24日 産経】
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先走った話にもなりますが、仮にマクロン候補がめでたく大統領に就任できたとしても、目指す「左右の溝を超える」「経済改革を進めると同時に弱者も配慮する“バランス”型」政治を実現できるかに関しては、議会を掌握できるかという、もうひとつの大きな壁があります。

****焦点:マクロン氏、改革実行へ圧勝必須 下院選への基盤固め鍵に****
・・・・アナリストは決選投票でのマクロン氏の勝利を見越し、同氏が政策実行に必要な政治勢力を結集できるかどうかに関心を向けている。

マクロン氏は国民議会選で577の全選挙区で候補者を擁立するとしているが、他党の党員でも見解を共有する者は歓迎する考えを示している。

既に50人程度の社会党議員がマクロン氏の政治運動に加わっており、中には大物議員の名も見受けられるが、決選投票で多くの票を集めれば集めるほど、同調者は増えるだろう。

マクロン氏は連立政権の樹立を避けられない可能性があるが、アナリストや投資家にとっては、形態にかかわらず、マクロン政権が労働関連規制の緩和など国民の反対が必至の政策を実行できるかどうかが問題だ。

JPモルガン・チェースのラファエル・ブルンアケレ氏は、マクロン氏が下院で過半数を確保するのは非常に困難との見方を示し、「一部の改革を軸に党派を超えた連立形成を目指すことが予想される」と述べた。

マクロン氏は、この1年で専門家の予想を覆してきたように、国民議会選でも過半数を獲得すると言明した。【4月24日 ロイター】
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議会で主導権を握るためには、自己のアイデンティティを明確にする必要があります。

****仏大統領選、中道マクロンの「右でも左でもない」苦悩****
・・・・「前進!」は全選挙区に候補者を立てる予定であり、単独で過半数を得られるとマクロンは主張する。だが、そこには大きな課題がある。

世間にとって「前進!」のアイデンティティーは、「何者か」というより「何者ではないか」だ。

「前進!」のアルノー・ルロワ副代表は、「極右ではない」と自分たちを定義する。「(私たちは)フランスの民主主義にとって、ルペンに滅ぼされる前の最後のチャンスだ」

そのような主張は、大統領選の決選投票では「ルペン阻止」の票を集められるかもしれないが、総選挙のメッセージとしては弱い。(後略)【4月24日 Newsweek】
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単に「極右ではない」存在から、「30年以上にわたってフランスの問題に対処できなかったシステムから完全に決別」した「右でも左でもない」新たな政治を主導する存在に脱却できるかが、“マクロン大統領”にとって重要なカギになります。非常に先走った話ではありますが・・・・。
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