孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

イギリス  総選挙敗北で求心力を失なったメイ首相に追い打ちをかけるロンドン火災 対応のまずさも

2017-06-18 22:29:47 | 欧州情勢

(【ロンドン火災】メイ首相、国民感情を読み違えたのか
14日未明にロンドン西部の公営高層住宅を襲った火事をめぐり、テリーザ・メイ英首相は16日夜、BBC番組「ニュースナイト」に出演し、エミリー・メイトリス記者のインタビューに応じた。
首相は政府が住民支援に500万ポンドの資金を提供すると強調。15日に現地を訪れたものの住民に話をしなかったことが非難されている首相に対して記者は、首相が国民感情を読み違えたのではないかと繰り返し尋ねた。【6月18日 BBC http://www.bbc.com/japanese/video-40314195】)

求心力低下で「強硬離脱」方針変更、政局は混迷
EU離脱交渉に向けた強い指導力を確保すべく前倒し総選挙を行ったイギリス・メイ首相ですが、周知のとおり、当初の“圧勝”“地滑り的勝利”の予想(そうした予想があったからこそ、敢えてする必要のない選挙にうって出た訳ですが)に反し、第1党には留まったものの過半数割れに追い込まれる実質的“大敗北”の結果となっています。

北アイルランドのプロテスタント系地域政党・民主統一党(DUP)との協力で、今後とも政権を維持していく姿勢ですが、DUPが同性婚や人工妊娠中絶に反対するような保守党以上に保守的な政党であることや、過去には爆弾テロなどで3千人以上が犠牲になった北アイルランド問題の当事者の一方に肩入れすることにもなり、北アイルランドでのプロテスタント・カトリック系の対立を再燃させかねないことなどから、DUPとの協力を懸念する声も多くあります。

そうした状況でメイ首相の求心力は弱まり、離脱交渉の方針も「強硬離脱」からの変更を強いられ、政権運営自体も不透明な情勢となっています。

****英EU離脱】「穏健離脱」へメイ包囲網 交渉開始前に求心力低下 強硬離脱の修正迫られる****
英国総選挙でメイ首相率いる与党・保守党が過半数割れに追い込まれたことを受け、保守党内ではメイ氏が掲げる欧州連合(EU)から「強硬離脱」方針を穏健な方向に軌道修正すべきだとの声が高まっている。

党内の実力者らが相次いで「企業や他政党と協力する必要がある」と主張、19日開始予定の離脱交渉を前に「メイ包囲網」がじわり狭まっている。
 
「交渉目標を修正し、移民抑制より経済成長優先を明確に示す必要がある。スコットランド保守党や野党、経済界の意見を受け入れるべきだ」。外相経験者の保守党重鎮、ヘイグ氏が12日、デーリー・テレグラフ紙への寄稿で離脱戦略修正を訴えた。

その後、キャメロン前首相も「野党の声も聞く必要がある。野党はより穏健な離脱方針を迫る」とメイ氏に進言した。
 
こうした意見を受けてメイ氏は「離脱にはより幅広いコンセンサスが必要だ」との認識を示し、官邸主導の政治手法を改める方針を示した。

しかし、EUとの妥協を拒む約50人の党内の最強硬派にも配慮しなければならないメイ氏は、離脱戦略をどこまで修正できるのか、苦渋の決断を迫られている。【6月15日 産経】
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上記記事にもある“EUとの妥協を拒む約50人の党内の最強硬派”の造反を考えると、DUPとの協力だけでは乗り切れません。

****<英与党>労働党に秋波 政局混迷、大連立構想浮上****
どの政党も議会の過半数に達しないハングパーラメント(宙づり国会)となった英国の政局が混迷している。

8日の総選挙で議席を減らしたメイ首相の政治力は失われ、欧州連合(EU)離脱を巡る戦略も練り直しを余儀なくされている。

「首相失脚は時間の問題」との見方が強まる中、政権与党内では最大野党の労働党との「挙国一致」構想が浮上中だ。
 
英紙テレグラフによると、与党保守党の一部でEU離脱に関する超党派委員会を設ける計画が浮上。国論を二分する最重要課題をライバル政党の協力を得て乗り切ろうとする狙いで、労働党の一部議員と水面下で協議に入ったという。(中略)

ただ政策の方向性が大きく異なる各党が連携できるかは不透明だ。英国では第二次世界大戦中のチャーチル政権など「挙国一致」の大連立政権があったが、BBCは「ライバルの保守党と労働党が平時に協力し合うのは考えにくい」と伝えた。
 
一部の世論調査で労働党の支持率が保守党を上回ったこともあり、コービン党首は「我々は支持されている。再選挙を争う準備がある」と対決姿勢を強めている。
 
メイ首相は北アイルランドの地域政党、民主統一党(DUP)の閣外協力を得ることで大筋合意に達し、21日に予定する施政方針演説で新政権をスタートさせたい考え。

だが、少数派政権では、重要法案の採決で身内の保守党から数人の造反が出た時点で立ち往生する。他党を巻き込む協力体制を築けなければ綱渡りの政権運営となる。【6月18日 毎日】
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素人考えからすれば、泥船状態になりつつあるメイ首相・保守党にライバル労働党が手を貸すようには思えません。
あるとしたら、明確な再選挙実施を前提とした場合だけでしょう。

格差問題を露呈したロンドン火災 被災者を慰問しなかった首相の姿勢への批判も
メイ首相の“泥船状態”を加速し、一部からは“致命的”とも評される打撃を与えているのが、ロンドン西部の高層公営住宅で14日未明に起きた火大災です。死者と行方不明者は、17日の警察発表によると58人とされています。

最初にロンドンの高層住宅と聞いて、富裕層の住むようなマンションをイメージしたのですが、TVニュースに映し出される被害者・近隣住民の多くは非白人で、日々の生活にも余裕のないような人々のようです。

それだけに今回火災は単なる火災事故ではなく、貧富の格差という極めて敏感な問題をえぐりだす問題ともなっており、メイ首相はそうした敏感な政治問題への対応を明らかに間違えました。

****ロンドン高層住宅火災で明らかに イギリスが抱える「貧富の格差****
少なくとも17人が死亡した大規模火災が今週発生したロンドン西部の公営住宅がある一角から、徒歩で少しの場所に、数百万ポンドはする優雅な住宅が並ぶ、英国で最も裕福な通りの1つがある。

ケンジントン・アンド・チェルシー王室特別区は、ポップスターやセレブ、富裕層や銀行幹部が住むエリアとして、英国内外で広く知られている。

だがその同じ地区には、今回の火災が起きた24階建ての高層公営住宅「グレンフェル・タワー」が建つ一角のように、貧しい地区も点在している。(中略)

この大惨事にショックを受けたロンドン市民からは、大量の洋服や靴、シーツなどの寄付が押し寄せ、早々にボランティアが対応しきれない程になっている。

だが15日には、黒焦げの無残な姿をさらすタワーの周辺から、はっきりと怒りの声が上がっていた。地元当局が、富裕層を優遇する政策に走り、貧しい市民の安全や福利を軽視している、というのだ。

火災のあった建物に住む受付係員のアリア・アルガッバーニさんは、新たな外装材が取り付けられた昨年の改修工事に立腹していた多くの住人の1人だ。炎が急速に広がった一因に、この改修工事があった可能性を指摘する報道も出ている。

「なぜ外観をきれいにしたのかを考えると、いらだたしい。反対側の高級住宅の住民にとってこのタワーが見苦しいからだ」と彼女は言う。

消防当局は、火災原因を特定するには時期尚早としており、地元当局は、改修工事は住人の住環境改善のために行ったと説明している。

「二都物語」
改修工事中に同タワーの住民と緊密に連携していた地域のまとめ役、ピルグリム・タッカーさんは、今回の火災は、長年の間コミュニティの一部を丸ごと無視したことによる悲劇的な結末だと考えている。

「この公営住宅の住人は、自分たちが無視されていることを知っている」と、彼女は衝撃を隠せない様子で語った。「もし行政がするべき仕事をしていたなら、こんなことは起きなかった」

防災上の懸念を住人が指摘したにもかかわらず聞き入れられなかったとタッカー氏らが声を上げるなか、大惨事の余波は、より大きな政治の世界にも広がりつつある。

先週の総選挙で、財政規律の重視や、減税、ビジネス環境の整備を掲げた与党保守党は、公共事業に対する支出拡大を重視する野党労働党に対し議席を失い、過半数を確保できなかった。

グレンフェル・タワーのあるケンジントンの選挙区では、史上初めて労働党の候補者が当選を果たし、驚きを持って受け止められた。

当選した労働党のエマ・デントコード議員は新聞のインタビューで、安全性を軽視したとして行政当局を批判し、悲劇は防げたはずだと指摘するなど、火災を機に素早い反応を見せた。

メイ首相は15日、グレンフェル・タワーを訪問したが、消防士と会話する一方で住民とは言葉を交わさなかったと批判を浴びた。

対照的に、近隣の教会を訪問して住民やボランティアに面会した労働党のコービン党首は、「来てくれてありがとう」と周囲から声がかかるなど歓迎された。

「ケンジントンが『二都物語』であることは、避けられない事実だ」と、コービン党首は記者団に述べた。「ケンジントンの南側は極めて裕福で、全国で最も高級な地区だ。この火事が起きた地区は、国内でも最貧の部類だと思う」

「ある種の人々」
グレンフェルがある一角のすぐ外側は、多様な層が住むノッティング・デールと呼ばれる区域だ。味気のない1970年代築の公共住宅の周りには、富豪とまではいかないものの、裕福な人々が住む手入れの行き届いた住宅が並ぶきれいな通りがある。富豪たちは、数分は離れたホランド・パークと呼ばれる地区に住んでいる。

ノッティング・デールでは、地元住民の怒りにもかかわらず、火災によってコミュニティの異なる層の人々が団結した。タワーから脱出した人々や、現場近くの自宅から避難を余儀なくされた人々のために、より裕福な住民の多くが住居を開放したのだ。

ゆとりある生活を送る年配の婦人アナベル・ドナルドさんは、自宅アパートを、行き場のない住人6人に貸している。(中略)

彼女は、増税で公共住宅や他の公共サービスへの支出を拡充することは簡単にできるのに、地区の税金が不必要に低く抑えられていると批判する。地区税の負担増があれば、喜んで応じる考えだと語った。

「行政は、倹約する地区であることを自慢に思っている。ある種の人々を喜ばすことができると思ってやっているのだ」と彼女は言う。

火災の衝撃が社会に広まる一方で、社会的な分断はいつもより重要でなくなったと感じているという。
「教会で手助けしていた時ほど、地域で受け入れられたと感じたことはなかった。彼らは、私がどちら側の人間か、まったく気にしなかった。彼らの子供たちと遊んだり、おむつを替えたり、お茶やコーヒーを用意したりしたことだけが、重要だった」とドナルドさんは語った。【6月17日】
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より裕福な人々のなかには上記記事のような支援に立ち上がる方もいますが、貧しいい被災者の怒りは“彼らは、私がどちら側の人間か、まったく気にしなかった”では済まされないものがあります。

今回事故では燃えやすい外壁が被害を大きくしたのでは・・・との推測もありますが、改修工事においてわずかな支出を削減するために耐火性の高い資材ではなく、燃えやすい資材が使用されたとの批判もあります。

****英タワー火災、安全性の懸念無視か 住民「大量殺人だ」と怒り****
英ロンドン西部の24階建て高層住宅で14日未明に発生した大規模火災で、近隣住民らは、安全性への懸念が以前からあったにもかかわらず、富裕層が住む地域ではないため無視されてきたと、憤りをあらわにしている。
 
火災が起きたグレンフェル・タワーの入居者団体の元会長、ダミアン・コリンズ氏はAFPの取材に対し、住民らは昨年完了した同タワーの大規模改装の対処について地元議会に苦情を申し立てていたと説明。「私たちは、実際に悲劇が起きないと皆の目は覚めないし、ビル管理者が責任を問われることもないと言っていた」と述べた。
 
コリンズ氏によると、入居者らは建物内の火災非常口が足りないことを特に懸念していた。また、暖房と照明システムにも欠陥があり、改善を求める2015年の請願書に住民の90%が署名したが、それも無視されたと述べた。
 
グレンフェル・タワーは1974年建築のコンクリート製高層ビル。昨年、総額870万ポンド(約12億円)の改装を終えたばかりで、住民はこの改装の際に使われた新たな外装材が火事を広げた原因となったと批判している。
 
近隣住民の男性(46)は、同地域の住民は自力に頼ることが習慣になっていると語る。男性は住民が過去に何度も苦情を申し立てていたことを指摘し、「もしこれが(高級地区の)ナイツブリッジ近くで起きていたら、既に解決し、問題にはならなかっただろう」と述べた。(後略)【6月15日 AFP】
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また、2013年にはこうした建築物にスプリンクラーを設置するようにとの勧告が政府に対してなされていたにもかかわらず、対応がとられてこなかった・・・・ということも問題とされています。メイ首相は勧告を受けた政府の閣僚でもありました。

何よりも、被災者を慰問しなかったことで、メイ首相に被災者へ寄り添う気持ちが見られなかったということが問題視されています。このことが“メイ政権の命取りにもなる”との懸念も。

****ロンドン火災】被災者を慰問しないメイ首相に批判高まる 政権の新たな難題にも****
ロンドン西部の高層アパートで起きた大規模火災で、15日、被災現場を視察したメイ首相は、警察や消防の説明を受け、徹底した公開調査を指示したが、被災者を慰問しなかったため「被災者に面談すべきだった」との非難が集中。

英メディアも「ブッシュ元米大統領が指導力欠如を露呈した『ハリケーン・カトリーナ』と同じ対応ミス」(ガーディアン紙)と批判しており、テロ対応で支持率が急落したメイ政権の新たな火だねになりかねない。
 
公営高層住宅には400人から500人が居住していたが、移民を中心とした低所得者層だった。15日、被災現場を訪問したメイ氏はイラク戦争参加問題などと同様に独立した公開調査を行う方針を明言したが、遺族や被害者など住民に会わなかった。

首相官邸では「捜査や救急作業に支障をきたすことを回避するため」と弁明するが、対照的に労働党のジェレミー・コービン党首は同日、訪問して被災者と会って、「代替え住宅確保に全力を尽くす」と語り、ロンドンのカーン市長も面談した被災住民に原因究明を約束した。
 
労働党のハーマン議員は、ツイッターで、「メイ氏は被害者と会うべきだった。テレビ経由で話をするだけでは駄目だ」と非難。

英BBC放送は「被災者に共感している姿勢に欠け、誤算だったということになりかねない」と求心力が低下したメイ政権の命取りにもなる懸念を伝えた。【6月16日 産経】
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“総選挙で後退し辞任要求が続く中、英メディアは今回の火災がメイ氏の「政治的な命取り」になりかねないと伝えている。”【6月17日 毎日】という状況で、メイ首相は16日、改めて被災地を訪問して被災者を慰問しました。

しかし、遅きに失した感があります。冒頭画像のBBCインタビューは16日の慰問を終えてのものですが、「先ほど現地では取材を受けなかったのに、今なぜBBCに来られたのですか?」と、「今更何を弁解するつもりなのか?」と言わんばかりの冷たく厳しい質問にさらされることになっています。


先日の総選挙ではメイ首相はTV討論会に出席しなかったことも批判されていますが、国民向けに訴えるようなわざとらしいパフォーマンスは嫌いなのか、あるいは批判が集中するような場を逃げてしまうのか・・・

いずれにしても危機管理のまずさで、ハリケーン・カトリーナに対するブッシュ元米大統領、セウル号事件の際の朴大統領の二の舞になりかねないところに置かれています。

所得格差がらみと言う点では、ハリケーン・カトリーナはよく似ています。

そうでなくても困難を極める離脱交渉に向けて、今の状況ではなかなか・・・・。相手方のEUとしても、国内をまとめきれない“弱い政権”相手では困るところでしょう。

個人的には、この際EU離脱なんて白紙にもどして・・・・と、無責任に思ったりもするのですが、“引き返す勇気”が必要なときもあるでしょう。
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