孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

財政危機のカリフォルニア マリファナ合法化の住民投票、警察業務削減

2010-07-17 15:42:35 | 世相

(カリフォルニア・ロスのベニスビーチ 「The Doctor is in Evaluation Center for Medical Marijuana」
こういうところで簡単に医療用マリファナの処方箋をもらえるとも聞きます。 “flickr” By edeevo
http://www.flickr.com/photos/edeevo/4526981771/)

【時給640円】
アメリカ・カリフォルニア州の財政危機については、昨年7月12日ブログ「アメリカ カリフォルニアをどげんかせんといかん・・・のですが」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20090712)でも取り上げましたが、あれから1年たって、事態はあまり改善していないようです。
昨年は州政府の手持ち資金が底をつき、支払われるはずだった州民に対する福祉手当、奨学金、税の還付金など総額37億ドルが支払えない事態となりました。そして窮余の策として、支払いを受けるべき人々に対して借用書(IOU)を発行し、いずれ支払い可能になったら払うことになりました。

****職員の給与を最低賃金にまで削減 財政危機のカリフォルニア州*****
財政危機が続く米カリフォルニア州のシュワルツェネッガー知事(共和)は5日までに、州職員の給与を法律で定められた最低賃金である時給7ドル25セント(約640円)まで削減する決定を下した。州議会で攻防が続いている新年度の予算が成立するまでの措置としているが、予算成立のめどは立っていないのが現状だ。職員からは「家や車を手放さざるを得なくなるかも」と悲鳴が上がっている。
国家に換算すると世界第8位の経済規模とされるカリフォルニア州の苦闘は、ギリシャ危機などによる世界的な緊縮財政への機運の高まりの中で、興味深い“実験”といえそうだ。(中略)
削減分の給与は、予算成立後に払い戻される。しかし、慢性化している州財政の赤字にともなって、州職員に対してはすでに46日間の無給一時休暇の取得が義務づけられるなど、約14%の賃金カットが行われている中での措置だ。(中略)

カリフォルニア州が現在抱える財政赤字は約190億ドル(約1兆6700億円)。ギリシャなどと違い、同州の財政状況はまだまだ健全で、債務不履行(デフォルト)を予測する声はまったくない。
だが、能力を超えた借り入れの代償はいつか支払わなければならないという鉄則は同じだ。加えて同州には財政均衡規定があり、破綻(はたん)の可能性は現実にはないとしても、赤字削減は緊急課題だ。
同州は昨年7月、支出の繰り延べのためIOUと呼ばれる借用証の発行に追い込まれた。しかし、議会での民主・共和両党の勢力が伯仲する中で、民主党が反対する公共支出の削減も、共和党が難色を示す増税も実現には困難な情勢が続いており、赤字削減に向けた抜本的な対応が取られる気配はない。
党派対立の中で問題が先送りされる構図に、ロサンゼルス・タイムズ紙は「議員たちには予算を通そうというやる気がみられない」と嘆いている。【7月5日 産経】
****************************

記事では財政赤字額は約190億ドル(約1兆6700億円)とされています。シュワルツェネッガー州知事は昨年の施政方針演説で負債総額420億ドル(4兆円超)と言っていました。ただ、いずれの数字も人口3500万人を考えると、一人当たりの金額は数万円から十数万円という程度で、日本の国家・自治体の抱える赤字に比べると“微々たる金額”です。(夕張市の場合、住民1人当たり負債額が500万円近くあったそうです)

それでも財政破たんの危機が叫ばれるのは、アメリカの場合、州や市町村が際限ない財政赤字に陥るのを防ぐため、法律で多くの地方自治体に財政均衡規定が定められており、赤字は繰り延べが認められていないためです。連邦政府にはこのような規定はないため、いくらでも借金できます。

近年のカリフォルニア州の財政危機の理由については、“シリコンバレーが米経済を牽引した90年代、加州には高所得の人々が多かったが、加州は高所得者に対する所得税率が高い(NY市と並ぶ10%)ので、IT関係の人々は流出傾向となった。代わりに加州で増えたのは、米国滞在年数の浅い移民など低所得の人々で、州民の所得構造は、少しの金持ちと多くの貧乏人に二極分化を強めた。加州の税収の半分は、最も裕福な1%の人々への課税によって賄われていた。そして07年以後、金融危機によって、金持ちは投資に大損して州は所得税収が減り、住宅市況の悪化(40%の下落)による固定資産税の減少もあって、税収は激減した。”(09年2月18日 田中宇「揺らぐアメリカの連邦制」)とのことです。

【マリファナ合法化で税収1300億円】
そのカリフォルニア州で、11月の米中間選挙と同時に、マリファナ合法化の是非を問う住民投票が行われます。
カリフォルニアでは現在でもマリファナは医療目的での使用が認められていますが、これをタバコ・アルコールのように全面解禁し、その取引への課税で税収を確保しようというものです。

そもそも、現在のマリファナ事情がどうなっているのかについては、昨年の下記リポートがその雰囲気を伝えてくれます。
****カリフォルニア財政危機で高まるマリファナ合法化論争****
(米国在住ジャーナリスト 森 マサフミ)
カリフォルニア州知事アーノルド・シュワルツェネッガーの発言をきっかけに、マリファナ合法化に関する議論がアメリカでにわかに高まっている。同知事は(09年)5月5日の会見において「議論の時が来た。歳入を増やすアイデアであれば前向きに検討したい」とコメントした。
カリフォルニア州の負債総額は、州知事の施政方針演説によれば420億ドル(4兆円超)に達するとのこと。州税務局は、もしマリファナが合法化されれば、その分年間13億ドル(1300億円)税収があると見積もっている。同州における合法化後のマリファナの売り上げ見込みは年間140億ドル。目下農業の稼ぎ頭である乳製品の年間売り上げ(73億ドル)を、はるかに上回る。

ここでいう合法化とは、タバコ、アルコール同様に嗜好品としての合法化である。そもそも医療目的でのマリファナ使用は、カリフォルニア州では合法だ。マリファナは、痛み止めや減量の効果があり、吐き気、緑内障、ひきつけ、関節炎、不眠症などの病状を和らげるとされている。
もちろん医療用マリファナ購入には処方箋が必要である。さらに医師から推薦状をもらい所定の役所(公衆衛生省)で写真付IDカードの発行(1年有効)を受ける。ただし病状に関してはあくまで自己申告。偏頭痛、精神的不安など物理的診察が難しい病状を訴えても処方箋は発行される。つまり入手は簡単なのだ。
ロサンゼルスのフリー・ペーパー『LA WEEKLY』には、こうした医療目的のマリファナを販売する業者が、多数広告を出している(写真参照)。販売価格は8分の1オンス(3.5グラム)あたり40ドル(4000円)からが相場だ。ここに処方箋とIDカードを持って行き諸々の書類を書き込めば手続き完了となる。
ちなみに『LA WEEKLY』というペーパーは若者をターゲットにしていて、風俗の広告も多い。医療が名目でありながら、あたかも嗜好品のようにして売られているのが実情だ。うたい文句には「ディスカウント」「初めての患者にフリーギフト」「2時までオープン」など、購買をあおる言葉が目立つ。(中略)

マリファナ反対派は、その習慣性が起こす依存症を懸念する。記憶力、認知力の低下など、常用による脳機能への障害もあるという。とはいえ、その障害がタバコ、アルコールと比べどれほど深刻なのかは、疑問視されている。DrugWarFacts.orgという団体は、年間のドラッグが原因となる死亡者数を死因別に分析し、タバコ435,000人、アルコール85,000人、マリファナ0人というデータを発表している。
ちなみにカリフォルニア州におけるマリファナ不法所持への刑罰は、以下の通り。28.5グラム以下の場合、罰金100ドル、服役なし。28.5グラムを超えた場合、罰金500ドル、最大6ヶ月の服役。いずれも軽犯罪扱いだ。ただし、売ったり栽培したり、未成年が関わった場合は、重犯罪となる。

このような状況において、いっそのこと合法化すればという意見はもっともらしく聞こえる。軽犯罪者を裁く経費として年間10億ドル(1000億円)の税金が節約できるという声もある。一方で、子供が簡単に入手できるようでは困るという反論もある。大人が自分の責任で吸うのは構わないが、発育途中の子供に吸われるような事態だけは、何としても回避せねばなるまい。(後略)
*******************************

【被害者自身がPCで被害報告書を作成しネット経由で提出】
カリフォルニアの財政危機絡みの話題がもうひとつ。
****米オークランド:44種の犯罪通報受けず…警察官1割削減*****
財政難から警察官の1割が削減された米カリフォルニア州のオークランド市警察は19日から、横領や器物損壊など44種の犯罪について911番通報(日本の110番にあたる緊急電話)に対応するのをやめる。44種の犯罪については被害者自身がパソコンなどで被害報告書を作成しインターネット経由で提出するよう求める。
 ◇横領、器物損壊…被害者がネットで報告
市警は殺人やレイプなど進行中の暴力的な犯罪以外の緊急性の低い電話通報には、これまで通り対応するほか、保釈者監視チームをパトロール班に振り向けるなど組織編成を見直して対応する。
自宅でパソコンやインターネットを使えないお年寄りや低所得者らが、器物損壊などで捜査を求めるには、警察署へ足を運び署内のロビーにある端末から被害報告を入力しなければならないという。
人口約40万人の同市は776人の警察官に対し、これまで市が負担していた年金積み立てについて、給与から9%を充てるよう求める人件費抑制案を提案した。警察官組合は了承する代わりに少なくとも3年間は解雇しないと保証するよう要求。市は1年間の雇用確保しか回答しなかったため、13日に交渉が決裂し80人が一時解雇された。
市はこれまでも無駄な予算を削り、警察と消防だけで一般予算の75%を占めるほどスリムな財政構造。市が増税案の是非を住民投票にかける11月までは、警察官の増員は実現しそうもない。【7月17日 毎日】
*****************************

マリファナの健康への影響には知識を持ち合わせていませんし、オークランドの状況も上記記事以外にはわかりません。
そうした個別の問題はともかく、日本的常識からすると極端にも思えるこうした対策が実行されるところに、アメリカの住民自治というか、「自分たちの社会のルールは自分たちで決める」という意思を感じます。
日本ではいまだに「政治はおかみがやるもの」という意識で、住民・メディアは無責任な批判・あげ足取りに終始しています。そんな日本の状況とはかなり違う雰囲気をカリフォルニアの財政危機対策に感じた次第です。

『北アメリカ』 ジャンルのランキング
コメント   この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« 混迷するアフガニスタン情勢... | トップ | 緊張高まるカシミール情勢 ... »
最近の画像もっと見る

コメントを投稿


コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。

あわせて読む

トラックバック

この記事のトラックバック  Ping-URL