孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

インド  領土などでは中国に対抗しつつも、その経済力に期待するインド

2014-09-18 22:04:07 | 南アジア(インド)

(異例の歓迎で習主席をもてなしたモディ首相 “flickr”より By scrolleditorial https://www.flickr.com/photos/115313787@N08/15081540057/in/photolist-oYGQqH-oYqaRo-oYEPLS-pg3Zu3-pg3ZhQ-pg3Zmh-oYRgt4-oYSbg7-pe46Mj-oYzTYa-oYzU9k-pg5YZz)

インドとの関係に対中けん制を期待する日本・ベトナム
インドのモディ首相は8月30日〜9月3日に日本を訪問、両国の関係強化が図られました。
中国と厳しく対立する日本にとっては、中国をけん制する狙いがあったと見られています。

****中国念頭に安保連携…日印首脳が「東京宣言*****
安倍首相は1日、東京・元赤坂の迎賓館で、来日中のインドのモディ首相と会談し、今後5年間でインドに対し、政府開発援助(ODA)を含む約3・5兆円の投融資を行う方針を表明した。

台頭する中国を念頭に、海上自衛隊とインド海軍の共同訓練の定例化や、外務、防衛当局の次官級協議の閣僚級協議(2プラス2)への格上げを検討することでも一致した。

両首相は、これら経済と安全保障の両分野を中心とした新たな2国間関係の構築を目指す共同文書「日印特別戦略的パートナーシップに関する東京宣言」に署名した。(後略)【9月1日 読売】
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また、今月15日には、南シナ海の島々の領有権を巡り中国との対立が続くベトナムをインドのムカジー大統領が訪問し、両国は国防分野での協力関係を強化することで合意しました。

ベトナムはインドとの関係を強化することで、海洋進出の動きを強める中国をけん制するねらいがあるものとみられています。

****ベトナム、インドと防衛協力強化で合意 中国をけん制****
ベトナムのチュオン・タン・サン国家主席は15日、首都ハノイでインドのムカジー大統領と会談し、両国間の国防分野での協力関係強化で合意した。

ベトナムが中国と領有権を争う南シナ海については、国際法などによる秩序維持の重要性で一致、同海域で力による一方的な現状変更を進める中国を牽制した。

ロイター通信によると、会談では、インド政府がベトナム政府に対し、国防強化に必要な物資調達へ、最大1億ドル(約107億円)を融資することで覚書を交わした。

インドがロシアと共同開発した超音速巡航ミサイル「ブラモス」の調達に向けた環境整備の一環とみられている。

また、ベトナムが中国と領有権を争う海域でのインドの石油採掘権更新に関する合意書を正式に取り交わすなど、エネルギー分野での関係強化でも一致した。【4月16日 産経】
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インドの石油ガス公社(ONGC)は、これまでも中国からの“ベトナム沖合での探査活動は違法で中国の主権を侵すことになる”との警告を無視する形でベトナム沖で石油とガスの探査を行っており、今回の合意によってインド・ベトナム両国の探査・生産活動が拡大することになります。

【「21世紀の海上シルクロード」構想を進める中国
一方、中国の習近平国家主席は、15日にはインド洋のモルディブを、翌16日にはインドとの関係が強いスリランカを訪問しています。
****習主席、インド洋諸国歴訪 「海上シルクロード」着々****
中国の習近平国家主席は16日、インド洋の島国スリランカを訪問し、ラジャパクサ大統領と会談した。

両国の行動計画が発表され、スリランカは習氏が提唱する「21世紀の海上シルクロード」構想への支持と参加を表明した。

習氏は15日にはモルディブでヤミーン大統領と会談し、ヤミーン氏も海上シルクロードを支持した。

中国国家主席のスリランカ訪問は28年ぶりで、モルディブ訪問は初めて。

スリランカとの行動計画には自由貿易協定(FTA)の正式交渉開始や、海洋監視や沿岸管理での協力の可能性を探る合同委員会立ち上げなどが盛り込まれた。

中国は、スリランカなどインド洋周辺諸国の港湾整備を支援してきた。コロンボ沖合を埋め立てる「ポートシティー」建設には、14億ドル(約1500億円)を支援し、習氏は17日の起工式に出席する。

日米欧などでは「真珠の首飾り戦略」と呼ばれ、インドなどが中国の艦船寄港につながると警戒している。

安倍晋三首相は今月、スリランカを訪問し、ヤミーン氏は4月に訪日した。中国には、日本の動きを牽制(けんせい)する狙いもありそうだ。【9月17日 産経】
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モルディブでは、両国関係にいかなる困難、障害も存在しない」との習主席に、ヤミーン大統領も「中国は最も誠実で信頼できる友人だ」と応じています。

スリランカでの港湾建設は「21世紀の海上シルクロード」構想実現に向けた一歩となり、インド洋での中国の影響力拡大を嫌うインドは警戒を強めています。

こうした動きを見ると、中国、インドそして日本が、互いをけん制した外交活動を活発化させているように見えます。

特に、インドと中国は、ベトナムとモルディブ・スリランカという相手の懐に手を突っ込んで・・・・という風にも見えます。

その地理的配置から「真珠の首飾り戦略」とも呼ばれる、中国のシーレーン確保戦略である「21世紀の海上シルクロード」構想は、インドからすれば“インド包囲網”でもあり、新興国のライバル国であるインド・中国の間には緊張もあります。

また、中印両国は国境紛争も抱えています。
インド実効支配する北東部アルナチャルプラデシュ州を、中国が自国領土と主張していることでの対立もありますし、北西部のカシミールでも両国の小さな衝突は頻繁に繰り返されています。

****インド、中国国境付近に新型地対空ミサイル配備****
22日付のインド紙タイムズ・オブ・インディアがインド国防省筋の話として伝えたところによると、インド軍は対中防衛力を強化するため、中国との国境に近い北東部に、ほぼ国産化された新型地対空ミサイル「アカシュ」6基の実戦配備を始めた。(中略)

国境画定問題を抱える中印両国は、1962年に紛争を起こし、インドは、中国軍の侵攻を強く警戒している。

中国の軍事的優位は変わらないが、インドにとり、新型ミサイルの配備は大きな成果といえそうだ。【8月22日 産経】
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習主席のインド訪問 異例のもてなしで、首脳どうしの親密な関係を演出
インドは、こうした領土・国境問題ではこれまで同様に中国への妥協はしない方針ですが、経済関係においては中国の圧倒的影響力に期待する向きも強く、全面的に中国と対立するものでもないようです。

習近平国家主席は、モルディブ・スリランカに続いて、当のインドを訪問しましたが、インド側はモディ首相が先頭に立って異例の歓迎を見せています。

****習主席がインド訪問 異例のもてなし****
南アジアを歴訪中の中国の習近平国家主席は、17日、最後の訪問国のインドに入り、モディ首相の地元のグジャラート州で異例のもてなしを受けて、首脳どうしの親密な関係を演出しました。(中略)

グジャラート州はモディ首相が長年トップを務めた地元で、習主席は最大都市アーメダバードのホテルでモディ首相の出迎えを受けました。

そして、両首脳は、中国企業向けの工業団地の整備や、中国南部の広東省とグジャラート州の関係強化などについての覚書の署名に立ち会いました。

さらに、両首脳は、インド独立の父、マハトマ・ガンジーが暮らした住宅を見学したほか、モディ首相が州のトップ在任中に整備した川辺の公園で、一緒にブランコに乗ったり現地の伝統の踊りを鑑賞したりしました。

習主席とことし5月に就任したモディ首相の顔合わせは、早くも2回目で、17日はモディ首相の誕生日でもあり、出身地でのもてなしで首脳どうしの親密さを演出しました。

習主席は、18日は首都ニューデリーでモディ首相と首脳会談を行うほか、中国の対南アジア政策について演説する予定です。

中国からの経済協力引き出したい思惑も
習主席が訪問したインド西部のグジャラート州は、モディ首相がことし5月の就任まで長年トップを務めていたモディ氏の地元です。

インドの首相が首都ニューデリー以外で外国の首脳を出迎えるのは異例のことです。
さらに、モディ首相は、州のトップ在任中に整備した川辺の新たな公園に習主席を案内するなど、親密さを演出しました。

モディ首相としては、今回の訪問を通じて習近平国家主席と個人的な関係を強め、中国からの経済分野での協力などを引き出したい思惑もあるものとみられます。【9月18日 NHK】
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対中けん制への過度の期待は・・・
先述のように、日本には中国をけん制するうえで、同じ民主主義国であるインドとの関係を強化したいという思いがあります。
同様の狙いはアメリカにもあります。

しかし、そうした中国へのカウンターパワーとしてインドを位置づける味方への批判の指摘もあります。

****インドへの過度な期待は禁物****
米国のコンサルタント会社、サミュエルズ・インターナショナル・アソシエイツ上席研究員のスーラブ・グプタが、CSIS Pacific Forumのサイトに8月14日付で掲載された論説において、米印関係について過大な期待を持つことを戒め、インドの自立性を尊重し、対中牽制の視点ばかりから米印関係を見ないよう助言しています。
(中略)
インドの歴代政権は、中国に反対するよりそれに同調する方が賢明であるとみなしてきた。

インドは習近平の「新しい大国関係」の核心的利益論を尊重しているように見える。インドと中国がアジアで競争関係にあると信じ、米印両国の利益はアジアで合致すると安易に想定することは間違いであろう。

米印関係は、中国との関係の視点ばかりから見るべきではない。米印軍事協力を、力の共有とバランスに基づくインド・太平洋地域の多数国間安保協力に資する方向に持っていく方が良い。米印関係では、自立と連携のバランスをとっていく必要がある、と論じています。(後略)【9月17日 WEDGE】
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今回の習近平主席歓迎ぶりや、これまでのカシミールにおけるインド側の対応などをみると、インドは中国との関係悪化は極力避け、関係強化を図りたい方向のようです。

もちろん、そのことは日本がインドとの関係を深める努力を行うことの意義をそこなうものではありませんが。

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