孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

中央アフリカ  暫定大統領、周辺国の圧力で辞任 混乱は未だ収まらず

2014-01-12 22:22:02 | アフリカ

(中央アフリカの首都バンギで、店を略奪している最中に発砲音が聞こえ、逃げる人々 2014年1月11日撮影 【1月12日 AFP】http://www.afpbb.com/articles/-/3006348
笑顔も見えるようで、略奪をゲーム感覚で楽しんでいるようにも・・・)

多数の住民がこれで暴力行為が収まるだろうと期待を表した
中央アフリカでは、昨年3月、反政府武装勢力「セレカ」が首都バンギを攻略し、ボジゼ大統領は国外脱出。
セレカの指導者ジョトディア氏が暫定大統領就任を宣言しましたが、ボジゼ氏支持派も武装して抵抗。
セレカがイスラム教徒(国民の約15%)主体で、旧政権・ボジゼ氏支持派がキリスト教徒が多かったことから、宗教間対立となり、衝突が激化しました。

ジョトディア暫定大統領は1年半の移行期間を経て、15年までには総選挙を実施すると宣言。
更に、自らの地位の正統性を確保するためにセレカの武装解除を表明しましたが、政権奪取に貢献した戦士の多くがこれに猛反発し、国内各地で暴れる混乱状態となっています。
ジョトディア暫定大統領自身、もはや傍若無人な武装集団の行動をコントロールできないと認めています。

国連安全保障理事会は12月5日、アフリカ連合(AU)の部隊と旧宗主国フランスの軍事介入を認め、AU部隊約4000人、仏軍約1600人が展開していますが、状況は収まっていません。

****中央アフリカ:避難民93万5000人に・・・・宗教対立で****
新旧政権を支持する武装勢力同士の衝突からイスラム、キリスト両教徒の宗教対立に発展しているアフリカ中部・中央アフリカ共和国で、国内避難民の数が93万5000人に達した。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)が3日発表した。

総人口(約450万人)の5分の1が避難民となったことになり、未曽有の危機的状況が続いている。UNHCRによると、首都バンギでは、人口の半数以上に相当する51万人が避難生活を余儀なくされている。【1月4日 毎日】
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また、アフリカの内戦ではしばしば少年兵が問題になりますが、中央アフリカの混乱でも子供の犠牲が大きくなっています。

****中央アフリカの武装勢力、子供を斬首=手足切断もとユニセフ****
国連児童基金(ユニセフ)は30日、戦闘が続く中央アフリカ共和国で少なくとも子供2人が首を切断され殺されたと発表した。他に手足を切断された子供も1人確認した。「子供に対する残虐さは前例のないレベルに達している」と訴えている。

イスラム教徒とキリスト教徒の対立を軸にした戦闘で「各武装勢力がますます少年兵を集めるようになった」とユニセフは指摘。各武装勢力が互いに報復を繰り返す中で「少年兵が報復の対象として狙われている」と悲惨な実態を訴えた。【12月31日 時事】 
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事態を取集できないジョトディア暫定大統に周辺国は辞任を要求、ジョトディア暫定大統もこれを受け入れました。

****中央アフリカのジョトディア大統領が辞任か=チャドで地域首脳会議****
宗教対立で混乱状態に陥った中央アフリカ共和国情勢に関し、同国が加盟する中部アフリカ諸国経済共同体(CEEAC)は10日、ジョトディア大統領とチャンガイ首相が辞任したと明らかにした。AFP通信が報じた。

CEEACは9日からチャドのヌジャメナで臨時首脳会議を開催。AFP通信によれば、ジョトディア大統領らの辞任は首脳会議の最終声明に盛り込まれた。首脳会議は中央アフリカ議会の議員全員をヌジャメナに呼び、ジョトディア政権を存続させるかどうか、判断を求めていた。【1月10日 時事】 
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中部アフリカ諸国経済共同体(CEEAC)なる組織に一国の指導者を解任する権限があるとも思われませんが、混乱の波及を警戒する周辺国から相当の圧力があったのでしょう。
あるいは、ジョトディア暫定大統領自身、コントロールできない事態に嫌気がさしていたかもしれません。

このジョトディア暫定大統領辞任の報に、キリスト教徒が多数を占めると思われる多くの住民が喜んでいると報じられています。

****中央アフリカ大統領、宗教間の衝突を阻止できず辞任****
宗教間の衝突で国が引き裂かれた状況にある中央アフリカのミシェル・ジョトディア暫定大統領は10日、宗教間衝突の阻止に失敗したとして中部アフリカ諸国からの圧力を受け、辞任した。

同大統領とニコラ・チャンガイ暫定首相辞任の知らせは首都バンギで歓声をもって迎えられ、多数の住民がこれで暴力行為が収まるだろうと期待を表した。

9日よりチャドで開かれていた中部アフリカ諸国経済共同体(ECCAS)の臨時首脳会議で、ジョトディア暫定大統領に辞任の圧力をかけていた地域首脳らは、同大統領の辞任を「極めて愛国的な決断」と呼んだ。
一方フランスは移行政府に対し、新たな暫定大統領を速やかに決定するよう主張した。

バンギでは、ジョトディア暫定大統領とチャンガイ暫定政府首相辞任のニュースを歓迎する大勢の人々が街頭へ繰り出した。

空港近くの大規模キャンプに避難場所を求めに来た何万人ものキリスト教徒たちの1人は、「神のご意志なら、キリスト教徒とイスラム教徒は今晩から互いに仲良く暮らすようになり、私は日曜までに家に戻れる」と語った。

中央アフリカでは、宗教間の対立による衝突で、先月だけで1000人以上が死亡している。【1月11日 AFP】
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報復、食人行為も
ただ、事態をコントロールできていなかったジョトディア暫定大統領が辞任しても、そのことで混乱が自動的に収まるとは思われません。
少なくともかつてはセレカを指導していた同氏が辞任することで、更に無秩序状態が加速することも懸念されます。

****中央アフリカ、大統領辞任後に暴力行為が続発****
反体制勢力の指導者から大統領に転じたミシェル・ジョトディア暫定大統領が辞任した中央アフリカの首都バンギで、激しい暴力が起きている。一部では、食人や広範囲での略奪の報告も上がっている。

激しい外交的圧力を受け10日に辞任したジョトディア氏は、翌日ベニンの首都に到着した。
一方バンギでは激しい暴力が起きており、同暫定大統領の辞任が、衝突で引き裂かれた国家の緊張を和らげるだろうとの期待が打ち砕かれている。

中央アフリカ赤十字が発表した最新の死者数によると、ジョトディア氏が辞任してから数時間のあいだに少なくとも5人が死亡。夜間にはたびたび銃声が聞こえたという。

またAFP記者の報告によると、市内で略奪が相次いでおり、群衆が店のドアを壊しているという。
略奪された店の多くはイスラム教徒が経営しており、地元の赤十字の代表は、昨年3月に「(イスラム教系の)セレカ(Seleka)がこの地に到着した時に略奪の被害に遭った人々が、今度は逆に略奪を行っている」と語る。

目撃者の話から、略奪を行った者の中には食人行為に及んだ者もいると報告されている。【1月12日 AFP】
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国連・EUに積極関与を求めるフランス
旧宗主国として部隊を派遣しているフランスは、マリへの介入のときと同じように、現地では大歓迎を受けているそうです。

****フランスとアフリカ連合、中央アフリカへの派遣部隊を増強****
・・・混乱が続く中央アフリカに展開したフランス軍は7日、地元住民の大歓迎を受けた。アフリカ連合(AU)は、多数の死者を出している宗教間の衝突の根絶を目指して兵力をほぼ倍増させると発表した。

中央アフリカ西部の都市ブワルの住民たちは、ダンスを踊り、警笛を鳴らし、鍋をたたいて同地に入った約200人のフランス軍部隊を歓迎した。

今年3月に政府を転覆させた反政府勢力の攻勢はイスラム教徒とキリスト教徒の間で流血を伴う衝突を招いた。
数か月にわたる暴力にうんざりした住民らは仏軍部隊に「ありがとう!」「私たちを助けて!」などと声をかけた。(後略)【12月8日 AFP】
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“内向き姿勢”を強めるアメリカに代わって、リビア、マリ、中央アフリカと介入を進めるフランスは国連に対し、より積極的なPKOを展開することを求めています。

****PKO展開急ぐ=仏大統領と中央アフリカ協議―国連総長****
フランスのオランド大統領は27日、国連の潘基文事務総長と電話会談し、治安回復のため仏軍などが介入した中央アフリカ共和国で、国連がより大きな役割を果たすよう求めた。AFP通信によると、事務総長は現地での国連平和維持活動(PKO)展開に向け、作業を急ぐ方針を明らかにした。

潘事務総長はオランド大統領との協議後、数日中にも安保理やアフリカ連合(AU)と中央アフリカ情勢を協議する考えを示した。既に展開しているアフリカ諸国の派遣部隊をPKOに切り替える可能性を検討しているという。【12月28日 時事】 
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南スーダンでの内戦も抱える国連PKOとしてはなかなか大変なところですが、すでに派遣されているAU部隊の衣替え的なものであればなんとか・・・というところでしょう。

一方、フランスはEUに対しても、より積極的な関与を求めていますが、フランスの“孤立”も報じられていました。

****中央アフリカ単独介入に協力“二の足” 仏、EUで孤立感****
中央アフリカの人道危機を受け、今月初めに軍事介入に踏み切ったフランスに孤立感が漂っている。欧州連合(EU)の各国は介入を支持する一方で、単独行動に対する踏み込んだ協力には二の足を踏んでいるからだ。こうした事態は安全保障分野でのEU協調の難しさも示している。

オランド仏大統領は20日、EU首脳会議終了後の記者会見で、「軍事行動への参加を求めているのではない。見たいのは欧州の存在感だ」と、介入に向け欧州諸国への協力を求めた。

首脳会議は、「内戦や大虐殺の回避に寄与した」(ファンロンパイEU大統領)と仏軍介入を支持。来年1月に外相らがEUの関与策を検討することにした。だが、仏紙フィガロは「オランド氏の目標は達成できなかった」と報じた。

仏軍は部隊1600人を展開し、新旧政権派武装集団の武装解除を急ぐ。だが、イスラム過激派武装勢力を相手としたマリへの介入と違い、中央アフリカは敵味方の判別が困難で、「より厄介」(専門家)ともされる。介入直後には仏軍兵士2人が殺害され、仏国民の介入への支持は51%から44%に下落した。

フランスは作戦をEU全体の活動とすることで負担軽減を模索。だが、期待したポーランドなどの部隊派遣は見送られ、加盟国は輸送支援などにとどまる。首脳会議では戦費を賄う共通の基金の創設も狙ったが、加盟国の反対で頓挫した。

EUでは外交・安全保障政策の決定には全会一致が必要だが、介入は仏単独の行動。加盟国としては意思決定に関与できない活動の支援はしづらい。
アフリカへの影響力を保ちたいのでは-などと、フランス側の思惑を推し量る向きもある。【12月23日 産経】
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フランスが“アフリカへの影響力を保ちたい”のは間違いないでしょうが、旧宗主国として放置できないという自負心みたいなものもあるでしょう。
ただ、英独としては、そんなフランスのパフォーマンスに付き合うのは・・・というところでしょう。

年が明けて、EU各国が部隊を派遣することが検討されていることが報じられています。
多少は前向き姿勢に変わったということでしょうか。ただ、実際の派遣にはまだ時間を要しそうです。

****EU、部隊派遣へ=仏介入の中央アフリカに****
欧州連合(EU)は10日の大使級会合で、フランスが軍事介入した中央アフリカ共和国の治安回復に向けた部隊派遣の是非を議論した。EU外交筋によると、部隊派遣は大筋で支持され、20日のEU外相理事会で決定される公算が大きくなった。

同筋によれば、約10万人が避難する中央アフリカの首都バンギの空港にEU各国部隊を派遣し、治安確保に当たる案が有力。実現すれば部隊規模は500~1000人になる見込み。ベルギーが部隊提供に前向きだ。【1月11日 時事】 
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ベルギーの積極姿勢は以前から報じられているものです。
フランスのルパンタン欧州問題担当相は12月18日のラジオで、治安回復のため仏軍が介入した中央アフリカに、ベルギーが2014年1月末にも部隊を派遣する可能性があると明らかにしていました。

ベルギーの内情は全く知りませんが、英独が“二の足”を踏む中での積極姿勢は、かつてルワンダPKOでジェノサイドの犠牲者を見殺しにしたとの批判にさらされた同国として、悪夢を払しょくしたいという思いでしょうか?それとも権益とか、より現実的な要請でしょうか?

いずれにしても、イスラム教徒とキリスト教徒の報復の応酬、子供の首や手足が切断、食人行為も・・・という混乱に早急な歯止めをかける必要があります。
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