孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

イギリス  ロンドン市内各地で略奪・放火  拡大する暴動

2011-08-09 21:14:30 | 世相

(8月8日 ロンドン・ハックニーの暴動 “flickr”より By bobaliciouslondon http://www.flickr.com/photos/bobaliciouslondon/6024080948/

国外で夏休み中だったキャメロン首相、急きょ帰国
イギリス・ロンドンで警官による住民射殺事件を発端に6日に発生した若者らの暴動は市内各地に飛び火し、3日目の8日も商店の略奪や放火が相次いでいます。
また、暴動は英国第2の都市バーミンガムにも拡大しており、“警察は封じ込めに有効策を打てず、国外で夏休み中だったキャメロン首相やジョンソン・ロンドン市長らが急きょ帰国する異常事態になっている”【8月9日 毎日】とか。

暴動の発端となったのは、4日夜、ロンドン北部トットナムで警察官らが地元の黒人男性(29)が乗車するタクシーを停車させた際、銃で撃ち合いとなり、男性が死亡したという事件です。

イギリスでは、警官が銃火器を携行しないのが通常でしたが、銃犯罪の増加を受け、近年は銃を携行したパトロールも一部で実施されるようになっています。
今回事件については、警察官による発砲事例を調査する警察苦情処理独立委員会(IPCC)によると、銃を所持する特殊警官が、事前に逮捕状をとった上で、タクシーを停車させたとのことです。この計画には、黒人コミュニティーの銃犯罪取り締まりを専門とするトライデント部門の要員も同行しています。【8月7日 AFPより】

“IPCCは、「発砲があり、タクシー乗客だった29歳の男性が現場で死亡した」と述べ、「警察官による発砲は2発。現場からは、警察が支給したものではない拳銃が回収された」と説明した。男性と警察官の間では、発砲の応酬があったとみられている”【8月7日 AFP】とのことですが、“英紙ガーディアンの報道によると、現場で警察官の無線から発見された銃弾が、弾道テストの結果この警察官によって発射されたものであることが判明し、これまでの警察側の説明に疑問が生じているという。”【8月8日 AFP】と、事件の全容については不明な点もあります。

【「単に便乗した盗みと暴力」】
****ロンドン暴動:市内各地に拡大 略奪や放火 220人逮捕****
・・・・暴動の発生はロンドン市内で10カ所を超えた。ロンドンでは8日、来年のロンドン五輪のメーン会場に近い東部ハックニー地区や南部クラップハム、クロイドン地区などで数十人から数百人の若者らが暴徒化。デパートや商店の略奪や、建物や車両への放火を繰り返している。

警察はこれまでに220人以上を逮捕。各地で機動隊と暴徒が衝突しているが、若者らは携帯電話やソーシャル・ネットワークを使って襲撃先を移し、警察は後手に回っているようだ。

6日に最初の暴動が起きたロンドン北部トットナム地区では、警官が逮捕しようとした29歳の黒人男性を射殺したことへの抗議デモが暴徒化。しかし、その後の暴動では略奪や破壊行為自体が目的になっている模様で、若者らは覆面をし、放火した車両の前で記念撮影する姿も見られる。

暴動拡大の背景には、失業や緊縮財政のしわ寄せへの若者の不満も指摘される。一方で「暴徒に怒りの表情はない」との指摘は多く、クレッグ副首相は「単に便乗した盗みと暴力」と断じている。
事態の深刻化を受け、キャメロン首相は急きょ帰国し9日に緊急対策会議を開く。【8月9日 毎日】
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例年のオリンピック開催を控えた五輪メーン競技場に近い地域でも略奪・放火が起きています。
****ロンドン暴動、各地に拡大 五輪競技場近くでも略奪****
警察官による黒人射殺事件に端を発した若者による暴動が8日、ロンドン市内各地に拡大。ロンドン五輪のメーン競技場に近い東部ハックニーなどで店舗の略奪や車への放火が起きたほか、英中部のバーミンガムやリバプールでも店が壊された。五輪開催まで1年を切っており、治安への懸念が高まるのは必至だ。

五輪メーン競技場から2.5キロのハックニーでは8日夕、フードで顔を隠した数百人が集結。店やトラックを壊して商品を略奪したり、バスや警察車両などに放火したりした。南部ブリクストンやペッカムなどでも放火や略奪があり、路上の車への放火はロンドン市内全域で起きている模様だ。BBCによると、9日未明には市北部のソニーの倉庫から出火した。

ロンドン北部トットナムで警察官に29歳の黒人男性が射殺され、警察への抗議活動が6日に暴徒化。これを発端に暴動は近隣地区に波及し、7日夜には百貨店やブランド店が集まる都心の商店街でも約50人が店舗などに投石した。【8月9日 朝日】
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当初は、黒人住民の警察の扱いへの抗議という人種的な問題があったと思われますが、失業や緊縮財政のしわ寄せに苦しむ若者の不満が行動を過激化させたことが推測されます。
そうした、人種問題やフランス・パリなどでも暴動の引き金になる移民問題、経済悪化への不満・・・といった問題も重大ではありますが、現時点での「暴徒に怒りの表情はない」「単に便乗した盗みと暴力」という状況は、暴動を楽しむ若者達という感もあって、より深刻な社会の病理を感じさせます。

****英暴動:格差拡大、若者に閉塞感*****
8日夜から9日未明にかけ、ロンドン市内各所で続いた略奪や建物の炎上という異常事態に市民は大きなショックを受けている。過去数十年で「最悪の事態」は、来年夏の五輪開催に向けてロンドンのイメージダウンを招きかねない。背景にはソーシャルメディアの普及による暴動の急速な拡大や、経済格差が拡大する中で「失うものが何もない」(フィナンシャル・タイムズ紙)若者層の閉塞(へいそく)感がありそうだ。

ロンドン警視庁によると、主にスマートフォン「ブラックベリー」の匿名メッセージ機能で集結場所や時間が伝達されているという。メッセージには「店を破壊して、ただで品物を持ち帰ろう」などと略奪をあおるものが目立ち、政治、人種的な動機の伝言はほとんどないという。タイムズ紙は9日の社説で「ロンドンは現実のコンピューターゲームのようになった。暴徒らは単に夏の夜を楽しもうとしている」と指摘した。

ロンドン市内で暴動が起きているのは、北部トットナムや東部ハックニーなど黒人や南アジア系の住民らが混住し、失業や貧困層の多い地域が目立つ。参加者は10代、20代の若者が中心で、経済格差が拡大する中で、教育面などで社会上昇の機会から取り残された若者も多いようだ。

政府が財政再建のために超緊縮財政を断行する中で、青少年支援事業などへの予算が大幅にカットされている余波が一因になっているとの指摘もある。メディアは「僕たちには仕事も金もない」「(略奪で)税金を取り返してやる」など暴動に加わった若者の声を報じている。また、警察の“ソフト”な対応を批判する声も強い。【8月9日 毎日】
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キャメロン首相は、暴徒化する若者らに「あなたたちは他人の生活やコミュニティーだけでなく、自らの将来も破壊しようとしている」と自制を呼びかける声明を出しています。

社会的緊張が希薄な日本は例外的
日本では、60年代から70年代に山谷とか釜ケ崎での暴動はありましたが、最近ではそうしたものも殆んどなく、“暴動”という言葉が日常と結び付きません。
そうした日本のような安定社会は世界ではむしろ例外であり、アメリカでも中国でも、フランス・イギリスでも、もちろん多くの途上国でも、民族・人種・宗教、政治・経済的利害など様々な理由から“暴動” につながる社会的緊張が存在しているほうが通常のようです。

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インドネシア  再燃するパプア独立運動  影響力を増すイスラム強硬派

2011-08-07 20:38:56 | 世相

(パプア独立運動の旗をあしらったマスク・ヘッドバンドの若者 “”より By babil.biz  http://www.flickr.com/photos/babil/4094600571/ )

【「運動は大きなものではない」(マルティ外相)】
多くの島々からなるインドネシアにおける分離独立運動と言えば、02年に独立した東ティモール、04年の大津波被害を機に和平交渉が進展したスマトラ島北部のアチェなどがありますが、きょうはインドネシア東端にあたるパプア州(ニューギニア島西部)で独立運動が再燃しているという話題です。

****インドネシア・パプア州で独立運動再燃*****
インドネシア東端のパプア州(ニューギニア島西部)で、分離・独立要求運動が再燃している。
インドネシア紙によると、パプア州の州都ジャヤプラでは2日、数千人がインドネシアからの分離・独立と、現地に配備されている軍の撤収などを要求し、デモを繰り広げた。警察当局は約700人を動員し、厳重な警戒に当たった。

デモは西パプア州を含め7都市に及び、首都ジャカルタでも数百人が分離・独立を住民投票に付すよう叫んだ。独立派は「インドネシアのみならず国際社会の問題だ」と支援を訴えている。
一方、政府は「運動は大きなものではない」(マルティ外相)として、国民と国際社会が過剰反応することを警戒している。

インドネシアでは、東ティモール、スマトラ島北端のアチェ、パプア州の分離・独立運動が火種となってきた。東ティモールは2002年に独立し、アチェの運動は小康状態にある。
インドネシア独立後もオランダ植民地として残ったパプア州は、1960年代にインドネシアへの帰属が決まった。だが、民族・文化的にはパプアニューギニアに近く、独立派組織「自由パプア運動」(OPM)などが活動を続けている。
 
ジャヤプラでは1日、武装集団が軍兵士を襲撃し4人が死亡、7人が負傷した。
パプア州内では先月末、大規模な争乱で21人が死亡。県知事選をめぐる衝突とされ、OPMは襲撃への関与を否定している。【8月4日 産経】
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弓矢とインターネット
国際社会も注目した東ティモールと異なり、現在のところパプア州独立運動に関しては国際的にはあまり関心がもたれてはいません。こうした事態に、弓矢の超ローテク兵器で闘う独立派は、インターネットを通じてインドネシア国軍による人権侵害などを発信することでも前進を目指しているそうです。

***独立派が夢見る西パプアの春****
インドネシア軍の弾圧にネットで対抗  独立に向けて先住民の逆襲が始まる

民衆による抗議行動がアラブ世界を揺るがしていく様子を、1万キロ近く離れた地から注視している人々がいる。太平洋南部に浮かぶニューギニア島の西半分、インドネシア領のパプア州と西パプア州の独立を求める活動家たちだ。
「みんなアラブ世界の革命を見守ってきた」と、24歳の大学生ジェーコブ(治安部隊の報復を恐れて仮名)は言う。ジェーコブはパプア州の州都ジャヤプラ郊外に潜伏する集団と共に、独立を求めるデモを組織している。
「中東とは違い、自分たちの敵は独裁者ではなく、われわれの土地を盗んだ新植民地主義の侵略者だ」とジェーコブは言う。

パプアおよび西パプアの両州(旧イリアンジャヤ州。分離独立派は西パプアと呼ぶ)の領有権を主張するインドネシアに対し、分離独立派は毎週のように抗議デモを行っている。
分離独立派が「独立記念日」とする7月1日には、インドネシアの西パプア統治に抗議する秘密集会がインドネシア各地で聞かれた。40年前のこの日、分離独立派の指導者が「西パプア共和国」の独立を宣言した。69年に独立の是非を問う住民投票が行われたが、パプア系住民の代表約1000人は反対票を投じるよう強制されたという。

45年にインドネシアがオランダから独立した後も西パプアはオランダ領のままだったが、インドネシアの初代大統領スカルノはこの資源豊かな領土を欲しがった。国連での度重なる訴えが不発に終わると、インドネシア軍を西パプアに進攻させた。
欧米は政治的決着を模索したが、インドネシア軍は広域作戦を開始して反対勢力を弾圧。無数の難民が生まれ、ジャングルの奥地には残忍でしぶとい抵抗勢力が結集し武装した。小競り合いはいまだに続き、人権擁護団体によると民間人の犠牲者は40万人を超える。

僻蒼とした森にある急ごしらえの訓練キャンプで、独立派組織「自由パプア運動(OPM)」の軍事部門のリチャード・ヨウェニ司令官は次のように本誌に語った。「祖国の将来について投票する機会を与えられなかった。祖国を奪われた」
頭に羽根飾りを着け、首からサルの手をぶら下げたゲリラたちを従えて、ヨウェニは自分たちの戦いの正当性を主張した。重装備のインドネシア軍に対し、ゲリラたちは古い機関銃を持っている者が数人いる以外はやりや弓矢を武器にしている。

人権侵害をネットで糾弾
インドネシア政府がパプアに固執するのはもっぱら、この地域が資源豊富で、外国による開発の可能性が大いにあるためだ。世界有数の銅・金の産出量を誇るグラスベルグ鉱山は米鉱業大手フリーポート・マクモラン・カッパー・アンド・ゴールドが所有。こうした外資は多くのパプア人にとって以前から邪魔者でしかない。環境を破壊し、インドネシア軍に資金提供もしているとみられている。

独立前の束ティモールでのインドネシア軍による人権侵害に対しては、アメリカは制裁措置を取った。しかし現オバマ政権は、インドネシア政府のテロ対策に報いるべく、再び軍に資金と訓練を提供している。
「兵士によるパプア系住民への人権侵害は多いが知られていない」と、人権擁護団体ヒューマン・ライツ・ウォッチのインドネシア担当コンサルタント、アンドレアス・ハルソノは言う。しかし欧米にはほとんど忘れられているこの紛争が、従来にない形で表面化しつつある。ハイテク通の学生や活動家がインターネット上で人権侵害の実態を発信し始めているのだ。

抵抗勢力は司令官や亡命政治家の下で結束を強め、活動家は膠着状態が続けばさらに攻勢を強めるだけだと語る。抵抗勢力や活動家はインドネシア政府と独立派指導者の対話を求めているが、それには1つ障害がある。抵抗勢力の指導者が国際調停を望んでいるのに対し、インドネシア政府は拒否していることだ。
【8月10日号 Newsweek日本版 ウィリアム・ロイド・ジョージ】
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インドネシア国軍の人権侵害については東ティモールなどで“実績”がありますので、パプアでも同様のことが行われていることは想像に難くないところです。

なお、01年には独立派組織・パプア評議会のテイス・エルアイ議長(64)が殺害される事件がありました。
“謎に包まれたままのテイス議長の殺害について、パプア人のほとんどが国軍または警察の犯行との見方をしているが、ヘンドロプリヨノ国家情報庁長官は、「パプアの独立派組織は、さまざまな分派があり、反暴力を訴える穏健派のテイス氏と対立する強硬派が存在する。テイス氏が誘拐されたと連絡した運転手が行方不明のままだが、彼が強硬派と結託していた可能性もある」との見方を示している。”【01年11月19日 じゃかるた新聞】とのことです。

イスラム強硬派と治安機関との癒着も
インドネシアにおける、もうひとつの人権問題に関する話題。
インドネシアにおいて最近、イスラム保守強硬派の影響が増大していることは、10年9月20日ブログ「インドネシア  強まるイスラム強硬派の活動 イスラム的規制強化の流れ」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20100920)で取り上げました。

その流れのなかで、異端とされる少数派イスラム系教団「アフマディア」信者に対する暴行事件が増加していることは、11年2月11日ブログ「インドネシア  キリスト教会放火、イスラム「異端」への暴力 高まる“不寛容”」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20110211)で取り上げています。

****インドネシア:虐殺事件の量刑「軽すぎる」と国際的非難****
インドネシア・ジャワ島西部で今年2月、イスラム強硬派に率いられた地元住民が少数派で「異端」扱いされる教団「アフマディア」の信者を虐殺した事件の判決について、国際社会から実行犯に対する量刑が「軽すぎる」との非難が高まっている。インドネシアでは近年、宗教的少数派に対する暴力事件が急増。ユドヨノ政権は「政教分離」や「司法の独立」を理由に事実上、事態を放置しており、国際人権団体などは宗教的少数派の保護など対応を求めている。

バンテン州地裁は先月28日、暴行罪などで起訴された強硬派組織「イスラム防衛戦線」(FPI)の地元幹部ら計12人に対し、3〜6カ月の禁錮刑を言い渡した。一方、検察側はアフマディア信者の中心的存在の男性も訴追。双方の緊張の高まりから警察が事前に退避勧告を出していたにもかかわらず無視したとして、禁錮9カ月を求刑している。

事件は今年2月に発生。ジャカルタ西方のパンデグランで住民ら1000人以上がアフマディアの信者約20人が集まる民家を襲撃、3人を殺害した。隠し撮りされたビデオ映像には、住民らが「アッラーフ・アクバル(神は偉大なり)」と叫びながら信者たちを棒や石で虐殺する様子が記録されている。

判決について在ジャカルタ米大使館は「異常に軽い判決」と批判。欧州連合(EU)も「少数派保護のための適切な法的処置」を政権側に求めた。国際人権団体は「判決は少数派を攻撃しても厳罰を科さないという『恐ろしいメッセージ』だ」と指摘している。

米国などは2月の事件発生後、政権側に信教の自由を法的に保護するよう求め、ユドヨノ大統領も対応する姿勢を示した。しかし、今回の判決についてマルティ外相は「行政府と司法機関の間には明確な線引きがある」と述べるにとどまった。量刑については言及せず、イスラム強硬派に対する弱腰姿勢を改めて露呈した形だ。

背景には、インドネシアにおけるイスラム強硬派の勢力拡大がある。警察など治安機関との癒着も指摘され、連立与党内にイスラム政党を抱えるユドヨノ政権は、この強硬派を抑圧せず、むしろ取り込むことで治安維持を図ろうとしている。

アフマディアは、最後の預言者がムハンマドではなく自派教祖とする教義から異端視されてきた。世界最多の約2億人のイスラム教徒を抱えるインドネシアは政教分離を国是とし、宗教的に比較的寛容とされてきた。【8月6日 毎日】
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棒や石で虐殺した側が“3〜6カ月の禁錮刑”で、襲われた側が、退避勧告に従わなかったとして“禁錮9カ月”というのは、いかにも不公正な判決です。

ASEAN諸国に関する民主化の度合いを見ると、“米国の民間人権団体「フリーダムハウス」が1月に発表した報告書「世界の自由」によると、各国の政治的自由度はミャンマー、ベトナム、ラオスが最悪の7。カンボジア、ブルネイが6、シンガポール、タイ5、マレーシア4、フィリピン3、インドネシア2。
民主化を先導しているともいえるのが、1998年に、約30年間のスハルト政権を終わらせたインドネシア。ユドヨノ政権下で地方分権などが進んでいる。”【4月7日 産経】とのことですが、そのインドネシアにして、昨今の宗教的不寛容の傾向は上記記事のような状況です。

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欧州各国の反移民・反イスラムの流れ ノルウェー連続テロの影響は?

2011-08-04 22:10:40 | 世相

(ノルウェー・オスロ 凄惨な事件に抗議する市民 “flickr”より By OyvindBjorgo http://www.flickr.com/photos/oyvindbjorgo/5981505795/

【「ブルカ禁止法」】
イスラム圏からの多くの移民を労働力不足の解消のため受け入れてきた欧州諸国ですが、01年のアメリカの9.11テロで欧米社会とイスラムの対立が表面化し、08年の金融・経済危機以降は雇用をめぐる自国民と移民の経済的競合が激しくなり、また、地域社会に溶け込まず従来の文化を維持しようとする移民との間で文化的摩擦も大きくなっています。

こうしたなかで、移民、特にイスラム圏からの移民に対する批判的な風潮が強まっていますが、その傾向を象徴しているのが、イスラム教徒の女性が使う「ブルカ」や「ニカブ」といった顔や全身を覆う衣装の公共の場での着用を禁じる法律、いわゆる「ブルカ禁止法」です。

今年4月に「ブルカ禁止法」が発効したフランスに続いて、ベルギーでも7月に施行されています。また、イタリアも9月に議会審議されることになっています。

****ベルギーもブルカ禁止法施行へ…欧州で2か国目*****
ベルギーで、イスラム教徒の女性が使う「ブルカ」や「ニカブ」といった顔や全身を覆う衣装の公共の場での着用を禁じる法律が13日付の官報に掲載された。
23日から施行される。フランスで今年4月、「ブルカ禁止法」が発効しており、ブルカ着用を国内全域で禁止するのは、ベルギーが欧州で2か国目となる。

法律は、テロ対策や犯罪防止を目的に掲げ、道路や商店内も含むすべての公共の場所で、顔を覆う衣装の着用を原則禁止し、違反すれば15〜25ユーロ(約1600〜2800円)の罰金か禁錮1〜7日を科す。フランスのようなブルカ着用を強制した家族への罰則は設けていない。

ベルギーでは、自治体レベルで既にブルカの着用を禁じているところもあり、法律の施行で適用範囲が全国に拡大される。人口約1000万人の同国で、ブルカやニカブを着用している女性は200人足らずと推計されている。【7月13日 読売】
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****イタリア:「ブルカ」禁止法案を可決 下院・憲法問題委****
ANSA通信によると、イタリア下院の憲法問題委員会は2日、ベルルスコーニ政権与党で中道右派の自由国民などが提出したイスラム教徒の女性の顔や体を覆う衣装「ブルカ」や「ニカブ」について、公共の場での着用を禁止する法案を賛成多数で可決した。9月に本会議で審議される予定。

同様の法律は既にフランスやベルギーで制定されている。イタリアでも同法案が成立すれば、ノルウェーの連続テロで取りざたされた欧州の反イスラム的な傾向に拍車が掛かりそうだ。

法案は治安上の懸念を理由に自由国民や、連立与党を組む北部同盟が立案した。違反者に150〜300ユーロ(約1万6000〜3万2000円)の罰金または「(地域への)同化を促すため」の奉仕活動を科すとしている。
イタリアのイスラム系団体は「個人の自由を侵す不公正な法だ」などと反対の声を上げた。最近のイタリアでの世論調査では、国民の73%が公共の場でのブルカなどの着用に反対している。【8月3日 毎日】
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イタリアのカルファーニャ機会均等相は「狭い文化の枠に閉じこめられている女性を救い出すものだ。彼女たちが社会にとけ込めるようにしていく」と委員会での可決を評価。さらに「全身を覆うことは決して女性の選択の自由ではない。文化的、物理的な抑圧の象徴だ」とも述べています。

【「多文化主義は失敗」】
政治の世界では、「欧州のイスラム化」を批判する反移民政策を掲げる右翼政党が勢力を伸ばしていることは、これまでもたびたび取り上げてきたところです。
これまで進めてきた移民との共存を目指す「多文化主義」について、欧州主要国首脳らが「多文化主義は失敗」との発言も続いています。

****ノルウェー連続テロ 欧州首脳「多文化主義は失敗*****
・・・・ドイツでは昨年、社会民主党(SPD)の政治家で同国連邦銀行(独中央銀行)理事だったティロ・ザラツィン氏が自著『ドイツが消える』の中でトルコ人などイスラム系移民について「生産性が低い上、社会保障に依存している人が多く、ドイツに経済的利益をもたらさない」と批判し、解任された。
しかし、ドイツでは一部のイスラム系移民が独自の風習に閉じ籠もり、男女平等や教育の義務といったドイツ基本法(憲法)を守らないため、ザラツィン氏の主張を支持する声もある。

メルケル独首相は昨年10月、自ら率いるキリスト教民主同盟(CDU)の集会で「多文化社会を築こうという取り組みは失敗した。完全に失敗した」と述べ、喝采を浴びた。

多文化主義を支持してきた英国のキャメロン首相も今年2月、「英国政府による多文化主義政策は失敗した」と発言した。
言論の自由を尊重する英国では大学のサークルなどを舞台にイスラム系移民の過激化が進んでおり、米国から「英国はテロリストの温床になっている」と批判されている。

英国と並んで多文化主義を掲げてきたオランダでもイスラム系移民排斥を唱える極右政党・自由党が勢力を拡大。デンマークでもイスラム系移民規制を訴えるデンマーク国民党が政権に閣外協力し、同党の戦術を取り入れた右派政党がスウェーデンやフィンランドで伸長しており、今回の連続テロが、反イスラムを掲げる同種の凶行を誘発するのではとの懸念が広がっている。【8月2日 産経】
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欧州の右翼政党はノルウェー連続テロとの関係を否定
こうした「欧州のイスラム化」を危惧し、反移民の傾向を強める世論を背景にして、ノルウェーで7月29日に起こったのが、アンネシュ・ブレイビク容疑者(32)による爆弾・銃殺連続テロでした。
ブレイビク容疑者は、連続テロを行ったのは「人々が誤解のない強いメッセージを受け取れるようにする」ためであり、その目的は、イスラム教徒がノルウェーや西欧を「植民地化」することから守るためだと主張しています。【7月25日 毎日より】

一方、ブレイビク容疑者と同様の主張をして勢力を伸ばしてきた右翼政党は、事件のような暴力を否定することで、過激なテロのイメージを打ち消すのに躍起になっているとも報じられています。

****欧州右翼、テロ否定躍起 ノルウェー事件容疑者を非難****
欧州の右翼政党が、ノルウェーの連続テロ事件で逮捕されたアンネシュ・ブレイビク容疑者(32)との関係を打ち消すのに躍起になっている。「反移民」を旗印に政権を狙える位置まで勢力を伸ばしたが、過激なイメージで無党派層の支持を失いかねないからだ。

■政党イメージ悪化を懸念
フランスの右翼政党・国民戦線は、ブレイビク容疑者を「西欧の守護者」とたたえるコメントをブログに書いた党員の資格を停止した。
イタリアでは「彼の考えにはすばらしいところもある」とラジオで述べた北部同盟の政治家に身内からも批判が噴出、政治家は謝罪に追い込まれた。容疑者が一時在籍したノルウェーの進歩党も「今は(容疑者とは)一切関係ない」と強調する。

ブレイビク容疑者は犯行声明や法廷での陳述で、移民や難民への反感をむき出しにし、「イスラム教徒の征服から欧州を救うため」とテロを正当化。右翼政党のリーダーを「精神的な同志」と呼ぶ。
だが多くの右翼政党は正面からのイスラム批判には慎重だ。国民戦線は難民についても「迫害された人を受け入れるのはフランスの基本理念」(ルペン党首)との立場。その中で、モスクの建設禁止などイスラム系移民の排斥を訴えるオランダの自由党も「我々は民主的な政党。暴力に訴えることは決してしない」と容疑者を厳しく非難した。

欧州では近年、移民規制を掲げる右翼政党が勢力を伸ばしてきた。デンマークとオランダでは右翼政党が与党と閣外協力。フランスやフィンランド、オーストリアでは議席数や支持率で第3党になるなど、政権入りをうかがう右翼政党にとって、今回の事件が逆風になる可能性がある。(ロンドン=沢村亙)

■「移民、欧州に合わず」 ベルギーの政党党首
ベルギーの右翼政党フラームス・ブラング(VB)のブルーノ・ファルケニアース党首(56)が朝日新聞の取材に応じた。「暴力には反対」と事件を批判したうえで、移民とイスラムへの反感を声高に主張した。

 ――VBの主張は容疑者と共通するようですが、事件をどう見ますか。
「VBは民主的選挙を経て議席を持ち、議会やメディアで主張する。容疑者の行動はまともではなく、暴力には断固反対だ。事件の再発防止には、移民をせき止める以外にない」

 ――なぜ「反移民」を訴えているのですか。
「労働者が仕事を奪われることも問題だが、高学歴層にも反移民感情が高まっている。自分が生まれた土地なのかと思うほど、心を落ち着けて住めなくなっているからだ」

 ――多くの移民が税金を納めていますが、それでも問題ですか。
「仕事をしているだけならいい。だが、特にイスラム系移民は宗教、法・政治制度、文化などが人権やキリスト教など欧州の価値観と異なるうえ、順応しない。自分たちの流儀を押し通したいのであれば自国に帰るべきだ」【8月3日 朝日】
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事件によって、欧州各国で進む反移民・反イスラムの流れに変化が起きるのか、あるいは同様な凶行が誘発されるのかが注目されます。

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サウジアラビア  超高層タワー建設計画と国内人権問題

2011-08-03 22:03:01 | 世相

(世界金融危機前に発表された計画では、“マイル=ハイ・タワー”とも呼ばれ、完成時の高さは1,610mとのことでした。写真中央の鉛筆のように細長い建物です。
“世界金融危機の影響で計画の実現を危ぶむ声をキングダム・ホールディング・カンパニー側は一蹴し、予定通り進行すると発表した。 しかし、建設予定地の土壌調査の結果から、高さを1,600mではなく最大で500mほど下げた1,100m程度に変更する可能性があるとされている”【ウィキペディア】とも。
“flickr”より By SG-SSC http://www.flickr.com/photos/15965666@N00/2937133785/ )

【「政治的にも経済的にも安定しているサウジアラビアという国の強さを、このビルは象徴することになる」】
ドバイの「ブルジュ・ハリファ」(828メートル)に対抗して、サウジアラビアの富豪王子が1000メートルを超える世界一高いビルを建設する計画を明らかにしています。

****サウジに高さ1キロ超えるビルの建設計画****
サウジアラビアのアルワリード・ビン・タラール王子は2日、紅海沿岸のジッダに高さ1000メートルを超える世界一高いビルを建設する計画を明らかにした。
同氏が所有する投資会社キングダムホールディングと同国の建設業財閥ビン・ラディン・グループの間で、近々12億ドル(約930億円)規模の建設契約が締結されるという。

アラブ首長国連邦(UAE)のドバイにある「ブルジュ・ハリファ」(828メートル)から「世界一高いビル」の称号を奪うことになるこのビルは、完成までに36か月を要し、ホテルのほかマンションやオフィスのゾーンも設けられる。着工時期は明らかにされなかった。

アルワリード王子は、石油輸出国機構(OPEC)で中心的な役割を果たし、政治的にも経済的にも安定しているサウジアラビアという国の強さを、このビルは象徴することになると話した。王子はアブドラ・ビン・アブドルアジズ国王のおいで、同国で最も裕福と言っていいビジネスマンだ。【8月3日 AFP】
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アルワリード・ビン・タラール王子は、2008年の総資産が133億ドルで、世界で8番目の資産家、アラブ世界では一番の資産家だそうです。
1000mを越える山より高い建造物とは、想像を絶するものがありますが、「好きにすれば・・・」と、いささかあきれる感もあります。

なお、“建設業財閥ビン・ラディン・グループ”は、名前からわかるように、あのアルカイダのウサマ・ビン・ラディンの父が興した財閥で、ウサマ・ビン・ラディンの活動の資金源にもなった会社です。
グループは巨大財閥であるだけでなく、“マッカおよびマディーナのモスクの修理を任されるほど、サウード家(サウジアラビア王家)と深く結びついている。”【ウィキペディア】とのことです。

サウジの外国人労働者は「奴隷同然の場合もある」】
この記事にややひっかかるのは、“政治的にも経済的にも安定しているサウジアラビアという国の強さを、このビルは象徴することになる”というアルワリード王子の発言です。
中東の地域大国であるサウジアラビア社会には、重要な問題が内在しているように思われるからです。

最近、サウジアラビアをこのブログで取り上げたのは、
7月4日ブログ「サウジアラビア  インドネシアからの出稼ぎ家政婦への処遇が問題化」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20110704
6月22日ブログ「サウジアラビア  女性の自動車運転解禁を求める動き クリントン米国務長官も支援」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20110622
ですが、いずれも社会の最も重要な価値観である人権への意識が希薄なこと(日本や欧米の常識からすればの話ですが)が窺えます。

なお、インドネシアからサウジアラビアへは2010年、約23万人が渡航し、現在約100万人が働いていますが、上記ブログのインドネシア人家政婦処刑問題を受けて、インドネシア政府は8月1日、サウジアラビアへの労働者派遣を停止しました。
問題はインドネシア人家政婦の処遇だけにとどまりません。

****外国人労働者差別:サウジいまだ改善できず…人権団体報告****
サウジアラビアなどペルシャ湾岸諸国は、アジアやアフリカからの労働者に対する虐待問題で長年国際的に非難されてきたが、状況は遅々として改善していない。国際人権団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」(本部・ニューヨーク)は今年の報告書で、サウジの外国人労働者は「奴隷同然の場合もある」と指弾している。

米国務省の国際人権報告書(10年版)によると、サウジアラビアの人口約2900万人のうち、推定約600万人が外国人。民間部門の労働力の9割近くを外国人が占める。特にひどい扱いを受けているとされるのが家内労働者で、ほとんどが女性だ。
外国人労働者はサウジ国籍を持つ「後見人」が必要で、悪質な後見人はパスポートを取り上げ、無賃金での長時間労働を強いる。暴力や性的暴行を加える事例も少なくない。

中東和平や石油問題でサウジとは長年緊密な協力関係にある米国の国務省ですら、人権報告書で被害国の大使館関係者の話を引用し「(外国人労働者は)隷属に等しい(雇用)状況から逃げ出している」と断罪している。同省は年次人身売買報告書(10年)でも、「アジア、アフリカから、売春や物ごいのために連れてこられた女性や子供がいる」と指摘。サウジを状況改善が見られない「第三類国」に指定している。【6月25日 毎日】
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対テロ法案が民主化運動の抑圧に悪用されかねない
社会的弱者である外国人労働者や女性の権利問題は、宗教的少数派のシーア派住民の権利問題にもつながります。
中東・北アフリカの“民主化”の動きを警戒するサウジアラビアは、隣国バーレーンの民主化運動には特には強く反応、自国への波及を防止するためバーレーンの運動鎮圧に協力する軍を派兵し、現在も駐留を続けています。

国内民主化運動への締め付けも厳しいものがあるようです。
****サウジアラビア:アムネスティへのネット接続を遮断か****
サウジアラビア国内から、国際人権団体アムネスティ・インターナショナル(本部ロンドン)のウェブサイトへの接続が不可能になっている。アムネスティは先月22日、ウェブサイトでサウジについての報告書を発表。対テロ法案が民主化運動の抑圧に悪用されかねないと指摘し、サウジ側が「根拠のない批判だ」と反発していた。その後間もなく、サウジ国内からの接続ができなくなり、同団体は、政府当局による示威的な情報遮断だとして反発を強めている。
アムネスティによると、サウジ国内の記者や人権活動家が先月25日、サイトへの接続ができないと連絡してきたという。

アムネスティの報告書は、サウジの対テロ法案が令状なしの長期拘束を可能にし、平和的な民主化運動に対しても厳しい刑罰を設定していると主張。サウジ政府に改善を求めていた。
在英サウジ大使は24日、声明を出し、アムネスティが事前連絡なしに報告書を公表したことに強い不快感を表明。同法案がテロリストでなく反体制派の摘発を目指しているとのアムネスティの指摘は「根拠がない」と断言。中東の騒乱でテロ拡大の環境が広がっており、国際テロ組織アルカイダへの対抗策が必要だと主張した。【8月1日 毎日】
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サウジアラビアにおける人権問題は、先月明らかにされたドイツからの最新型戦車輸出でも問題になりました。
****ドイツ:サウジに戦車売却計画 メルケル首相は正当性主張****
ドイツ政府がサウジアラビアに対し、戦車200台の売却を計画していることが発覚し、波紋を呼んでいる。ドイツは人権弾圧国家への武器輸出を禁じているが、サウジは民主化デモを鎮圧するバーレーン政府を支援するなど「人権を弾圧する側」との指摘があるためだ。メルケル首相は売却についてノーコメントを通す一方、「サウジは人権分野では問題があるが、イランの核武装に対抗するため、戦略上重要な国」とテレビで語り、事実上、売却の正当性を主張している。

輸出計画は7月上旬、シュピーゲル誌の報道で発覚。同誌などによると、サウジが購入するのは独クラウス・マッファイ社製の最新型戦車「レオパルト2」で、既に数十台は納入済みとの情報もある。野党や人権団体は「ドイツ製戦車が、民主化運動の弾圧に使われる」と批判を強めるが、ドイツ国防筋は毎日新聞に「サウジ支援は、中東地域の安定化に必要」と話す。

ドイツは6月下旬に輸出を決定した際、事前にイスラエルと米国の了承を得たとされる。ドイツと関係の深いイスラエルにとって、サウジは国交を持たない潜在的な敵国だが、核開発疑惑が消えないイランという「共通の敵」を前に、サウジの戦車購入を黙認した格好だ。(中略)ドイツでは、首相や国防相で構成する連邦安全保障会議が武器輸出の可否を決定。イラン、北朝鮮、リビア、ミャンマーなどには輸出禁止だが、サウジは許可されている。【7月13日 毎日】
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最新型戦車が“民主化運動の弾圧”に直接使用されるとは思えませんが、「人権を弾圧する側」への武器輸出は問題なしとは言えません。人権問題より国家利益が優先された結果でもあります。

砂上の楼閣
冒頭、超高層タワー建設計画について「好きにすれば・・・」との感想を述べましたが、そんなしろものを誇らしげに建設する前に、取り組むべき課題が国内にあるように思えます。
そうしないと、いずれ超高層タワーも“砂上の楼閣”になってしまう危険もあります。
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アメリカ  デフォルトは回避したものの、政治機能の硬直化が露呈

2011-08-02 21:33:41 | 世相

(共和党を引っ張る保守系草の根運動「ティーパーティー(茶会)」の集会 “”より By westchesterbuzz  http://www.flickr.com/photos/52095034@N02/5975220031/ )

欧米政治指導者の「日本化」現象
債務上限引き上げによるデフォルト回避で迷走したアメリカ、ギリシャなどの財政悪化国の救済で足並みがそろわない欧州・・・欧米指導者が財政再建など痛みを伴う決断を避け続けていることで、「日本化している」との指摘があります。

****英誌、欧米「日本化」をやゆ…決断嫌がる政治家****
英誌エコノミスト最新号は、オバマ米大統領やメルケル独首相ら米欧の指導者が、財政再建など痛みを伴う決断を避け続けていることで、「日本化している」と批判する巻頭記事を掲載した。
表紙には、米ドルを象徴する緑色の着物姿のオバマ氏、「ユーロ」と書いたかんざしを付けたメルケル氏を描いた風刺画。記事は、「債務、デフォルト(債務不履行)、麻痺する政治」で「日本化」が進んでいる、との見出しで、「決断をいやがる政治家が問題の根元と化し、景気後退の要因となるような行動をとっている」とやゆした。

記事は、現在欧米で進行中の経済危機は「(バブルが崩壊した)20年前の日本で起きたことの再現だ」と警鐘を鳴らした。その上で、「待てば待つほど方向転換が難しくなるのは、日本の政治家が身を以て示した教訓だ」と指摘して、欧米指導者に決断と行動を促した。【8月1日 読売】
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デフォルト、直前で回避
世界経済を人質にとった大統領・民主党と共和党のチキンレースが繰り広げられたアメリカの債務引き上げ問題が、制限時間ぎりぎりで一応の決着がついたことは各紙が伝えているとおりです。

****米債務上限引き上げで合意 デフォルト回避****
オバマ米大統領は7月31日(日本時間1日)、与野党との間で、米政府の「債務上限引き上げ」と「10年で2.4兆ドル(約185兆円)の財政赤字削減」で合意したと発表した。米上院と下院で8月1日にも法案を可決する見込み。
2日までに上限を引き上げなければ、米政府の借金である米国債が史上初めて、利払いが滞る「債務不履行」(デフォルト)に陥る恐れがあったが、直前で回避される見通しになった。オバマ大統領は「デフォルトを回避でき、米国に与えていた危機を終えることができる」と語った。

合意ではまず0.9兆ドルの財政赤字を削減する。さらに米議会で超党派委員会を設け、税制や社会保障制度の改革などで1.5兆ドル分の追加削減を検討する。
債務上限は第1段階で0.9兆ドル幅、第2段階で1.2兆ドル幅を大統領権限で引き上げられるようにする。これで2012年末までは必要資金を政府が借り入れできるようになる。(後略)【8月1日 朝日】
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下院採決には、今年1月のアリゾナ銃乱射事件の被害者ギフォーズ議員も出席して、同僚議員の祝福を受けたそうです。
****米国:不屈、再び議場に 銃乱射被害の議員****
米西部アリゾナ州で今年1月に発生した銃乱射事件で、銃弾が頭部を貫通する大けがをしたガブリエル・ギフォーズ下院議員(41)=民主=が1日、政府債務上限引き上げ法案の採決のため、事件後、初めて下院本会議に姿をみせた。
ギフォーズ氏が議場に入ると、議員らは立ち上がって拍手。ギフォーズ氏は笑顔を見せながら、何度も左手を振り、時折同僚議員らと抱き合った。右半身にはまひが残っている様子だったが、知り合いの議員らとしっかり言葉を交わす回復ぶりを見せた。【8月2日 毎日】
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【「これが私の望んだ合意かというと、ノーだ」】
しかし、ここに至るまでの迷走で、すでに円高が進行するなど大きな影響が出ています。
決定がもつれた背景には、この問題を2012年の大統領選と上下両院選にリンクさせたい共和党が、本格的引き上げを来年に持ち越す2段階引き上げ方式にこだわったこと、共和党内に、昨年の中間選挙で大幅な赤字削減を主張する保守系草の根運動「ティーパーティー(茶会)」の支持を受けて当選した議員が多く、民主党との妥協を拒否し続けたことなどがあげられています。

決定内容は、共和党が目論む「2段階方式」の形で、また、民主党が主張していた増税は盛り込まれなかったことなど、大統領・民主党側が譲歩した形にも見えます。

****大統領選「前哨戦」 オバマ氏譲歩****
2012年の大統領選と上下両院選を見据えた“夏の陣”となった米連邦債務の上限引き上げ協議は、9・2%の高い失業率と巨額の財政赤字で手詰まり感の漂うオバマ政権が、下院で多数派の共和党に追い込まれる形で決着した。

「これが私の望んだ合意かというと、ノーだ」。合意を発表した会見でオバマ大統領はこう述べた。
米ギャラップ社が7月29日に発表した世論調査結果で、オバマ政権の支持率は40%と過去最低を記録し、債務上限引き上げ交渉の長期化に国民の不満はピークに達していた。米国が史上初の債務不履行となれば、その責任を問われ、再選戦略が崩壊するのはオバマ氏の側だった。
それだけに交渉の主導権は共和党が握り、合意した赤字削減の枠組みには、共和党が反対した増税は盛り込まれず、大統領が譲歩する形となった。

そもそも、米国が債務不履行の瀬戸際まで追い込まれたのは、「小さな政府」を掲げる共和党と「大きな政府」を志向する民主党がそれぞれの政治理念に固執し、互いの支持層を財政支出削減の標的にした選挙戦術を展開したからだ。
5月に始まった協議で、共和党は赤字削減の財源として、民主党支持層が多い高齢者向け医療費補助の支出の切り込みを求めてきた。民主党はこれを拒否する一方で、共和党支持層の多い富裕層への増税を主張。互いの票田に手を突っ込む交渉は、法案の採決や、先送りされた具体的な赤字削減の協議に大きな禍根を残す結果となった。

共和党は、昨年の中間選挙で大幅な赤字削減を主張する保守系草の根運動「ティーパーティー(茶会)」の支持を受けて当選した議員たちが、民主党との妥協を拒否し、民主党は同じ選挙を経て左派色を一段と強めている。今後、民主党が死守する社会保障費の削減を共和党が迫るのは必至だ。
「3年以内に(景気)状況を改善できなければ2期目はやらなくてもいい」。就任直後の09年2月に自ら言い放った言葉が今、大統領に重くのしかかっている。【8月2日 産経】
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【「(共和党は)過激な右翼に突き動かされている」】
しかし、共和党側も、保守系草の根運動「ティーパーティー」の支持を受ける議員が、その主張に固執し一切の妥協に応じないことで、政治機能が実質的にマヒする。ひいては誰も望んでいないデフォルトの危機が現実のものとなる・・・という形で、その危うさを露呈することにもなりました。
商工会議所など経済界には「ティーパーティー」への批判が広がっているとも伝えられています。

****増税しようとするホワイトハウスの動きを封じ込めた ****
共和党下院のリーダー、ベイナー下院議長は31日、同僚議員にこう成果を強調した。が、今回の交渉で、ベイナー氏は、いったんはオバマ政権側と抜本税制改革を通じた0.8兆ドルの増収策で合意しながら、茶会勢力の強い反対を前に後退せざるを得なかった経緯がある。一致結束した茶会の強硬さは、いまや共和党指導部を揺るがすほどだ。
民主党のリード上院院内総務は、そうした共和党の現状に「過激な右翼に突き動かされている」と批判を強める。米社会の亀裂は深刻だ。民主党幹部は「約40年議員をやってきたが、ここまで強硬な勢力に対処するのは初めてだ」と語る。【8月2日 朝日】
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今後は、与党と野党からそれぞれ6人ずつの議員が参加して設立される超党派委員会で、追加的な1.5兆ドル分の財政赤字削減策を打ち出すことになっています。
“超党派委では税制の抜本改革を通じた増税と、高齢者や低所得者向け医療制度などの社会保障制度の効率化が議論される。増収策と歳出削減策の両輪の改革で、「バランスのとれた」財政再建策を達成するのが政権側の狙いだ。”【同上】とのことですが、「ティーパーティー」は一切の増税を拒否し大規模な歳出カットを要求しており、今回の対立・迷走は大統領選挙に向けて更に深まりそうな感があります。

ただ、共和党が過激な「ティーパーティー」に引っ張られるほど、大統領選挙はオバマ再選に有利に働くのではないでしょうか。

【「この10年間、われわれは歳入以上に支出してきた」】
なお、問題の本質である「なぜアメリカ財政がここまで悪化したのか?」という点については、オバマ大統領が「この10年間、われわれは歳入以上に支出してきた」と語った言葉に表されています。

****超大国に迫るデフォルト危機、米国の10年間に何があったのか****
世界一裕福な超大国のはずの米国がいま、世界経済を混乱に陥れかねないデフォルト(債務不履行)の瀬戸際まで追い詰められてしまったのは、なぜか。

1930年代の大恐慌以来となる不況、大幅減税、イラクとアフガニスタンの戦費、高齢者向け医療保険(メディケア)の導入――これら全てが、米財政計画を狂わせた。バラク・オバマ大統領が25日の演説で述べた表現を借りれば、「この10年間、われわれは歳入以上に支出してきた」のだ。

■潤沢な財政黒字、10年で天文学的赤字に
米議会予算局(CBO)によると、2000年10月1日時点での米連邦予算は2362億ドル(約18兆円)の黒字で、10年後の2010年には7100億ドル(約55兆億円)の黒字が見込まれていた。
しかし「10年間に制定された法律に経済情勢の変化が相まって、連邦予算の長期的展望は劇的に変わった」と、CBOは10年3月の報告書で指摘している。オバマ大統領が2月の予算教書で示した11年度の財政赤字見通しは、過去最高の1兆6500億ドル(約130兆円)。CBOが下方修正した直近の見通しでも、1兆3000億ドル(約100兆円)に上っている。

■重くのしかかる2つの戦争
与党・民主党の主張はこうだ。01年1月に民主党のビル・クリントン大統領(当時)が退任した際、米財政はまだ黒字だった。その後、共和党のジョージ・W・ブッシュ大統領の政権下で財政状況が悪化し、天文学的な財政赤字に転落したのだ――。
ただ、クリントン政権は前任のジョージ・H・W・ブッシュ大統領(パパ・ブッシュ)の共和党政権による増税策や、インターネットバブル(ITバブル)などの恩恵を受けていた。

01年1月に就任した息子のジョージ・W・ブッシュ大統領は、黒字見通しを理由に、民主党の反対を押しのけて歴史的な大幅減税を断行した。だが、この時すでにITバブルははじけ、同年3月に米経済は景気後退に陥る。そこへ9.11米同時多発テロが起き、米国はアフガニスタンとイラクの戦争に相次いで突入した。

共和党は戦費調達を最優先した。民主党は増税を求めたが、結局は共和党の戦費調達政策に同意した。超党派の米議会調査局(CRS)が今年3月に発表した報告書によれば、11年までに2つの戦争に投入された予算は1兆2830億ドル(約99兆5000億円)にも上る。

08年の世界金融危機の影響で米景気が急激に悪化したことも手伝って、ブッシュ前大統領の在任1期目の終わりに5兆7000億ドル(約442兆円)まで膨らんでいた財政赤字は、09年1月のブッシュ氏退任時にはさらに4兆9000億ドル(約380兆円)が積み上がっていた。(後略)【7月29日 AFP】
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何と言ってもイラク・アフガニスタンでの戦費が重くのしかかっています。
アメリカ財政・ドル基軸体制はベトナム戦争でも大きく揺らぎましたが、超大国アメリカといえども戦争に踏み込むと深手をおうことになります。

近づく「日本売り」へのタイムリミット
一方、「日本化」現象の本家本元である日本は、国債発行などによる国と地方を合わせた借金残高は900兆円に達し、毎年数十兆円ずつ増えています。
しかし、不人気政策の「増税」というハードルを政治が越えられず、この十数年、本格的な財政再建は一向に進んでいません。“刻々と「日本売り」へのタイムリミットは近づいている”【8月2日 朝日】状況です。
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メキシコ「麻薬戦争」  更に悪化、2010年の死者数2万4374人

2011-08-01 21:55:18 | 世相

(覆面の集団は麻薬組織ではなく、麻薬戦争と軍の戦略の失敗に抗議する市民です。5月5日にクエルナバカを出発し、4日かけて首都メキシコ市までの約55キロを歩く形で、沈黙のデモ行進が行われました。横断幕には「これ以上の血を我々メキシコの大地に流すな」とあります。 “flickr”より By The DePaulia  http://www.flickr.com/photos/thedepaulia/5750957111/

人口10万人ごとに22人が殺された計算
これまでもメキシコの「麻薬戦争」については何回か取り上げてきました。
11年3月5日ブログ「メキシコ麻薬戦争  女子大生警察署長亡命 ただ一人の女性警官拉致 頭部を切断された15遺体」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20110305
10年10月26日ブログ「メキシコ「麻薬戦争」 沈静化の兆し見えず」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20101026
10年4月3日「メキシコ  長期化する「麻薬戦争」」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20100403
09年9月10日「メキシコ  長期化する「麻薬戦争」」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20090910

そのいずれもが、“収まる気配がありません”“解決の目処がたたない状況です”“相変わらずの状況”といった書き出しで始まっていますが、きょうも残念ながら同様です。

収まるどころか、カルデロン大統領のもとでの軍を動員しての麻薬組織対策、そうした圧力がかかるなかでの麻薬組織同士の抗争激化によって、犠牲者の数は増加の傾向にあります。
なお、警察は麻薬組織に買収されているか、あるいは怯えているかで、殆んど機能していない状況なのは、これまでのブログで紹介したところです。

****メキシコ殺害死2割増2.4万人 麻薬抗争激化 10年****
麻薬組織間の抗争が激化しているメキシコで、2010年の殺人による死者数が前年比23%増の2万4374人に上る見通しになった。多くが抗争に巻き込まれた犠牲者とみられる。
メキシコの国家統計地理院が28日、暫定値として発表した。07年比だと約2.7倍。人口10万人ごとに22人が殺された計算になる。

最悪を記録したのは北部チワワ州の4747人。治安悪化が著しい同州のシウダフアレスでは、10年1月と10月に銃乱射が起き、児童ら多数が犠牲になった。警官も多数殺害され、なり手が減っている。
メキシコ大統領府の集計では、抗争による10年の死者数は1万5273人だった。だが、地元メディアなどでは「もっと多いはずだ」との批判が出ていた。今回の暫定値が大統領府の数字の修正につながるかは不明だが、確定値が出るとされる9月に向け、議論が起きそうだ。【7月30日 朝日】
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チワワ州の人口は約340万人ですから、人口10万人あたりでは約140人というとんでもない数字になります。
特に治安が悪いシウダフアレスに絞ると更に驚異的な数字になります。

伝えられる事件の犠牲者は、多くの場合1件あたり2ケタの数になります。(2ケタの犠牲者が出ないような事件は、ニュースにもならないということでしょう。)4月には北部の町で地面の穴から百数十もの遺体が発見されています。
先月にも下記の事件が報じられています。

****麻薬がらみの抗争、激しさ増すメキシコ 相次ぐ銃撃戦*****
メキシコの首都メキシコ市の東部郊外の井戸付近で8日、男女11人の銃殺体が見つかった。AP通信によると、何人かは目隠しされ手を縛られ、高性能のライフルで撃たれたとみられ、麻薬組織による犯行の可能性が高いという。

また同日夜、メキシコ北部の都市モンテレイの繁華街のバーにライフルを持った複数の男が押し入り、客や従業員らを銃撃。ロイター通信によると、少なくとも20人が死亡した。銃器の特徴から、これも麻薬組織の犯行と報じられている。【7月9日 朝日】
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日本で男女11人の銃殺体が見つかったり、20人が射殺されたら、その年の十大ニュースに入るような事件になりますが、メキシコではそうした事件が頻発しています。麻薬“戦争”という表現はそうした事態を表しています。

市民の犠牲の増加
特に、麻薬組織の交戦に巻き込まれたり、運び役の確保などのため拉致されたりした末に殺される市民の犠牲の増加が問題となっています。

****メキシコ南東部、武装集団が不法移民を集団誘拐か****
メキシコ南東部で24日、銃で武装した集団が約250人の移民を乗せた貨物列車を止め、子どもを含む不法移民たちが誘拐された。誘拐された人数はわかっていない。

オアハカ州で避難施設を運営するアレハンドロ・ソラリンデ神父が26日に述べたところによると、列車はオアハカ州イステペクを出発して、東部ベラクルス州に向かっていた。ソラリンデ神父によると、列車は武装集団によって約4時間ほど止められた。
「ベラクルス州の駅に到着する前、線路が3台のトラックで封鎖されていたため、運転手が列車を停止させた」とソラリンデ神父は語る。その後武装集団が移民らを連れ去ったという。

米国へ向かう移民の全員が列車を使うとは限らず、車やトラックに乗る移民もいるため、誘拐された移民の正確な人数はわかっていない。
2010年8月にも北東部タマウリパス州で米国へ向かっていた中南米からの不法移民72人が誘拐され殺害される事件があり、メキシコ当局はメキシコの麻薬密輸組織「セタス」に関連した事件だと発表していた。【6月27日 AFP】
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麻薬の運び屋に使用するための集団誘拐ではないかと思われますが、武装集団が列車を止めて集団誘拐・・・というのは、まるで馬にまたがった無法者が列車強盗する大昔の西部劇のような話です。

【「米国には共同責任がある」】
メキシコが麻薬戦争に脅かされている理由としては、麻薬の最大の消費国アメリカに長い国境線で接しているという地理的要因があります。
消費国アメリカも、「麻薬の需要の大半が米国にあることはわかっている。米国には共同責任がある」(クリントン米国務長官)と責任を認め、対策を支援する方針を出しています。
アメリカは麻薬の消費国であると同時に、銃などの武器の供給国でもあり、アメリカに運ばれた麻薬の見返りに武器がメキシコに流入する形で、麻薬組織の重武装化を支えています。

****麻薬対策費、「供給先」米が増額 中米各国の反発受け****
メキシコや中米各国で麻薬組織間の抗争が激化し、巻き込まれる市民の犠牲が増加の一途をたどっている。麻薬の主な供給先である米国への反発が強まるなか、米政府は22日、抗争鎮圧のための資金援助を増やす意向を表明した。

「米コカイン市場350億ドル(約2兆8千億円)の大部分が犯罪組織に流れている。相応の国際支援がなされるべきだ」。CNNによると、メキシコのカルデロン大統領は22日、グアテマラ市での中米治安会議で訴えた。
これに対し、同会議に参加したクリントン米国務長官は「麻薬の需要の大半が米国にあることはわかっている。米国には共同責任がある」として、各国の特殊警察部隊の活動や判事・検察官の訓練資金などとして、前年比約1割増の3億ドルを今年拠出することを表明した。

米国と国境を接するメキシコは、大麻やコカインの密輸の中継地として麻薬組織が急拡大している。
カルデロン大統領は就任間もない2006年12月に徹底摘発を宣言し、兵士や警察官らを投入してきたが、麻薬組織は、米国からの豊富な売上金を背景に軍隊並みに重武装化。指導者を逮捕したり殺害したりしても、組織内の統制がとれなくなって、かえって抗争が激化する悪循環も起きている。

贈賄や脅迫などを背景に地方警察が組織と癒着していることも事態を悪化。メキシコ政府の集計では、犠牲者数は06年12月から10年末までに累計3万4612人に達した。(後略)【6月24日 朝日】
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コカイン、大麻だけでなく、覚せい剤も同様にメキシコから流入しています。
****メキシコで違法薬物原料840トン押収、末端価格2.2兆円****
7月21日、メキシコのケレタロで、末端価格2兆2000億円に上る違法薬物メタンフェタミンの原料物質840トンが押収された。【7月22日 ロイター】
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メタンフェタミンはいわゆる覚せい剤ですが、“末端価格2兆2000億円”というのも驚異的です。
まあ、こうして押収されるリスクを勘案して末端価格が決まっているのでしょうが。

地下に密輸用トンネル
近年では、国境の地下に密輸用トンネルを掘り、大量の麻薬を一度に運び込むケースも目立っているとか。
****密輸トンネルの麻薬、最新機器駆使し水際で阻止****
米南西部へのメキシコからの麻薬密輸が増加し、米国が取り締まりを強化している。
近年は国境の地下に密輸用トンネルを掘り、大量のマリフアナを一度に運び込むケースも目立つ。摘発にあたる国土安全保障省の特殊部隊に同行し、最新機器を駆使して密輸に目を光らせる水際作戦の現場を見た。

◆8か月で30トン◆
麻薬密輸を監視する国土安全保障省の移民・関税執行局(ICE)は昨年11月、サンディエゴ南部で大規模なマリフアナ密輸を摘発し、特殊部隊員がメキシコのティフアナとつながる地下トンネルの中から約15トンのマリフアナを発見した。

2001年の同時テロの後、米国が入国者への所持品検査を厳格化し、陸路や空路での麻薬持ち込みは困難となった。このためメキシコの犯罪組織(カルテル)がトンネルを使うケースが激増。特殊部隊のティモシー・ダースト隊員は「サンディエゴ地区では過去10年で約40もの密輸トンネルが見つかった」と説明する。
同地区でのマリフアナ押収は2010年度(09年10月〜10年9月)は約11トン。ところが今年度(10年10月〜)はすでに約30トンに達する。

多くのトンネルはティフアナの住宅地から掘り進められ、サンディエゴ側にある倉庫内に出口が置かれる。「長いもので全長約800メートル。深さは最も深いもので約30メートル。数人が手作業で掘り進め数か月で開通する」(特殊部隊員)という。設計士ら専門家も関与し、方位磁針で測位しながら正確に出口を目指すとされる。【6月8日 読売】
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アメリカでの麻薬消費が減少すれば、メキシコの麻薬戦争も沈静化するのでしょうが、なかなかそうならないところが現代社会の病理でもあります。

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中国・新疆ウイグル自治区  暴動から2年、続く緊張、相次ぐ事件

2011-07-31 20:39:13 | 世相

(18日に警察署襲撃事件が起きたホータンの市場 旅心がそそられますが、情勢は不安定なようです。 “flickr”より By preston.rhea http://www.flickr.com/photos/prestonrhea/5016411033/ )

建国以来、最大規模の暴動
チベットや内モンゴルと並ぶ中国の民族紛争の火種のひとつが、新疆ウイグル自治区のウイグル族です。

ウイグル族については、“トルコ系の民族で多くがイスラム教を信仰する。人口は約840万人で、中国の少数民族の中では5番目に多い。大半は新疆ウイグル自治区に住むが、カザフスタンなどの周辺国にも居住する。18世紀に清朝の支配下に入り、1930〜40年代に独立の動きが相次いだ。49年の新中国建国とともに統合され、55年に新疆ウイグル自治区が置かれた。同自治区は中国全土の6分の1に相当し、天然資源や希少金属が豊富とされる。”【09年7月6日 毎日】とのことです。

09年6月下旬に中国広東省韶関市の玩具工場で、新疆から出稼ぎ中のウイグル族労働者が漢族に襲われて2人が死亡、漢族を含む118人が負傷する事件が発生。
この事件に対する当局への不満が爆発する形で、同年7月に新疆ウイグル自治区のウルムチなどでウイグル族住民の大規模な暴動、漢族との衝突が起きてから2年が経過しました。

このときの暴動では、当局発表でも200人近く(その4分の3ほどは漢族)が死亡、約1700人が負傷。暴動後、2000人以上のウイグル族が連行され、30人以上に死刑判決が言い渡されており、中国当局が発生を認めた少数民族の暴動としては、1949年の建国以来、最大規模のものとなりました。
死者数については、世界の亡命ウイグル族を組織する「世界ウイグル会議」は「最大3000人」としています。

中国当局側は「国外から指揮と扇動を受け、国内の組織が実行した計画的、組織的な暴力犯罪」と、「世界ウイグル会議」の関与を指摘しています。「世界ウイグル会議」は強く関与を否定しています。
いずれにしても、現地におけるウイグル族と漢族の経済格差、ウイグル族への差別、一方、漢族からすれば、行き過ぎたウイグル族優遇策・・・そうした不満が暴動の背景にあります。

監視カメラ、密告
中国当局は、集中的な経済支援策をとると同時に、厳しい住民監視も続けています。
****死傷者2千人 ウルムチ暴動から2年 緩まぬウイグル族監視****
中国新疆ウイグル自治区で死傷者約2千人を出した2009年夏のウルムチ暴動から、5日で2年がたった。表面上は平穏を取り戻しているものの、当局は依然としてウイグル族監視の手を緩めていない。(中略)

自治区の観光業は昨年7月以降、回復傾向にある。自治区幹部によると、昨年、自治区を訪れた中国人観光客は3千万人。外国人観光客も100万人を超え、外貨収入は3億ドル(約240億円)に達したという。
しかし、自治区幹部は昨年の新疆経済工作会議の席上、「不安全、不穏定、不確定な要素は依然として存在する」と認めている。

当局は、中東・北アフリカで広がる政変を“警告”と受けとめている。19省市が自治区内の個別の都市を支援するプロジェクトに約43億元(約540億円)を投じ、少数民族の就業、教育、医療、居住環境の改善などを進めている。一方で、6万台まで増やすともいわれた市内各所の監視カメラが、ウイグル族の動向に目を光らせている。

中国外務省の洪磊報道官は5日の定例記者会見で「新疆では現在、各民族がかつてない権利、人権を享受している。依然として貧困が主要矛盾であり、分裂勢力も活動を続けている。これが(自治区政府の)新疆での仕事を決める。発展と安定の促進を中心に進めていかなければならない」などと述べ、アメとムチを使い分ける当局の施策を正当化した。【7月6日 産経】
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住民監視体制については、いたるところに設置された監視カメラのほか、密告も奨励されています。
****ウイグル自治区、密告ピリピリ「暴動の話するな****
中国新疆ウイグル自治区のウルムチで2009年7月に発生し、多数の死傷者を出した「ウイグル暴動」から2年余り。
暴動発生当時は数万人の武装警察に加え、軍まで投入された市内中心部は平静と活気を取り戻していた。しかし、市内のいたるところに設置された監視カメラは次々にフラッシュを光らせ、2年前にはいなかった監視員の姿があちこちで目につく。住民同士の“密告”も奨励されているといい、笑顔の陰には、ピリピリした緊張感が漂っていた。

「誰が聞いているか分からない。ここでそんな話はしないでくれ」。ウルムチ市内のバザールで値引き交渉のついでに2年前の暴動についてたずねると、カーペットを売っていたウイグル族住民の商店主(40)はピシャリと話をさえぎって表情を硬くした。
周囲にはウイグル族以外は見あたらなかったが、別の男性は「ウイグル族同士の密告がごく普通になったからだ」と説明した。(中略)

市内には警察の派出所が増え、住民の言動を記録する監視カメラもおよそ4万台設置された。(中略)
ウルムチ市の北部に漢民族、南部にウイグル族という居住エリアの分断もますます進んだ。石油など豊富な地下資源のある新疆ウイグル自治区だが、経済的な恩恵のほとんどは当局と漢民族が享受。ウイグル族には回ってこない。

一方、民族融和を掲げる自治区政府は就職支援などウイグル族への優遇策を打ち出している。
なかでも「反体制的な言動を当局に報告したウイグル族住民には優先的に職が与えられている」(漢族のタクシー運転手)という。市内の監視員の中にはウイグル族の姿も目立っており、ウイグル族同士の相互不信を映す光景となっていた。【7月16日 産経】
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【「美しい顔を見せ、美しい髪をなびかせよう」】
こうした緊張が続くなかで、7月18日には新疆ウイグル自治区ホータンで群衆が警察署を襲撃する事件が起きています。下記AFP記事は、ウイグル族20人が死亡したとの情報も報じていますが、真相はよくわかりません。

****新疆ウイグル自治区で衝突、20人死亡か****
中国北西部、新疆ウイグル自治区の亡命者団体は19日、同自治区で18日に警官隊とデモ隊の衝突があり、ウイグル人20人が犠牲になったと発表した。
中国国営通信は、この衝突を「テロリスト」の攻撃と呼び、群衆がホータンの警察署を襲撃し、警官1人を含む4人が死亡したと報じた。また報道によると、襲撃者らはさらに、にぎわった市場のそばにある警察署に放火したという。

一方、ウイグルの活動家は、一般のウイグル人による怒りの爆発だったと主張し、中国当局が情報を遮断しようとしていると非難。ドイツを拠点とする「世界ウイグル会議(WUC)」は、同自治区の情報筋の話として、治安部隊が14人を撲殺し、6人を射殺したと発表した。(後略)【7月20日 AFP】
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このホータンの事件は、イスラム教徒の女性が黒いベールなどを着用することを地元政府が禁じたことが、引き金の一つだったとの報道もあります。

****新疆の警察襲撃「女性の黒いベール禁止引き金****
中国の新疆ウイグル自治区ホータンの警察署が襲撃された事件で、香港の英字紙サウスチャイナ・モーニングポストは22日、イスラム教徒の女性が黒いベールなどを着用することを地元政府が禁じたことが、引き金の一つだったと報じた。

目撃者は同紙に対し、警察を襲撃したのは20〜35歳くらいのウイグル族の男たちだったと証言。女性が頭にまとう黒いベールや、頭から足元までを覆う黒い服の着用を禁じられたことに抗議していたという。

これに対し、地元政府当局者は同紙に、数カ月前からこうした衣装の着用を控えるよう求めていることを認めた。「宗教過激派に影響されやすく、武器も隠しやすいうえ、治安に悪影響を及ぼす」と説明。「美しい顔を見せ、美しい髪をなびかせよう」という標語を使っていたという。治安当局は事件を「平和的なデモではなく組織的なテロ」とする立場を崩していない。

新疆では、学校や公的機関などでは女性のベール着用が認められておらず、断食中のイスラム教徒にも食事や水をとるよう求めるなどしており、宗教を無視した当局の行為にウイグル族など少数民族の不満が高まっていた。【7月22日 朝日】
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更に、昨日30日には、カシュガルで2人組がトラックを奪って人ごみに突進した後、車を降りて刃物で路上にいた7人を殺害する事件が起きています。

****運転手殺害し突っ込む、通行人に刃物…ウイグル****
新華社電によると、中国新疆ウイグル自治区カシュガルで7月30日深夜、2人組がトラックを乗っ取り、運転手を刃物で殺害後、運転して通行人に突っ込んだ。
さらに刃物を振り回して通行人に切りつけ、運転手を含めて7人が死亡、28人が負傷した。2人組のうち1人は取り押さえられたが、もう1人は死亡した。

また、31日夕には同市内で爆発があり、警官を含む3人が死亡、10人以上が負傷した。刃物で襲われた死傷者がいるとの目撃証言もある。容疑者4人が射殺され、4人が拘束、4人が逃走中という。公安当局が背景を調べている。

同自治区では7月18日、ホータンの警察派出所が襲撃され、人質ら計4人が死亡、容疑者14人が射殺される事件が起きた。中国当局は「組織的なテロ」と批判していた。
香港の人権団体・中国人権民主化運動ニュースセンターは、乗っ取りの2人組はウイグル族で、ホータン事件の報復の可能性があるとしている。【7月31日 読売】
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この事件については、民族対立絡みなのかなどの詳細はまだ不明です。

中国の歴史は、漢族と北方騎馬民族や西域部族との対立・抗争の歴史であり、現在のウイグル族などの民族対立もその一環と言えます。
中国にとっては“分離独立”という選択肢はありませんので、なんとか懐柔して緊張を和らげるしかありません。
そのためには、経済的格差是正の施策だけでなく、自治権の見直し、ホータンの“ベール”に見られるように、各民族の文化的価値観の尊重という側面も必要に思われます。
しかし、文化的価値観尊重、差別解消は単に政府施策だけでなく、国民ひとりひとりの心の内にある問題でもありますので、その是正は非常に困難です。


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中国  高速鉄道事故を巡るメディアの当局批判と、当局の言論統制

2011-07-30 21:33:25 | 世相

(事故現場を見守る住民 “flickr”より By M.I.C Gadget  http://www.flickr.com/photos/micgadget/5974553260/ )

【「人の不幸をあざ笑うような報道」との反発も
中国の高速鉄道事故については、日本でも多くのメディアが連日大々的に取り上げています。
事故原因の“人災的”要素、事故後の証拠隠滅を疑わせるような対応、安全管理に対する基本的姿勢の問題、不十分な救助活動、遺族の原因追究を求める抗議など、論点は多々あります。

そうした問題については、改めてここで取り上げることもないかと思いますし、日本における事故報道について、下記のような中国側の見方もあります。

****<高速鉄道脱線事故>各国メディアも大注目、日本では「大躍進」と嘲笑も―中国紙****
2011年7月25日、中国共産党機関紙・人民日報系の国際情報紙「環球時報」は、浙江省温州市で発生した高速列車追突・脱線事故は各国メディアも高い関心を示しており、特に日本では人の不幸をあざ笑うような報道もあったと伝えた。以下はその内容。

(中略)中国高速鉄道計画に最も敏感に反応しているのは日本だ。アジアの大国に対して抱く自然な競争心、そして高速鉄道技術をめぐる両国間のもめ事がその背景にある。米紙ロサンゼルス・タイムズは16日付で北京・上海間の高速鉄道が開通後頻繁に故障していることについて、「日本メディアを喜ばせていることは間違いない」と報じたが、23、24日の日本の報道はまさにその通りだった。

その内容は、「中国の威信をかけて建設した世界最速の高速鉄道で死亡事故が発生。政権に衝撃」「日本では考えられない事故」「日本の鉄道関係者に戸惑いと驚き」といったものから、毛沢東元主席が1950年代に大量の餓死者を出した農工業の増産政策を引き合いに出し、「大躍進」現象と揶揄するメディアまであった。【7月25日 Record China】
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日本の報道が“人の不幸をあざ笑うような報道”とは思いませんが、ただ、日頃中国に政治・経済的に押されている鬱憤をはらすような、「それ見たことか・・・」といった中国バッシングのように思われる部分があれば、見苦しくならないように気をつけるのもよろしいかと思います。

中国共産党:事故の独自報道自粛を求める通達
きょう取り上げるのは事故を巡る中国におけるメディアの対応、それを統制・管理しようとする当局側の動きです。
事故前から、鳴り物入りで開業した北京・上海間の高速鉄道ではトラブルが相次ぎ、中国国内でも批判が出ていました。これに対し、国営メディアの新華社通信は「陰で笑っているのは誰なのか、あなた方も想像できるだろう」と、日本などのライバルを意識して、国民に忍耐と寛容を求める社説を掲載していました。

****中国高速鉄道、相次ぐ大規模遅延 国営メディアが「忍耐」呼びかけ****
前月30日に開業したばかりの北京と上海を結ぶ高速鉄道で、大規模な遅延が相次いで発生している問題で、中国国営新華社通信は13日、国民に忍耐と寛容を求める社説を掲載した。

北京の交通管理局によると、10日、停電により10便以上に約90分間の遅延が生じた。12日には、同様の理由で29便が遅延。13日には上海発北京行きの列車が江蘇省の駅で故障し、2時間以上の遅延が発生した。
開業から10日余りで大規模遅延が相次いで発生したことで、ネット上にはおびただしい数の批判が書き込まれ、国内メディアも批判記事を展開している。

こうした状況を受け、新華社の社説は次のようにいさめている。「高速鉄道をすぐに疑問視し、故障や事故が起きるたびに大げさに書きたてて注目を集めることは、高速鉄道に自信がないことを示すことになる。それは国益を損なうことでもある。陰で笑っているのは誰なのか、あなた方も想像できるだろう」。最後の文言は、中国の高速鉄道に対抗する海外のライバル会社を指しているのは明白だ。【7月14日 AFP】
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事故の大惨事を発端に噴き出した批判は、当局の思惑を超えて、報道現場やインターネットで広がりを見せました。

****高速鉄道事故、報道現場やネットで批判噴出****
中国浙江省温州の高速鉄道事故を巡って、胡錦濤政権は国内メディアの報道規制を一段と強化しているが、今回の大惨事を発端に噴き出した批判は、報道現場やインターネットで抑えきれないほどに広がりつつある。

事故現場では25日、脱線車両の撤去などを終えて運行が再開。国営の中央テレビも正午のニュースのトップで伝え、復旧ぶりを大々的に宣伝した。しかし、北京の中国紙記者は「復旧を急ぎ過ぎている。政府はきちんと調査を行う気があるのか」と疑問を呈する。

胡政権は事故発生翌日の24日、国内の新聞各紙に対し、今回の事故の独自報道自粛を求める通達を出した。だが、一部の中国紙は25日、事故の原因究明や責任追及を求める社説や評論を掲載し、当局の通達に反発する動きも出ているようだ。【7月25日 読売】
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上記記事にもあるように、こうした批判的なメディア報道を抑制すべく、中国共産党中央宣伝部は格メディアに対し、独自報道を控えて国営新華社通信の記事を使うように、また、プラス面のニュースを中心に報道するように、国内メディアに通知しています。

****中国高速鉄道事故 「プラス面のみ報道を」メディアに通達****
取材合戦過熱、責任追及を懸念
中国で新聞やテレビなどを管轄する共産党中央宣伝部が25日、国内の各メディアに対し浙江省温州市で起きた高速鉄道事故について、「政府の懸命な人命救助や市民による自発的な献血活動など、プラス面のニュースを中心に報道するように」という趣旨の通達を出したことが分かった。中国のメディア関係者が産経新聞に明らかにした。報道合戦が過熱し、政府の責任を追及する世論が高まることを懸念したためとみられる。

同関係者によると、通達は各省・市の宣伝部を通じて各メディアに伝えられた。「高速鉄道の技術問題について論評しない」「事故原因の分析については政府の発表内容と一致すること」「インターネット上の情報や書き込みを転電しない」などの注意事項が含まれているという。中国ではこれまで、大きな事故が発生した際、各メディアは独自に取材せず、国営新華社通信が配信した原稿をそのまま使用することが多かった。

しかし今回の事故は、中国版新幹線が北京−上海間で開通した直後というタイミングで起き、国民の関心も高い。このため事故が発生すると、宣伝部の指示を待たずに、全国から計100社以上の新聞、テレビ、ネットメディアが現場に記者を派遣、激しい取材合戦を繰り広げてきた。

北京紙「新京報」「京華時報」などの一般紙は連日、数ページの特集を組み、事故の詳細や原因分析などを報道。その中には、鉄道省など政府の責任を暗に指摘する内容もみられた。また、各メディアで死者数のばらつきがあったのも、記者たちが独自取材をしていたためともいえる。

政府の宣伝機関と位置付けられているはずの中国メディアが、国家権力と“対峙(たいじ)”する場面もあった。鉄道省の24日の記者会見で、中国人記者が同省高官に対し「現場の救出活動が終了した後で、生存者が見つかったというのはどういうことなのか」と、当局のずさんな救出活動について厳しい質問を浴びせていた。

共産党宣伝部の通達を受けて、報道合戦は沈静化するとみられるが、「一時的におとなしくするだけ。今後も(独自報道は)繰り返されるだろう」と指摘する中国メディア関係者もいる。【7月26日 産経】
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【「ガス抜き」】
その後も、中国各紙は批判的な「独自報道」を止めていませんが、「批判は鉄道省に集中している」とのことで、共産党政権や一党独裁批判に直接つながらないように“ガス抜き”との見方もあるようです。

****批判は鉄道省に集中・・・当局「ガス抜き」狙う****
中国浙江省温州での高速鉄道事故で、中国各紙が、「独自報道」を禁じる当局の指示に抵抗して、事故処理の不手際や情報公開の不十分さを批判する論評を連日掲載している。
当局も「ガス抜き」として、一定の批判は容認する考えだが、共産党政権や一党独裁批判に直接つながる報道は断じて許さず、締め付けを強める構えだ。

「北京青年報」は27日、現場で壊して埋めた車両を掘り返したことについて、「事故原因の細部を知るのに役立つはずのものが破壊されてしまったかもしれない。事故の真相究明は一段と難しくなった」と非難。「21世紀経済報道」も、「中国の鉄道は『独立王国』だった」と批判、日本の国鉄民営化も例に挙げて鉄道省の改革を訴えた。

だが、関係者は「批判は鉄道省に集中している」と指摘する。実際、遺族の一部が高速鉄道の温州南駅で抗議行動を起こし、真相究明を求めて政府批判を繰り広げているが、中国各紙はこれを黙殺している。【7月27日 読売】
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言論統制の締め付け
そうしたなかで、当局批判を試みるメディアと、これを統制・管理しようする当局側のせめぎ合いをつたえるニュースが、いくつか報じられています。

****<高速鉄道脱線事故>看板アナが当局批判、国営テレビ番組が放送停止か―中国****
2011年7月27日、中国浙江省温州市で起きた高速鉄道の追突脱線事故を受け、激しい当局批判を展開した中国中央テレビ(CCTV)の看板キャスター、白岩松(バイ・イエンソン)氏の番組が放送停止処分を受けた疑いが広がっている。米華字サイト・多維新聞が伝えた。

白氏は25日、生放送の報道番組「新聞1+1」で、中国鉄道部の王勇平(ワン・ヨンピン)報道官が「中国の高速鉄道技術は先進的で、基準を満たしている」と言った言葉に対し、「では、運行管理も先進的なのか?監督体制は?人命尊重は?細かい部分まですべて先進的だと言えるのか?」と激しく批判。さらに、中国の高速鉄道の現状を指し、「健康な人に対して、例えば40歳の人の心肺機能が20歳のようだと褒めるだろう。だが、これが知的障害だったら…健康だと言えるだろうか?」と疑問を呈した。

この鋭い指摘に対する視聴者の反響は大きかった。ネットユーザーも「マスコミの人間が言うべきことを言ってくれた」と大絶賛。だが、世論への影響を懸念したCCTVの上層部が同番組の放送停止を決定したとの噂がすぐにネット上に流れた。放送翌日の26日には急きょ別の番組に差し替えられたことで、噂はさらにエスカレート。一方で、内部事情を良く知る人物は「噂はデマ」だとマスコミに語っている。【7月29日 Record China】
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****言論統制が本格化、中国紙に紙面差し替え命令****
23日に中国浙江省温州で起きた高速鉄道事故で、30日付の一部中国紙が紙面の大幅差し替えを命じられたことがわかった。
前日の29日は初七日にあたり、大規模な追悼行事が行われたが、共産党中央宣伝部が世論を刺激して政府批判が高まることを警戒し、本格的な言論統制に乗り出したものとみられる。【7月30日 読売】
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****鉄道省批判の中国国営TV局制作者、停職処分に****
香港紙「東方日報」は30日、中国浙江省温州で起きた高速鉄道事故で、鉄道省を批判した中国国営中央テレビの報道番組制作者、王青雷氏が停職処分になったと伝えた。

王氏の担当番組のキャスターは26日、高速鉄道について「安全でないなら、これほどの速度が必要か」と発言。鉄道省が事故車両を埋めた問題も指摘していた。
また、王氏はミニブログに「強権を恐れずに誤りを批判する記者が一人でもいれば、その国はまだ良心がある」と書き込み、多くのネットユーザーの支持を得ているという。【7月30日 読売】
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日本的常識で言えば、マスメディアの健全な政府批判は民主主義にとって不可欠なもの(弊害も多々あるでしょうが)ということになりますが、政治体制の全く異なる中国でどこまで当局批判が許容されるのか、こうした批判を辞さない姿勢が他の問題でも今後さらに強まるのか・・・興味がもたれるところです。
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ノルウェー  「反イスラム、移民排斥」を主張する連続テロ容疑者と欧州社会の右傾化の流れ

2011-07-25 22:00:53 | 世相

(ノルウェー・オスロの街かど ノルウェーでは、イスラム系を中心にした難民は4万人、難民申請者は1万2千人にのぼるとか “flickr”より By oezguer http://www.flickr.com/photos/oezguer/2735783951/

【「ノルウェーは男女平等の国だが、異なる考えを持つ移民を受け入れることはできない」】
ノルウェーで22日に起きた連続テロ、特に、若者500人がサマーキャンプに集う逃げ場のない小島で、狂気に駆られた一人の男が約1時間半にわたって銃を乱射し続け、85人もの死者を出した南部ウトヤ島の銃乱射事件は衝撃的でした。

逮捕されたアンネシュ・ベーリング・ブレイビク容疑者(32)は、約10年の歳月をかけて書き足された1500ページ以上に及ぶ「宣言」をインターネット上に公開していました。そのなかで、殺人を「十字軍」になぞらえ、自らを「モンスター」と呼んでいます。

いつの時代、どこの社会にも狂気の「モンスター」は存在しますが、問題はそうした「モンスター」が個人的資質によって突然変異的に表れるのか、あるいは「モンスター」を生みだすような社会的土壌があるのか・・・という点です。

右翼過激思想に傾倒し、自ら「キリスト教原理主義者」とするブレイビク容疑者は、「宣言」のなかで、22日の犯行について、数世紀に及ぶイスラムによるヨーロッパの植民地化を終わらせるため、それに必要な革命を起こすために準備した「先制攻撃だ」と記しているそうです。

こうした「反イスラム、移民排斥」の考えは、欧州全土に広がる同様の流れと軌を一にするもので、欧州社会全体の右傾化の流れが彼の狂気を増長・先鋭化させていったことが想像されます。

****ノルウェー連続テロ 警官姿、若者集めて乱射 「平和の国」に移民排斥の影****
・・・・湖に飛び込んで逃げる若者を容赦なく撃ち殺した同容疑者は警察の取り調べに熱心に自分の思想信条を語っており、警察は「右翼思想を持ったキリスト教原理主義者だ」と発表した。しかし、これまでのところ同容疑者の宗教的背景は明らかになっていない。

ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)「フェイスブック」に掲載された写真や、英思想家J・S・ミルの警句を借用した「信念を持った1人の人間は利益にしか関心を持たない10万人に匹敵する」との書き込みからは自己陶酔的傾向もうかがえる。
                 ◇   ◇
ノルウェーでは今年に入って右翼過激派が増えたといわれるが、中心的指導者は見当たらず、その活動が深刻な社会問題になっている様子もない。
一方、イスラム系を中心にした難民は4万人、難民申請者は1万2千人にのぼる。これに対し、議会第2党の進歩党が「ノルウェーは男女平等の国だが、異なる考えを持つ移民を受け入れることはできない」と反移民政策を唱えるなど、ノルウェー社会とイスラム系移民社会の溝が目立ち始めている。
警察は「それが動機につながるかわからないが、容疑者には極右と反イスラムの政治的特徴がある」と分析している。
                 ◇   ◇
欧州は労働力不足を解消するためイスラム系移民を積極的に受け入れてきたが、2008年の金融・経済危機で失業率が上昇。財政状態も悪化して「出生率の高いイスラム系移民に失業保険や年金を奪われる」との不安が広がっている。
こうした不安をあおる形でイスラム系移民排斥を唱える極右政党がオランダやフランスで台頭。人権意識が高い北欧でも極右のデンマーク国民党が政権に影響力を行使するようになり、スウェーデンでは昨年の総選挙で、民族衣装ブルカをまとったイスラム系女性が年金受給に殺到する映像を作ったスウェーデン民主党が20議席を獲得し、初の国政進出を果たしている。【7月24日 産経】
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極右勢力が唱える移民排斥は失業にあえぐ市民の不満の受け皿にもなっている
ノルウェーのストルテンベルグ首相は23日の会見で「他国に比べ、ノルウェーの極右過激派の問題は大きくはない」と述べ、今回の連続テロが、09年にはソマリアなどから欧州で3番目に多い1万7200件の難民申請があったように、「開かれた社会」を自任してきたノルウェーの意表をついた事件だったことを言外ににじませています。

ただ、欧州全体では「反イスラム、移民排斥」の流れが顕著に認められ、ノルウェーにおいてもイスラム系移民の増大とともに、文化的・経済的軋轢が大きくなっていたのではないかとも思われます。

****ノルウェーテロ:「寛容な社会」憎悪か*****
「平和の国」ノルウェーを襲った22日の連続テロ事件は、当初はイスラム過激派の犯行を疑う見方もあった。だが、逮捕されたのは逆に欧州で増加するイスラム系移民に反発する極右思想の青年だった。

◇容疑者は極右青年
ノルウェーからの報道によると、警察当局に逮捕されたのはアンネシュ・ブレイビク容疑者(32)。インターネットへの投稿や地元メディアの報道から浮かび上がる人物像は、移民に寛容な北欧型の「開かれた社会」に反発を増幅させていった姿だ。自らを「愛国主義者」などと評し、その言動には自己陶酔の世界さえ垣間見える。
(中略)

◇移民排斥論、欧州で台頭
欧州諸国では近年、長引く経済の低迷で社会や政治が右傾化している。背景にあるのは、移民排斥の思想だ。
移民は70年代、発展を支える「労働力」として歓迎された。だが、経済が失速すると、安い賃金で働く移民は欧州白人の職を奪う「重荷」に変貌した。極右勢力が唱える移民排斥は失業にあえぐ市民の不満の受け皿にもなっている。

欧州連合(EU)の統計によると全加盟27カ国で08年、中東やアフリカ系など計380万人の移民を受け入れた。この流入が加盟国の人口増につながり、労働力人口を支えた。欧州社会の発展・維持に移民は「不可欠」だ。

問題は、欧州が移民をいわば「出稼ぎ労働者」として受け入れてきたことだ。だが、移民は生活の場を欧州に移して定住するようになった。母国から家族を呼び寄せ、独自のコミュニティーを形成するに連れて文化的、宗教的な摩擦が顕在化。経済の悪化やイスラム過激派によるテロなどが追い打ちをかけ、キリスト教を伝統とする欧州社会とイスラム系移民の摩擦や移民排斥論に結びついた。

反移民のうねりは「寛容」が伝統の北欧とて例外ではない。4月のフィンランド総選挙では民族主義政党が議席を6倍に増やした。キャメロン英首相やメルケル独首相も最近、自国の多文化主義を「失敗」と言及した。
また、オランダでは6月末、動物愛護を名目に、食肉処理する家畜を事前に失神させることを義務付ける法案が、賛成多数で下院を通過した。イスラム教やユダヤ教では、意識のある家畜を処理しなければならず、「移民排斥につながる」と両教徒は反発している。【7月24日 毎日】
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【「文化面での保守主義を持つ」理想の国、日本
ブレイビク容疑者はイスラム批判のインターネットサイトに熱心に投稿しては「現在の政策は社会主義と資本主義の争いではなく、愛国主義と国際主義の戦いだ」などと主張しています。
投稿の一つでは、日本と韓国について「多文化主義を拒否している国」と言及。日本などを反移民、非多文化社会の模範のようにたたえています。

****ノルウェーテロ容疑者、「理想の国」日本や韓国****
アンネシュ・ブレイビック容疑者は、22日の犯行直前にインターネットに投稿した「マニフェスト」の中で、「文化面での保守主義を持つ」理想の国として、日本や韓国を挙げていた。イスラム系移民が少ないため、だという。
また、「いま、最も会ってみたい人々」としてローマ法王とロシアのプーチン首相を挙げた。「次に会ってみたい人々」としては日本の麻生太郎・元首相など4人を挙げた。【7月25日 読売】
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狂気の「モンスター」に日本を“理想の国”として称賛されては、困惑します。
ただ、実際のところ移民を殆んど受け入れていないことも事実です。
大震災でも「フクシマ」でも揺るがない社会の安定性は、そうした閉鎖性によって維持されている社会の等質性に大きく依存していると思われますが、少子高齢化・人口減少が進行するなかでそうした閉鎖性を今後も維持できるのか、あるいは、本来どうあるべきなのかという議論が今後必要とされています。

イスラム教徒に対する誤った理解
なお、今回欧米メディアが当初、イスラム過激派の犯行を疑う報道を繰り広げたことに対してイスラム圏で反発が出ています。

****ノルウェーテロ:イスラム圏で西側報道に反発*****
・・・・ノルウェーはアフガニスタンに派兵しており、国際テロ組織アルカイダなどが批判してきた。英BBCや米ニューヨーク・タイムズ(電子版)などの主要メディアは、連続テロの発生から数時間の間は「イスラム過激派犯行説」をほのめかす報道ぶりだった。(中略)

しかし、逮捕されたアンネシュ・ブレイビク容疑者(32)は反イスラム的な傾向のあるキリスト教原理主義者とされる。簡易ブログ「ツイッター」では容疑者逮捕後、「西側の報道はイスラム非難に偏向している」といったイスラム圏からの書き込みが目立った。
エジプトのイスラム過激派専門家、ムニール・アディーブ氏は「今回の事件報道は西側諸国にイスラム教徒に対する誤った理解があることを示した」と述べた。【7月23日 毎日】
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ソマリア  南部2地域に飢餓宣言、今行動しないと地域拡大の恐れ

2011-07-22 21:00:41 | 世相

(著名な写真家James Nachtwayの作品 前回1992年のソマリアでの飢餓の際、死んだ息子を埋葬する母親 “flickr”より By Photo Tractatus  http://www.flickr.com/photos/photo-tractatus/4698209537/ )

過去20年間のアフリカで最悪の食糧危機
東アフリカの干ばつについては、7月11日ブログ「東アフリカ 過去60年で最悪の干ばつ、避難先で餓死者」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20110711)で取り上げましたが、情況は芳しくないようです。
国連はソマリア南部2地域に「飢餓」を宣言しました。

****ソマリア南部2地域に飢餓宣言、国連****
国連は20日、ソマリア南部の反政府勢力が制圧している2地域で、飢餓が発生していると宣言した。最大で35万人が、過去20年間のアフリカで最悪の食糧危機の影響を受けている。
ソマリアを含む「アフリカの角」と呼ばれる地域全体では、干ばつの被害を受けた人は1000万人を超えている。

国連人道問題調整部(OCHA)によると、国連が飢餓を宣言したのはソマリア南部のバクール地方とシェベリ川下流(地方。どちらも国際テロ組織アルカイダの影響を受けた反政府イスラム武装勢力アッシャバブの支配下にある。
関係者らは、緊急に対策をとらなければ、飢餓地域は拡大する恐れがあると警告している。【7月20日 AFP】
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1991年以来、内戦がほとんど絶え間なく続き、実質的に無政府状態のソマリアは、これまでもたびたび干ばつに見舞われています。そのため、国民の4人に1人が国内避難民または国外への難民になっていると推定されています。

“現在、危機的な状態に陥っている人はソマリアの人口の半分に当たる370万人で、その数は今年の初めの240万人から、35%の増加となっています。また、危機的な状況にある人々の7割は、ソマリア南部に住んでいます。ソマリア南部では55万4000人の子ども、つまり、3人に1人が栄養失調となっています”【国連UNHCR協会ホームページ】

なお、国連の「飢饉」宣言は、(1)20%以上の世帯が極端な食糧不足に直面している (2)急性栄養失調の状態にある子どもが30%を超える (3)1日につき粗死亡率(Crude Mortality Rate)が1万人中2人に達する。(注:大多数の途上国では1万人に対して0.5人)という3点を基準に行われています。
ソマリア南部の一部ではすでに、栄養失調率は50%を超えていると伝えられています。

今回のソマリアの飢餓については、“エチオピア(2001年)、スーダン(1998年)、ソマリア(1991)年と同様レベル、またはそれを超えるレベルの飢饉と言われています。しかし、地域的な広がりとその深刻さを考えると、このたびの飢饉は1991年以来最悪の状態と言えます” 【国連UNHCR協会ホームページ】とのことです。

【「国連の飢饉宣言は世界に対する緊急の警鐘だ」】
国連のソマリア人道調整官マーク・ボーデン氏は、「いま行動を起こさなければ、農作物の不作と感染症の流行によって、飢饉は2カ月以内にソマリア南部の8つの地域すべてに拡大するだろう」と警告しています。

****帰ってきたソマリア飢饉、驚愕の死亡率****
国連は支援団体が安全に活動できるようイスラム過激派と対話中だが、アメリカの対テロ法が支援を阻む

国連は7月20日、21世紀初となる飢饉の発生を宣言した。場所はソマリア南部の2地域。深刻な干ばつと内戦、食料価格の高騰が相まって、多くの人が飢えに苦しんでおり、死亡した人も数万人に上る。

国連のソマリア人道調整官マーク・ボーデンによれば、飢饉宣言が出された南部のバクールとシェベリ川下流地域の現状は、国連による飢饉の定義以上に深刻で、ソマリアの人口の半数に相当する370万人が危機的状況にある。しかも、飢饉は今後さらに拡大し、ソマリアやエチオピアなどを含む「アフリカの角」の一帯では、干ばつ被害に苦しむ1100万人をめぐる状況は今後さらに悪化するという。

「いま行動を起こさなければ、農作物の不作と感染症の流行によって、飢饉は2カ月以内にソマリア南部の8つの地域すべてに拡大するだろう」と、ボーデンは語った。そして、雨季の10月に雨が降ったとしても、次の収穫があるとされる今年末までは状況が改善する見込みはない、と付け加えた。

繰り返される90年代初頭の悲劇
子供の急性栄養失調率が30%を超え、1日に1万人に2人が死亡している場合に、国連は飢饉を宣言する。ソマリア南部の一部ではすでに、栄養失調率は50%を超え、死亡率も国連が定める条件の3倍以上。「衝撃的な数字だ」と語るボーデンは、飢饉対策として今後2カ月間だけで3億ドルの援助が必要だと訴えた。
 
「国連の飢饉宣言は世界に対する緊急の警鐘だ」と、イギリスを拠点とする救援支援団体オックスファムの広報官アルン・マクドナルドは言う。「危機は数カ月前から始まっていたが、諸外国の篤志家や各国政府の反応は遅く、不十分だ。救助資金はまだ8億ドルも不足している」
ヒラリー・クリントン米国務長官は、ソマリア及び、毎日推定3500人のソマリア人難民が流入しているエチオピアやケニアに対して、2800万ドルの追加支援を行うと表明した。

ソマリアでは、90年代初頭にも飢饉で20万人以上が死亡した過去がある。「現在の(栄養失調)率は、91〜92年と似たような水準だ」と、ボーデンは言う。「今回の飢饉は過去20年間のソマリアで最も深刻な事態だ」
90年代初頭の危機の際には、アメリカは国連平和維持部隊の一部としてソマリアに介入。米軍ヘリ「ブラックホーク」が首都モガディシュで撃墜され、米兵18人が殺害されるという不名誉な事件につながった。

ソマリアは今も混乱状態にある。政府は十分に機能しておらず、国際社会の支援を受けた暫定政権と、アルカイダとつながりがある過激派組織アルシャバブの衝突が続いている。
飢饉が宣言された2つの地域はどちらも、アルシャバブの支配下にある。アルシャバブは09年後半以降、占領地域内に西側諸国の救援団体が立ち入るのを禁じてきた。今月になって禁止を解除したが、事態はすでに悪化していた。【7月21日 Newsweek】
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【「いかなる武装組織にも支援物資は渡さない」】
上記記事にもあるように、支援活動を阻んでいるのが、過激派組織アルシャバブによる実効支配の現実です。

****ソマリア飢饉、支援に「武装勢力支配」の壁****
国連世界食糧計画(WFP)と米国際開発局(USAID)は21日、国連が飢饉を宣言したソマリア南部2地域について、支援物資が必要とする人々に確実に届くことが確認され次第、食糧支援を開始すると表明した。
国連食糧農業機関(FAO)によると、ソマリアではここ数か月で飢餓による死者が数万人に上っている。

国連が20日、飢饉が起きていると宣言したバクール地方とシェベリ川下流地方は、イスラム過激派組織アルシャバブが実効支配している。アルシャバブは2010年初頭、外国の支援団体に対し2年間の活動禁止令を出し、WFPもソマリアからの撤退を余儀なくされていた。

今月になって、アルシャバブは深刻な干ばつに苦しんでいる人民を助けたいとして活動禁止令の解除を発表し、支援を要請。これを受け、各支援団体はソマリアでの支援活動再開を検討していたが、暫定政府に任命されたばかりの女性・家族問題担当相が21日、アルシャバブに誘拐される事件が発生。武装勢力支配地域での支援再開の難しさが浮き彫りになった。
USAIDのラジブ・シャー長官は21日、「彼ら(アルシャバブ)が約束をきちんと守るかをまずは注視したい」と述べた。

またWFPは同日、まず首都モガディシオに緊急支援物資を空輸し、南部地域へと支援を拡大する計画を発表。広報のグレッグ・バロウ氏はAFPに対し、「いかなる武装組織にも支援物資は渡さない」と述べ、現在、支援物質を送り届ける方法についてほかの国連組織と協議中だと説明した。

なお、国連児童基金(ユニセフ)は前週、アルシャバブ支配下にあるバイドアに初めて支援物質を空輸した。地元組織との緊密な連携のもと、物資が必要な人々に届いているかも監視されたため、支障なく行われたという。【7月22日 AFP】
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海賊対策にとどまらず東アフリカ・中東地域に広く関与する視野を
ソマリアは“海賊問題”が国際的関心事となっており、日本を含む各国が海賊対策の艦船等を派遣していますが、海賊問題の根幹にはソマリア本土の無政府状態・混乱があること、その陸上の問題に手をつけない限り海賊問題の解決もないことは国際的に共通の認識となっています。

P3C哨戒機2機、護衛艦2隻を派遣している日本は、ソマリアに近いジブチに新活動拠点(基地)を設けて海賊問題対応にあたっています。

****ソマリア海賊対策、手詰まり 自衛隊はジブチに新拠点****
アフリカ・ソマリア沖の海賊対策強化のため、自衛隊がジブチに新活動拠点(基地)を設けたことは、同国政府だけでなく同国に駐留する米仏両軍にも歓迎されている。しかし問題解決までの道のりは依然、遠い。根源的原因であるソマリアの無政府状態に収束のめどが立たないからだ。日本は「出口戦略」のないまま、複雑な地域問題への関与を深めたと言える。(中略)

海賊の襲撃は、自衛隊などが警戒監視、護衛活動を展開するアデン湾の長さ約900キロの「回廊」では減っている。しかし「そこから追い出された分がアラビア海やケニアの沖に拡散している。『いたちごっこ』の感がある」(日本船主協会会長の芦田氏)。
国際海事局(IMB)によると、ソマリアの海賊による襲撃の件数は、2008年の111件から09年には217件とほぼ倍増し、昨年も219件と高水準が続いている。

米議会調査局(CRS)の報告書は「海賊行為の増加は、戦乱が続くソマリアの不安定と法の支配の不在の結果だ」と分析する。自衛隊のほか、欧米諸国、中国、インドなどもアデン湾に艦艇や哨戒機を派遣しているが、「(問題解決の)答えは陸上にある」(カスパール駐ジブチ仏軍司令官)というのが関係各国の共通認識だ。

ユスフ外相は(1)ソマリアの暫定連邦政府(TFG)への支援(2)国連平和維持活動(PKO)部隊の派遣(3)身代金の送金・洗浄ルートの断絶、などが必要だと説く。各国が陸上部隊を派遣することが前提となるが、1993年に兵士18人を戦闘で失った苦い経験を持つ米国は否定的だ。
結局、「海賊は減らない。むしろ増え続ける」(ユスフ氏)というのが、地元の見方だ。米国も、ソマリア問題の解決には「1世代はかかる」(フランケン・「アフリカの角」連合統合任務部隊司令官)と見ている。

■役割拡大、他国から期待
日本政府は開所式の翌日、P3C哨戒機2機、護衛艦2隻という現在の態勢のまま、自衛隊の派遣をさらに1年延長することを閣議決定した。
しかし、芦田氏は「海上警備の広域化」を求め、補給艦の追加派遣を要望している。海上自衛隊は「その余裕はない」という立場で、「脅威の拡散」に対応する態勢はできそうにない。
いずれにしろ、日本は事実上の「基地」までつくって海賊問題に本格的に関与する姿勢を示した以上、簡単に撤退するわけにはいかなくなった。

新美潤・駐ジブチ日本大使も「撤収する『大義』は当面見つからないのが実情だ。問題解決の即効薬も万能薬もない現状では『根治療法』として対ソマリア支援を行いつつ息の長い努力を続けていくしかない」と話す。
さらに「問題が長期化する可能性が高いことを考えれば、自衛隊の海賊対処活動を強化・拡充することには慎重な判断が必要だ」と指摘。「出口」が見えない現状では自衛隊の役割拡大に乗り出すべきではないとの考えを示した。

一方、米軍のフランケン司令官は「特定地域に限定して活動を考えることが許される時代はすでに過去のものとなった。日本の国民も今回開設した基地を考えるにあたって、そういう視野をもった方が良いかもしれない」と語り、日本が単に海賊対策にとどまらず東アフリカ・中東地域に広く関与することに期待感を示した。ユスフ外相も、独立間もない南スーダンへの自衛隊派遣について「それは良いことだ」と歓迎する考えを明らかにした。【7月18日 朝日】
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“撤収する『大義』”を探しているような日本政府ですが、“日本が単に海賊対策にとどまらず東アフリカ・中東地域に広く関与する”方向で、前向きに見るべきではないでしょうか。
もちろん、アメリカですらしり込みしているソマリアへの即時のPKOなどは現実的には困難でしょうが、今回の飢餓対応にジブチの新基地活用は図れないものでしょうか。

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