硬派な生き方を選択しながらも、都会の生き方を忘れずに暮らす「頑固なボス」の痛快辛口日記

誰かがやらなければならない社会貢献がある。利他主義を貫く信条を主張するボスの独り言!

引っ越し…

2017-06-27 15:29:47 | 自叙伝

幼稚園1年目…年少組の時に 家族の一大イベントの引っ越しがあった。

それまでと同じ炭鉱のマチ…美唄という町だ。

町の中心から東へ進み、旭台というヤマに長屋がへばりついたような 何とも貧しさを醸し出すような集落だ。後に感じる事は、旭台で良かった! と痛感する事になる。

 

この地域は、炭鉱が基幹産業のため集落ごとに名称があり それぞれ旭台 常盤台 清水台 月見台 桂台 鴻之台…と「台」が付くのが特徴だ。

 

一方で炭鉱には列記としたヒエラルキーがあり、採炭や保安など職種によって住む長屋や長屋所在の場所も違う。

私の家は、隣の家の会話が聞き取れるほどの薄壁…外にある共同便所 そして水源の「湧き水」だ。水道なんてものはない…年中湧き出る天然の水に粗悪な管があるだけ。

私の引っ越した先の長屋は、炭鉱から一番近い粗末で狭い6軒長屋の真ん中。家族5人が暮らすには恐ろしく窮屈だ。

採炭でもランクの低い転住者は、炭鉱から近い長屋へ住まされることを知ったのは ずいぶん後のことだ。

 

今の間取りで言うと…2Dほどか。K=キッチンは 「流し」と言われる粗末な台所で、大きな水甕(かめ)が狭い場所にのさばっていた。生水のために1日で藻が浮かぶ…

毎日学校から帰ると、湧き水からバケツで かめ一杯になるまで水を補給しなければ生活水が不足する訳だ。当然のように帰りの早い小学校低学年の私のシゴトになる…

 

これはまだ良い方で、難儀なのはまず石炭だ。

炭鉱ではストーブの燃料である石炭は支給されるが、無料ではない。1トンが5円…しかし、石炭を補完する納屋や小屋が長屋に設置されている訳ではない。

各自の家で長屋の裏手に小さな小屋を作り、石炭を届けてもらってそこへ移すのが子供にとっては何せ重労働だ。平均で1トンだが、家族の多い我が家は必ずと言って2トン注文して運ばれてくる。

 

小屋へ石炭を入れて終わりではない…ストーブ横の床下にある「石炭ムロ」と呼ばれる場所へ運んでおく必要がある。一斗缶に針金でもち手を付けた入れ物で、裏手から家の表まで周り 石炭をこぼさないように「ムロ」へ補充する。

冬はさらに過酷で、裏手の石炭小屋の石炭が凍っており まずはツルハシで砕く必要があり手間が倍かかる。

当然のように、石炭ストーブは「あく=灰」が大量に出るので、「あく投げ場」という場所へ随時捨てる必要がある。

 

とにかく子供が小さかったり、女の子しかいない家が羨ましかった…それは日常的に与えられる仕事もそうだが 長い冬に実感する。

屋根の雪降ろし…加えて、その雪を別の場所へ雪ソリで運ぶことだ。辛いのは、夜中にシンシンと降る雪に天井(屋根)が悲鳴をあげる…ミシ キシ・・・と。

爆睡していても親父にたたき起こされ、軍手一枚で数時間の雪投げ…これが一番つらい。正直 近所を見れば、親父さんが率先してやっている事だが 我が家は子供の頃から私たち子供と母親が主体になってやっていた。

 

炭鉱は、24時間体制(3番交代制)の操業のため、1番方 2番方 3番方のローテーションがある。3番方は、夜10時頃に家を出るために一般的な夕食から 一番遊びたい時間やTVを観たい時は、物音を立てられない。(親父が寝ているから)

という事は、2番方の週が子供にとってサイコーに幸せな1週間になる。午後2時頃に家を出て、帰宅するのは子供らが寝ている時だからだ。

 

炭鉱にも様々な家庭があり、そこには壮絶な人生がある。

 

昭和43年に全国に知れ渡る大事故が起きた…美唄炭鉱二坑ガス爆発である。

戦後に残る炭鉱事故だった…私の同級生の父親も数名命を落としているが、結局救出できずに坑内に大量の水を坑口を密閉するという残念な処理だった。

事故のあった夜…たしか6時半頃だった。TVに速報スーパーが流れて事故を知った…

丁度いつも観ているNHK番組が流れている時だ。私は、ストーブの「あく」を捨てに「あく投げ場」へ行った時だ。

私にスキーを教えてくれていた工藤さんという優しくスポーツマンのおじさんが 立っていた。私の名前を呼びながら「水をくれないか…」と血相を変えて言ったのだ。

私は慌てて家に戻り、コップに水を入れて再び戻ったが、工藤のおじさんは既にいなかった。

 

家に戻って 母親から「何やってたんだ…なんで水なんか持って」と叱られ、訳を話すと 母親は「お前嘘を言うんじゃない、工藤さんは死んだんだよ。今TVに名前が出たよ!」・・・

私は驚きと恐怖で泣きだした…でも、確かに工藤のおじさんだったし「熱い 熱い 〇〇ちゃん 水を…」と言っていたことは間違いないのだ。

 

事故の詳しい話を聞いて納得したのは、ガスが噴出して引火が原因で坑内爆発…という事は大火の中で逃げ惑う事が想定できる。工藤さんは きっと業火の中で水を求めていたのだろう…

この事故があってから、人に見えないものが見える事に気づきだした。

ジャンル:
小説
コメント   この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« 人生の備忘録…第1章 昭和… | トップ | 旭小学校…① »
最近の画像もっと見る

あわせて読む

トラックバック

この記事のトラックバック  Ping-URL