”少しずつ記憶をなくして、ゆっくりゆっくり遠ざかって行く”といわれる認知症
英語ではロンググッドバイ というのだそうだ。
認知症は、人によって症状の出方が異なる。
この作品の場合は、ある言葉が予想もつかない別の言葉と入れ替わってしまう。
考えている言葉と違う発語になるので、聞いている人とは思いが通じにくい。
迷子になって遊園地へまよいこむ。
入れ歯の頻繁な紛失と出現。どこかへしまい込んでしまう。
記憶の混濁。
作者が親をみとった経験をもとに、ユーモラスに描いている。
ホントはとっても大変なことなのに辛いことなのにおかしみを感じられるように描いている。
それでも、父とのことを思い出してしまうから、涙が止まらなくなった。
私の父の認知症などとても軽かったから大変さなどなかったが、思い出すと泣けてくる。
言葉が通じなくても心が通じて父親が一生懸命娘を慰めようとした「つながらないものたち」など、
経験した者にしかわからない、不思議な認知症のあり方も、わかる作品だった。