妖しさの夢

同人的創作です。
『ダメ』と思われるお方は、後退却して下さいませ

方程式『容疑者Xの献身』

2008-10-25 21:11:20 | BL
湯川学
帝都大学物理学工学部物理学科・准教授
容姿端麗・頭脳明晰。女子学生の憧れの的だ。

何時ものように、新人刑事・内海薫が訪ねてきた。
「先生に調べて頂きたい事件がありまして……」
「僕は、研究で忙しい。君には、悪いが」と不服そうに
インスタント・コーヒーを入れながら、呟くと
「この『写真』を見て下さい。顔が潰され、手は指紋が
バーナーで、指紋を消されています」と、薫が言うと
写真を手に取り「ふむ。実に面白い事件だな」と
写真を見つめる。
薫が話し続けると、湯川の友人の
草薙が、研究室に入ってきて「その『容疑者』は、凄い美人
だと聞いたぜ」「……なるほど。実に興味深い事件だ」
「ああ。でも その『容疑者』には、完全なアリバイがある。
そのアリバイを、崩してもらいたいと思ってな」と
湯川の飲みかけの、コーヒーを飲む。
薫は、思わず「アッ!草薙さん。其れは、湯川先生の
飲みかけの『コーヒー』ですよ!」
「……そうだが!?」「何時もの事だが。内海」と
湯川と草薙が、薫に眼をやると
「……すみません。少し、驚きましたので」と思い、
恥ずかしそうに、頬を赤くする。
「俺と、湯川は其れだけ『恋人』に近い関係なんだよ!
内海」とニヤリと笑うと
「……驚かせてしまったようだな」と湯川も
静かに呟く。
「すみません。私、湯川先生と草薙さんとは
友人関係と思っていましたので」と薫が言うと
「男同士が『恋人同士』では、何故 いけないのだ。
僕の論理的思考とは、全く違う意見だ」と湯川が言う。
「確かに、男性同士の『恋』でも
良いと思いますけど。私は、湯川先生の事を……」涙ぐむ。
「内海、冗談だよ。まさか、俺が男を愛すると
思っているのか?」と草薙は、大笑いする。
「でも、先生は『彼女』はいないし……」と不安な顔をすると
「如何して、君は何時も『想像』だけで
考える!?僕には、全く分からない」と呆れた顔で言う。
「でも、大学時代から 好きだった人はいる」
「えーー!!お前の事を、恋焦がれている『女子大生』は
大学時代から、沢山居ただろう?」
「……そうなのか。全く気づかなかった」と真面目な顔で言うと
「その、好きな人とは!?」
「もし、君が この『方程式』の間違いを解くことが
出来れば、僕は 君に好意をよせるかもしれない」
「分かりました!」と薫が、プリントを見ると
全く、解らなく 数字が暗号に見えてくる。

五分経ち・十分が経つと
「君には、無理な問題だった」とプリントを草薙に渡すと
「難しすぎる……まてよ、大学時代に
俺は、会った事が無いが あいつだったら
解けるかも、知れないな」と驚いた顔をすると
「……そうだ。お互いに『方程式』を語り合った仲だ。
彼は『数学者』からの解答で、僕は『物理学』からの解答だった」
「湯川。その、お前が慕い続けた『石神』が
今回の事件に関与している」
「彼が。まさか『彼』は、そんな愚かな事はしない!」
何時も、冷静沈着の 湯川とは違う一面を
草薙と薫は見た。
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憑物落とし(4)『魍魎の匣』

2008-01-07 04:47:12 | 京極堂
薔薇十字探偵事務所に、絹子から
榎木津に電話が入る。
「先生。助けて下さい……」「落ち着いて。柚木さん
如何したのですか!?」「加菜子が……」と後は
号泣で声にならない。
「分かりました。今から伺います」と加菜子が手術をしている病院に
外車に跳び乗り急ぐ、榎木津礼二郎。

絹子を追って、絹子の家を訪れた 木場と青木だったが
「奥様は、只今 お嬢様がお見つかりになり『病院』に
参られました」と
お手伝いの言葉を聞き『加菜子が搬送された』病院に急ぐ二人。


病院に着いた、榎木津は 一人の少女が号泣しているのを見ると
「如何して、泣いているの!?」「私は、止めようと言ったの。でも
加菜子が。男の人が二人、私と加菜子の側に来て……
助けてくれた人が男の人が…」「助けてくれた、男の人って!?」
聞き出そうと思うのだが、少女は咽び泣き言葉にならない。
榎木津は『左目』で彼女の過去を見る事にした。
人家のいない、学校が見える。少女が二人、戯れている
一方の少女は、柚木加菜子である。もう一人の少女は
咽び泣いている、少女・楠本頼子であった。
「……先生。ご無理を言って来て頂き、ありがとうございます」
榎木津に話しかけるた美しい女は、女優の頃と美貌が変わらぬ
『柚木陽子』であった。
「柚木さん、この少女の話では 娘さんは男達に襲われそうに
為った時に、一人の男に助けられた様ですね」
「……誰なのです。その男は!?」榎木津は、頼子を『左目』で
見つめると、頼子の記憶が見えてくる。
その、白き顔をした男を見て 榎木津は声を失った。
「………久保竣公。お前なのか!?」
「先生!?」絹子が榎木津の顔を見ると、蒼白な顔色だった。
「久保。お前なのか!?まさか、連続美少女・バラバラ事件の
犯人が……」

榎木津は、戦時中 多くの屍の上をよろめく様に歩いていた。
「榎木津さん。私も、連れていって下さい」と小さく呻く声を
振り返ると、久保竣公だった。
「貴様、生きているのか!?早く、この場所から
逃げよう」と久保を支えた瞬間、頭上から爆薬が破裂し
爆弾が光った瞬間、榎木津は『左眼』を被弾してしまった。
被弾した『左目』は、殆ど見えなく視力は失ってしまったのだが
『人の記憶』を、見えるという能力を開花させた。
戦後、榎木津は『薔薇十字探偵事務所』を開き
久保も又、新進気悦の小説家として・幻想小説家で
売れっ子小説家に為っていると、榎木津は
噂には、聞いた事がある。

木場修太郎と部下の青木文蔵刑事が、病院に着いたのは
その後であった。
「木場、木場、木場、木場、木場、木場……」と木場の顔を見るなり
榎木津は、木場をからかう。
「うるさい。探偵が事件に出てくるな!!」と榎木津の顔を
睨むと「だが、木場。俺は、柚木陽子さんに依頼されて
加菜子さん失踪事件を追っていたんだぞ」
「榎木津、だが この無様な結果を招いたのは
事実だな。所詮、偉そうに事件を解決するなどと言っては……」
「何だと!?」「木場刑事も榎木津さんも喧嘩は
此れぐらいに……」と青木が止めると
「うるせー。俺に指図するな!!」木場が怒鳴る。
「お前、此処は『病院』なのだぞ。だから、単純な奴は」と
榎木津が、笑うと「加菜子は、死なせは致しません!!」と
凛と美しい、美貌の絹子が言う。
「だが、病院は 如何するのですか?」木場が訊ねると
「親しくして頂いています『美馬坂幸四郎先生』に
加菜子を治療して頂きます」「美馬坂幸四郎!?中禅寺も
この事件に絡む事を嫌っていた『美馬坂』か……」と榎木津は思い
「柚木さん、私も『美馬坂研究所』に連れて行って下さい」と
榎木津が言うと、木場も負けずに「俺も刑事として『美少女・バラバラ事件』を
追っていますので」と言う。
「分かりました……」と憂い顔の絹子が頷いた。
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憑物落とし(3)『魍魎の匣』

2008-01-02 06:23:48 | 京極堂
『京極堂』を離れた、関口と敦子は
「今回の事件は、難解な事件だったのだろうか!?敦っちゃん」
「そうね。何時の兄貴らしくなかったわね」
「でも、この坂は 僕は本当に何時も『眩暈』を起こすよ……」
「頑張って!関口先生♪」と敦子に手を引かれ
『眩暈坂』を下りる、関口と敦子。
「ちょっと、待って下さいよ。関口先生」と鳥口が駆けて来る。
「でも、きっと協力してくれるわよ。何時ものようにね!」と敦子が
微笑むと。「……ああ。きっと。『京極堂』が頷くまで
僕も、何時も通い続けるよ。敦っちゃん」と関口も微笑み返した。

関口・敦子・鳥口の3人が『京極堂』を後にし
「関口先生。私、興味深い『相談』を受けて調べている事件があるの」
「関口先生は、お忙しいのだから。ねぇ!?先生」と鳥口は関口の顔を
覗きこむと「……何か『相談事』を受けたのかい!?」
「ええ。調べている事件があって……箱を『穢れ封じ』の『雄筥様』と
崇めている『信教宗教・雄筥教』を、今調べているの」
「君ね。関口先生はお忙しい……」と鳥口が言い返す前に
「敦っちゃん。一度、調べてみる事にしようか!『謎の美少女・バラバラ事件』と
係わりがあるかも、知れないし」と関口が深く、頷くと
3人は『神秘御筥教』を訊ねてみる事にした。

『京極堂』では、榎木津と中禅寺は
甘い二人だけの時間を過ごしていた。「中禅寺、お前。学生時代の頃を
憶えているかい!?」と甘く、囁く榎木津。
「……学生時代!?」榎木津の膝に座り、榎木津の美しいの顔を
覗きこみ、中禅寺は 聞きなおした。
「ああ。お前をはじめて『口づけ』をした日の事だよ」と榎木津は微笑む。
「……榎さん」と頬を赤らめて、赤面する 中禅寺を見つめ
榎木津は、話しかける。「榎さん。あの頃の話は……嫌だ」と
中禅寺が拒むと、榎木津は 微笑みを浮かべて話し続ける。
「俺とお前が1年後輩の学生時代、俺は『図書館』でお前を
見初めた」「榎さん……」「お前は、俺には難しい『哲学書』を
読んでいたな。俺が話しかけても、無視をするばかりだった」
「………」「ある日、今日のように 関口がお前を探して
教室を探していたある日。俺は、お前が何時も『図書館』で
調べ物をしていた日だ。俺は お前に言った。『お前の友人が
お前を探しているぞ。早く、行ってやれ!』と。だが、お前は
俺に、冷たく 一瞥しただけで『榎木津先輩には、関係のない
話です』と」「榎さん、もうそのぐらいで……」と言いかけると
膝に座らせている、中禅寺の顎を上向かせると
「……やめて……くれ。榎さん」「お前の身体が、嫌だと言っていないぜ」と
微笑むと、深く口づける。甘い陶酔感に酔ってしまいそうな
中禅寺は、瞳を閉じる。 榎木津の甘く、優しい愛撫を受けながら
榎木津が話し続ける『学生時代』の遠き思い出話しを
うっとりと艶っぽい表情で、榎木津の厚い胸板に抱かれながら
聞いていた。

一方、謹慎中の刑事・木場修太郎は
映画館で『美波絹子』の映画を食い入るように観ていた。
青木刑事が「木場さん!?」と話しかけると
「うるせーな。今、絹子の見せ場の良いところなんだ!!」
「柚木陽子の娘・加菜子が失踪し……あの、木場さん!?」と
恐る恐る、聞く青木を振り返ると『鬼の様な表情』で凄んだ声で怒鳴る。
「だから、俺は『謹慎中』だと言っているだろ!!」木場は、青木を
夜叉の様な眼で睨む。
「……だから、木場さん『柚木陽子』は元・女優の『美波絹子』
なのですよ!!」青木が叫ぶと、木場は 驚き
青木の顔を覗きこみ「おい。本当か!?その話は」
「ええ。『薔薇十字探偵社・榎木津礼二郎』を頼っているみたい
ですが。絹子は」「何!?榎木津だと。あいつは、昔から『女子』に
人気があり……気にいらねー。おい、青木
榎木津や『京極堂』が謎を解く前に、俺が 絹子の娘の謎を
解いてやるぜ」と豪快に笑い、青木の車に飛び乗ると
絹子の居る場所に急ぐ、木場の顔を見ると
青木刑事は、深い溜息をつくのであった。
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憑物落とし(2)『魍魎の匣』

2007-12-15 19:56:05 | 京極堂
関口巽の話を聞く為に書斎に入る中禅寺。
関口と同じく、部屋には
中禅寺の妹・敦子の姿と
関口の雑誌の編集者・鳥口守彦の姿も
中禅寺の瞳に映った。
中禅寺の後を追うように、榎木津が入ってくる。

関口が口を開いた。
「京極堂。その行方不明の美少女達は
手足をバラバラに切り取られ『箱』の中に
びっしりと、入っているのだよ」
「面白そうな話だな……」榎木津は、眼を輝かせる。
「手足をバラバラにして『箱』の中に入れるとは、信じられない
猟奇的事件よね!」敦子も怒りを隠せない。
「『箱』の中に!?首・胴体は?其れに、君は何方だね」鳥口の顔を
眺めて聞く。
「私。鳥口守彦と申しまして、関口先生の小説の編集者を
しております。関口先生に何時も、お伺いしておりますが
先生は、とても優秀な方だと聞きまして」
「只の『古本屋』の主ですよ。この男は」と榎木津が微笑む。
「そう、『古本屋の主』『神主』『憑物落とし』の
三つの顔を持っていますけど」と敦子が笑いながら答える。
中禅寺は、榎木津・敦子の言葉に
ムッと思い「関口君。折角だが……」と答えようとすると
「面白い、引き受けましょう。俺が責任を持って
この、難事件を解き明かしましょう」と榎木津が
美しい微笑みを浮かべると
「……榎さん」と呆れ顔の中禅寺を眺め
「ありがとう。京極堂」と関口が嬉しそうに、中禅寺の細い手を取ると
強く、握り締めた。
「……おい」「この、榎木津礼二郎と中禅寺秋彦が組めば
難しい、難事件でも解決だな!」と榎木津が中禅寺の背中を押すと
「俺も、柚木陽子に依頼されて失踪した、陽子の娘・加菜子の行方を
追っている」「……柚木加菜子と言えば、元・女優の美波絹子の娘の?」
「中禅寺、良く知っているな。知り合いか!?」
「……戦争時代に。やはり、関口君
今回の事件は、僕は降りさせてもらうよ」
憂い顔の中禅寺を見て「分かった。気持ちが変わったら
事件に協力してもらうよ」と関口は、優しき笑みを浮かべる。
「……すまない」
「でも、兄さんらしくないわね?」と敦子も思ったが
今回の、兄の表情は暗い。
関口・鳥口と共に『京極堂』を後にした。

榎木津と二人になった、中禅寺の表情は暗い。
「おい。如何した!?何時ものお前らしくも無い」と
耳元甘く蕩ける美声で囁く。
「……榎さん。今回の事件は『美馬坂幸四郎』が
係わっていると、僕には思える」中禅寺は、暗い表情で答えた。
「僕が軍にいた頃……」「……中禅寺、お前は『従軍』しなかったと
俺は、思っていたぜ?その様な『華奢』な身体では
軍に『従軍』出来ないと、思っていたが」
「僕が徴兵で配属に為ったのは『陸軍の研究所』だったのだよ」
「では、其処で何をしていた!?」中禅寺の白い項を見つめ
榎木津は、甘く問う
「僕は『宗教的洗脳実験』を、やらされていた」
中禅寺の瞳は、涙で潤んでいた。
「厭な仕事だったのだな……」榎木津は、中禅寺の壊れるぐらいに
細い身体を抱き締めて、優しく囁いた。
「美馬坂は、僕の上司で『不老不死の身体』の研究をしていたよ……
そして、僕は其処で『若き頃の陽子』を知っていた」
「……中禅寺」と、榎木津は強く彼を抱き締める。
強く抱き締めると、壊れてしまいそうな『身体』だが
彼の苦痛の日々を考えると、自然に力が入ってしまう。
「……榎さん。もっと強く、僕を抱き締めていてくれ。だが
この事件が『美馬坂』が関係しているとすると
僕は、やはり 関口君に協力をして
厭な過去から、抜け出したいのだよ。榎さん……」
「分かった。もう何も言うな、中禅寺」と白い磁器のような
中禅寺の頬に、流れ落ちる涙を拭うように接吻を続けた。
そして、榎木津は彼を自分の膝に座らせて
着物の胸元に手を入れ
強く、彼の血の気を失った蒼い小さな唇に
優しく、そして強く 接吻をした。
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憑物落とし『魍魎の匣』

2007-11-30 21:58:41 | 京極堂
中禅寺秋彦『通称・京極堂』古本屋を営み
そして、神主で憑物落としの三つの顔を持っている。
何時は、着流し姿で
愛想が悪く、気難しい表情をしている。
彼を慕ってくる者も多く、作家・関口巽も
彼を慕ってくる。彼は、中禅寺秋彦の同級生で
何時も、中禅寺の弁論には負けてしまう。
そして、中禅寺の事を慕ってくるのは
華族出身で、容姿端麗・頭脳明晰で
探偵・榎木津礼二郎。戦時中に、左目を被弾してから
彼は『他人の記憶が分かる』と言う、能力の持ち主だ。
中禅寺秋彦とは、学生時代の1年先輩に当たる。

榎木津が、中禅寺秋彦を訪ねて来る。
中禅寺の妻・千鶴子が案内をするが、書斎には
中禅寺の姿が見えない。
「ああ。大丈夫ですよ。僕には『彼』の居場所が
分かりますから」と千鶴子に微笑みを浮かべる。
中禅寺は、古書の整理と
関口から、依頼を受けた『謎の少女誘拐事件』・『バラバラ事件』
の事を聞き、普段は
関口の話には、耳を傾けない 中禅寺だが
『憑物落とし』の依頼の可能性があると感じたので
積極的に、関口の話を聞こうと思ったのである。
関口には、何時も
「この世には、不思議な事など 何もないのだよ」と
冷めた口調で言うのが口癖だった。

古書の整理と『妖怪・魍魎』について
調べていると、榎木津が「中禅寺、やはり此処で
調べ物をしていたのだな」と甘く、囁く声で言う。
「何だ…榎さんか」と冷たく、一瞥をすると
「俺は、お前の居場所は 直ぐに分かるよ。君の過去も
この『左目』で調べてみたいものだ」と微笑む。
「僕の過去を知っても、何も面白くも無い事だ!」と冷たい声で言うと
梯子で、上に置いてある 古書を取ろうとした
瞬間、中禅寺は 梯子から足を滑らせた。
「アッ……」と落ちる瞬間に、上背のある
榎木津が、中禅寺を抱きかかえる。
「本当に、お前は……学生の頃から
そうだった。没頭すると、他の事を忘れてしまう」と微笑む。
「すまない……榎さん」「中禅寺。君は身体が『華奢』だね……
女性よりも、繊細で壊れそうだ」
榎木津は、中禅寺を抱き締める。
中禅寺も、榎木津の胸板の大きな胸に顔を預け
「榎さん……」と甘えた声で、榎木津に子猫の様に
甘えると、中禅寺の着流しから
白い足と細い足首が
チラリと榎木津の眼に入った。
「中禅寺……」と榎木津が耳元で囁くと
中禅寺が普段は、誰にも見せない
艶っぽく、桜色に染まった頬を見つめ
震える、小さな唇に口づけをしようとした時に
「京極堂!?」と関口の声が物置部屋の外で聞こえたので
中禅寺も我にかえり
「彼が、僕を訪ねて来たようだ。榎さん、受け止めてくれて
ありがとう」と妖艶な笑みを浮かべ、古書を置いている
物置部屋を後にする。
中禅寺の後姿を『左目』で見ると
「関口め……だが、やはり『中禅寺』は
俺の事を慕っていると思える。あの艶っぽい表情が
何よりの証拠だ」とほくそえむ笑みを浮かべ
榎木津も、物置部屋を後にし
中禅寺の後を追うように、中禅寺秋彦の書斎に
関口巽の話を聞きに行く事にした。
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本能寺の変・2

2007-11-24 00:28:57 | 衆道
「明智殿は、お屋形様を討つ御つもりかもしれぬ」
中国・毛利攻めに来ていた秀吉は呟いた。
「そうすれば、殿の天下で御座いまする」とニヤリと笑う男
秀吉も恐れるぐらいの切れ者・黒田官兵衛である。
「殿、早く帰る用意を!」「流石じゃ。官兵衛!此れは大返しになるやもしれぬ」とニヤリと微笑む秀吉であった。

愛宕山に登った光秀は兵を揃えているクジを引いた「凶」と出た。
三度目には「吉」と出た。そして兵どもに叫ぶ
「我の敵は、本能寺にあり!」
天正10年6月2日、未明の夜である。
本能寺では、信長は兵が少ない状態であった。
蘭丸がいそいそと信長の寝所に来た。
「お屋形様、謀反で御座いまする」
「儂に、謀反?誰じゃ その様なうつけ者は!」
「水色の旗に桔梗の旗印・明智日向守光秀でございまする」
「何!?光秀とな」と呟くと「是非に及ばす!
儂も光秀の戦ぶりを見に行くぞ!蘭丸」と言い寝所から離れた。
集まっている兵は、一万三千である。
逃げる事もできない状態であった。
弓を放つ信長。明智の兵が倒れた。
光秀は、信長の前に行った「お屋形様、お首頂戴に仕った」
「良く、来たのう 光秀!だが、儂の首はそちには渡さぬ」
その時である。信長と光秀は、目で契りあった。
信長の姿が神がかって美しい。
「お屋形様は、美しいのであろう 私がお屋形様を討つなぞ愚かな事を…」
信長は微笑んでいる「やっと、そちを手に入れる事が出来た」と思うと
優しく微笑んだ。
蘭丸に「火を放て!儂の首は光秀にはやらぬ」と叫ぶと
紅蓮の炎に包まれた、本能寺の奥に消えていった。

山崎の合戦で、秀吉に負けた光秀は 信長の事を思っていた。
「お屋形さま……」その時である、竹槍が光秀の腹を貫いた。
意識が朦朧としている光秀。
家臣達は必死に光秀を励ます。
「殿、しっかりなされませ。『坂本城』に戻りましたら……」と励ますと
「儂は此処で自害する。そち達は逃げ延びろ…」声が擦れて声にならない。
朦朧とする意識の中で、光秀は
「お屋形様、もし生まれ替われるととしたら、私はお屋形様の家来にもう一度なりたい…」と言って静かに息を引き取った。
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本能寺の変・1

2007-11-24 00:03:36 | 衆道
「時はいま 雨がしたしる 五月かな」
武将は、一つの連歌を読んだ。
武将の名は、明智光秀 色白く、上品な顔立ちだ。
私が、お屋形様を討ったら 多分(サル)の天下であろう。
でも、私が 討たねば、この関係も終わらないのだ…と呟く

遡れば、足利義昭殿と娶わせしたときからか…と思う。
お屋形様は、私を気に入ってくれ 私はお屋形様の家臣になった。
今では、懐かしい思い出だなと自嘲気味に微笑んだ。
「そちが、信長か?大儀である」「勿体無い言葉でございまする」と言いながらも「所詮は、人形将軍ではないか!この信長の相手ではないわ」と心で笑う。
「これからは、そちが 信長と儂の足となれ。よいな【光秀】」と呼ばれた男は
美しき男であった。
そして、信長に「光秀は、そちの寝間の勤めも果たす」と耳打際で妖しく囁く義昭。
「この様な、美しく・才があるものが、儂の者か」とニヤリと光秀の方を見た。
まさか、将軍様 信長公の夜伽をしょうもか」信じられぬ。その様な事が……
光秀の脳裏が浮かんだ。
「光秀、そちに四十貫を授けよう」「四十貫でございまするか!?」
「お屋形様は、贔屓がはげしすぎるわ!儂など働けども、いきなり来た浪人に四十貫だと」
「多分、あの気品 がお屋形様に好かれたのであろうよ…」と呟く利家。
「儂も、小姓の頃には お屋形様には可愛がられた・・・」
「……と言うと前田殿」
「夜の夜伽覚悟で来られたのであろう」と皮肉な笑みを利家は浮かべた。
夜も更け、信長に呼ばれた光秀は
「こっちにこい!心配は無用じゃ」と優しげに囁く。
何時もの信長の顔では無かった。
「はっ、只今参りまする」と光秀が信長に寄ると
信長の手が伸びて『光秀』の腕を掴む。
「もそっとう、儂の元に…」と言うと
「今宵は、これ位で失礼致しまする 申し訳ございませぬ」と言って信長の部屋をでる
「可愛くない奴めが!でも、儂は一旦手に入れた物は誰にもわたさぬわ」
と笑った。
あまりの出来事に、光秀は悩んだ。確かに「四十貫とは、うれしき事。でも、夜伽の相手をする為に仕官をしたのではないわ…お屋形様には、分かってもらえぬのかの」と夜空を仰ぎ見る光秀であった。
其れからの光秀は、信長の為に働いた。
姉川の合戦の後、祝宴がもたらされた。
見事な黄金の椀である。「猿!この椀をどう思う?」と
ニヤリと笑みを浮かべる信長。
「明の国に椀でございまするか?」
「この椀は、儂を憎く思う 浅井・朝倉の椀じゃ
この椀で、そちが使えて居た 朝倉の椀で酒を飲め!」
「お許し下さい。お屋形様」と平伏すると
「儂の酒が飲めないのか!この金柑頭」と言い投げ飛ばす。
「兄上、光秀殿がお可愛そうでございます。私が亡き夫『浅井長政』の椀で頂戴致しまする」と凛とした美しいお市が椀で酒を飲んだ。
「気に入らないわ!好きに致せ!!」と言い祝宴を後にする信長だった。
「どうして、儂の気持ちが分からぬ…光秀」と信長が呟いた。

ある日、信長は 比叡山・延暦寺を焼き討ちにし、盾突く者は皆殺しとの命を下した。
「お屋形様、延暦寺は 僧で御座いまする。焼き討ちなど持っての事」
「よくぞ申したな。光秀!何時も儂に盾突くやつめが」と皆の前で、けり倒した。額に血をにじ増せながらも
「お屋形様、どうか 光秀の事を…」と余りにもの仕打ちに秀吉も
「お屋形様、日向守殿の申すとうりで御座いまする」
「何!猿 貴様もか!!」と睨む信長。
余りの姿の信長に「我は神じゃ!神の申すとうりに致せ!!」と言うので
光秀も秀吉も延暦寺焼き討ち・皆殺しにしたのである。

朝廷から呼び出された光秀は「このまま、信長を野放しにしてはいけない」と命じられた。
「そのとうりだ。このまま、お屋形様に天下をとらす訳にはならない」と強く、心に刻む思いであった。そんなある日の事、信長に光秀は呼び出された。
信長の命を受け出されたのは、目元艶やかな美少年・森蘭丸である。
「近江、坂本城を取り上げる、そして秀吉の援助をせよ。毛利の戦に勝ったあかつきには中国二国を領地にせよ!!」と蘭丸が読み上げると
光秀は愕然とした。
そして、心に思うのだった。「あの御方を討たなければならない」
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甲府の一夜

2007-11-23 20:17:53 | 衆道
「間部をよべー」と甲府藩主・綱豊は言った。
「はっ!ただいま、参りました」元は、能役者と言われぐらい、眉目秀麗である。この男、綱豊の大のお気に入りだ。
名は【間部詮房】と言った。
「詮房!わしは そなただけじゃ。側室などいらぬ」
「殿、それは いけない事でございまする。世継ぎを」と詮房は言った。
「そちが、おれば なにもいらぬ…」綱豊の手が、詮房の方に伸びてくる。
「ちこう 此方に」と綱豊は、甘く囁いた。
部屋を見ると、布団が敷いてあった。枕は二つだ。
「又、私が 殿の慰めモノになるのか…」と詮房は思った。
「そちに寝物語を聞いて もらいたいのじゃ」と綱豊は言った。
「私でよければ、殿のお相手を…」
詮房の、寝巻きがとかれる、白く透き通った白磁器の様な肌である。
綱豊が触れると、すべすべとしていて、吸い付くほどの美しき肌であった。
「詮房、そちは 本当に綺麗な肌をしている。儂が、能役者だった そちを
見初めたのも、仕方があるまい」と言い、詮房の胸元を触っている。
そして、桜の様な唇が奪われた。
「殿!」と詮房が言うと「よいよい、何時もの事じゃ」ニヤリと微笑み
綱豊の唇が、詮房の体を口付けていく。
「そうだ、私が 殿に見初められたのは 能役者で殿の前で舞った時であった」と詮房は、遠き過去を振り返っていた。
そして、殿のお小姓になってからは、毎晩のように 殿の寝間の相手をしている
一介の、能役者では 仕方がない事であるのだ。
時間が過ぎて行く。身包みを外された、詮房は ふと我にもどった。
「詮房 そちは頭も良く、眉目秀麗だ。わしは、そちが愛しい」
「勿体無い、お言葉で御座いまする。詮房、殿の為に忠節を働きまする」
「そちは 誠に憂い奴じゃ」と満足顔の綱豊を眺め
「私は、殿の為に 身も心も捧げてきた。殿が将軍になって貰わなければならないその為には、お側用人、【柳沢吉保】が邪魔じゃ」と詮房は思う。
「私は、妻も子供も持たぬ身。こうして、殿の慰めモノの為に生きている。
そう言えば【柳沢殿】も、将軍のお手つきであったな…まるで、私のように」
と詮房は心の中で、皮肉なものだと感じながら
「だが、私は違う 将軍と同じ位になってやるわ!今に見ていろ。
私の事を能役者と笑っていた者達に、一泡 吹かせてやるわ!」と詮房の瞳は
野望に、美しく輝く。
寝間に着替えると、部屋を後にした 詮房は、妖しく微笑む。
甲府の夜は、ふけていった…「今宵も、月が綺麗じゃ」
甲府の夜は、静かで 月明かりだが 美しい詮房をたたえているかのようであった。
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強き絆・11

2007-11-03 07:01:32 | HERO
取調べを終えた、滝田は
清々しい顔立ちに、なっていた。
「滝田さん。裁判ではどのような『判決』になるのか分かりませんが……」
西山が声を掛けると
「大丈夫です。本当にありがとうございました」と深々に会釈する。
警官に連れられていく姿を、西山も深々と会釈し見送った。

取調べを終えて、公平が「さてと!」と立ち上がると
保も、ノートパソコンの蓋を閉じ
「行きましょう!」「……保ちゃん」
「煙草の吸い殻を探しに行かれるのでしょう!?」公平は微笑み頷くと
二人が部屋を出たら
「私も行きます!」とりり子が微笑む。
「事実を見つけないと、起訴状には書けませんから」と保が微笑むと
公平は、保とりり子の顔を見つめ『GOOD』サインをする。
長靴を履いた、3人は『軍手』『網』『火バサミ』を持ち部屋を出ると
りり子は「あっ!」と言う顔をすると
西山達、3人も長靴を履き『火バサミ』を持って立っていた。

虹ヶ浦支部の六人が、事件現場の『石組み堤防』に着くと
三ノ宮が残した、煙草の吸い殻を探している。
三ノ宮が『海』に投げ捨てたのなら、吸い殻は跡形も無く
無くなっていただろう。
だが、石垣に引っかかっている場合に公平はかけてみたのだ。
捜査開始から二時間が経った。
「事件から、二週間も経っているけんのう」小森が言う。
「腰が痛いなぁ」西山も言い出す。
「絶対にあります!」りり子が眼を輝かせて言う。
「だが『吸い殻』では、情状酌量にはならないだろう……」
「いいんだよ。それでも!」ロープで吊るされた村上に、西山が
なだめる。
夕焼け空になっても『タバコの吸い殻』は、見つからなかった。
岩場に、公平が手を入れると「あった!ありましたよ」と
公平が叫んだ。
公平が手にした『タバコの吸い殻』は、長さ三センチぐらいで
茶色に変色している。
保が『証拠用』のビニール袋を広げると、皆は微笑み拍手をした。
「あった……」「此れで、滝田さんの供述の裏付けが取れましたね」
「よかったー」「やりましたね」と皆、泥だらけの姿で
微笑みあった。

翌朝、保は『殺人罪』で起訴された 滝田を収監先の拘置所を
訪れていた。滝田の顔色は良くなり、元気そうになっていた。
「実は、今日は鴨井社長が記者会見で謝罪されました」
「えっ……本当ですか!?」滝田が驚くと
保は微笑み言った「町の方々には、心からお詫びを致しますと……
許していただけるのなら『父親』のような経営者に
なるように、努力すると」「……そうでしたか」
「其れでは、私は」と保は会釈し部屋の出口に向かうと
「久利生さんにお伝え下さい。『検察』の方々は
貴方達のような方々でよかったと。そして出会えた事を」
「はい。お伝えいたします」と保は微笑み、会釈し面会室を出た。

保が拘置所を出た時に、公平が待っていて
「保ちゃん。釣りに出かけよう」と釣り道具を差し出す。
「……ええ」と保が受け取ると、堤防に出かけた。
「釣れませんね」「スイカの種類が違うんじゃねぇ!?」
「……そうですね」と釣り糸をたらしていた。

一方、東京地検城西支部・鍋島次席検事が呟く。
「そろそろ『彼』を呼び戻すか」
そして、一週間後に西山が人事異動の話をしている。
「……本当に、久利生さんが『東京』に戻られるのって残念です」
「そうだな」保は、皆のお茶を入れに席をたっていた時
公平の人事異動の話を立ち聞きしてしまった。
お茶を差し出す手が震えている。「如何した!?顔色が悪いぞ。
今度からは、俺の事務官になってもらう事にした」西山が微笑むと
「……すみません。私は、気分が」と言い、部屋を出て
走り出す。「でも『津軽さん』最近、色っぽくなりましたよね?」
りり子が言うと「綺麗になったので、俺の『事務官』をさせるのでは
ないからな!」西山が言うと、皆が白い眼で見つめる。
公平が保と違いに部屋に入ってきて「久利生!お前の人事異動が
決まったぞ」と西山が言うと「マジっすか!?其れで何処に?」
「東京地検に戻る事が決まった!!」「えー!!!」と驚いた後
「……あの『津軽さん』は!?」「そう言えば、蒼白な顔で
出て行かれましたけど……」りり子が言うと
「すみません。俺も」と公平が走り出す。「如何なっているんだ?」
西山が言うと「……さぁ!?」と皆が首を振る。

保を探して、公平が駆ける「……保ちゃん。何処だよ!?あっ『堤防』」
と思い『防波堤』に行くと、居ない。
町の人達に聞くと「津軽さんなら『海辺の砂浜』で海を見ていましたよ」と
聞き、砂浜に駆けていく公平。
砂浜に着くと、保は『美しい・海』を眺めていた。
「保ちゃーん!!」公平が声をかけると、保が気づき
逃げ出す。「チョット……マジかよ!」と思い、公平も砂浜を
駆けて行き、保を抱き締める「ねぇ。保ちゃん、俺 以前から
思っていたけど『人事異動』に為ったら、保ちゃんに
付いて来て貰いたかったんだ!」「放して下さい。公平さん!!」
保が、腕の中で暴れるので「アッ!イシガキダイ」と公平が言うと
「えっ!?」と保が海を見ようとすると、公平は
保の唇を奪った。保も瞳を閉じていると、二人は長い抱擁をした。
そして「ねぇ!?『東京』に付いて来てくれるだろ?」
「……やはり、私には無理です。母を残していけません」
公平は、考え「じゃあさー。俺が休みになると、保ちゃんに
会いに来るのは?」「……公平さん」と保が涙ぐむと
公平は、保の桜色の唇に軽く口づけ「今度は、本当に今度来る時は
心も身体も俺の恋人になってくりるよな!?」と、保の瞳を見つめると
「……分かりました。愛しています、あなたを」と保が頬を赤くして
答えると「実は、俺。保ちゃんの事を一目惚れをしたんだよね。
でも、保ちゃん……始めは、冷たかったし」と公平が言うと
「……ありがとうございます。私、嬉しいです」と保が微笑むと
深く、口づけを交わす二人だった。

公平が、虹ヶ浦駅のホームのベンチに座っていると
アルバムの写真を見つめる「休みの日に来た時は『イシガキダイ』と
保ちゃんを頂く事にする!其れまで待っていてね『保ちゃん』♪」と
アルバムを見ていると「公平さん!!」保の声がする
「俺、マジ嬉しいよ!保ちゃん。俺の事を其処まで愛して……」と
言いかけると「いいえ。暇だったからです」と微笑む。
「相変わらず、可愛くねー」と思っていると「これ、餞別です。
此処の名物は、此れしかなかったので」と差し出す。
「ねぇ……保ちゃん。此れって『あごま』!?」「はい。すみません
名物と言えば、此れぐらいで……」と言いかけると、唇を奪う。
「ご馳走様でした」と公平が微笑むと「ったくもう!!」と膨れると
「俺、本当に あなたと出会えて良かった。ありがとうございます」
「私も、貴方と……『仕事』をしたかったです」と保が小声で言うと
「ありがとう。今度は『恋人』で!」と公平が言う。
「津軽さん、足が速いんですもの……久利生さん!!」りり子が
息を荒げて来ると、その後ろに 西山・小森が立っている。
「久利生。俺達もとことんとやってやるよ」「ええ。とことんと」
ホームのスピーカーが、上りの列車の到着を知らせる声が
流れた。公平は、保の手を強く握ると保も強く握り返した。

列車が小さくなると、村上は「此れで静かな町に戻りますね」
「あー。せいせいした」と小森。
「お前、先越されてしまったな」「良いのです。私、此処で頑張りますから」
保は、静かに 列車を眺めていた。

東京に行くまでに『あごま』の匂いで、列車の乗客に
「すみません」と頭を下げ続ける公平であった。

五年ぶりの『東京』は、新しいビルで華やかに為っていた。
だが、其処だけは変わっていなかった。
『たまり場』と呼ばれる部屋には、全員取調べ中で
誰もいない。「久利生さん!?」雨宮舞子の声がした。
「臭い。何、此れ?」「何だよ。雨宮、知らないの『あごま』だよ」
「知りませんよ」「そうだ。皆の分もありますから」と言うと
検事室が一斉に開く。「久利生さん!」「久利生!!」
「久利生君!」皆が「新しい『検事』とは、久利生さんだったんだ」と
頷く。一番背が高い・芝山貢が聞く
「雨宮から聞いたぞ!?山口で、お前が惚れたって言う子は
如何言う子だったんだ?」皆、注目していると
「そうですね。意地っ張りで、優しくて」「顔・スタイルは?」
「俺が、一目惚れをしたのですから。其れは、抜群・腰なんか
滅茶苦茶に細くて。後、肌が
柔らかく・すべすべしていて…」と話はじめると
「久利生さん!この臭いモノは何ですか!!」舞子が怒ると
「だから『あごま』イシガキダイだよ。何、怒ってんの!?」と
公平は、舞子の嫉妬を知らずに 不思議な顔をしていた。



          ☆END☆
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強き絆・10

2007-11-02 07:51:34 | HERO
次の朝、公平は 滝田に単刀直入で聞く。
「実は、東京捜査で色々な事が分かりました。
その一つは、此れです!」とメモを取り出す。
「泉谷が、三ノ宮さん、嫌違う『緑川祐司』の仕事部屋で
発見しました」「………」「滝田さん『緑川祐司』を
知っていますね!」「さあ!?私は」「御社である
『鴨居社長』と女性の不倫を三ノ宮さんは、追っていた。
でも、何処の出版会社も相手にはしてくれない。
其処で、彼は『鴨居産業』から金をユスろうと考えた」
「………」「でも、貴方はユスリには応じずに
彼を、山口まで呼びつけ『防波堤』で
殺意をもって殺した」「事実ではありません」
自分を見つめる、公平と保の視線をはねつけた。
「その『メモ』に書かれている事は、違います」
「そうですか……『ふるこし』と言う、釣り宿をご存知ですね!
其処の『古越ひろ子』さんが証言してくれました」
そう言うと、公平は保に目配せをし 保が読みあげる
「平成十八年六月十日。夜の九時頃、滝田さんが訪ねて来られました。
何時もと違い、動揺した感じで興奮しており
『如何したのか?』と訪ねた処、滝田さんは答えずに
三ノ宮さんの部屋を訊ねてきました」滝田の額には、汗が滲む。
保は続けて読みあげる「私が、三ノ宮さんの部屋に案内をしますと
滝田さんは、荷物を物色し『写真』を見つけると
『この事は、口外しないで欲しい』と頼まれ出て行かれました。
以上です」「此れって事実ですか?」
「事実ではありません。私は面識のない、相手と喧嘩になり
刺しました。本当です」

外が慌しくなると、りり子がドアを開き入ってくる。
「三ノ宮さんがネタを売り込んだ出版社は、二十社ありましたが
一社だけに、此れが残ってありました」
りり子は、バックから取り出す。
封筒に入っていたのは『六切り写真』のモノクロ写真だった。
ホテルのエレベーターで、女が『鴨居正樹』に寄りかかっている
鴨居正樹がニヤつき女の肩を抱き締めている『盗撮』写真だった。
「よく見つけたなー。凄いじゃん」「ヒールが折れちゃいました」
滝田は「これは『ねつ造・写真』です!長い沈黙の後
保は、静かに話始める。
「この『写真』は、ねつ造写真だと貴方が言えば、町の人は
信じると思います。私もこの町で育ちました。
貴方がこんなくだらない事を隠す為に、人を殺害したとは……
私は、悲しいです」「………」
「でも、一番悲しいのは 貴方が『うそ』をつかれた事です。
滝田さん、貴方は 自分を信じてくれている人達を騙すのですか」
「滝田さん。俺、諦めが悪いのです。この国の法律で
被疑者の起訴、検察って言う『組織』が起訴・不起訴を
決めるのではなく『検察官個人』が決める事なのです。
神様じゃーない、俺達が『裁判』にかけるかどうかを
決めるって言うのですから。でも、俺。相手が、どんな立場の人間でも、
周囲が同情しても、惑わせられずに 公平な目で『被疑者』と
立ち向かわなくては、ならないと思っています。
真実を納得をいくまで追求する。其れは、俺達の『義務』なのです。
相手が酷い人間でも、怒りにまかせて『殺害』をしてはいけない!
俺、とことん粘りますよ!この町の皆から嫌われても
『真実』だと納得するまでは、絶対にあきらめませんから」

暫く沈黙が続いた後、滝田は静かに話し始めた。
「久利生さん。スイカを使うのです」「はっ!?」
「イシガキダイを釣るには」「スイカですか?」
滝田は公平に負けたと言う顔で、微笑みながら話す。
「東京まで行って。会社まで押しかけ、釣り宿にまで……
なんと言う人達だ。私は、母子家庭で育ちました。
中学の頃、母は『交通事故』で働けなくなり……
母と私達は『一家心中』を考えました。
助けてくれたのは、先代の『鴨居社長』でした。
おかげで、私は 大学まで行かせて頂き
卒業して『鴨居産業』に就職致しました。先代は素晴らしい方でした。
この町を愛し、自分は『質素』な暮らしをし……
偉ばらずに、誰からにも愛されて。私の『妻』が、癌で
亡くなった時も、身内の様に泣いて下さいました。
私は、その時に思ったのです。この会社を支えて行こうと。
先代の正樹さんが継がれた時に、サポートするのだと……
一ヶ月前です、三ノ宮が『写真を10,000,000円』で買えと
私は、払う事に致しました……其れを、あの男は
『30,000,000円』にユスってきたのです。私は、考えました。
一度、ユスられると 何処までもユスってくるのだと。
応じなければ、公表するとまで言ってきました……
私は、金と写真を交換すると言う事で『防波堤』に
三ノ宮と会ったのです。そして、話が縺れ
カッとなり、刺しました」
「殺意があったと言う事を、認めるのですね?」保が念を押すと
静かに、頷いた。
「でも、本当に貴方が守りたかったのは……」保が聞くと
「この町です」と滝田は答えた。
「久利生さん。私が申し上げたのが『すべて』です。
起訴をして下さい」「……わかりました。でも一つだけ
腑におちないのですよ。滝田さんが、カーッとなった事が」
滝田は、拳を握り締め 拳には『涙』が零れ落ちる。
「タバコを……捨てたのです」「煙草!?」
「あの男は、帰り際に『タバコ』を海に投げ捨てた……
あの『海』は、妻の墓なのです。海が好きだった『妻』は
亡くなる前に『海に散骨をして欲しい』と、私に
遺言を残していました。だから、許せなかった。
絶対に許せなかった……私は立派な人間ではありません。
お手数をお掛けいたしました」と涙が止まらない、滝田を見つめ
公平は『滝田明彦を殺人罪で起訴』をする事を静かに告げた。
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