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高額紙幣廃止を受けたインドの「資金洗浄」 両替商が語る驚きの手口

高額紙幣廃止を受けたインドの「資金洗浄」 両替商が語る驚きの手口

(1/4ページ)【国際情勢分析

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2016年11月17日、ニューデリー市内の銀行で、新旧紙幣の交換などを求めて列をなす市民(岩田智雄撮影) 2016年11月17日、ニューデリー市内の銀行で、新旧紙幣の交換などを求めて列をなす市民(岩田智雄撮影)

 インド政府は2016年11月9日、ブラックマネー(非合法資金)対策のため高額紙幣を廃止した。しかし、不正蓄財が疑われる旧紙幣は、かなりの 金額が秘密裏に新紙幣に交換され、資金洗浄(マネーロンダリング)された。首都ニューデリー市内の両替商の男性が、その手口を明らかにした。

  この両替商は、市中心部の繁華街の店で、外国人などを相手に外貨をインド通貨に両替している。最近、警察当局の捜査を受けて、新紙幣80万ルピー(約 140万円)相当を含む130万ルピー(約225万円)のカネを押収された。しかし、男性の資金洗浄容疑には十分な証拠がなく、数日後には、押収金はすべ て返却された。

■インドの高額紙幣廃止■ ナレンドラ・モディ首相(66)が11月8日、高額の千ルピーと五百ルピー紙幣の使用を9日午前 0時に禁止するとテレビ演説で突然、発表した。新たに二千ルピーと新五百ルピーの紙幣を導入。ブラックマネー(非合法資金)や違法取引、テロリストへの資 金供給を防ぐ狙いだが、現金決済に大きく依存する同国内は大混乱となった。

 

 

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2016年11月17日、ニューデリー市内の銀行で、新旧紙幣の交換などを求めて列をなす市民(岩田智雄撮影)
2016年11月17日、ニューデリー市内の銀行で、新旧紙幣の交換などを求めて列をなす市民(岩田智雄撮影)

 インドでは、現在、銀行1口座についての預金引き出し額は1週間に最大、当座預金で5万ルピー、普通預金で2万4000ルピーに限られている。両替商はどうやってこれほどの新札を入手したのか。

 その手口を両替商は、「銀行にコネがあるからできる。銀行内部の知人に50人分の身分証明書を見せれば、その本人がいなくても、1人について一度に1万ルピーまで新札をおろすことができる」と打ち明けた。

 今回の旧高額紙幣の廃止の目的はブラックマネーのあぶり出しにある。市民は、手持ちの旧紙幣を使用することは原則的にできないが、銀行口座に預けることはできる。25万ルピーを超えるなど多額になると、不正蓄財が疑われ、捜査対象となる仕組みだ。

 だが、両替商は、何人もの他人の口座に手持ちの旧紙幣を分散させて預金し、新紙幣を少しずつ引き出すやり方で、大量の資金洗浄を可能にしていた。

  「観光に来た外国人はみな、現金が手に入らず困っている。絶望的な状況で外国人はATM(現金自動預払機)の前の列に並び、貴重な時間を無駄にしようとし ている。私は外国人から手数料をもらって、銀行からお金を引き出してやっている。それが私の仕事だし、なぜ、そのために銀行のコネを使ってはいけないとい うのか。何の法律にも違反していない。銀行だって、これでもうけている」とうそぶいた。

 

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2016年11月17日、ニューデリー市内の銀行で、新旧紙幣の交換などを求めて列をなす市民(岩田智雄撮影) 2016年11月17日、ニューデリー市内の銀行で、新旧紙幣の交換などを求めて列をなす市民(岩田智雄撮影)

 「こうした他人の口座を利用するのは違法ではないのか」と尋ねると、両替商は「私は蓄財をしているわけではない。両替だ。何の法も侵していない。警察には一時、拘束されたが、銀行に特別なコネがあるというだけでは、罪に問えないだろう」と強調した。

 両替商は、さらに、こう説明した。

  「例えば、誰かが説明のつかないカネを100万ルピー持っていたとしよう。やるべきことは、母親とか息子とか、使用人といった信頼できる人物の口座を5つ 開くことだけだ。そうすれば、25万ルピー未満にカネを分けることができる。これで捜査対象にはならない。政府のやったことは、全部でたらめだよ」

  一方、インドでは各地で、大量の新紙幣が見つかる事件が相次いでいる。当局は12月16日、旧紙幣廃止発表後の税務調査で、約31億6000万ルピー(約 55億円)にのぼる現金を押収し、このうち約8億ルピーが旧札廃止後に発行された新紙幣だったと発表した。金地金や宝石を合わせると押収総額は39億 3000万ルピー(約68億円)相当で、明らかになった隠蔽(いんぺい)所得は260億ルピー(約450億円)という。

 ただ、押収された現金のうち、どれだけが実際に違法と認定されるかは明らかではない。この両替商の場合と同様、すでに返還されたものも少なくないと推測される。

 

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2016年11月17日、ニューデリー市内の銀行で、新旧紙幣の交換などを求めて列をなす市民(岩田智雄撮影) 2016年11月17日、ニューデリー市内の銀行で、新旧紙幣の交換などを求めて列をなす市民(岩田智雄撮影)

 旧高額紙幣の廃止を実施前夜に突然、発表したモディ首相。当初は首相の腐敗対策を支持していた市民の中にも、長引く現金不足に不満を募らせる者が 目立ち始めた。政府は、あらゆる抜け穴をふさいでブラックマネーを摘発すると強調し、捜査当局に発破をかけているが、問題はどれだけの不正蓄財がきちんと 摘発できるかだ。

 インド紙ビジネス・スタンダードによると、当局が昨年度中に捜査した事案は669件で、この間に下った有罪判決は34件 にすぎない。政府は税務当局の人員を増員し、不正摘発を急いでいるものの、同紙は「熟練した人員と大量のデータの解析が欠落している」と指摘している。政 府は有権者の理解を得るため、大きな試練に直面しているといえそうだ。(ニューデリー 岩田智雄)

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