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東大病院で「薬取り違え」、入院中の男児死亡…病院の法的責任を問えるのか?

東大病院で「薬取り違え」、入院中の男児死亡…病院の法的責任を問えるのか?

東大病院で「薬取り違え」、入院中の男児死亡…病院の法的責任を問えるのか?

東京大学病院は1月31日、入院中の男の子に対して、別の患者用の薬を取り違えて投与する医療ミスが2015年にあり、投与した翌日に男の子が死亡したとホームページで公表した。

東大病院などによると、男の子は複数の臓器に障害があり、2014年に東大病院へ入院。人工呼吸器が必要な状態だった。管状の器具を使って薬を投与 しながら治療を続けていたが、看護師が誤って、別の患者用に準備した13種類の薬を注入。そのうち6種類は抗てんかん薬など、特に安全管理が必要な薬だっ たという。看護師は投与する前、薬の容器や男の子の名前を確認していなかった。

同病院は、誤注入が男の子の死亡に「何らかの影響を与えた可能性がある」とする一方、死亡にどの程度の影響を及ぼしたかという点については「医学的な判断は困難」としている。

一般論として、薬を取り違えたことで患者が死亡した場合、病院の法的責任を問えるのだろうか。羽賀千栄子弁護士に聞いた。

●誤投与と死亡との因果関係の証明が必要

薬を取り違えて患者に投与し、その後患者が死亡した場合であっても、法的に即「薬を取り違えたことで患者が死亡した場合」となるわけではありません。

薬を誤投与した後に患者が死亡したのだとしても、全く別の原因で死亡する場合もあります。誤投与が原因で死亡したのだろう、と単純に推定できるわけではないのです。

病院に法的責任を問うには、まず、患者の死因を証明する必要があります。次に、死因が、誤投与された薬剤の作用によるものだと証明する必要がありま す。その証明に成功しないと、病院が言うように「医学的な判断は困難」な事例ということになり、死亡についての法的責任を病院に問うことはできません。

薬を誤投与した看護師の行為について、過失及び死亡との因果関係が認められれば、病院(正確には病院の開設者)に対し、民事上債務不履行責任や不法行為に基づく損害賠償責任を問うことが可能です。

刑事責任については、看護師の業務上過失致死罪が問題になり得るでしょうが、医療過誤事件は、通常、看護師1人の責任ではなく、チームとして発生し ているのが普通であり、個人の刑事責任を問うのは妥当でないケースが多いと思います。また、実際に刑事告訴された事例を見ても、捜査機関にとって難事件の ようであり、なかなか捜査は進んでいないようです。

看護師について刑事責任が認められると、厚生労働大臣による業務停止や免許の取り消しの可能性が出てきます。

なお、死因が誤投与された薬剤のせいであることが肯定されない場合、つまり、誤投与と死亡との間に因果関係を認めることが難しい場合は、一切病院に 法的責任がないのか、というと必ずしもそうではありません。誤投与の事実そのものについて、患者の、一定水準以上の医療を受ける権利が侵害されたとして、 病院側に慰謝料の支払い義務が認められるとする考え方もあります。

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