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日本語の諸問題(15) 「おみやげ」の語源

2009年04月15日 | 歴史

「おみやげ」の語源については「語源辞典」には「お宮」(神社)からできた言葉であろう、というのが有力である。江戸時代に流行した「お伊勢参り」などの信仰と遊山をかねた行事が念頭にあるのであろうが、「おみやげ」の語源は単純に旅先で買ってきたものを「あげる」から出来た言葉であると考えられる。「おみ」は「おみ足」とか「おみくじ」の「おみ」で、尊敬の接頭語が二つ続いたもの。「あげ」は動詞「あげる」の語幹「あげ」(国文法の連用形)であろう。(例. お膳のあげさげ、あげ足を取る)
 

 つまり、「おみ・あげ」( omi-age ) が、母音が連続するので、その間に半母音 y が挿入され  omi-y-age  「おみやげ」という言葉が生まれたのであろう。 この母音と母音の間に y が入る音声現象は世界のどの言語にも見られるものであり、別に日本語に限ったものではない。例えば、英語でも  mayer (市長)は「メイヤー」、Royal (王室)は「ロイヤル」と発音されるのがそれである。現代日本語では Russia は「ロシア」と書かれるが、戦前はすべて「ロシヤ」と表記されていた。これは、戦前は発音どおり書かれていたのであるが、戦後は文字表記に忠実に書くようになったからであり、どちらでもいいのである。同じような例として、ペルシャとペルシア  ( persia ) がある。
 現代日本語で「物をあげる」は同輩もしくは目下の人に使う言葉であるが、それに代わる表現として「さしあげる」という尊敬語が生まれて使われている。「おみやげ」は旅先で買ってきたものを「あげる」ことから生まれた言葉であろう。

 <追記>
 一般的に世界のどの言語でも大なり小なり発音と文字表記が違っている場合が多い。英語でも honest は「オネスト」と発音する( H音の消失)、複数形の books は「ス」と読むが dogs は「ドッグズ」となるのがその一例である。(発音どおり表記すると dogz となる)。日本語でも「観音寺」を「かんおんじ」と読む地方があると思うと「かんのんじ」と発音する地方もある。これは  kan-on-ji  の  n  と  o  が同化した結果であるが、文字表記が「かんおんじ」でも、その土地では「かんのんじ」と発音している場合がある。
 

 同様に、日本語の清音と濁音の区別も非常に曖昧で、文字表記はあくまでも行政的に決定された場合が多い。大阪・茨木市は行政上は「いばらき」と清音を使っているが、土地の古老の発音は「いばらぎ」と濁音である。九州の「竹田」も「日田」も共に「たけた」「ひた」と清音とされているが、これとて江戸、明治の文献に「たけた」「ひた」と書かれていたので、おそらく行政的にそう決めたものであろう。江戸時代以前、濁音表記は少なく、蕎麦(そば) は「そは」、「・・すべし」は「・・すへし」と清音で書かれるのが一般的であった。「竹田」「日田」も多分そうであったろう。

 同じく東京の「秋葉原」も本来の発音は「あきわばら」であろうが、(テレビで土地のお年寄りはそう発音していた)。江戸、明治の文献に「あきはばら」と書かれていたとの理由と、漢字「葉」の現代音は「は」なので、「あきはばら」と決定されたものと思う。現代日本語でも「私は」と書いて「私わ」と発音する。この理由は、中世期、主格助詞「は」( Fa ) 音が弱くなり Ha に近くなることにより、H 音が弱化して H が W 音に代わったものである。言語学的に H 音は脱落しやすい。フランス語では Hotel は「オテル」と発音されるが(H音の消失)、文字表記は勿論  Hotel である。
 発音が変わっても文字表記はそのままであることは、先の英語の honest と同じである。文字表記は人為的に変えられるが、発音はなかなか変わらないものである。要するに、文字表記と実際の発音は違う場合があるのである。無理に文字表記どおりの発音をする必要はない。

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