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AGEsは血管平滑筋細胞に石灰化を誘導する アンチエイジング・ミニ講座 2

2009-12-27 03:22:59 | アンチエイジング・ミニ講座

アンチエイジング・ミニ講座 2
 
AGEsは血管平滑筋細胞に石灰化を誘導する




前回は、「ヒトは血管とともに老いる」ということを書きました。


今回は、実際の画像で「血管の老化」を直視して戴くとともに、

その発生にAGEsが関与するメカニズムを、ごく簡単に書きます。



まず、血管は歳とともに弾力を失っていくわけですが、

その原因としてよく知られているのは 「動脈硬化」 です。


この 「動脈硬化」 はさらに 「石灰化」 を引き起こします。



動脈硬化」 によって引き起こされるのが、血管内膜の石灰化です。

この血管内膜の石灰化は、「アテローム硬化型」と呼ばれます。



これとは別に、血管中膜の石灰化は「メンケベルグ型」と呼ばれ、

糖尿病や重症腎不全で認められます。



  動脈硬化   →  内膜の石灰化  「アテローム硬化型



  糖尿病     →  中膜の石灰化  「メンケベルグ型」     
  重症腎不全  →  中膜の石灰化  「メンケベルグ型




このメンケベルグ型石灰化の発生が見られる糖尿病患者を

7年間追跡調査し、検討した結果、

心臓血管疾患・冠動脈性心疾患・脳卒中などの発生が有意に増加していて、

生命予後の悪化が認められることがわかりました。






ちょっと横道に逸れますが、


ASOという名前の病気、聞いたことはないでしょうか?

 あッ、そうそう、読み方はエー・エス・オーです。

 決して、アソーではありませんので、念のため。
 


漢字で書くと、 閉塞性動脈硬化症 となります。


通常、下腿の動脈が動脈硬化のために詰まってきて、

長く歩くと、ふくらはぎなどに痛みが出てくる。


しばらく休憩すると痛みが治まるものの、しばらく歩くと

また痛みが出てくる・・・なんていうのが教科書的な症状。

間欠性跛行というのですがね。



で、このASOのために血管が詰まってしまうと

人工血管を使ったバイパス術を行うことが必要となります。


この手術のとき、動脈硬化のある血管を触るわけですが、

(つまり人工血管をつなぐ場所を探すためにですね)

詰まっている辺りの血管は、とっても硬いんです。


それこそ、カチカチ と言っていいくらいなのです。

それは、動脈硬化によって石灰化も発生しているからです。


そのような所は、血管鉗子で挟むと、なんと!

バリバリと音をたてて壊れてしまいます。

血管なのに、「破れる」のではなく、まさに「壊れる」のです。




さてさて、


たまたま撮影したお年寄りのレントゲン写真では、

あちこちに石灰化の見られることが、よくあります。


たとえば、
     
     胸部のレントゲンで大動脈弓の辺りにとか、

     腹部のレントゲンで分岐部辺りにとか。




次のレントゲン写真をご覧戴きましょう。

側面像でして、向かって左が体の前面になります。



腰椎の前面に、石灰化した腹部大動脈(指差し)が写っていますね。



 






この腹部大動脈の剖検時の画像が、次の写真になります。


血管を開けて見たところなのですが、

内膜は著しく石灰化しているのがわかります。

また、剖検所見によれば、腎動脈は高度に閉塞していました。





 






さらに、この方の心臓の冠動脈の断面では、

中膜の石灰化が著明に認められます。




 



以上の画像は、30年にわたり透析を続けられた方のものです。
日腎会誌2003;45(2):65-75.より

メンケベルグ型石灰化 の症例であったわけです。


このメンケベルグ型石灰化による生命予後の悪化は上でも述べましたが、

これは増加傾向にあるわが国の透析患者に直結する問題です。

わが国で透析患者数が増加していることに関しては、

 抗糖化を認識することが必要なわけ

で、ぜひその事実を確認してみて下さい。




さて、ここまでが前置きでした。 


このような血管石灰化のメカニズムに、

AGEsが関与しているというのです




しかも、産業医科大学第1内科学講座の岡田洋右先生によると、

AGEsの濃度が高いほど石灰化が進むというのです。



まずは、骨を作る細胞である骨芽細胞の話です。



骨芽細胞というものは、間葉系幹細胞から分化してきます。


この骨芽細胞の分化を決定づけるのが

Runx2(runt-related gene 2)という遺伝子であることは、

1997年に、わが国の研究者が米国科学雑誌「Cell」に発表しました。




ここで、AGEsです。


まず

AGEsは、その濃度にしたがってRunx2の発現を誘導する

ということが判ってきました。



それに加えて

AGEsは、血管平滑筋細胞において

骨芽細胞分化マーカー(Runx2、アルカリホスファターゼ;AP

オステオポンチン;OP、オステオカルシン;OC)を誘導することで

血管平滑筋細胞を骨芽様細胞に形質転換させて石灰化を起こす

ということも判ってきました。



 
    
   コントロールおよびBSA(ウシ血清アルブミン)を加えたものに比べ、

   加えるAGEの濃度が濃いほど石灰沈着が増加することが判ります。




結論 : AGEsは、濃度依存的に血管石灰化を進行させる


AGEsを体内に貯めないに越したことはない、というわけです。




アンチエイジング・ミニ講座 1  ヒトは血管とともに老いる


創立2周年記念、AGE Readerによる皮膚AGEs測定の実際は こちらから


当ブログの重要点『抗糖化』等に関してはこちらにまとめてあります。
なお、図表および内容の引用は固くお断りいたします。


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1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
AGEsは血管平滑筋細胞に石灰化を誘導する アンチエイジング・ミニ講座 2 (田村隆朗 )
2013-12-24 16:50:54
骨の結晶と比較すれば形質転換が起きていないことがわかりますよ!

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