財部剣人の館『マーメイド クロニクルズ』「第一部」幻冬舎より出版中!「第二部」朝日出版社より刊行!

(旧:アヴァンの物語の館)ギリシア神話的世界観で人魚ナオミとヴァンパイアのマクミラが魔性たちと戦うファンタジー的SF小説

マーメイド クロニクルズ 第二部 第8章−2 レッスン会場の魔女たち(再編集版)

2020-12-14 00:00:00 | 私が作家・芸術家・芸人

 ドルガが尋ねる。「なんじゃ、その歌詞は?」
「この度のパフォーマンス・フェスタのパンフレットに書かれていたでありんす。おそらくは・・・・・・」
「アポロノミカンか?」
「そうらしいでありんす。夏海という娘が覚えていたでありんす」
「例によって、アポロノミカンの予言は謎じゃが、『太古の蛇がよみがえる』とは幸先よい。よし、リハーサル会場へ飛ぶとしよう」
 次の瞬間、四人の姿は消え去っていた。

 フェスティバルの本番を直前に控えて、キャストたちはヌーヴェルヴァーグ・タワー一階ホールでリハーサルに汗を流していた。タイトルは、「砂漠の魔人の城〜ミラージュの伝説」だった。ドワイト・“パライソ”・コパトーンと夏海が書いた七幕のミュージカル仕立てのパフォーマンスになっていた。脚本は、夏海が昔ケネスから聞いた「海は一日7回、その色を変える」という船乗りの伝説が下敷きになっていた。ストーリーは、以下のようなものだった。

 第一幕、「明けの黄金色に輝く海は、海洋神ネプチュヌスの支配の始まりの刻」。海沿いにありながら呪いによって砂にうずめられてしまった都の城で、三人のセイレーンの魔女たちが海主ネプチュヌスに捧げる唄を歌って幕が開く。
 第二幕、「真っ青な昼の海は、太陽神アポロンが空を駆けめぐる刻」。城の支配者である太陽の化身である三神と月の化身の女神が降臨する。
 第三幕、「波しぶきに輝く白色の海は、天かける最高神ユピテルの輝きの刻」。魔女たちと太陽の化身が最高神ユピテルに捧げる剣舞を行う。都は、海と太陽の恵みを受けて繁栄するはずであった。
 第四幕、「夕焼けに映える真紅の海は、軍神ベローナの勝利の雄叫びの刻」。都の支配をねらう蜃気楼の魔神が現れて、サソリを通じて魔女たちをそそのかして太陽の化身たちに争いを仕掛ける。
 第五幕、「月の光に映える灰銀色の海は、無慈悲な月の女神アルテミスの涙の刻」。太陽の化身たちを救うために、冥界から助っ人がやってくる。それでも、魔女陣営と太陽の化身陣営の力は甲乙つけがたく決着がつかない。
 第六幕、「漆黒の闇を写す黒色の海は、冥王プルートゥの支配の始まり」。魔神の超能力によって闘いは、精神界に場を移す。精神体となった両陣営は、本来の超能力を使って死闘を繰り広げる。
 第七幕、「そして、なにものにも汚されていない半透明な緑色の海にだけマーメイドは姿を見せる」。すべてを見ていたマーメイドが闘いに参加し、長い闘いに決着が着く。蜃気楼の魔神は、砂漠に消えていく。

「ヴェリー・グッド!」ドワイトの甲高い声が響きわたった。「だんだん、よくなってきてる。だが、完璧にはまだ演出の余地がある。シェラザード、もっとシミーを派手にして。ユリア、首のアイソレーションを大きくしてみよう。ザムザ、君の踊りには直すところがない。だけど歌にもっと哀愁をこめて。夏海、いったい、どうした? もっと集中して。明日からは、男性陣と合流して全体レッスンが始まるよ」

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