平井和正先生に捧ぐ〜財部剣人の館「マーメイド クロニクルズ第一部 神々がダイスを振る刻」幻冬舎より出版中「第二部 」完結

(旧:アヴァンの物語の館)ギリシア神話的な世界観で人魚のナオミとヴァンパイアのマクミラが戦うバトルファンタジー

マーメイド クロニクルズ 第二部 第9章−9 健忘症の堕天使(再編集版)

2017-02-21 00:02:03 | 私が作家・芸術家・芸人
 精神力の弱いものは弱いなりに、精神力の強いものは強いなりに、精神世界では、すべてのものが自分のイメージする姿を取ることができる。
 精神世界の中央広場には、真紅のマントに身をつつんだマクミラがいた。マントの中には二本の真っ赤な鞭を隠し持っている。すぐ脇に、白銀のマントに身をつつむミスティラがいた。右には、漆黒のマントと軍服に身をつつんだアストロラーベがいた。貫き通せぬものはないと噂される半透明の槍を抱えている。左には、一振りで千の魔物の首をはねとばす大鎌を背中に背負ったスカルラーベが、はげ頭に筋骨隆々とした体躯をドクロでできた鎧につつんでいた。
 ナオミも、カンザスの闘い以来、海神界時代の真珠の戦闘服に身を包んでいる。
 ケネスは、上半身の服がはだけてメーライオンのタトゥーがむき出しになっているが、自分が変化したイメージを持っていないために人間の姿のママになっている。ジェフも、マクミラから血の洗練を受けていたせいで精神世界に来る資格を得たようだった。
 だが、場違いと思われる人間が二人人まざっていた。
 サソリの仮面をかぶったままで逆立ちしたさかさまジョージは、小脇にアポロノミカンを抱えていた。
「何だい、みんな、その目つきは? こんないかれた世界はボクにこそふさわしい。自分たちがふさわしくて、他人がふさわしくないなんて、いったい誰がいつどこで決めたのさ?」
 ケケケケ、と高笑いを上げる。
 あろうことか、会場に来ていた夏海の息子トミーまで来ており、何が起こったのか理解できずにがたがた震えている。ドルガが、母親の愛情あふれる夏海の声で語りかける。
「坊や、これは夢の中の出来事なのよ。すべて終われば、あなたはベッドの中で目覚めているわ」
 トミーは、気丈にうなずいた。ドルガの精神にも、夏海の肉体が影響をおよぼしているのかもしれなかった。
 マクミラが、そっと目配せするとキル、カル、ルルがトミーのそばで慰めるようにクンクンと鳴きだした。ついに、これで役者が揃った。
 今度はドルガが、迫力にあふれた地声でアストロラーベに話しかける。
「冥界の貴公子、久し振りじゃ。さすが古今東西の魔術に通じているだけのことはある。だが、わざわざ人間界までやってくるとはなんとも妹思いなことよ」
「悪魔姫、お主こそ大丈夫なのか? いつもなら見目麗しい姿が、その様子では人間界に来てからだいぶ長く人間に取り憑かずにいたらしい。羽や爪の先が、だいぶ崩れているぞ。お主は、これまで闘った中で最高の敵だった。よもや私をがっかりさせるようなことはあるまいな?」
「心配無用。我らが実力はいささかも衰えてはおらぬ」
 状況がまったくわからずにいらだったナオミが、話に割り込む。
「ちょっと、私を仲間はずれにして。いったい何が起こっているの? 夏海がまるで全く別人になっちゃったのはどういうわけ」
「我が名はドルガ」
「いったい、何!?」
 マクミラが答える。「あなたは、海神界の完全な記憶を持っているわけじゃなかったわね。まずはご挨拶からね。お久しぶり。ちょっとは成長した?」
「大きなお世話よ! 挨拶なんてしてる場合じゃないわ」
 アストロラーベが言う。「ナオミよ。お前の姉アフロンディーヌのいいなずけだったアストロラーベだ。覚えているか?」
「そんな人がいたような気がするけど・・・・・・」
「とんだ挨拶だな。まあ、よかろう。わかりやすく説明する。冥界最高位の神官マクミラが、人間界に来て以来、冥界の結界がゆるんでしまい極寒地獄コキュートスから捕らえられた魔女四人が脱獄したのだ。そこにいるのが、『爆破するもの』で悪魔姫ドルガ、『いたぶるもの』で氷天使メギリヌ、『酔わすもの』で蛇姫ライム、『悩ますもの』で唄姫リギス。四人は、マクミラに復讐を誓っている。妹を救うために、兄である我々アストロラーベとスカルラーベ、妹のミスティラが冥主様によって送り込まれたのだ。お主と父上殿も、アポロノミカンによってさだめられた運命の一部。すでにゲームのルールを変えることが、最高神会議によって決定しているのだ」


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