オータムリーフの部屋

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日本人の長寿の秘密

2012-09-17 | 社会

「平均寿命世界一」。ハーバード大学最新の調査によって今、寿命のメカニズムと、さらなる長寿への可能性が明らかになった。
 日本人の長寿の主な理由は3つある。遺伝子、生活習慣、そして国民皆保険に代表される優れた保険医療制度だ。
 しかし、それだけでは説明がつかない。ハーバード大学〝疫学講座のイチロー〟カワチ教授(50歳)のソーシャル・キャピタル調査によって興味深い事実が明らかになった。
 
 日本人の長寿は遺伝子に関係しているという通説を覆したのは、'70年に行われた日本人移民の追跡調査だった。日本に住んでいる人とホノルル、サンフランシスコに移住した人たちの病気の統計を取った結果、後者にいくほど心臓病にかかる確率が高まった。同じ遺伝子を持つなら、暮らす場所で健康状態が変わるのはおかしい。
 また、体にいいと言われている日本食だが、実は塩分や炭水化物がかなり多く含まれている。医療面でも、アメリカは日本と比べて個人の医療分野への支出は3倍だが、平均寿命は日本の方が4・2歳も長い。確かに保険医療制度は国民の健康を守るには大事な制度だが、長寿の決定的要因であるとは断定できない。
 寿命を左右する本当の要因は何なのか。ハーバード大学の社会疫学研究者たちが'96年から、アメリカや日本など世界の国と地域を対象に行った大規模な調査の結果、日本文化の中にある強い「ソーシャル・キャピタル」が、長寿と健康に大きく関係していることが分かった。
 ソーシャル・キャピタルとは、「お互いさま」や「持ちつ持たれつ」といった連帯意識のことだ。「あなたの地域の人は信頼できますか」、「地域の人と助け合いができていますか」、「地域の人はあなたの弱みに付け込んできますか」などの周囲との人間関係に関する質問をし、「非常にそう思う」、「ややそう思う」、「どちらとも言えない」、「あまりそう思わない」、「まったくそう思わない」の5段階で回答してもらう。そして、その調査対象者たちを数年間追跡し、どんな人が病気になったか、誰が生存しているかを確認する。
例えば、愛知県では'03年に65歳以上の男性6953人、女性7636人にアンケート調査をし、その4年後に彼らの健康状態を調べた。男性759人、女性1146人が、要介護状態になっていた。地域別に発症者の分布を割り出した結果、不信度が高い地域に住む人の方が1・68倍も高く機能障害を起こしていることがわかった。
 同様に、日本全国206の地域で1157人を対象に調査を行った結果でも、高いソーシャル・キャピタルと良い健康状態には統計学的に強い相関性があった。つまり、ソーシャル・キャピタルが高いほど、健康であることが証明されたわけだ。
 ソーシャル・キャピタルが高いと長生きできる理由は、2つある。一つは、他人同士の密なネットワークにより、健康によい情報やサービスが提供されること。もう一つが、周囲との人間関係が円満になり、ストレスが少なく治安のいい環境が作り出せるからだ。
 日本社会では、他人を助けること、他人の親切を信頼することが当たり前なのだが、アメリカではその感覚自体がない。他の国でも、恐らくありえない。日本人は、困っていたらお互い助け合うことが美徳として沁みついている、ずば抜けて連帯感の強い国民だ。しかし、ここで注目してもらいたいのがアメリカだ。平均寿命が77・8歳と低いが、ソーシャル・キャピタルは全体的に見るとそれほど低くはない。なぜ、このようなことが起こっているのか。
 実は、寿命を左右する要因には、「経済格差」も大きく関係している。東京大学で行われた収入の不平等と健康に関する研究で、所得格差を表すジニ係数が0・05増加するごとに、その地域における死亡率は8%ずつ増加するということが明らかになった。
 また、ハーバードと日本福祉大学との合同調査でも、愛知県知多半島内の25の地域で、介護不要な65歳以上の高齢者1万5225人を対象に、ソーシャル・キャピタルだけでなくジニ係数も同時に測定する調査が行われた結果、健康状態が良い場合は、ソーシャル・キャピタルが高く、ジニ係数は低くなるということが分かったのだ。
 また、ジニ係数とソーシャル・キャピタルの間には、一方が高くなるともう片方が下がるという関係性も見つかった。つまり、格差が激しい社会では、人々の心に余裕がなくなり、ソーシャル・キャピタルは低くなる。その結果、人々の健康までもが損なわれてしまうということだ。今、この悪循環に陥ってしまっているのが、世界一の格差大国、アメリカだ。
 アメリカでは、全人口のうち、たった5%の資産家たちだけで、全体の富の60%を保有している。しかしその一方で、労働人口の30%もの人が時給8ドル以下の貧しい暮らしを強いられている。今、日本もアメリカと同じ道を辿ろうとしている。急速な経済成長が始まった'50年代から平均寿命も同様に伸び始め、'70年代に入るとアメリカや先進各国を追い越して1位になった。その後、「一億総中流」といわれた'90年頃までは、平等で連帯意識の強い社会をバックボーンに、一定の割合で伸び続けた。ところが、バブルが弾けてから今に至るまで、格差は急激に広がり続けており、平均寿命の伸びは頭打ちになっている。'11年のデータでは、ついに男性の平均寿命はスウェーデン、オーストラリア、スイスなどを下回るようになってしまった。女性は今も1位だが、このまま何の手も打たずに格差の拡大を放置していくと、早晩、間違いなく長寿国から脱落してしまうだろう。震災時にも遺憾なく発揮された日本人の思いやりの心。この国の誇るべき美徳を、決して失うわけにはいかない。「週刊現代」2012年9月15日号より
 
治安のよい安定したコミュニティが失われ、非情な格差社会や無縁社会が恐ろしい勢いで拡がっている。人を信頼できない世の中、経済的余裕のない生活、出自で決まる階級社会・・・・平均寿命にまで影響を及ぼしていく・・・・しかし、言われてみると、非常に納得、得心が行く結論である。
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