オータムリーフの部屋

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テロ等準備罪

2017-06-13 | 政治

「オリンピック開催に向けたテロ対策に必要」と訴えて、政府が採決を強行しようとしている「テロ等準備罪」。しかし、この法案は過去に3度も廃案になった「共謀罪」と中身はそっくりだ。

かつて共同通信社で公安担当の記者を務め、『日本の公安警察』(講談社現代新書)の著書がある、ジャーナリストの青木理氏によると、警察目線で考えると、分かりやすいという。

実行された犯罪なら客観的な事実だが、その前の『話し合い』や『同意』で取り締まるとすれば、主観的なものでしかない。それを取り締まろうとすれば、普段から『こいつは怪しい』とか、『やつらはテロリストだ』と目星をつけた人や組織を日常的に監視し、彼らの思想、信条にまで踏み込んで目を光らせない限り不可能だという。誰を監視するのか、誰がどの範囲で、どこまで監視するのかも捜査当局の判断で決めることになる。その具体的な手段にしても、現状の『通信傍受法』による電話盗聴やメール傍受だけでは足りない。犯人たちがよほど間抜けでない限り、テロや殺人の相談を、盗聴の危険がある電話やメールでするなんてことはありえないからだ。
「犯人たちが共謀をしたという決定的な証拠をつかもうとするなら、『密室での会話の盗聴』も必要だということになる。つまり、まじめに捜査しようとすればするほど、プライバシーなどそっちのけ、基本的人権を侵害してでも徹底的な監視体制を実現しなければならなくなる。そうまでして『安全・安心』を優先し、犯罪捜査を優先させるというなら、すべての家庭に監視カメラを取りつければいい。日本で起きている殺人事件の半数は親族間の殺人なんですから。テロ等準備罪は、そういう話を私たちに突きつけているんです」(青木氏)

とはいえ、テロリストや暴力団、マフィアなどの「犯罪組織」を普段から監視し、犯罪を未然に防ぐ必要もある。ある程度、自由や人権を犠牲にすることも必要なのでは?

だが青木氏は、「現実には警察や公安の能力とセンスの問題であって、テロ等準備罪の有無などまったく関係ない。それよりも、テロ等準備罪の形で警察に巨大な『権限』と膨大な『情報』へのアクセス権を与えることの危険性について真剣に考えたほうがいい」と指摘する。

「1995年に戦後日本最大のテロ事件ともいえる『地下鉄サリン事件』が起きたとき、私は公安担当の記者だったのですが、公安警察は事件が起きるまで危険を察知できませんでした。それは当時、『共謀罪』がなかったからではなく、単に彼らに『能力とセンス』がなかったからです。当時の公安がひたすら固執していたのは共産主義者や左翼の監視、取り締まりであって、オウム真理教のような『宗教法人』など、『オレたちが相手にするものじゃない』とまったく動こうとしませんでした。ところが、彼らがいったん本気になって“やる”となったら、あらゆる法律や手段を駆使しての監視や思想調査、微罪やでっち上げでの別件逮捕、盗聴といった違法捜査まで、オーバースペックで徹底的にやります。そんな公安は最近、オウム事件で信頼を損ねたことなどで存在意義を問われ、権限の拡大に躍起です。例えば、かつての『反共』一本やりではなく、一般の政治情報なども集めるようになっていったのです。彼らが本気になれば、政治家のありとあらゆる情報、それこそ『下半身』スキャンダルまで徹底的に収集し、『政治家を自在に操る』ことだってできてしまう。戦後、警察官僚として警察庁長官まで上り詰めた後、政界に転身し、中曽根内閣で官房長官を務めた故・後藤田正晴氏は、過去、『日本にもCIAのような情報機関が必要か?』と聞かれた際、『個人的には必要だと思うが、それを日本の政治がきちんとコントロールできるかといえば、なかなか難しいだろう』と答えたといいます。それは長年、警察組織の中枢にいた彼が、治安機関というものの恐ろしさ、そして『情報』の持つ力について、身をもって知っていたからではないでしょうか。」(青木氏)


公安は罪を犯す可能性があると考える個人や団体を監視しなければならなくなる。事前に取り締まろうとすれば、そうせざるを得ないからだ。一般市民が巻き込まれる云々の議論には違和感を覚える。何人も罪を犯していない段階で捜査されることは人権侵害に当たるからだ。政権に無害な人は対象にならないかもしれない。しかし、社会に異議申し立てする人が片端から捜査対象になる社会、言論の自由が脅かされる社会は正常とはいいがたい。

2010年に、警視庁公安部の内部資料と見られる情報がインターネット上に流出した。国内に住むイスラム教徒が捜査対象になっていた。イスラム教徒というだけであらゆる情報が吸い上げられていた。
警察がモスク前で24時間態勢で監視し、出入りする人を片端から尾行。電話番号や銀行口座記録から接触した人や家族の交友関係まで調査していた。治安組織とは社会体制の左右を問わず、そういうものなのだ。アメリカの国家安全保障局(NSA)は、わずか10年で世界中の電話や通信を盗聴するようになってしまった。

警察に秘密法や共謀罪のような武器を与えたら、間違いなく冤罪は増えるだろう。そして、テロが起きたら・・・・・メディアや社会が声をそろえて「もっと捕まえろ」「もっと取り締まれ」と叫ぶ。
捜査対象が際限なく広がる。安全安心を際限なく追い求めれば、自由やプライバシーは死滅する。そして、現政権のやりたい放題に歯止めをかける反対勢力が根絶やしになる。

特高警察と治安維持法の復活がどれほど恐ろしい状況を招くか、国民は危機感をもつべきなのだが・・・・・自分は捜査対象とならないと高をくくる。

①テロリズム集団は組織的犯罪集団の例示として掲げられているに過ぎず、犯罪主体がテロ組織、暴力団等に限定されるわけではない。
②準備行為について、計画に基づき行われるものに限定したとしても、準備行為自体は犯罪である必要はない。
③対象となる犯罪が277に減じられたとしても、組織犯罪やテロ犯罪と無縁の犯罪が対象とされている。

共謀罪が成立すれば「やるかもしれないから」という理由で捕まえられるようになる。「世の中にいると邪魔だ」と思う人物を拘束して留置できる。公安警察にとって容疑なんてなんでもいい。捕まえることに意味があるからだ。公安警察には「転び公妨」という手法があり、捕まえたい人物の周囲を公安警察官が取り囲み、そのうちのひとりが「あぁっ、痛い痛い!」といって転ぶ。そして「公務執行妨害だ」といって逮捕する。その後に強制捜査して、情報収集すれば、対象組織に強烈なダメージを与えることができる。
オウム事件で公安警察が捜査を本格化させ、信者を片っ端から捕まえていったときのエピソ-ドが公安の恐ろしさを物語る。公安部の幹部は当時、「過激派に比べればラクだったよ」と言っていた。そして幹部信者のあらかたを捕まえ、最後に麻原彰晃を捕まえる段階になった時のことだ。刑事部と公安部の意見が対立した。刑事部は「麻原を捕まえるんだったら、地下鉄サリン事件か、それに匹敵する逮捕状で捕まえたい」と。一方の公安部は「公務執行妨害でもなんでもいいから、とにかく踏み込んで拘束すればいいんだ」と。

特定秘密保護法と組み合わせば、鬼に金棒だ。
特定秘密保護法の最大の問題点は「何が特定秘密なのかわからない」ことだ。そして、もし特定秘密だった場合、メディアも強制捜査を受ける。メディアは情報源と自分を守るために、特ダネを入手しても報道を自粛する。強制捜査の目的は特定秘密を漏洩した人物を特定することだ。ジャーナリストの側からすると、内部告発者を必死で守らなければならない。パソコン内のデータや携帯電話の通信記録、メモや資料まで押収されれば、守るのは極めて難しい。したがって、特定秘密に該当する恐れがあるなら報道しないほうがいい、ということになる。内部告発者にしても、特定秘密保護法違反は最大で懲役10年の刑を課されかねないから、萎縮してしまう。スノーデン氏はメールなどの通信情報を網羅的に閲覧できる特殊なソフトをNSA(米国家安全保障局)が日本側に提供していた、と告発している。既に警察や防衛省が使っているかもしれない。使っていれば違法行為だが、それを調べるすべはない。スウェーデンは、公務員がその職務に関わる秘密を家庭で洩らすと公務員法違反で摘発されるが、ジャーナリストに話す場合は摘発されないそうだ。約250年前にできた憲法のひとつを構成する情報公開法があって、ジャーナリストに話す場合は「公益目的の情報漏洩」ということで摘発されないという。
多少なりともまともな与党政治家がいれば、特定秘密保護法のような「情報を隠す法」に対応して国民の知る権利を守る情報公開法の整備を試みるだろうが、官僚とグルになって何でもかんでも隠そうとする。
現在の公文書管理法ですら不十分な内容とはいえ、公文書を「健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源」と位置づけ、「主権者である国民が主体的に利用し得るもの」と明記している。この法律の制定に尽力した政治家のひとりが福田康夫元総理だそうだ。各省庁がどんなふうに動き、どんな意思決定の過程を経て政策を定めたのか。国家の歴史を正確に記録し、後世に遺していくというのは、むしろ保守の政治家の責任においてなすべきだろう。一年を経過したから、廃棄したとうそぶく。追及されれば、記憶にないと公言する。そんな認知症が疑われる官僚や政治家は即刻首にすべきだろう。

日本の情報に対する態度は、驚くほどお粗末で恥ずかしい限りだ。2011年に公文書管理法が施行されたが、以後、記録を残さなくていい、議事録も必要ないといった情報隠蔽体質が顕著になっていった。
国民が政府についてすべて知っていることが民主主義の根幹だ。

財務省が森友学園になぜ8億円も値引きして売ったのか。豊洲の新市場予定地に、なぜあんな地下空間が作られたか。財務省や都庁は隠し続け、誰にもわからない。内部告発者は名誉をいたずらに傷つけられ、辞任させられる危険におののく。

テロ等準備罪が成立し、それに伴って捜査当局の情報収集能力がさらに膨れ上がれば、警察組織に巨大な権力を与えることになる。そして、警察の力が「政治」と結びついたとき、その影響は計り知れない。巨大化した権力が、非常事態をきっかけに暴走を始めたとき、それを止める組織も個人も簡単に抹殺されてしまう。独裁国家はロシアや中国の専売特許でなくなりつつある・・・・

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