オータムリーフの部屋

残された人生で一番若い今日を生きる。

筋弛緩が起きる睡眠薬

2017-12-30 | 健康
年をとると寝つきが悪くなる。布団に入ると眠れない状態が続き、1時間以上も覚醒状態が続く。
初めは旅先でのことだったが、それが日常生活でも当たり前になる。眠れないときのためにと処方してもらった睡眠導入剤に手が伸びる。15分ほどで、意識が途切れ、夢も見ない熟睡状態に入るのだから、とても気持ちがいい。一番軽い1時間ほどで切れるはずの睡眠薬を安易に常用してしまった。
 
異変は1年ほどの常用で始まった。たまに薬を飲まないで眠ると、悪夢を見るのである。しかも、誰かに首を絞められて息ができない夢を見る。それ怖さに睡眠薬にますます頼ってしまう。睡眠薬がなければ、眠ることもできない状態になってしまった。医者にそのことを告げると、無呼吸症候群を疑われた。
肥満の方がなると思い込んでいた無呼吸。でも、簡単に調べられるというので一晩睡眠薬を飲んで測定してみた。
1時間に5回の無呼吸が発生していた。しかも、睡眠後1時間で現れる無呼吸の程度はすごかった。最長で1分半も続き、血中酸素濃度が80%に低下していた。健常者の濃度は96-99%だ。一般に90%を切れば呼吸不全と判断される。そんな命にもかかわる事態が毎晩起きていたにもかかわらず、本人は快眠だと思い込んでいたのである。まだ悪夢を見て眠れない、夜中に何度も起きてしまう方がましではないか。
 
即座に睡眠薬を止めた。2週間ほどで、無呼吸だけではなく、期待していなかった改善があった。ここ半年ほど便秘に悩んでいたのが、睡眠時の大蠕動が戻ってきたのだろう。前のような快便が戻ってきたのである。
そして、のどのイガイガやせき込みが戻ってきた。実はこの数年花粉症が改善していたのである。加齢のせいでアレルギー反応が現れなくなったと思っていたが、これも睡眠薬のせいかもしれない。
 
年齢とともに睡眠は変化する。睡眠が浅くなり、中途覚醒や早朝覚醒が増加する。
年齢とともに体力が落ち、老眼になり、白髪が増えるように睡眠にも変化が生じるのである。
体内時計の加齢変化によるもので、睡眠だけではなく、血圧・体温・ホルモン分泌など睡眠を支える多くの生体機能リズムが変化する。そして、睡眠が浅くなる。深いノンレム睡眠が減って浅いレム睡眠が増える。そのため尿意やちょっとした物音で目が覚める。
眠気がないのに寝床に入ることはやめた方がいい。寝つきは悪くなるし、中途覚醒が増えてしまう。年齢を重ねるごとに実際に眠れる時間は短くなって当然なのだから、眠れないことを気にする必要はない。睡眠時間が短くなるのに寝床にいる時間が長くなると、眠れぬままに寝床でうつらうつらしている時間が増えて睡眠の満足度も低下する。舌根が弛緩して、気道をふさぎ、無呼吸の悪化を招く。腸の弛緩によって、睡眠時の大蠕動が起きずに、便が滞留する。高齢者にとって、筋弛緩は体全体に悪影響を及ぼす。おそらく、尿漏れなども悪化するのではないかと推測する。
 
加齢とともに、死別・独居などの心理的なストレスが加わり、不活発でメリハリのない日常生活、体調悪化、その治療薬の副作用などによって、不眠症をはじめとするさまざまな睡眠障害にかかりやすい。狭心症や心筋梗塞による夜間の胸苦しさ、前立腺肥大による頻尿、皮膚掻痒症によるかゆみ、関節リウマチによる痛みなど、不眠の原因は山ほどある。
 
アルツハイマー病などの認知症では、さらに睡眠が浅くなる。重度の認知症ではわずか1時間程度の短時間でさえ連続して眠ることができなくなるという。またしっかりと目が覚めきれず「せん妄」といわれるもうろう状態がしばしば出現する。このような時には不安感から興奮しやすく時に攻撃的になるため、介護の負担が増す。認知症の睡眠障害に有効な薬物療法は知られていない。睡眠薬や鎮静薬を使いすぎると、強い眠気や誤嚥、転倒・骨折などのために生活の質が低下し、結果的にますます介護負担が増加する。
 
成人の約20人に1人が睡眠薬を服用しているという。健康保険組合の年代別処方率の調査結果は、65~74歳では19%になっている。
これまでの研究では、非ベンゾジアゼピン系睡眠薬で心臓発作リスクを50%増大させる、週2回以上の服用で肺がんリスクも高まるという。
さらにイギリスの研究では、さまざまな種類の睡眠薬いずれも、服用によって骨折のリスクが高まる。65歳以上の服用者では、1年に1回以上骨折しているケースが30%強もあったという。
 
安易に睡眠薬で問題を解決してはならない。高齢者では若年者に較べて睡眠薬に対する感受性が高く、体内から排泄する力も弱くなる。要注意である。

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