日々の泡

弁護士杉本 朗(神奈川県弁護士会所属)のブログです。個人の雑感発信用で、業務用ではありません。

原武史・平成の終焉(岩波新書)

2019-05-04 09:55:44 | 本の話

明仁さんの退位発表後,岩波書店で編集者さんなどに対して行われた,天皇退位や平成の終焉に関する計8回の講義を元に,まとめられた本。

まず,明仁さんの退位の「おことば」を読み解くところから始まり,次いで平成前史として明仁さんと美智子さんの皇太子,皇太子妃時代が語られ,平成史として明仁さん即位後の時代が語られ,最後にポスト平成の見通しが語られる,という4部構成になっている。

退位の前後から,なんとなく明仁さんいい人的なムードの中でいろんな言説がなされていたように思えるけど,原教授はそうしたムードを遮断し,テキストとしての「おことば」の分析から入る。また,明仁さん,美智子さんの行動についても,出来るだけそれが客観的にどのような意味を持つものなのかを解析しようとしている(もちろん,客観的にどのような意味を持つものなのかという問いかけに対する答はきわめて主観的なものではあるのだが)。

この代替わりの時期に,改めてプレ平成〜平成〜ポスト平成という時代を考えるうえではとても示唆的な本だと思う。

あとがきに,宮内庁のサイトで原教授の新聞での発言が実名で非難されていることが紹介されているが(本書はそれへの再反論としても書いたそうである),それって宮内庁やりすぎなんじゃない?と思う。
たとえば,政権批判の議論がなされたとき,内閣官房のサイトでそれを非難するようなものではないですか(今の政権だとあり得なくはなさそうなのが残念ですが)。
なにやら背後に誰かがいるようなことを原教授はにおわせているが,誰なのか実名を知りたい。

 


呉座勇一『陰謀の日本中世史』(角川選書)

2018-11-25 22:45:07 | 本の話

ちょっと前に,呉座勇一さんの『陰謀の日本中世史』(角川選書)を読んだ。

本能寺の変の真相,に代表されるように,日本中世史にはさまざまの陰謀論があるけれど,専門家はあえてそういった陰謀論を否定しようとはしない。それは,一目で荒唐無稽と分かるような話の間違いを証明しても,学界では研究業績にならないからだ。しかし,全ての日本史研究者が「時間の無駄」と考えて無関心を決め込めば,陰謀論やトンデモ説は致命傷を負うことなく生き続ける。誰かが猫の首に鈴をつけなければならない,として呉座さんはこの本を書いた。

いくつもの陰謀論について,歴史学の手法に則って,客観的・実証的な分析が行われていて,読んでいてとても興味深い。

しかしそれ以上に面白かったのは,最終章で,陰謀論の特徴,人はなぜ陰謀論を信じるのか,をまとめているところだった。

陰謀論の特徴とは,(1)因果関係の単純明快すぎる説明,(2)論理の飛躍,(3)結果から逆行して原因を引き出す,とまとめられている。また,陰謀論者は挙証責任を批判者側に転換することが指摘されている。

そして,人はなぜ陰謀論を信じるのかといえば,陰謀論が単純明快で分かりやすいからであり,「歴史の真実」を知っているという優越感をくすぐられるからである,とされている。

なるほどなぁと思うことしきりであると同時に,日本通史の決定版!と銘打たれて最近売れている本が,こうした特徴を兼ね備えていることに気が付いた。


最新くらしの法律相談ハンドブック刊行!

2011-11-03 23:08:16 | 本の話

私が編集委員の一人をつとめていた、『最新くらしの法律相談ハンドブック』が刊行されました。

10年ぶりの改訂です。

自由法曹団の団員である弁護士400名足らずが、日常の業務の中から問題点をピックアップし、解説を書きました。

ぜひ市民のみなさんにもお買い求めいただければなぁと思います。

5250円(税込み)とちょっとお高いですが、その価値はあるのではないかと思います。

自由法曹団本部へお申し込みいただければ、4200円(税込み。送料別)でお買い求めいただけます。

自由法曹団まで、住所・氏名・連絡先と購入希望冊数を書いて、FAXないし郵便でお申し込み下さい。

自由法曹団

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