アトリエ 籠れ美

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平成27(2015)年5月4日より

イエローオーカーライト

2016-03-14 08:11:41 | 画材、技法、芸術論
 油絵具のパレットで欠かせないのがイエローオーカーだとされるが、私のパレットには長らくイエローオーカーはなかった。代わりに使っていたのがイエローオーカーライト。そんな色ありましたっけ、という方も意外と多いんじゃないだろうか。画材店の油絵具コーナーへ行けばちゃんと置いてあります。

 ではこの2色、どう違うかと言うと、顔料がイエローオーカーはPY43(天然黄土)で、イエローオーカーライトはPY42(合成酸化鉄黄)である。ということは、イエローオーカーが半透明であるのに対して、イエローオーカーライトは不透明である。乾燥速度、耐光性、堅牢性は共に同じであるが、色味は似て非なるもので、イエローオーカーはいわゆる黄土色、土っぽい黄色であるのに対して、イエローオーカーライトは、イエローオーカーよりも明るく(だからライトと言うのだが)、からし色である。

 私がなぜイエローオーカーでなくイエローオーカーライトを使っていたのかというと、不透明であることと、黄色としても使えるからだ。もちろんイエローオーカーも黄色の代わりになるが、イエローオーカーライトの方がより黄色に近い。

 さて私が使ったことのある黄色は、イエローオーカー、イエローオーカーライト、カドミウムイエロー、オーレオリンの4色(残念ながらクロームイエローは使ったことがなので、この記事では扱わない)。この中で唯一の透明色がオーレオリンである。かなりしっとりとした感触で、色味はカドミウムイエローと変わらない。使ってはみたものの、私はあまり必要性を感じなかった。だから今は使っていない。

 問題はカドミウムイエローで意外と使い勝手が悪いことに気づいた。混色するにはいいが、単独では妙に使いづらい色味で、あっさりしているといか、品が良すぎるというか、もう少し濃くないと単独では使えない。だから単独で黄色として使えるイエローオーカーライトを私は選び、イエローオーカーもカドミウムイエローも使わずにきた。

 ところが最近、イエローオーカーライトではなくイエローオーカーを使うことにした。というのは私の場合、不透明のイエローオーカーライトではなく、半透明のイエローオーカーの方が使い勝手がいいとわかったからだ。私が求めるのは不透明ではなく、半透明の黄色というわけだ。

 イエローオーカーで困るのは、高価なものだと色味が白っぽくなり、黄色味が弱くなってしまうことだ。クサカベGUILD(ギルド)のイエローオーカーがそうで、買って使ってみたがこれでは困ってしまう。使ったことはないが、ホルべインYUICHI(由一)のイエローオーカーも色見本を見る限りだが、これも白っぽい感じだ。だとしたら、やはりこれも使えない。

 もし不透明でイエローオーカーのような土っぽい黄土色を探している方がいるなら、つまり「イエローオーカーライトは不透明だから使っているが、色味はからし色ではなくイエローオーカーのような土っぽい黄色がいい」というなら、文房堂のイエローオーカー(旧文房堂絵具、現ハルゾーではなく、今現在の文房堂絵具)を使ってみるといい。この文房堂のイエローオーカーは顔料がPY42(合成酸化鉄黄)であるにも関わらず、色味はPY43(天然黄土)である。実際に使ってみて、おお、と内心喜び、にやにやしていたのを思い出す。

 何のことを話しているのかよくわからない(何でこんな話をしているのか全く興味を持てない)という方もいるかもしれませんが、黄土色は油絵具の基本色であるだけに奥が深い。まして私のように油絵制作で最も使用頻度が高い絵具が黄土色である場合、どうしてもこだわざるを得ない。

 もしイエローオーカーは使っているが、まだイエローオーカーライトは使ったことがないという方は、ぜひ一度イエローオーカーライトを使ってみましょう。色の表現の幅が広がることは間違いなしです。


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