アトリエ 籠れ美

絵画制作、展覧会、美術書、趣味、その他日常の出来事について
平成27(2015)年5月4日より

「江戸の銅版画〈新訂版〉」

2017-06-02 06:07:45 | 美術書全般、美術番組
江戸の銅版画〈新訂版〉 菅野陽 2400円+税 臨川書店

 葛飾北斎の代表作に「冨嶽三十六景」があるが、私は昔からこの作品を見ていて、いつも違和感があった。

 なんか違うなあ、何かが違う。でも何がどう違うのか、説明できない。そんな風にずっと感じていたのだが、本書を読んでその謎が解けた。

 それというのも、もともと北斎は西洋の銅版画がやりたかったのである。ところが司馬江漢が教えてくれなかったので、銅版画制作ができず、悔しくて仕方なかったらしい。

 なるほどと思った。私が長年感じていた違和感は、この「冨嶽三十六景」という木版画のシリーズに、銅版画っぽさ、銅版画の臭いを感じていたからだ。要するに西洋っぽいのである、この「冨嶽三十六景」は。

 本書は江戸の銅版画について書かれた地味な本であるが、なかなか興味深いことが多々書いてある。本格的な研究書ゆえ、興味がないと退屈しがちかもしれないが、美術好きならぜひ一読を勧めたい。銅版画を制作している人なら、なおのことである。

 付)こうした研究書がもっと出版されるといいな、と私は思うのだが、なかなか難しいかなあと。
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「美の巨人たち」傑作選

2016-10-28 06:10:28 | 美術書全般、美術番組
 私が美術番組「美の巨人たち」を見ているのを知った友人から、自分の母親が油絵教室へ通っているから、何か面白そうなのを選んで送ってくれと、何年か前に頼まれたことがある。そこで私は適当に見繕って送ったらとても面白かったと大好評だった。

 当時ビデオに録画して保存していたものをHDD内蔵DVDレコーダーに取り込んで、DVD-Rへダビングしたものだから、画質はかなり悪かった。もちろん今はBDレコーダーで毎週予約録画をしている。

 さてその好評だったDVD-Rのリストを紹介したいと思う。選ぶときに条件にしたのは、面白いのはもちろんだが、幕間劇も十分楽しめるということだった。毎回番組内に、取り上げる作品に関連した寸劇が入るのだが、これがつまらなかったりする。だからそうしたものは候補にしない。つまり番組を通しで見て面白いもの限定で選び、なおかつ出来の良いもの、ためになるもの、という基準で順位をつけた。

 とはいえ私はこの番組を初回から熱心に見ていたわけではなく、最初の1年くらいは見ていなかったし、見始めてからもしばらくは、取り上げる作品が個人的につまらなそうだと思ったら、見ていなかった。今はそんなことはなく毎回見ているが、当時の私には、まだ貪欲さが足りなかった。

 そういうわけだから、熱心な「美の巨人たち」ファンの方は、あまり目くじら立てずに、ご愛嬌ということで。

 では「美の巨人たち」傑作選のリストを紹介。

 ①フラゴナール「ブランコ」
   2005(平成17)年10月8日放送
 ②スーチン「ドアボーイ」
   2002(平成14)年9月7日放送
 ③ジャコメッティ「歩く男」
   2002(平成14)年8月24日放送
 ④バラガン「ヒラルディ邸」
   2003(平成15)年1月11日放送
 ⑤ブラック「ポルトガル人」
   2002(平成14)10月29日放送
 ⑥歌川国芳「みかけはこわいがとんだいい人だ」
   2004(平成16)年2月7日放送
 ⑦ホガース「放蕩息子一代記」
   2006(平成18)年1月14日放送
 ⑧曽我蕭白「群仙図屏風」
   2001(平成13)年12月22日放送
 ⑨東洲斎写楽「三世大谷鬼次の奴江戸兵衛」
   2002(平成14)年5月18日放送
 ⑩藤田嗣治「ライオンのいる構図」
   2006(平成18)年4月8日放送
 ⑪川瀬巴水「新版画」
   2006(平成18)年1月29日放送
 ⑫ヴラマンク「サン・モーリス・レ・シャランセイ」
   2003(平成15)年2月8日放送
 ⑬横山操「炎炎桜島」
   2005(平成17)年10月15日放送
 ⑭スーラ「グランド・ジャッド島の日曜日の午後」
   2001(平成13)年7月28日放送

 と、まあこんな感じです。ということで、私が「美の巨人たち」の放送分で一番好きなのは、フラゴナール「ブランコ」ですかね。ユーモアたっぷりで、面白いし、ためになる。以下バラガン「ヒラルディ邸」までのベスト4は、特に出来がいい。

 こうして改めてリストを見てみると、やっぱり昔の「美の巨人たち」は面白かったなあ、と。もしこの番組の過去の放送分で面白いもの、ためになるものを探している方は、このリストを当てにしてもらって結構です。かなりの厳選です。

 付)最近の「美の巨人たち」はさえないなあ。完全に2週目に入っていて、もはや新規の視聴者が対象で、私のような古株はもう相手にしてくれない(というか、そんな余裕はないというのが正直なところだったりして)。そんなにそんなに新しいネタないものね。切り口変えるったって限度あるし。仕方ないところでしょうか。
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「あやしいルネサンス」

2016-09-13 06:43:07 | 美術書全般、美術番組
すぐわかる 画家別 幻想美術の見かた【改訂版】
 千足伸行著
 2000円+税 東京美術 *写真左

あやしいルネサンス
 池上英洋 監修・著 深田麻理亜 著
 1800円+税 東京美術 *写真右

 書店で安価な幻想美術の画集を探していて、写真左の「すぐわかる 画家別 幻想美術の見かた」しか見つからず、がっかりしていた方に朗報。ついに出た、待望の一冊が写真右の「あやしいルネサンス」だ。

 幻想美術の解釈によるが、写真左の「すぐわかる 画家別 幻想美術の見かた」は、例えて言えば、全ての文学作品はSFだ、の論理に従い(そういうことを言うSFファンも一部いて、それはそれで一理あるのだが)、SFガイドブックに多数の古典文学を紹介するようなもので、何かが間違っている。
 モロー、ベックリン、デ・キリコなどは許容してもいいけれど(それすら駄目って人だって中には当然いるでしょうが)、アングルやゴーギャン、ロートレック、ルソーとなると、もう完全に話が違う。読者はそんなものを求めてはいない。多分に美術史寄りの選択で、偉い大学の先生に任せるとこうなってしまう典型でもある。

 幻想美術といって、一般の人が求めるのは、もっと空想的なもの、今となっては異質な、現代人の目から見れば不思議な、異様なものであるはずだ。そうした欲求に見事に応えてくれるのが写真右の「あやしいルネサンス」だ。
 題名が「あやしいルネサンス」なだけに、ルネサンス限定だが、見る者の想像を刺激し、見る者に読み解くことを要求する作品が満載だ。画家が想像力を駆使して描き出したこれらの世界は、現代人には大変魅力的で訴求力がある。

 さて、この本を買って満足された方も多いだろうが(かく言う私もその一人だが)、掲載作品の大半を知っている人も多いはず(私も八割方知ってました)。とはいえこうして1冊にまとめてあるのはうれしいし便利だ。なあーんだ、知っている作品ばかりじゃん、と言わずに買いましょう。
 個人的には第2弾を希望。ルネサンスは探せばいくらでも「あやしい」作品はあるし、何もルネサンスに限らなくていいから、この視点で見つけてくれればいい。第3弾、第4弾と、行けるところまで行ってほしい。でもそのためには売れないといけない。だからみんな、この本買って。
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吉田博の木版画

2016-08-16 06:45:40 | 美術書全般、美術番組
 今年、2016年の7月10日の日曜美術館は「木版画 未踏の頂へ~吉田博の挑戦~」だった。とても貴重な回で、吉田博の木版画をまとめて見ることができた。木版画だけでなく、スケッチや油彩も見れたのも大きかった。

 何せ私は吉田博の木版画をわずかしか見たことがなかったので、私の中では評価保留だった。良いとは思うものの、もう少し作品を見ないと何とも言えないよなあ、と思っていた。で、今回、番組でまとめて見ることができ、吉田博の木版画は良いなあと実感しました。

 よく考えると川瀬巴水と同時代なので、版元は渡邊庄三郎になるのね。私は川瀬巴水が大好きなんですが、これからは吉田博も私のお気に入りの木版画家になります。渡邊庄三郎って、関東大震災の影響で大変苦労した版元なんですが、川瀬巴水と吉田博という両巨匠の作品を扱えたわけで、その意味では大変幸せな人生だったんじゃないでしょうか。

 でもってこの番組の最後に、「生誕140年 吉田博展」の巡回展が、東京は新宿の「東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館」で2017年の7月8日から8月27日まで開催されるという告知が。

 狂喜したんだけど、2017年って、来年じゃん。来年まで待たないといけないの? げっ。今すぐ見たいんだけど。しょうがないなあ。来年絶対に行きます。這ってでも行きます(「お金がなかったら、親から借りて行く」の意)。

 もう今年の手帳に、来年の7月に吉田博展があると書き込みしました。それまでは仕方がないので、録画したこの番組を見て溜飲を下げることにします。

 付)滅多にない機会になると思いますので、油絵しか興味のない人も、行けるならぜひ行きましょう。私は図録も買うつもりです。
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「Q&A方式 水墨画制作ハンドブック」

2016-04-13 06:11:06 | 美術書全般、美術番組
 Q&A方式 水墨画制作ハンドブック 斉藤南北著
  発行:可成屋 発売:木耳社
   定価(本体1942円+税)*定価は当時のもの。


 この本は水墨画制作を目指す人はもちろんだが、むしろ、敢えて水墨画を鑑賞する人に推薦したい。Q&A方式なのでどこから読んでもいいし、辞書代わりに使うことができる。

 私も美術館の企画展で水墨画を鑑賞し始めた頃、気になることがいくつも出てきた。そんなとき、たまたま書店でこの本を見つけて、買って読んで疑問が解消した。

 内容は多岐に渡るので、水墨画に関心のある方は一度読んでみてほしい。気軽に水墨画への理解が深めることができる。
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まど・みちおの絵画

2016-04-12 06:48:12 | 美術書全般、美術番組
 去年、つまり2015(平成27)年の9月27日放送の日曜美術館は「まど・みちおの秘密の絵」だった。

 まど・みちおは、50代の、3年半に約100点描き、長い間押入れにしまっていたという。しかしこの絵はどれも質が高く、素晴らしい出来映えだ。私は、まど・みちおが絵を描いていたなんてことは知らなかっただけに、この番組でその絵を見て、ちょっと驚いた。おお、やるじゃん。いい絵だなあと思った。

 まど・みちおの絵が世間に知られるようになったのは約20年前だという。で世間に知られるようになってその絵の評価はどうなのか。私は高く評価されていいと思っているが、果たしてどうなのか。

 とにかくよく描き込まれているのがよい。とにかく濃密なのだ。この異様な濃密さこそが、まど・みちおの絵の特質なのだ。私はもっと作品が見たいと思う。もし展覧会があれば是非行ってみたいし、画集があれば是非欲しいと思っている。

 まど・みちおは再評価待ちの画家である。いったい日本の美術評論家たちは何をしているんだろうか。

 付)どうやら詩画集なら新潮社から出ているみたいです(約3500円)。今度書店で中身を確認してから、買ってこようと思ってます。
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画材メーカーの無料小冊子

2016-04-01 06:11:14 | 美術書全般、美術番組
 画材店に、画材メーカー発行の無料配布の小冊子やチラシ(写真参照)が置いてあることがある。大型画材店なら大抵置いてある。私はよく新宿世界堂本店からもらってくる。遠慮せずに一部ずつもらってくるとよい。
 画材メーカーが広告宣伝する手段として最も効果的なのが、自社のカタログを画材店に無料配布する、この方法である。だから各社とも力を入れていて、絵を描く側にはいい参考資料となる。
 今更こんなもの要らないという人もいるかもしれないが、隅から隅まで読んでみると、知らないことの1つや2つは必ず出てくる。だから謙虚に読んでみる必要がある。
 こういうのを見て楽しめるようなら立派な絵描きである。鉄道ファンが時刻表を見て楽しんでいるのと同じと言えようか。
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画材メーカー、画材店のホームページ

2016-03-09 06:07:59 | 美術書全般、美術番組
 インターネット環境さえあれば、各画材メーカーのホームページにアクセスできる。もちろん無料である。活用しない手はない。興味はないと言わずに一度見てみるとよい。まずは自分がよく使っている画材メーカーのホームページから始めてみる。新製品情報はいち早く掲載されるし、特に役立つのはQ&Aだろう。私もよく見ている。Q&Aならクサカベ、ホルべインが役立つし、普段よく使っている画材についても一度確認しておくとよい。意外な発見があったりする。
 画材店のホームページも大いに活用すべし。銅版画なら文房堂のホームページが役立つが、ここのホームページは重たいので、私のような低スペックのパソコンだと非常に遅い。木版画ならウッドライクマツムラのホームページが役立つ。油絵画材店のホームページなら俵屋工房は必見。油絵制作は顔料に始まり、いずれは天然樹脂や画布に興味が向く。そんなときに大いに参考になる。
 他にも個人のホームページで役立つものはたくさんある。ぜひとも積極的に探して見つけたいところ。とにかく検索しまくる。しつこく検索し、見つけ次第、即「お気に入りに追加」しておく。私も随分お世話になってます。
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「美術を超えて」

2016-01-06 06:42:09 | 美術書全般、美術番組
[美術]を超えて アレクサンダー・ドルナー著 嶋田厚監訳
                    勁草書房 2200円+税

 科学の歩みと美術の歩みは連動しているということを証明した、大変興味深い書。内容が内容だけに小難しく書くしかないのだが、これぐらいは読みこなしたいところ。
 考えてみると、進化論も当時の社会情勢の影響を受けているし、印象派も当時最先端の哲学や科学理論を取り込んでいる。そして何より誰しも生きている時代の影響、社会情勢から逃れられず、そうしたものから大なり小なり影響を受けて生活している。だからそう考えると当たり前の話なのだが、芸術もそうであると改めて指摘されてみると、はっとすると同時に俄然興味が湧く。
 本書の結論をどう受け止めるのかは読んだ人次第。特に美術制作をしている人には深刻な内容。私自身は本書の結論を受け入れた上で、生涯抵抗活動すると決めました。
 こういう本を本当の意味での美術評論というのではないでしょうか。もはや現代美術ですら古い、過去のものだと言い切ってます。
 美術について新しい知見が得られる稀有な本です。お薦めです。
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「木版画の世界」

2015-12-29 07:28:37 | 美術書全般、美術番組
木版画の世界 第3版   五所菊雄著 定価2000円+税

 この本は書店では売っていない自費出版物で、私はウッドライクマツムラへ行って買いました。ウッドライクマツムラのネット通販で取り寄せることもできます。
 題名は「木版画の世界」ですが、より正確に言うなら「木版画制作の理解が深まる本」です。内容は多岐に渡り、かつ深い。顔料の耐光テストまでやってます。私はこの本を読んで、ようやく彫刻刀の種類について納得のいく理解が得られました。
 この本は木版画制作入門書ではありませんので、私のようにこれから木版画を始めようとする人は別に1冊入門書が必要ですが、それ以外にもう1冊となるとこの本がお薦めです。初心者、上級者を問わず、必須と言っても過言ではありません。逐一かゆいところに手が届く内容になっています。素晴らしいの一言です。私のように油絵を描いている者からすると、こういう感じの本で油絵制作に関する本があれば、なんてつい思ってしまいます。
 非常に実践的な内容です。木版画制作の辞書代わりになりますので、ぜひ買って読んでみて下さい。
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