囲碁日記:明日への一打

囲碁上達を夢見る一アマチュアの日記です。

完本実録囲碁講談

2011年02月15日 23時45分54秒 | 棋書
中山典之六段の「完本実録囲碁講談」を読んだ。

「実録囲碁講談」について書いておられるブログを読み、私も読んでみたいと思ったのだった。
日本経済新聞社から出版された「実録囲碁講談」は中山典之六段の著作で最初の単行本であり、「囲碁クラブ」誌上に昭和50年(1975年)8月号から52年(1977年)正月号まで連載された18回の随筆のうち、12話をまとめたものだったとのことである。
「実録囲碁講談」では連載のうち6話と、それぞれの話の冒頭にあった百字の紹介文が割愛されていたが、岩波書店から復刊されるにあたり、冒頭の紹介文を含め18話すべてが連載当時のままの姿で収録されることとなり、「完本」と銘打ったとのことである。
図書館で借りても良かったのだが、折角の中山典之六段の著作で面白そうだったので手元に置いておきたいと思った。
ネットで調べると殆ど新品は出回ってないようだったが、たまたま丸善で見つけて購入することが出来た。

中山典之六段は「私が書かねば誰が書く」という信念を持って書いたとのことであるが、プロの世界の凄さ、棋士あるいは棋士になれなかった人達の歓びや悲しみを、独特の語り口で淡々と、それでいて鮮やかに描いている。
中山典之六段は21歳の時に外来で初めてプロの入段手合いに参加し、8回の落選を経験し29歳で入段されたということをこの本を読んで初めて知った。ご自身が書かれていることであるが、純粋なアマチュアとして碁の娯しさを知っており、またプロとして苦しさと歓喜の世界も知っておられる。まさに中山典之六段でなければ描けない物語の数々であると思う。

巻頭のあまりにも有名な「今日の蛤は重い」のエピソードから始まり、木谷九段の読みの深さを描いた「戦慄の譜」などプロ棋士の凄さを臨場感ある筆致で見事に再現している他、第七話の「鳳雛の夢」では、今も昔もおそらく変わらないであろうプロの入段試験の厳しさが描かれている。大才の持ち主であったという鳴海院生が入段手合いで12歳の大竹少年に敗れ、その日を最後に日本棋院に姿を見せることはなかったという件には胸を打たれる。

なお、最後の「玉手箱の謎」はプロの正解率がゼロという詰碁にまつわるエピソードが紹介されているのだが、この詰碁は色々なところで登場しているらしい。
塚本惠一氏の「黒白の部屋」に掲載されている「詰碁のルール」の脚注「解けなければプロ」に、似た形の詰碁とそのエピソードが紹介されている。
先のブログでは、「碁の新聞紙上で安永一が、戦前に作ったという詰め碁を披露していたが、それがこれと同じであった」とある。
また、秋山賢司「囲碁とっておきの話」の中にも石田芳夫九段作という「プロ級の難問」として似た形の詰碁(実は失敗作)が紹介されていた。「囲碁とっておきの話」には「似たような筋は別の詰碁にあり、必ずしも石田さんのオリジナルではないが」と書かれている。「別の詰碁」とは上記の詰碁たちであると思われる。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 平均点をあげること | トップ | 票田は開くのか? »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

棋書」カテゴリの最新記事