Vばら 

ある少女漫画を元に、エッセーと創作を書きました。原作者様および出版社とは一切関係はありません。

エピソード5 ジェローデル編 後編 (2)

2014-11-06 22:49:01 | つぶやき

 今回のエピソードは本編に描かれた名場面のいくつかを、新場面と上手に融合させて、ジェローデルの視点からあの日あの時のオスカルの様子を表現している。

 三部会会場を閉鎖したことで、居座る平民議員たちを力ずくで退去させるために、ジェローデル率いる近衛隊に出動命令が下る。自分のかつての上司、そしてプロポーズを断ったオスカルが、人間の盾となり命を賭けて平民議員たちを守ろうとする。ああ、オスカルの立ち姿に圧倒される。今、手元に41年前の本編と、今回のエピソードの同じシーンを広げて見比べているが、どちらもすごい!(41年前は、「屍」に「かばね」とルビを振っているが、エピソード5では「しかばね」になっている。)この場面、ジェローデル編の後編で一番好きかもしれない。命がけのオスカルに、悲壮なまでの美しさを感じる。この時、その鬼気迫る見開かれた瞳にを見て、ジェローデルのその後の生き方が決まったのだろう。この方のためなら死んでもいい。自分が愛するのはこの方しかいない。---と思えたのでは?このページのオスカルは、今回新たに描かれた「あ--あ--そのときのあの方の 鬼気迫るような見開かれた瞳」の、顔のアップの絵にとても惹かれた。瞳に星が飛んでいるわけでない。けれどその目力に不思議なパワー、そして魅力が込められている。

 本編はジェローデルが直接オスカルに向けて、自分の想いを(独り言で)呟いているため、「御身が血に---」の書き出しで始まっているが、今回はソフィアと語るなかでの回想ということで、「彼女の血に---」と言い換えている。そして自ら謀反人となった結果、彼は官位を剥奪されてしまう。

 次の場面(「わが身体から首が切り離され、真紅の血に染められていくことを思い---」が、まだよくわからない。ここだけなんだかジェローデル独特の、耽美的な雰囲気が流れている。描かれているジェローデルの体つきは、がっしりとした男性体型でなく、女性的というか、妙な妖しさがある。バスティーユ陥落の時、おそらく彼は戦いに参加せず営倉にいたのだろう。そのため革命後まで生き延びることになる。だがそれをソフィアに伝えるときのジェローデルの表情は、決して幸せそうでない。彼はオスカルと同じく、7月14日に落命したかったのではないか?彼にとって生涯ただ一人の愛する女性がいなくなってしまったこの世界は、もはや何の輝きも見いだせないのであろうか?このページに至ってようやくこの場面は、ジェローデルがスウェーデンのフェルゼン邸で、ソフィア相手に昔の自分を振り返って語っているのだと分かった。

 二人は夜が明けるまで、ずっと語り合っていたようだ。そしてそんな夜が前にもあったことを思い出す。右手をソフィアの顎に軽く当て、しばし見つめあう二人。その後ジェローデルは、フェルゼンと会って話をしたかったと告げる。かつての恋敵ともいうべきフェルゼンと、オスカルについて昔話をして彼女を偲びたかったのか?そのフェルゼンは、パリではお尋ね者になっているのを知ってか知らずか、ヴァレンヌ逃亡計画を実行するために?ジェローデルとは一足違いでパリに向かう。

「愛する人と 共に死ぬためにパリへ--- うらやましい生き方だ----」やはりジェローデルは、オスカルと共に生涯に幕を引きたかったんだな。この言葉を言う時の、伏し目がちの表情が美しい。

 続きます。読んでくださり、ありがとうございます。



8 コメント

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続けてアップありがとうございます。 (サンボ)
2014-11-07 00:14:27
初めまして。私も昨日後編を読み、しばらくボーッとしてしまいました。本編でも、ジェロはオスカルのため、謀反人になってもいい、と独り言をいってます。オスカルと共に断頭台に立ちたいとさえ思った鬼気迫るオスカルの美しさに取り付かれてしまったのではないでしょうか。
サンボさま (りら)
2014-11-07 06:01:48
 初めまして。コメントをありがとうございます。まだまだ今回のエピソードは、自分の中で消化できていません。土埃が舞い上がるようなアラン編と違い、没落していく貴族たちの、最後のロココの輝きを放つ今回のジェローデル編。これまでのエピソードのどれとも、カラーが違いますよね。サンボさまのおっしゃるように、あの鬼気迫るオスカルの見開いた瞳を見たとき、ジェローデルはもうオスカルの魅力から逃れられなくなったのでしょう。そして死すら恐れなくなり、再び死地パリへと向かっていくのでしょうか?
りらさま (サンボ)
2014-11-07 07:01:19
新エピソードの中で一番重いです。しかも10才のころから晩年まで描かれたってことですよね。
マーガレット後編、本編6巻、11巻と広げながら読みました。
マーガレット読者の娘たちには理解不能でしょうね(笑)
かなりの大人の私も考えました。理代子先生次回作はまだ発表になってませんが、楽しみにしているところです。りらさまのSS、つぶやきも楽しみにしています。
サンボさま (りら)
2014-11-07 17:37:49
 サンボさま、温かいコメントをありがとうございます。アラン編も今回のジェローデル編も、もっともっと読み込まないと---。サンボさまは3冊の本を広げながら、読まれたのですね。「私の屍をこえてゆけ」の絵は、今回のほうが強烈な印象を覚えました。(もちろん、41年前の絵もすばらしいですが)池田先生が今もなお熱い創作意欲を持ち続け、強烈にたたみかけてくるメッセージに、まだ自分がついて行けていません。池田先生には今後もぜひライフワークとして、新作エピソードを描き続けていただきたいと思います。

 サンボさま、私のような者の、つぶやきそしてSSもどきを読んでくださり、ありがとうございます。「ベルばら」は私のバイブルです。今後もよろしくお願いいたします。
このエピソードでジェローデルのイメージ変わりました (冷奴)
2014-11-08 01:17:09
いつも更新楽しみにしております。
「わが身体から首が切り離され、真紅の血に染められていくことを思い---」
のシーンについては、私は池田理代子さんの公式BBSでのコメント、
『ジェローデルの毒も冷たさも、気障さも、そして決して平民と貴族が同じだとは思えないという美意識も、ちょっぴり変態なくらいの思い込みの強さも、全部ひっくるめてジェローデルです。』
に集約されているのかなと思いました。
池田理代子さんはあのページを意外と冷静に描いていたのかな…と(^_^;)
あるいは描き上げてから冷静に見返してこのコメントの境地に至ったのかなと…
読み手の人生経験によっていろいろな解釈ができそうですね。
冷奴さま (りら)
2014-11-08 12:50:48
 コメントをありがとうございます。読んでいただき、ありがとうございます。「わが身体から首が---」の場面は、外国映画にありそうな、ちょっと猟奇的で、ジェローデルが自分自身に酔いしれているような場面ですね。(谷崎潤一郎を思い浮かべてしまいました。)

 その境地は、池田先生ご自身の書き込みのとおりですね。「変態なくらい」とまでおっしゃっている。でも今回のエピソードでは、そんなジェローデルの人間臭い部分にも触れられた感じがします。私も冷奴さま同様、ジェローデルのイメージが変わりました。41年前にあの場面を描いていたら、私も冷奴さまも、ジェローデルに対して、もっと違う感情を持ったでしょうね。
わたしは子供の時からのジェロファンです (りらさま)
2015-08-09 18:48:45
絵柄がずいぶん変わり、ソフトな印象のジェローデルもずいぶん男っぽくなったと思いましたが、確かに、オスカル様の、わが屍を越えて行け!というシーンは美しく、それに魅了されてしまい、自身の愛の終わり所を探しにジェローデル様は死地に赴いたのだと、、、
ファンとして、ジェローデルの心の中を掘り下げてくださったこのエピソードはとても感動しました。
コミックで読ませていただきました。
何年たってもジェローデル様へのわたしの想いも色あせることがありません。
ソフィアとのエピソードも、ジェローデルらしいと思いました。
、、、、感無量です。
子どもの時からのジェロファンさま (りら)
2015-08-10 16:45:31
 初めまして。コメントをありがとうございます。新作エピソードを読み、ジェローデルへの見方が変わりました。彼もまたアンドレと同じくらい長い間、オスカルを想っていたのだなあと。幼い時の出会いから、なんとなく気になる存在であり(エピソード2)、ずっとその想いを秘めたまま、20年近く近衛隊でオスカルのそばにいた。アンドレとはまた違った意味で、彼も苦しかったでしょうね。

 ドレス姿がオスカルと知った時の驚き、そして翌日、何事もなかったかのように軍服姿に戻ったオスカルの後を付いていくジェローデルの複雑な想い、そしてそれがその後の婚約者決定パーティーでの彼の言葉「欲しいと思ったことがあるはずだ---」に繋がっていきます。このあたりの展開が見事です。

 杳として知れないジェローデルの行方。いろいろ想像できますね。子ども時代からのジェロファンさまは、どのように考えていらっしゃいますか?

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