読書と映画をめぐるプロムナード

読書、映画に関する感想、啓示を受けたこと、派生して考えたことなどを、勉強しながら綴っています。

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「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド(下)」(村上春樹/新潮文庫)と「ダニー・ボーイ」

2006-12-29 06:14:18 | 作家;村上春樹
村上春樹の最高傑作といわれることがわかるような気がする。それにしても、この小説における作家の創造力と構築力に感心する。文庫本にしてもおよそ750ページに及ぶ物語を論理の破綻なく展開する能力は著者の力量の剛健さを示している。ぽっと置かれたセンテンスが、後になってフォローされ意味づけされる。著者の得意な仕掛けだが、「あっ、やられた」と呟く自分がいる。

「村上春樹はくせになる」の著者・清水良典氏は本書について次のように書いている。

「この作品は徹底的に自らのアイデンティティーを解析し、葛藤の末にある決意に至る小説である。つまりアイデンティティーの内部の迷宮巡りなのである。その意味で、のちの『海辺のカフカ』が、これを頭において書かれたものだということがよく分かる」。

「つまり『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』は、それ自体で求心的に完結している。うつろう物語ではなく、中心に向かって収斂し、ブラックホールのように消失する物語なのである」。

本書上巻の記事で村上作品にしては音楽に関する記述が少ないと書いた。しかし下巻になると著者の真骨頂、面目躍如というかミュージシャン、楽曲のオンパレード。MJQ、デュラン・デュラン、ジミー・ヘンドリックス、クリーム、ビートルズ、オーティス・レディング、ピーター・アンド・ゴードン、ポリス、松田聖子、マッチ、ボブ・マーリー、J・G・バラード、ラベル、ジム・モリソン、レーモン・ルフェーブル、ヴェンチャーズ、ブルックナー、マイルス・デイビスなどなど。

この堰を切ったように溢れ出てくる音楽の中で本書で最も重要な曲が「ダニー・ボーイ」だ。ビートルズの「LET IT BE」に収録されている「ONE AFTER 909」の演奏終了後にジョンが歌っているあの曲だ。この曲の詞を読んでみると、本書はこの曲がモチーフになっていると思わざるを得ない。「羽音館」(http://www5a.biglobe.ne.jp/~ukina/index.htm)というサイトにこの曲に関する次の記述がある。歌詞については、管理人が転載を禁じているがこのサイトで確認できる。

「『ダニー・ボーイ』は、もともとはアイルランドの街、デリーで生まれた『デリー・エア』のメロディ。それがイギリスのフレデリック・エドワード・ウェザリの手に渡り、メロディが彼の書いた詞にピッタリだということで、1913年に『ダニー・ボーイ』として発表され、まずはアイルランド出身の歌手ジョン・マッコーマックによってヒット」。

「その後、第二次世界大戦中はビング・クロスビーによって人気が出ました。そのほか、多くの歌手によって、世界中で歌われています。英語の歌詞では、出征する息子のことを想う親の歌になっています。哀切ただようメロディと、歌詞が胸にせまる名曲です」。

自分の余命があと一日だったらどんな一日を送りたいか考えておきたい。そんな思いを強いる作品だ。
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