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日々の記憶..... 哲学研究者、赤尾秀一の日記。

 

元外交官 田中均氏のいくつかの記事を読んでの感想

2013年07月18日 | ニュース・現実評論

 

元外交官 田中均氏のいくつかの記事を読んでの感想


2013年06月12日の毎日新聞東京朝刊に「保守主義と歴史認識:/ 右傾化、日本攻撃の口実に 田中均氏に聞く」と題された元外交官の田中均氏の記事が掲載されていました。

http://blog.goo.ne.jp/askys/d/20130619


それをきっかけとして、安倍晋三首相は自身のFACEBOOKのなかで、田中均氏には「外交を語る資格がない」と反論する形で批判しました。安倍氏自身が副官房長官として北朝鮮との外交折衝に当たっていた小泉内閣当時、外務官僚だった田中均氏との間に拉致被害者たちを北朝鮮に一時帰国させるかどうかをめぐって様々な駆け引きがあったことなどが背景にあるらしいです。

さらに、この安倍首相の発言を「一民間人に対する言論弾圧」としてとらえた民主党の細野幹事長や自民党青年局長の小泉進次郎氏らが「批判」したのに対し て、さらに安倍首相がわざわざ訪問先のポーランドから「政治家としての行動に対する自省はまったく無い。だからダメなんです」と細野幹事長を再批判した り、日本記者クラブの党首討論の席上でも質問した朝日記者星浩氏に反論するなど漫画チックな「一騒動」のあったことはご承知の通りです。

いずれにしても、元外交官で「戦後民主主義者」の代表格のような田中均氏には安倍内閣の「右傾化」に対する懸念の種は尽きないようで、ネット上のダイヤモンドオンラインでも「米中韓の関係強化で変わり始めたアジア情勢、ポピュリズムの克服に求められる「政治の決意」」と題する記事を掲載されていました。

http://p.tl/CNfj

安倍内閣の「右傾化」に対するこの田中均氏らのこうした懸念は、「戦後民主主義者一般」に特有の共通するものでもあるらしいです。とくに朝日新聞や毎日新聞、中日新聞、NHKなどの記者系列の、「戦後民主主義」を「謳歌」してきたらしい「高学歴団塊反戦知識人」たちにとっては、現行の「平和憲法」の改正をかかげる安倍晋三氏の再登場には激しい拒絶反応を示してしているようです。朝日新聞の元主筆の若宮氏などは「反安倍が朝日新聞の社是」とまで言ったとか言わなかったとか。

それにしても、いわゆる「慰安婦問題」や「尖閣諸島問題」ともからんで参議院選挙での安倍首相の登場に対して投げかけられる安倍内閣の「右傾化」批判は、「戦後民主主義者」たちの断末魔の悪あがきのようにすら感じられるものです。

それも一党独裁の中国共産党や、歴史上の江戸の恨を長崎で憂さを晴らそうとする韓国人や、インディアンの殺戮にもまさる「大虐殺」で太平洋戦争の心の疚しさをかかえるらしいアメリカ人など、外国人からの「安倍内閣右傾化批判」ならまだしもわからないでもありません。

ただしかし、彼らに便乗するのか、あるいは彼ら外国人の提灯持ちをしたいのか分らないような、国内のいわゆる「左」の人たちからの「安倍右傾化批判」の騒々しい声を聴くと、私のような少々のへそ曲がりは、昨日に田中均氏の記事を読んだ時もですが、下のような感想を私のツィッターで呟きたくなったものです。それをあらためて記録しておくものです。

田中均氏の記事に対する私自身の感想

 

この論考にも田中均氏や孫崎享氏らに代表される外務官僚の現在の立ち位置が示されている。彼らは、安倍政権の目ざす方向についても「今後日本が時代の要請に合わせた変化をしていくとしても、戦後70年の歴史から断絶するべきではない」と説明している。


つまり、安倍首相のいう「戦後GHQレジームから脱却」を「戦後70年の歴史から断絶」として捉えていることがわかる。しかし、「戦後GHQレジームからの脱却」は「戦後民主主義者」の田中均氏が危惧するような戦前に回帰することでもなければ、「国家主義の政治」を実行することでもない。


そうではなく、先の第二次世界大戦の未曾有の敗北によって、その後のGHQ占領政策によって毀損され、さらに深刻に成りつつある日本社会の文化、道徳、歴史、伝統を本来の形に回復し矯正しようとする運動でしかない。そのことによって日本がさらに完成された「立憲君主主義国家」を実現して、


イギリスのような「普通の」自由で民主的な国家に立ち戻ろうとするものに過ぎない。元外交官たる田中均氏は、安倍政権に対する「右翼化」や「ポピュリズム」批判を世界に向けて発信、吹聴して、アメリカや中国の「帝国主義諸国家」からの日本批判の誤解の種を蒔いたり、提灯持ちをしたりするのではなく、


日本国が「自由と民主主義」の立憲君主制国家として、さらには、世界にも範たる平和的文化的国家を実現しつつあることを、諸外国に向けて発信し、むしろ擁護すべき立場にあるはずである。」

 

以上が下記の田中均氏の記事を読んでの私のつたない感想です。

以下、ダイヤモンド・オンライン に掲載されていた田中均氏の記事  「米中韓の関係強化で変わり始めたアジア情勢 ポピュリズムの克服に求められる「政治の決意」「世界を見る眼」| http://p.tl/CNfj

 >><<引用はじめ

米中韓の関係強化で変わり始めたアジア情勢
ポピュリズムの克服に求められる「政治の決意」       田中 均

http://diamond.jp/articles/print/37604

 近年、いずれの国においても高揚するナショナリズムを背景に勢いを増すポピュリズムが、外交に大きな影響を及ぼす傾向にある。外交は現実を踏まえて冷静で緻密な国益計算の上に成り立つべきものだが、はたしてポピュリズムを乗り越えることができるのであろうか。どの国においても政治の決意が試されている。

米中首脳会談に象徴される
東アジアの構造変化
現実を踏まえた戦略を

 日本は、中国の台頭による東アジアの構造変化と中国リスクの大きさという現実を踏まえた戦略を、講じていかなければならない。

 日本が直視すべき東アジアにおける構造変化とは、どのようなものだろうか。まず、中国の台頭とともに、米国にとっての中国の重要性は圧倒的に高まった。かつて米国の最大の経済的パートナーとして日本が占めていた地位(米国の貿易総額に占める割合や財務省証券の保有高など)は、中国にとって代わられている。

 留学生の数も1990年代は日本が圧倒的に多かったが、今や中国は20万人近く、日本は2万人を数えるに過ぎない。中国系や韓国系などのアジア系米国人の人口は拡大しているが、唯一減少しているのは日系アメリカ人の人口である。

 先月、習近平国家主席とオバマ大統領の初の首脳会談が、8時間にわたりカリフォルニア州サニーランドで行われた。米中間では首脳会談のみならず、戦略経済対話が国務・財務長官レベルで行われ、間断なき対話が続けられている。

 日米のような同盟関係とは質的に異なると言っても、今や米中は世界で最も重要な二国間関係であることは認めざるを得ない。また、オバマ民主党政権は共和党政権、とりわけブッシュ政権のような、価値を尊重し同盟国関係を優先する政権とは異なり、実務重視の政権であることも理解しなければならない。

 韓国もこうした東アジアの構造変化に、敏感に対応をしている。朴槿惠大統領は就任後、米国に次いで中国を訪問先に選び、中国重視の姿勢を示した。韓国にとってみれば、中国は最大の貿易パートナーであり、将来的にもそうなのだろう。

 北朝鮮問題も様相を変化させてきている。中国は北朝鮮に対する姿勢を変えつつあり、国際社会と歩調を合わせ、北朝鮮に対して非核化のために圧力をかけるという方向性が見えてきている。この問題で中国の態度を変えたことが、中韓関係の距離を縮めたことも間違いがない。さらに、韓国は今や米中韓の戦略対話を熱心に推進するようになっている。

 ASEAN諸国も、国によって中国との距離は異なるが、おしなべて中国との経済相互依存関係は強固である。南シナ海の問題もあり、中国の覇権主義的行動に対する警戒心は強いが、安全保障面で米国を東アジアに引き込んだことが安心感に繋がっており、中国を敵視していくという政策はとるべくもない。

経済の減速をはじめとする 
中国の統治リスクと
大国主義の目覚め

 同時に、我々は中国が多大な短期的及び中長期的な統治リスクを抱えていることも、認識すべきである。

 短期的にはまず、経済の停滞が生じるのだろう。中国は過去10%を超える経済成長を達成したが、現在の五ヵ年計画では目標が7%に引き下げられている。4-6月期のGDPの伸び率は前年同期比7.5%と2四半期連続で伸びが鈍った。圧倒的に大きな所得格差がある中国では、成長率が7%を下回れば分配政策が困難となると言われる。不良債権問題も深刻である。

 このような経済的困難が、社会問題に対する不満の引き金となる恐れもある。環境は劣化し、食品安全に対する懸念も大きい。中産階級が増えていくほどに、生活の質の問題が重要となる。そして、習近平政権が最優先課題に挙げる汚職問題。

 ソーシャルネットワークが普及した中国では、政府による情報がコントロールされようとも、国民の不満が大衆運動に繋がっていく可能性は高い。そうなっていけば、共産党における路線対立・権力争いも激化するだろうし、ナショナリズムの矛先が外国に向くという可能性も存在するのだろう。

 中長期的な構造問題、すなわち民主化的な改革が進んでいかないといった問題や、少子高齢化で生産年齢人口が減っていくなどの幾多の課題は、中国の情勢が中長期的にも流動化していく可能性を孕んでいる。

 日本国内においては、外交の最大の課題たるべき「台頭する中国とどう向き合うか」という問いに対する答えのコンセンサスはない。中国の急速な経済成長と政治・軍事・経済的影響力の急速な増大を前に、国内では日中友好の雰囲気は急速に衰えた。

 政権交代を実現した鳩山首相は、米国と一定の距離をおくと共に、東アジア共同体の掛け声のもとに中国との関係強化の動きを見せた。しかし、尖閣問題が日中関係を大きく損なった。

 民主党政権の崩壊後成立した安倍政権では、共産党一党独裁政権への懸念は強く、民主主義的価値観を重視する外交として、ASEAN、豪、インド、欧州などとのパートナーシップの強化を重視する。

 中国のナショナリズムは、どちらかと言えば大国主義への目覚めと言えるかもしれない。中国では日清戦争の敗北から100年間余を屈辱の歴史とし、日本をGDPで追い越した2010年は重要な意味合いを持つ。習近平主席が述べる「新型の大国関係」や「中国の夢」といった概念も、根底にはそのような大国主義の思いが色濃く存在し、警戒心を持たざるを得ない。

 一方で、日本のナショナリズムは、失われた20年を経て国力が低下していくことへのフラストレーションと、表裏一体なのかもしれない。「主権や領土について主張を強めるべきだ」「他国に遠慮ばかりしていてはいけない」という論議も強くなっている。

 主張すべきは主張するのは当然のことであるが、これがポピュリズムに陥ると、外交プロセスの中で日本が強い主張をしていることを国民に示すという方に重点が置かれがちである。外交は結果をもたらさなければ意味はなく、そのためにはプロセスについても、相手を過度に追い込むことがないような配慮も必要な場合がある。

TPPなど日本の抱える
難しい外交課題
国際主義に則り国民の説得を

 日本の今後の外交課題は、国民を説得し、結果をつくるにあたり極めて難しい課題が多い。たとえば、TPPは関税撤廃を基本原則とする以上、コメなどの農業産品も交渉対象とせざるを得ない。

 各国と交渉をまとめるためには、自由化について相当な覚悟がなければならないが、農家を含む農業関係者を説得することが必須となる。思い切った農業改革も進めていかなければならないだろう。

 TPPは経済的意義と同時に、戦略的な意義も大きい。TPPが目的とするところは、自由主義経済体制の高度なルールを確立させるところにある。

 知的所有権保護や投資、あるいは政府調達の透明なルール、さらには国営企業が民業圧迫とならないルールづくりなど、中国などの国営企業を通じて国家の介入が強い国家資本主義とは異なるルールの確立であろう。ポピュリズムを脱し、国際協調主義の路線が主導することができるかの試金石となる。

 北朝鮮問題でも、中国の態度の変化は非核化を前提とする交渉の道を開くことになるかもしれない。その際には、日本はこれまで掲げてきたように、拉致、核、ミサイル問題の包括的解決のための交渉をしていかなければなるまい。

 尖閣諸島の問題も、日中のナショナリズムが対決するというような事態は両方が避ける努力をしなければなるまい。尖閣諸島の主権問題で日本が譲歩する余地はないが、緊張状態を平常に戻すために冷静な考慮を必要とするのだろう。

歴史問題や憲法改正
日本の拠って立つ
国家像の明確化が必要

 外交は究極的には、指導者がどういう国家像を持つかによっても大きく変わる。特に日本の場合には、戦争を日本自身で総括することがなかったこともあり、政治家個々人の歴史観は異なる。

 しかしながら、村山談話は日本政府の歴史認識として総括され、その後20年近く歴代内閣によって継承されてきた。したがって、村山談話自体も歴史として尊重されるべきだろう。

 憲法を時代の要請に合わせて改正しようという動きは十分理解できるが、憲法のどの部分をどう変えていくのが時代の要請なのかということをはっきりと示すことが、国民的議論を活発化するためには必要だろう。

 外交を能動的に進めていくためにも、日本が拠って立つ場所を明確にする必要がある。東南アジア諸国の有識者たちは、日本を尊敬するのは、戦後70年の日本のはたしてきた役割の故であるという。

 日本は平和憲法に基づき、一発たりとも海外で銃を発射することはせず、戦後25年で世界第二の経済大国に上り詰め、世界で有数の技術大国となり、世界で有数の格差の少ない国をつくり、厳しい環境問題を克服し、政治的紐のつかない援助で途上国の国造りに貢献した。日本は圧倒的に質の高い国であり、東南アジア諸国のモデルである。

 こうした日本に対する海外の評価を、大事にするべきではないか。今後日本が時代の要請に合わせた変化をしていくとしても、戦後70年の歴史から断絶するべきではないだろう。このような歴史の延長上に、日本の国家像を構築していくことが求められているのではなかろうか。

>><<引用終わり

 

 

 

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