あすかパパの色んな話

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【CL】バイエルンの敗因を分析。カギはメンバー交代にあり

2012年05月22日 06時18分43秒 | コラム

敵地ミュンヘンで初優勝を飾ったチェルシー

決着はPK戦。試合そのものは引き分けなので、バイエルンが勝ちを逃した一戦と評したいが、スタンド風景、開催都市、前評判等を総合すれば、これは番狂わせと言うべきかもしれない。

 バイエルンのセンターフォワードがもう少し世界レベルの選手なら。ロッベンがPKを決めていれば。そういう話なんだろうけれど‥‥。

 バイエルンが番狂わせと言うべきPK負けを喫した最大の原因は何かといえば、ユップ・ハインケス監督のメンバー交代にあると僕は見る。

 後半38分、トーマス・ミュラーがヘディングで待望の先制ゴールを決めると、ハインケスはその4分後、得点者のミュラーに代えてバン・ブイテンを投入した。

 俗に言う「戦術的交代」である。ベンチに下がったミュラーのポジションは1トップ下。交代で入ったバン・ブイテンはセンターバック。それまでセンターバックを務めていたティモシュチュクを一列高い守備的MFに上げ、さらに、それまで守備的MFだったクロースを1トップ下に据えた「玉突き」の配置換えだ。

 ティモシュチュクにしてもクロースにしても、そこは初めてやるポジションではない。クロースなどは慣れたポジションになるが、全体として、攻撃能力が高い人間がひとり減ったことは事実。守備的にシフトしたことは一目瞭然だった。

 ホームで行なわれるチャンピオンズリーグ決勝。そこで優勝することは、クラブ史のみならず、欧州サッカー史に名を刻むことになる。試合を優勢に進めていながら、決定打を放てなかったバイエルンにとって、後半38分の先制ゴールはまさに虎の子の1点だった。その4分後、監督はベテランの長身ディフェンダーを投入。逃げ切りを図ろうとしたのだ。

気持ちは分かる。だが、この作戦は率直に言って古典的だ。繰り返すが、それまで試合を優勢に進めていたのはバイエルン。60対40の関係にあった。だが、守備固めに入れば、この関係は崩れる。その上、精神的にも後ろ向きになる。スタンドを埋めたバイエルンファンもその時、試合の行方に固唾(かたず)を呑んでいた。ファンもベンチも選手も、必要以上に硬くなっていた。

 後半43分、フアン・マタのふわりと浮いたCKが、バイエルンのゴール前を襲ったとき、守備の人数は十分足りていた。ゴール前はしっかり固められていた。だが、相手のポイントゲッターへのプレッシャーは十分ではなかった。ドログバの高い打点のヘディングを多くの選手が見てしまっていた。

 デジャブのように蘇(よみがえ)ったのは、いまから19年前の悪夢だ。

 このままタイムアップの笛を聞けば、W杯初出場が決まる——―そのロスタイムに浴びた、オムラム(イラク)のヘディングシュートだ。ドーハの悲劇の瞬間である。あのときの日本の守りと、今回のバイエルンの守りはかなり似ていた。ゴール前は十分な人で固められていた。が、守備者の足は動いていなかった。ボールウォッチャーになっていた。サポーターの様子も似ていた。応援を忘れ、そのCKの行方に固唾を呑んでいた。場のムードはそっくりだった。

 バイエルンは、繰り返すがその直前にわざわざ長身ディフェンダーを投入していた。にもかかわらず、ゴールをヘディングで破られた。ハインケスの戦術的交代は、全く功を奏さなかった。同点ゴールを奪われた瞬間から、むしろ逆効果になった。ゲームプランは空転した。守備的にシフトした布陣で、もう1点を狙いにいく必要が迫られた。

わざわざ守備的にサッカーをシフトして、それで同点ゴールを浴びてしまったショックは大きい。だったら今まで通り戦っていればよかったとは誰もが思うこと。この後悔は精神的にこたえる。必要以上に。こんなハズではなかったと思いながら、バイエルンは残りの時間を戦うハメになった。

 延長前半4分、冒頭で述べたようにバイエルンはロッベンがPKを失敗したが、これもメンバー交代によって生まれた悪い流れの産物と言いたくなる。バイエルンはこの時、チェルシー以上に、“絶対負けられない戦い”を強いられていた。チェルシーより身体を強ばらせながらプレイしていた。

「赤」がスタンドの3分の2強を占めたスタンドの風景がそれに輪を掛けた。「赤」の大群が必要以上に固くなっている様子は手に取るように伝わってきた。当初存在したホームの利は、逆に不利にさえ見えるようになっていた。

 PK戦の結末も、始まる前からなんとなく見えていた。キッカーにかかるプレッシャーは、チェルシーよりバイエルンの方が数段上だった。ミスターバイエルン、シュバインシュタイガーの失敗には、十分すぎる必然を感じた。

 終盤リードしてもペースを落とすな。下手に守るな。引いて守るのではなく前から行け。もはやこれは近代サッカーの鉄則といっても言い過ぎではない。この試合はあらためてそのことを痛感させられた一戦だった。(スポルディーバ Web)



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