■沖縄の地で神懸かり的な活躍を披露

決勝で2ゴールを挙げた和泉が、市立船橋を5度目の優勝に導いた
第90回全国高校サッカー選手権決勝戦。四日市中央工が1−0とリードして迎えた後半アディショナルタイムは、まもなく表示の2分に達しようとしていた。市立船橋が最後の猛攻を仕掛ける。執念のゴールをたたき込んだのは、背番号10を背負うFW和泉竜司だった。
起死回生の同点弾でチームを生き返らせた和泉は、延長後半5分にも見事なボールタッチから右足を一閃。放たれた弾丸ライナーはGKの手をはじき、ゴールに突き刺さった。自身今大会5得点目は、市船の5度目の選手権制覇を決定づけた。
大会前から注目選手として名前こそ挙がっていたが、正直なところ、和泉のここまでの活躍は予想していなかった。なぜならば、彼はゴールから遠ざかっていたからだ。
彼の名が強烈に頭に刻まれたのは、2010年の沖縄インターハイだった。この大会での和泉はまさに神懸かり的な活躍を見せている。
山梨学院大附との3回戦。彼はそれまで不動のレギュラーという存在ではなく、ベンチを温めることも多かった。しかし、「技術的に高くて、左右両足が蹴れて、判断良くパスも出せる。ここに期待をして起用した」と石渡靖之前監督は先発に抜てきした。
「これまでは点を取りたい気持ちが空回りしてしまっていた。ゴール前で焦ったり、うまくいかなかった」と、点が取れない自分に焦りを感じていた時に、与えられたチャンス。この好機を彼は見事に生かした。
■7ゴールで得点王に輝く
和泉は開始7分で貴重な先制ゴールを決めると、「案外簡単に決めることができた。このゴールで吹っ切れて、気持ちが楽になった」とここから量産態勢に入る。この試合でもう1点を追加し、2ゴールをたたき出す活躍を見せると、準々決勝の立正大淞南戦では圧倒的な存在感を放った。
開始早々の3分にペナルティーエリア外から、目の前で大きくバウンドする難しいクロスボールにうまく合わせ、左足で矢のようなダイレクトボレーを放つ。これがゴールに突き刺さり、会場のどよめきを誘った。その後、スライディングシュートで2点目を挙げると、今度はゴールまで約40メートルの位置から目の覚めるような弾丸ミドルシュートを左隅にたたき込む。2年生ストライカーが見せた圧巻のハットトリックだった。
桐光学園との準決勝では、0−0で迎えた試合終了間際に、MF菅野将輝の左CKをどんぴしゃのヘッドで合わせ、値千金の決勝ゴール。チームを決勝まで導いた。
そして迎えた滝川第二との決勝戦では、0−1の苦しい展開で迎えた後半25分に菅野のパスから起死回生の同点ゴール。1−1でもつれ込んだ延長戦では、追いついた勢いそのままにチームは3点をたたき出して、見事に全国優勝を飾った。
和泉は4試合連続の7ゴールで得点王に輝いた。これまで埋もれていたストライカーが一気に日の目を見た瞬間だった。
■苦しい時期を乗り越え精神的に大きく成長

初戦の長崎日大戦でも残り5分から2得点。和泉の勝負強さは際立っていた
しかし、和泉はインターハイで見せたまぶしい輝きを持続できなかった。昨年度の選手権千葉県予選では存在感を放てぬまま、流通経済大柏の前に屈し、全国大会への切符を逃した。そして今年に入ると、今度はけがに苦しむ。復帰後もなかなか存在感を示すことができないでいた。
「個人的にはプレーの質が落ちたとは思っていなかった。ただ、結果がついてこなかった。プレー自体はいいと思っていたので、あとは結果さえ出せれば、絶対にやれる自信があった」
焦っていた昨年と違って、彼は精神的に大きく成長していた。チームは選手権予選から、これまでの攻撃にウエートを置いた4−4−2ではなく、守備を重視した3ボランチの4−3−2−1にシフトチェンジした。和泉はトップ下の位置に入ってからも、「チームとして守備のところでリスクマネジメントするようになったので、より得点に絡む機会は少なくなりましたが、それも市船の一員としての自覚があるし、その中でも自分がしっかり点を取らないといけないと、これまで以上に思うようになりました」と自身の役割を受け入れていた。
県予選決勝の流通経済大柏戦では守備がはまり、相手の攻撃を凌いで、数少ないチャンスを確実にモノにする市船らしいサッカーで勝利した。和泉はゴールこそ決められなかったが、まずは全国の切符をつかんだことで、全国では絶対に結果を残すという強い気持ちを持っていた。
■「市船の主将は背負っているものが違う」
そして、迎えた今大会。初戦となった2回戦の長崎日大戦では、0−1とリードされた後半36分からチームを救う2ゴール。昨年のインターハイ同様に、幸先良く2点を取れたことで、彼のエンジンは全開となった。3回戦、準々決勝こそゴールは生まれなかったが、清水商も矢板中央も彼に相当な警戒を払っており、その分、周りの選手が生きた。準決勝の大分戦では、後半11分に岩渕のパスを冷静に蹴り込んで決勝ゴールをたたき出すと、決勝では昨年度のインターハイを思わせる値千金の同点ゴールを挙げた。
さらに延長戦では“あの夏”には奪えなかった、チームを優勝に導く決勝ゴールまで決めてみせた。この得点こそ、彼が1年間で大きく成長したことを証明するゴールだった。
「市船の主将は背負っているものが違う。今日はそれが出せた」と大きく胸を張った和泉。卒業後は大学サッカー界屈指の強豪・明治大学で4年後のプロ入りを目指す。市船で培ったメンタリティーを武器に、大学でのさらなる爆発を期待したい。4年後、Jの舞台であの勝負強さを、ゴールという形で見られるように――。(スポーツナビ)
決勝で2ゴールを挙げた和泉が、市立船橋を5度目の優勝に導いた
第90回全国高校サッカー選手権決勝戦。四日市中央工が1−0とリードして迎えた後半アディショナルタイムは、まもなく表示の2分に達しようとしていた。市立船橋が最後の猛攻を仕掛ける。執念のゴールをたたき込んだのは、背番号10を背負うFW和泉竜司だった。
起死回生の同点弾でチームを生き返らせた和泉は、延長後半5分にも見事なボールタッチから右足を一閃。放たれた弾丸ライナーはGKの手をはじき、ゴールに突き刺さった。自身今大会5得点目は、市船の5度目の選手権制覇を決定づけた。
大会前から注目選手として名前こそ挙がっていたが、正直なところ、和泉のここまでの活躍は予想していなかった。なぜならば、彼はゴールから遠ざかっていたからだ。
彼の名が強烈に頭に刻まれたのは、2010年の沖縄インターハイだった。この大会での和泉はまさに神懸かり的な活躍を見せている。
山梨学院大附との3回戦。彼はそれまで不動のレギュラーという存在ではなく、ベンチを温めることも多かった。しかし、「技術的に高くて、左右両足が蹴れて、判断良くパスも出せる。ここに期待をして起用した」と石渡靖之前監督は先発に抜てきした。
「これまでは点を取りたい気持ちが空回りしてしまっていた。ゴール前で焦ったり、うまくいかなかった」と、点が取れない自分に焦りを感じていた時に、与えられたチャンス。この好機を彼は見事に生かした。
■7ゴールで得点王に輝く
和泉は開始7分で貴重な先制ゴールを決めると、「案外簡単に決めることができた。このゴールで吹っ切れて、気持ちが楽になった」とここから量産態勢に入る。この試合でもう1点を追加し、2ゴールをたたき出す活躍を見せると、準々決勝の立正大淞南戦では圧倒的な存在感を放った。
開始早々の3分にペナルティーエリア外から、目の前で大きくバウンドする難しいクロスボールにうまく合わせ、左足で矢のようなダイレクトボレーを放つ。これがゴールに突き刺さり、会場のどよめきを誘った。その後、スライディングシュートで2点目を挙げると、今度はゴールまで約40メートルの位置から目の覚めるような弾丸ミドルシュートを左隅にたたき込む。2年生ストライカーが見せた圧巻のハットトリックだった。
桐光学園との準決勝では、0−0で迎えた試合終了間際に、MF菅野将輝の左CKをどんぴしゃのヘッドで合わせ、値千金の決勝ゴール。チームを決勝まで導いた。
そして迎えた滝川第二との決勝戦では、0−1の苦しい展開で迎えた後半25分に菅野のパスから起死回生の同点ゴール。1−1でもつれ込んだ延長戦では、追いついた勢いそのままにチームは3点をたたき出して、見事に全国優勝を飾った。
和泉は4試合連続の7ゴールで得点王に輝いた。これまで埋もれていたストライカーが一気に日の目を見た瞬間だった。
■苦しい時期を乗り越え精神的に大きく成長
初戦の長崎日大戦でも残り5分から2得点。和泉の勝負強さは際立っていた
しかし、和泉はインターハイで見せたまぶしい輝きを持続できなかった。昨年度の選手権千葉県予選では存在感を放てぬまま、流通経済大柏の前に屈し、全国大会への切符を逃した。そして今年に入ると、今度はけがに苦しむ。復帰後もなかなか存在感を示すことができないでいた。
「個人的にはプレーの質が落ちたとは思っていなかった。ただ、結果がついてこなかった。プレー自体はいいと思っていたので、あとは結果さえ出せれば、絶対にやれる自信があった」
焦っていた昨年と違って、彼は精神的に大きく成長していた。チームは選手権予選から、これまでの攻撃にウエートを置いた4−4−2ではなく、守備を重視した3ボランチの4−3−2−1にシフトチェンジした。和泉はトップ下の位置に入ってからも、「チームとして守備のところでリスクマネジメントするようになったので、より得点に絡む機会は少なくなりましたが、それも市船の一員としての自覚があるし、その中でも自分がしっかり点を取らないといけないと、これまで以上に思うようになりました」と自身の役割を受け入れていた。
県予選決勝の流通経済大柏戦では守備がはまり、相手の攻撃を凌いで、数少ないチャンスを確実にモノにする市船らしいサッカーで勝利した。和泉はゴールこそ決められなかったが、まずは全国の切符をつかんだことで、全国では絶対に結果を残すという強い気持ちを持っていた。
■「市船の主将は背負っているものが違う」
そして、迎えた今大会。初戦となった2回戦の長崎日大戦では、0−1とリードされた後半36分からチームを救う2ゴール。昨年のインターハイ同様に、幸先良く2点を取れたことで、彼のエンジンは全開となった。3回戦、準々決勝こそゴールは生まれなかったが、清水商も矢板中央も彼に相当な警戒を払っており、その分、周りの選手が生きた。準決勝の大分戦では、後半11分に岩渕のパスを冷静に蹴り込んで決勝ゴールをたたき出すと、決勝では昨年度のインターハイを思わせる値千金の同点ゴールを挙げた。
さらに延長戦では“あの夏”には奪えなかった、チームを優勝に導く決勝ゴールまで決めてみせた。この得点こそ、彼が1年間で大きく成長したことを証明するゴールだった。
「市船の主将は背負っているものが違う。今日はそれが出せた」と大きく胸を張った和泉。卒業後は大学サッカー界屈指の強豪・明治大学で4年後のプロ入りを目指す。市船で培ったメンタリティーを武器に、大学でのさらなる爆発を期待したい。4年後、Jの舞台であの勝負強さを、ゴールという形で見られるように――。(スポーツナビ)










