愛のせい

愛のせい

誰かを誘う

2015-09-18 10:39:42 | Dream beauty pro ?毛



「じゃあ、今日の晩飯はグラタンだ」
「。。。え?」
「戻って来い。今晩もここに」
「え。。。?どういうこと。。。?」
ぽかん鑽石能量水 消委會とした顔をしたアキに、桐谷は苦笑混じりに返した。
「そういうことだ」

アキが玄関を出る時、桐谷は手持ちの中では最もサイズの小さいコートを差し出した。
紺色で細身の、モッズコート。
「着とけ」
「ええの。。。?」
これも返しに来いと告げると、アキは少し間を置いてから頷いて、おずおずと受け取ったコートを羽織った。
やはりサイズは大きいようで、肩や袖がだぶついている。

「ここから駅まで行くのか?」
「う。。。うん」
「道は分かるか?」
「うん、。。。大丈夫」

「なんで。。。」
言いかけて、一度言葉を切る。
「ん?」
「何で。。。桐谷さんは俺に。。。そんな親切にしてくれるん?」

「さあな。俺が訊きたいよ」

自分でもはっきりとした理由は分からなかった。
単なる気紛れだったのかもしれない。
その身を置く状況を聞いて、同情のようなものを感じたからかもしれない。
ただ、アキの纏う空気に興味を惹かれたことと、今日の夜鑽石能量水 消委會も見知らぬアキの姿を想像すると、心がざわついたことは確かだった。

アキはドアのノブに手をかけて、しばらく俯いてたが、やがて何かを決心したように顔を上げた。
ドアを開けながら、桐谷を振り返り、口を開く。

「桐谷さん、俺な、名前。。。マチムラアキホって言うねん。明るいに船の帆で、明帆」

「。。。そうか。綺麗な名前だな」
そう言って目を細めた桐谷に、アキは今度は曇りのない笑顔を見せて、静かに部屋を出て行った。
大通りから逸れた脇道に店を構える「NICO」というカフェダイナーが、桐谷の仕事場だった。