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アスベスト:「救済金額2000万円」 竜田工業の被害遺族、秘密交渉を拒否・公開

2008年07月29日 | 健康被害
 耐火材メーカー・ニチアス(本社・東京都港区)の子会社、竜田工業(奈良県斑鳩町)の周辺住民で、アスベスト(石綿)による中皮腫で死亡した女性の長女(51)=同県橿原市=が24日、既に受け取っている弔慰金を含め救済金額は2000万円という、竜田工業との交渉内容を明らかにした。竜田工業側からは「交渉過程・金額は秘密に」と要求されていたが、「秘密交渉が被害者を差別し、救済を妨げている」と公開した。

 長女は06年から同社と交渉を続け、この日の交渉前に奈良県庁で記者会見をして明らかにした。この日も竜田工業側は交渉過程・救済金の金額について「公開できない」と長女に回答、最終妥結には至らなかった。竜田工業周辺で死亡した被害者の遺族のうち、同社と救済金制度で交渉が妥結したのは判明分だけで2遺族。いずれも金額を公表しない条件で合意している。

 女性は石綿製造をしていた竜田工業から約400メートルの場所に1965~76年ごろ居住。01年3月、悪性胸膜中皮腫で75歳で死亡した。個別交渉では企業側に、交渉過程や金額の公表を再三要求してきた。

 関西労働者安全センターの片岡明彦事務局長は「今後も公開を求めていきたい」と話している。【泉谷由梨子】

 木野茂・立命館大共通教育推進機構教授(環境学)の話 被害者の弱みにつけ込む秘密交渉が通用していたとは驚きだ。遺族が公表に踏み切ったことは、今後の被害者救済のため一歩前進と言える。

毎日新聞 2008年7月25日 大阪朝刊