あさずき CINEMA CITY

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『君の名は。』~理屈じゃない愛を納得させる力技~

2017-01-09 07:44:45 | アニメ・邦画
※ネタバレしています


コメディタッチで描かれる序盤の展開を観ながら、僕はずっと考えていました。
彗星の接近により時空が歪み、その影響で体の入れ替わりという超常現象が起こったのだとしたら、なぜその対象が瀧と三葉なのか。
三葉は一族に代々受け継がれる特殊な素質があるからいいとして、瀧である理由がわからない。
都会に強い憧れを持つ三葉への忠言の意味で、あえて東京がくすんで見えている少年が受け皿になったのだとしたら、納得はするけど凡百の映画だよなあ……と。


やがて物語が進み、理由が明らかになった時、その潔さに僕は拍子抜けしてしまいました。
なぜなら「運命の相手」という至極単純な理由だったから。

これはズルい。
たしかに“愛”は普遍的で、説得力があって、強力な力です。
しかしそれを大義名分に振りかざすのは、理屈無しに力づくで納得させているようなものでしょう。


僕にはこれまで映画を観てきた経験から(そんなに数多くは観ていませんが)、人が“非科学的”に時空を超えるためには相当の「心の強さ」が必要であるという固定観念がありました。
そしてそれを実現するのは、「親が子供を想う愛の力」であることがとても多かったんです。
血を分けた子供に対する無償の愛情こそが最強の力。
これくらい強力じゃなければ常識を凌駕することは出来ないのだろうと。

しかし『君の名は。』の二人は血も繋がっていない、旧知の仲でもない、そもそも互いに愛し合っているかどうかもハッキリとわからない。
「純愛」でも何でもなく、ただの「淡い恋心」ですよね……。



でもこの作品がもっとズルいのは、それでいて“超面白い”ということ。

ひたすら実直に赤い糸をたぐり寄せようとする二人の姿を見ていくうち、だんだんと心地良い気分で満たされていくのです。
平凡な青春を送っていたかつての自分にはない情熱。
それはある意味では僕の理想像。
若さ故の向こう見ずな行動を、心のどこかで羨望していたのかもしれません。
勢い任せの色恋沙汰を楽しむのも悪くないな……、そう思わせる魅力に溢れています。

ついに白旗を上げ自然体で受け入れることにした僕を、強烈なエモーションが波状攻撃の如く押し寄せてきます。
困難を乗り越えた二人は、最後にはなんと時空すらも書き換えてしまいました。
この頃には僕の琴線は完全に鷲掴みにされ、ただただ感動するのみでした。







理屈じゃない愛を納得させてしまう力技。
本作一番の衝撃は美麗な映像でもRADWIMPSの音楽でもなく、絶対にコレ。
あまりにも眩しすぎる107分。
とても素晴らしい体験でした。


上映終了後、一緒に観に行った知り合いが開口一番
「超つまんなかったんだけど」
ひっぱたいてやろうかと思いました。




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