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『この世界の片隅に』~僕らだけが知っていること~

2017-02-13 16:52:42 | アニメ・邦画
※ネタバレしています


ほんわかとしたタッチの絵柄に加え、思わずクスっさせる滑稽な描写が多く、上映中は劇場内でも笑い声が聞こえました。
ただ誤解を恐れずにいうなら、僕自身は全く笑うことが出来なかった、というのが率直な感想です。







このお話は戦時下に生きる人々の目線によって紡がれた物語。
戦争行為そのものの描写は少なく、世界で起きていることの全貌、日本の戦況を知る術はあくまでも主人公のすずをはじめ、作中の人々が体験したものに限られています。
そのため僕ら鑑賞者にも断片的な情報しか入ってきません。

しかし、すずと僕らには決定的に違うところがあります。
昭和20年8月6日の広島で起こることを、僕らだけは知っているのです。



それにより、ある一つの演出が大きな意味を持つようになっています。
要所で表示される“日付け”です。
一見すると日常を綴った絵日記であるかのように思わせる演出。
しかし同時に8月6日、“運命のとき”へのカウントダウンでもあるとするならどうでしょうか。
印象が180度変わって見えるはずです。


僕は過去にこれと同じ演出を使った作品を観たことを思い出しました。
ジャパニーズ・ホラーの金字塔『リング』です。
『リング』では呪いのビデオを見た人間は貞子に呪われ、一週間後に死ぬという恐ろしいルールがあります。
作中の日付が変わるたび、わざわざ活字テロップが表示されるのは、残された命の時間を再認識させるため。
訪れる“運命のとき”を深くを刻みつけるものでした。


ですから本作でも常に恐怖がつきまとうことになります。
これからの未来を知らずに日々を過ごす人々。
しかし背後では静かに、そして確実にそれは忍び寄ってきます。
見えないものに対する漠然とした不安ほどおぞましいものはありません。

その最たるシーンといえるのが、“運命のとき”が起こる瞬間でしょう。
すずにしてみたら家族で会話をしている中、カメラのシャッターを何気なく切ったように、音もなく一瞬光が包んだだけ。
しかし一方で広島市は全てが終わっていたのです。



ホロコーストを描いた『ライフ・イズ・ビューティフル』を観たときも同じ感情を抱きました。
人々の和気あいあいとした微笑ましい姿。
その光景が、先で待ち構える奈落の底に消えていくのをわかっていて、自分はどう受け止めたらいいのか。
おもしろ可笑しい描写であるほど、胸が張り裂けそうになるのです。

でも悲劇ばかりを伝えるための映画でないのはわかっています。
いずれ僕自身が冷静にこの作品と向き合えるようになる頃には、きっと素直に笑えるようになっているでしょう。


一つだけはっきりと言えることがあります。
僕はこの世界の片隅に暮らす人々が大好きです。


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