第6話
「ようこそ、霧山君。私が会長の真堂院だ。」
僕は何だか就職試験のような気持ちになってきました。
ただ、小屋には草刈道具や伐採用のナタなど、多分この森を管理する人が使う道具が沢山ひしめきあって、会長と僕が座っている場所意外は、足の踏み場もないような状態でした。
「霧山健吾と申します。よろしくお願いします。」僕は面接試験の時のようにハキハキと言いました。
「まあ、そんなに緊張しなくてもいいさ。さてこの小屋まではどうやってきたのかね?」
「あ、はい。社殿から離れたところで、巫女さんにヒノキと百目のことを教わり、途中で百目と出会いまして、ここまでたどり着けました。」
「ほっほ~。神使天女様と出会ったのか‥それはそれは‥大変お美しいお方であったろう。」
「はい、まるで天女様のようだと感じましたが、もしかすると本物の天女様だったのですか?」
「ふ~む、君は人ならざる者に気に入られる性質を持っているようだな。」
百目といい、天女様といい、そしてこの本部といい、一体何だかさっぱり分からない。
真堂院会長は続けました。
「君の曾おじ意様は山師だそうだね。君にも、山や自然を愛する気持ちが宿っているようだ。そして君は知らないかもしれないが、君の家系はワタリの血を受け継いでいるんだよ。」
えっ?なんで曾じいちゃんのことまで知っているんだ‥僕は不気味にさえ思えてきました。
しかし真堂院会長は話し続けました。
「ワタリとは、山の神を崇め、祈りを捧げ、その偉大なる恩恵を頂戴し、山から山へと渡り歩く人々のことを言う‥。とうに消えうせたと言われているが、現在でもワタリは存在しているんだよ。山の神は、この日本を支え続けた神様だからな、ワタリの役割は大変崇高なものなんだ。」
そんな話の最中でも、パタパタと百目が跳ね回る音がします。
「百目よ、ちょいと静かにしていておくれ。‥いや、この百目はな、先日の百鬼夜行の時、迷子になって私の力で探し出し、天上界へと送ったのだが、人間に優しくされたのが、よっぱど嬉しかったらしく、またこの地上に戻ってきたのだよ。百目は、1000年以上のヒノキの大木から生まれる妖怪でな、君にもそのうち姿が見えることだろう。」
「さて、霧山君、話を戻そう。君は現在、就職浪人をしているそうだね。」
「は、はい‥」何でだ、何でそんなことまで‥
「この天命の会は、いわば秘密結社。会員たちもその全容は分かってはいないのだよ。
私と何人かの役員はいるが、実は政財界とも繋がりをもち、日本を代表する、あまたのスポーツ選手も会員として存在する。いわば、この日本を陰から支えているといっても過言ではない‥。そしていずれの会員にも特殊な能力が備わっている。山の神と通じる者、海の神と通じる者、天上界と通じる者など、全てのものが神々とコンタクトを取り活動しているのだ。そこで、私から君への提案だが、この天命の会に私の「秘書」として採用したいのだがね。まあはっきり言って「秘書」といっても重労働が多い。しかし君には大変向いていると思うのだよ。何といっても私のもとで修業ができる‥私は今まで何度頼まれても弟子は採らなかった。だが、そうも言っていられなくなってきた。この数年の日本をみれば、いかに危うい状態になっているか、君にも分かるだろう。」
僕は何とも突拍子もない話に驚きました。
意味がわからないぞ‥けれど、今ここにいるのは現実だ。
就職ができるってことなのか?
「その通りだよ。君が今思ったとおりさ。就職が出来、働くのだよ。給料もあるし、住む場所も引っ越す。霧山君、こんなにいい話はないのだよ。これは天からの命運なのだよ。」
運命の歯車が音をたてて動き出したようです。僕はその場で、契約書にサインをし、とりあえず3日以内に引越しの準備をするようにと、言われました。
そして、真堂院会長は僕の後ろにまわり、「君をしかるべき場所まで戻そう、目をつぶりなさい」と言って、首筋をとんとん叩きながら呪文のようなものを唱え始めました。
僕はふっと寝てしまいました。首筋を叩いてもらい、大変気持ちが良かったのです。
ぱっと目を開けたときには、原宿のホームのベンチに座っていました。
もう辺りは真っ暗で僕は慌てて山手線に乗り込みました。
「ようこそ、霧山君。私が会長の真堂院だ。」
僕は何だか就職試験のような気持ちになってきました。
ただ、小屋には草刈道具や伐採用のナタなど、多分この森を管理する人が使う道具が沢山ひしめきあって、会長と僕が座っている場所意外は、足の踏み場もないような状態でした。
「霧山健吾と申します。よろしくお願いします。」僕は面接試験の時のようにハキハキと言いました。
「まあ、そんなに緊張しなくてもいいさ。さてこの小屋まではどうやってきたのかね?」
「あ、はい。社殿から離れたところで、巫女さんにヒノキと百目のことを教わり、途中で百目と出会いまして、ここまでたどり着けました。」
「ほっほ~。神使天女様と出会ったのか‥それはそれは‥大変お美しいお方であったろう。」
「はい、まるで天女様のようだと感じましたが、もしかすると本物の天女様だったのですか?」
「ふ~む、君は人ならざる者に気に入られる性質を持っているようだな。」
百目といい、天女様といい、そしてこの本部といい、一体何だかさっぱり分からない。
真堂院会長は続けました。
「君の曾おじ意様は山師だそうだね。君にも、山や自然を愛する気持ちが宿っているようだ。そして君は知らないかもしれないが、君の家系はワタリの血を受け継いでいるんだよ。」
えっ?なんで曾じいちゃんのことまで知っているんだ‥僕は不気味にさえ思えてきました。
しかし真堂院会長は話し続けました。
「ワタリとは、山の神を崇め、祈りを捧げ、その偉大なる恩恵を頂戴し、山から山へと渡り歩く人々のことを言う‥。とうに消えうせたと言われているが、現在でもワタリは存在しているんだよ。山の神は、この日本を支え続けた神様だからな、ワタリの役割は大変崇高なものなんだ。」
そんな話の最中でも、パタパタと百目が跳ね回る音がします。
「百目よ、ちょいと静かにしていておくれ。‥いや、この百目はな、先日の百鬼夜行の時、迷子になって私の力で探し出し、天上界へと送ったのだが、人間に優しくされたのが、よっぱど嬉しかったらしく、またこの地上に戻ってきたのだよ。百目は、1000年以上のヒノキの大木から生まれる妖怪でな、君にもそのうち姿が見えることだろう。」
「さて、霧山君、話を戻そう。君は現在、就職浪人をしているそうだね。」
「は、はい‥」何でだ、何でそんなことまで‥
「この天命の会は、いわば秘密結社。会員たちもその全容は分かってはいないのだよ。
私と何人かの役員はいるが、実は政財界とも繋がりをもち、日本を代表する、あまたのスポーツ選手も会員として存在する。いわば、この日本を陰から支えているといっても過言ではない‥。そしていずれの会員にも特殊な能力が備わっている。山の神と通じる者、海の神と通じる者、天上界と通じる者など、全てのものが神々とコンタクトを取り活動しているのだ。そこで、私から君への提案だが、この天命の会に私の「秘書」として採用したいのだがね。まあはっきり言って「秘書」といっても重労働が多い。しかし君には大変向いていると思うのだよ。何といっても私のもとで修業ができる‥私は今まで何度頼まれても弟子は採らなかった。だが、そうも言っていられなくなってきた。この数年の日本をみれば、いかに危うい状態になっているか、君にも分かるだろう。」
僕は何とも突拍子もない話に驚きました。
意味がわからないぞ‥けれど、今ここにいるのは現実だ。
就職ができるってことなのか?
「その通りだよ。君が今思ったとおりさ。就職が出来、働くのだよ。給料もあるし、住む場所も引っ越す。霧山君、こんなにいい話はないのだよ。これは天からの命運なのだよ。」
運命の歯車が音をたてて動き出したようです。僕はその場で、契約書にサインをし、とりあえず3日以内に引越しの準備をするようにと、言われました。
そして、真堂院会長は僕の後ろにまわり、「君をしかるべき場所まで戻そう、目をつぶりなさい」と言って、首筋をとんとん叩きながら呪文のようなものを唱え始めました。
僕はふっと寝てしまいました。首筋を叩いてもらい、大変気持ちが良かったのです。
ぱっと目を開けたときには、原宿のホームのベンチに座っていました。
もう辺りは真っ暗で僕は慌てて山手線に乗り込みました。