浅井久仁臣 『今日の中東』

1971年のパレスチナ初取材から、30有余年中近東を見続けてきたジャーナリストが独自の視点をお届けします。

“神聖な場所”からの撤退

2005年08月23日 | Weblog
 ガザ地区の入植地全ての撤退が完了し、西岸地区にある4ヶ所の入植地の撤去が23日、始まりました。
 その中の一つ、サヌール入植地では、入植者と支持者がシナゴーグ(礼拝所)にバリケードを作って立て籠もっています。米CNNなどは、その模様を何時間も延々と実況中継をしていました。ユダヤ教の聖域であるシナゴーグに突入を試みる兵士や警官は一切武器を携行せず、その複雑な情況下で入植者の排除を実行する模様は、今回の入植地からの撤退を象徴するできごとであるかのような感じです。中継を見ていれば、入植者に同情する気持ちもわいてくる視聴者もいるのではないでしょうか。
 しかし、調べてみると、このシナゴーグが作られたのは4ヶ月前で、今回の「撤退劇」の舞台に特設されたとしか思えません。そんなものを神聖な場所と伝えるCNNの姿勢が理解できません。マスコミ報道の恐ろしさを目の当たりにした光景でした。

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