さるやは行く!!!  

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倉岳山物語。第一章。

2006年11月06日 | 魅惑の山登りの話。

絹子が 「 ホリデー快速 河口湖 」号から降ると、昭文社地図 の解説にあったような、 「 沿線では一番人気の山である 」 の一節も疑わしいものであることの証明のように この駅での乗降客は 3人であった。
それも、一組は3歳ばかりかと思われるような幼児連れの母親で、後は、絹子一人きりの淋しい無人駅である。

                               
        
近年こういうことに慣れっこになりつつある絹子だったが、やはり、一人きりというのは心細く、嫌がる洋介に無理に頼んででも、同行してもらうべきだったと、後悔も一入である。
それでも、ここまできては、引き返すこともできず、元気を道端の



           赤唐辛子にもらい、自らを奮い立たせて前に踏み出す絹子であった。

      

     道は分かりやすく、それゆえ、後戻りの言い訳さえ許してはくれない。

               



絹子はふと、家にいる洋介のことを考えてみた。

今頃、洋介は何をしているのだろう。

いつもの格好で、寝そべっているのだろうか。

                

少しは、絹子の心細さをわかってくれているだろうか。
私を思ってくれているだろうか。
もし、この先、この山で命を落とすようなことにでもなったら、洋介は 「 あの時付いていってやれば・・・ 」と、後悔してくれるのだろうか、それとも、これも本人の山に対する甘さと経験、技術不足だと、いつもの厳しい顔で何事もなかったかのように、語るのだろうか。

そんな心配が、絹子の華奢な足を、それ以上に力なくさせているのであった。

              




登山道に入ると、絹子は少しづつ開放的な気分も手伝ってか、面白いことを考え始め名案だと目を輝かせた。
夢見がちなのはいつものことで、子供達も母親の記憶が飛び飛びなのを、今はなんとも思わない。
                                  

絹子自身、子供の頃に自身に何があったのか、既に母が亡くなったいまでは、聞く相手もいないのである。

そうだ、今日は、男になったつもりで、小説を書きながら登ってみようという思いつきに、ひとり有頂天になり、誰も登るもののいない、登山道で声をあげて、「 良い思い付きね! 」と自身を誉めているうちに、熊すずを鳴らし忘れているのに気づき、また、「 お馬鹿さんね 」と止めども無い独り言を繰り返すのであった。
              
                   ・・・つづく・・・

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12 コメント

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いいなぁ、絹子抄 (小太り親方)
2006-11-06 21:18:16
ツボに嵌りました。是非このシリーズで続けて下さいませ。

「お馬鹿さんね」と止めども無い独り言を繰り返す華奢な登山者をみかけたら、絹子さん?って声かけますよ。
「アンタの事だよ!オッサン!!」とか冷たく言い放たれたりして(汗)
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山岳小説 (えいじ)
2006-11-06 23:34:06
書き出し、良いじゃないんですか。
絹子さんの心情がよく描かれていると思います。
私の心情にも通じるものがあります。
挿絵も自分で入れては如何でしょうか?
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お話の途中ですが (事が解っていない河童)
2006-11-07 08:22:36
絹子って誰っ!
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親方さま、コメントありがとうございます。 (さるや)
2006-11-07 10:24:09
絶妙なコメントに塾送り迎え中、大爆笑!
何度も読み返し、笑いが止まりませんでした。
親方って、可愛いな~。

TBありがとうございます。
迷惑TBが来るので、一端保留にしてから公開しています。
お待たせしないように頑張りますが、パソコンが側に無いときは、少しのご容赦を・・・。 
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えいじさま、コメントありがとうございます。 (さるや)
2006-11-07 10:33:49
文学的才能は皆無ですのに、ご好評頂きまして(?)ありがとうございます。
えいじ様の何故かいつも周りにいるような、美女は登場しませんが・・・そのうち、誰かに羨まれて、痩せ尾根で押されたりなさいませんように、お祈り致しております・・・皆様のような「ど=だ!」というお山には登れない、可哀想なさるやの妄想をしばしお許し頂きまして、またのお越しをお待ち致しております。
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事の解っていない河童さま、コメントありがとうございます。 (さるや)
2006-11-07 10:45:39
絹子は・・・あなたの、御心の中に・・・おりますのよん 
今は、東のナイスな美人人妻ブロガーか?(爆・・コラコラ・・・オトナヲカラカウモンジャナイヨネ・・・
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写真の大月警察署 (河童)
2006-11-07 12:04:19
は大丈夫と思うが、ウチの不肖の甥っ子が勤める高○県警は、山狩りの訓練登山中に、甥っ子もろとも遭難し救助されたという。
カッコイイ・・・。
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ドキドキ (sanae)
2006-11-07 12:48:38
しちゃいますよ~
さるやさんにはこんな文才が!
只者ではありませぬ(^-^)v
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河童さま、そりゃ大変! (さるや)
2006-11-07 22:17:29
カッコワルイだろ~。 
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小説 (りちゃーど)
2006-11-07 22:20:02
突然現れた、絹子? 最初は??という感じ。
まるで、小説みたいですね。いつも楽しませてくれる、さるやさんのブログ。 楽しいですね。 今のうちにサインもらおうかなあ。 いずれ有名な小説家に。なるかもしれない。
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