絹子が 「 ホリデー快速 河口湖 」号から降ると、昭文社地図 の解説にあったような、 「 沿線では一番人気の山である 」 の一節も疑わしいものであることの証明のように この駅での乗降客は 3人であった。
それも、一組は3歳ばかりかと思われるような幼児連れの母親で、後は、絹子一人きりの淋しい無人駅である。
近年こういうことに慣れっこになりつつある絹子だったが、やはり、一人きりというのは心細く、嫌がる洋介に無理に頼んででも、同行してもらうべきだったと、後悔も一入である。
それでも、ここまできては、引き返すこともできず、元気を道端の
赤唐辛子にもらい、自らを奮い立たせて前に踏み出す絹子であった。
道は分かりやすく、それゆえ、後戻りの言い訳さえ許してはくれない。
絹子はふと、家にいる洋介のことを考えてみた。
今頃、洋介は何をしているのだろう。
いつもの格好で、寝そべっているのだろうか。
少しは、絹子の心細さをわかってくれているだろうか。
私を思ってくれているだろうか。
もし、この先、この山で命を落とすようなことにでもなったら、洋介は 「 あの時付いていってやれば・・・ 」と、後悔してくれるのだろうか、それとも、これも本人の山に対する甘さと経験、技術不足だと、いつもの厳しい顔で何事もなかったかのように、語るのだろうか。
そんな心配が、絹子の華奢な足を、それ以上に力なくさせているのであった。
登山道に入ると、絹子は少しづつ開放的な気分も手伝ってか、面白いことを考え始め名案だと目を輝かせた。
夢見がちなのはいつものことで、子供達も母親の記憶が飛び飛びなのを、今はなんとも思わない。
絹子自身、子供の頃に自身に何があったのか、既に母が亡くなったいまでは、聞く相手もいないのである。
そうだ、今日は、男になったつもりで、小説を書きながら登ってみようという思いつきに、ひとり有頂天になり、誰も登るもののいない、登山道で声をあげて、「 良い思い付きね! 」と自身を誉めているうちに、熊すずを鳴らし忘れているのに気づき、また、「 お馬鹿さんね 」と止めども無い独り言を繰り返すのであった。
・・・つづく・・・
「お馬鹿さんね」と止めども無い独り言を繰り返す華奢な登山者をみかけたら、絹子さん?って声かけますよ。
「アンタの事だよ!オッサン!!」とか冷たく言い放たれたりして(汗)
絹子さんの心情がよく描かれていると思います。
私の心情にも通じるものがあります。
挿絵も自分で入れては如何でしょうか?
何度も読み返し、笑いが止まりませんでした。
親方って、可愛いな~。
TBありがとうございます。
迷惑TBが来るので、一端保留にしてから公開しています。
お待たせしないように頑張りますが、パソコンが側に無いときは、少しのご容赦を・・・。
えいじ様の何故かいつも周りにいるような、美女は登場しませんが・・・そのうち、誰かに羨まれて、痩せ尾根で押されたりなさいませんように、お祈り致しております・・・皆様のような「ど=だ!」というお山には登れない、可哀想なさるやの妄想をしばしお許し頂きまして、またのお越しをお待ち致しております。
今は、東のナイスな美人人妻ブロガーか?(爆・・コラコラ・・・オトナヲカラカウモンジャナイヨネ・・・
カッコイイ・・・。
さるやさんにはこんな文才が!
只者ではありませぬ(^-^)v
まるで、小説みたいですね。いつも楽しませてくれる、さるやさんのブログ。 楽しいですね。 今のうちにサインもらおうかなあ。 いずれ有名な小説家に。なるかもしれない。