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谷津山の鉄塔
都市景観
/
2007-03-26
静岡の街なかには谷津山という小さな山があり、その頂上近くに二つの鉄塔が建っている。
谷津山の鉄塔(新幹線の車窓から撮影) Photo 2007.3.19
旧NHK静岡(JOPK)ラジオ送信塔
内藤多仲設計(設計:S5(1930)、建設:S6(1931))
新幹線で東京から静岡に到着する直前、右側に見える山が谷津山。二つの鉄塔も車窓からちゃんと見える。私にとっては、まもなく静岡駅到着だなという目印になっている風景でもある。
谷津山は標高約100m。小さな子供でも簡単に上れる山というか丘で、私自身、小さい頃から何度も登ったことがある。街なかにあるので静岡市民にとって馴染み深い山で、頂上近くにある鉄塔も、皆が知っている。
谷津山頂上東側から Photo 1989.8.21
現在は東海大学という文字が取り付けられている鉄塔だが、静岡生まれのお年寄りの多くは、これがもともとは、NHK静岡放送局によって設置された、ラジオ送信用アンテナであったことを知っている。コールサインはJOPK。静岡で初めてのラジオ放送が行われた歴史的施設なのだ。谷津山西側の清水山の麓には、清水公園という小さな公園があり、そこにはJOPKの放送記念碑がある。音羽町だったか柚木あたりだったかは忘れたが、山の麓に最初の局舎が置かれたのだそうだ。
静岡市の中心部にほど近い場所で、存在感を持ってたたずむ二つの鉄塔。だが、ネットで検索すると、意外なほど記載数が少なく、細かいことは分からなかった。ただ、「
http://blog.livedoor.jp/helicamera/archives/50448993.html
」には、現地視察の記録が載っていて、鉄塔・アンテナとしての機能や現状はなんとなく分かる。
それによると「鉄塔の基部には「昭和6年製造」の銘板がある」という。また「左右の鉄塔の間にアンテナ線を渡し、丁度その中間から下に給電線を下ろす仕組みの旧式の中波ラジオアンテナで、その形からT型アンテナと言われることもある。」のだそうだ。現在は「給電ケーブルが切れていて」送信はされていないらしい。
ただ、写真ではよく分からないが、今も二つの鉄塔の間には何らかの空中線があり、その途中から縦の線も下がっている。東海大学は、NHKが駅南の方にラジオ送信塔を建てた後に、この鉄塔を所有することになったという。そしてその後は、送信用ではなく受信用にこれを使っているという話も聞いたことがある。
私が小学生の頃は鉄塔本体に触ることもできたが、大人になってから訪ねてみたら、周囲が囲われていて近づけなくなっていた。詳細は不明だが、やはり何らかの方法で今でも使われているらしい。
昭和の初期にラジオの送信塔として建設された鉄塔であることは昔から知っていたので、このへんまでは、ある程度、想定の範囲内。でも、これを設計したのが誰かなんてことは、静岡生まれの私でも今まで全く知らなかった。鉄塔だから、どこかの技術者が設計したのだろう程度にしか考えていなかった。
ところが先日、本屋さんでINAX出版の本を立ち読みしていたら、思いもよらぬ記述を発見。塔博士、内藤多仲について書かれた「
タワー・内藤多仲と三塔物語
」という本なのだが、それに、静岡のラジオ送信塔も昭和初期に内藤博士が設計したものだと書かれていた。おおーっ!、内藤先生だったのかー!
内藤多仲博士(1886?1970)は、耐震壁など耐震構造を研究した構造設計の大家だが、名古屋や札幌のテレビ塔、大阪の通天閣、そしてなんと言っても東京タワーを設計した、塔博士として知られる。全国で200以上の鉄塔の設計をしたとも言われ、ある意味、日本の近代の塔のイメージを創ってしまった人なのではないかと思う。子供が描く塔の形ってみんな、東京タワーみたいな形してたもんな。
静岡のNHK鉄塔は、戦前のもので、ラジオ草創期の送信塔であり、内藤多仲設計の塔の中でも古い部類に属する。なんと言っても築76年。名古屋のテレビ塔(1954)は近代化遺産に指定されたようだが、それよりも更に20年以上古い。でも静岡市民は、内藤多仲博士の設計だなんてことは、ほとんど知らない。またこれが全国的に見て、ラジオ送信塔として古い方の部類のものだということもあまり知られていない。
二本の鉄塔の間に空中線を張って、それを使って送信するというスタイルも古く、歴史的技術史的に価値があるものなのではないだろうか。大正14年に東京の愛宕山で始められたラジオ放送の際の鉄塔も同じタイプ。東京の方は早々に無くなってしまったが、静岡にはまだ鉄塔が残っている。
だが、現在、この鉄塔は文化財指定等は全くされていないようだ。静岡の人々は、第二次世界大戦の空襲をくぐり抜けて建ち続けているこの鉄塔の、近代化遺産としての重要性にもっと注目すべきなのではないかと思う。
さて、話はかわるが、小学生の頃、学校で谷津山に関する唄を習ったことがある。
今回、鉄塔の話を書いていて思い出したので、ネットで調べてみたのだが、詳細は全然分からなかった。メロディーは意外にハッキリ覚えているのだが、歌詞が一部あやふや。曲名は「お茶の山」か「谷津山」だった気がする。でもあの歌は、もしかして私の通っていた学校だけで歌われていた曲だったのかしら??
唄にもなった谷津山。山だけでなく、鉄塔も静岡市民にとって馴染み深い風景だ。静岡の誰もが知っている風景を成す、谷津山と鉄塔の風景を、これからも是非残して欲しいものだ。
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コメント
なぜ惹かれるのか
(
ぺん太
)
2007-03-28 20:44:09
なぜかわからないのですが、連なっていく鉄塔に心惹かれます。高速道路わきに数基(って数えるのかしら)連なっていると「おおっ」と喜んでしまいます。自然の景観を考えると不自然で邪魔なことこの上ないのですが、山並みにそって連なっていく様には思わず目を奪われます。鉄塔についてあれこれ調べるほど好きというわけではないのですが・・・・・。
ごくまれに行く海外で変わった形の鉄塔が並んでいると思わずカメラを構えてしまうのですが、残念ながらそういった場面はほとんどがバスの中なので撮影できた例がありません。
そんななかでアスワンで沙漠の彼方にどこまでも連なって見えた鉄塔は深く心に残っています。砂のキレイな砂漠に下車したため鉄塔をバックにスナップを取ることも出来ました。10年前の懐かしい思い出です。
Re:なぜ惹かれるのか
(
asabata
)
2007-03-29 02:11:27
塔という構造体は、それがたとえ展望施設などではなくても、ランドマーク的なシンボルタワーに見えるものなのかもしれませんね。
あと、いくつも建ち並ぶ姿には、人工的な規則性とかリズム感があって、それもちょっとした快感なのかもしれないなと思います。
私も小さい頃に通学の車窓から見た高圧線の鉄塔が、今も記憶に残っています。
あの電線と電気は、どこから来てどこへ行くのだろうと考えると、変な言い方かも知れませんがロマンがありますね。
おお、そのとおり!
(
ぺん太
)
2007-04-01 23:13:10
>いくつも建ち並ぶ姿には、人工的な規則性とかリズム感があって、それもちょっとした快感なのかもしれないなと思います。
かなり、魅力の核心を突かれました(日本語、変)。さすが!
>どこから来てどこへ行くのだろうと考えると
「鉄塔武蔵野線」の世界? 読んでいませんし、観てもいないのですが。
乗り物からの景色
(
asabata
)
2007-04-02 03:01:50
私は、乗り物の移動につれて、塔の見え方や位置関係がどんどん変化するのが、以前から気になって仕方がありません。
進行方向の変化に応じて、対象が右へ左へ動きを変えながら近づいて来るのが、私にとっての乗り物からの景色の楽しみの一つになっています。
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ごくまれに行く海外で変わった形の鉄塔が並んでいると思わずカメラを構えてしまうのですが、残念ながらそういった場面はほとんどがバスの中なので撮影できた例がありません。
そんななかでアスワンで沙漠の彼方にどこまでも連なって見えた鉄塔は深く心に残っています。砂のキレイな砂漠に下車したため鉄塔をバックにスナップを取ることも出来ました。10年前の懐かしい思い出です。
あと、いくつも建ち並ぶ姿には、人工的な規則性とかリズム感があって、それもちょっとした快感なのかもしれないなと思います。
私も小さい頃に通学の車窓から見た高圧線の鉄塔が、今も記憶に残っています。
あの電線と電気は、どこから来てどこへ行くのだろうと考えると、変な言い方かも知れませんがロマンがありますね。
かなり、魅力の核心を突かれました(日本語、変)。さすが!
>どこから来てどこへ行くのだろうと考えると
「鉄塔武蔵野線」の世界? 読んでいませんし、観てもいないのですが。
進行方向の変化に応じて、対象が右へ左へ動きを変えながら近づいて来るのが、私にとっての乗り物からの景色の楽しみの一つになっています。