駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

糖尿病、瓢箪から駒?の新薬の躍進

2017年07月15日 | 医療

          

 三年前に新発売になった糖尿病治療薬のSGLT2阻害剤というのは瓢箪から駒のように見える薬だ。尿に糖を出して、糖尿病を治療しようというのだから、最初に聞いたときはほんまかいな大丈夫かいなと思ってしまった。

 昔から糖尿病は尿に糖が出て、小便が甘くなる病気として知られていた。尿にたくさん糖が出ればそれだけ病気は重く、食べてもどんどん痩せて衰弱するので、危険な兆候とされていたのだが、わざと尿中に出る糖の量を増やして、糖を体外に捨ててしまおうというのだから、大胆不敵な作戦だ。勿論、血糖を上げて尿に糖を出させるわけではなく、SGLT2阻害剤は血糖がさほど高くなくても尿に糖がたくさん出るようにする働きを持っている。どうしてそうなるかというと、腎臓は老廃物を尿中に捨てる働きをしているのだが、精密に老廃物だけを漉し出すことが出来ず必要なものまで一緒に漉し出てしまうので、必要なものは再吸収する仕組みが備わっている。当然、漉しだした糖も再吸収するようになっているのだが、SGLT2阻害剤はその再吸収を妨げて尿中に糖を出してしまうわけだ。

 糖尿病の方が読まれると不愉快になるかもしれないが、SGLT2阻害剤はわざと尿に糖を出させる薬で甘い尿が出るようになって、昔であれば汲み取り屋さんにお宅には糖尿病の方がおられますねと注意されることになる。折角食べた栄養を捨てるわけで、勿体ないようであるが食べ過ぎたものを捨てると思えば成程となるだろう。そのため減量効果も望め、肥満した糖尿病患者さんには一石二鳥の薬だ。

 このところ、いやいや一石三鳥四鳥だぞという報告が出てきて騒がしくなっている。実はこのSGLT2阻害剤、最初は使用は慎重にということで色々但し書きが付いていたのだが、高齢者でも使える、それほど太っていなくても使えると、徐々に使用量が増えてきている。そして不思議なことに、高々二三年の服用で患者さんの心血管疾患を改善したり減らしたりすることが分かってきた。普通、新薬ではこうした効果を証明するのに五年十年を掛け、何千何万人もの患者さんを対象とした臨床治験をしなければならないことが多いのだが、高々二三年数百人の臨床治験で好ましい効果が出たので、製薬会社は大車輪で販売促進に取り組み始めている。

 思えば八年前にDPP4阻害剤という糖尿病の新薬が出たのだが、これが効果があって使いやすい(体重が増えない低血糖を起こしにくい)ために、瞬く間に一番使われる薬になった。患者さんは勿論、製薬会社も多大な恩恵を受けた。SGLT2阻害剤も二匹目の泥鰌になる可能性があり、製薬会社のMRの目の色が変わっている。

 尤も薬の効果が五年十年経って出てくる場合もあるので、逆に当初良くても五年十年経ってこれは拙いという副作用が出ないとは限らない。比較的慎重な私は某先生のように熱狂的に使用はせずSGLT2阻害剤をゆっくり使い始めている。当社の薬をと蝉の鳴くように喧しいMRの声を聞き流し、今の所二種類だけを採用している。しかしまあ、断ることの苦手な私にはあるからもういい、また今度と言い続けるのも難儀なことだ

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