駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

診療の拒否権と自己責任

2016年10月11日 | 医療

        

 中年男性に多いのだが、入院勧告を拒否する方が結構おられる。先日四日間38Cの熱が下がらないと来院したM氏(六十代男性、重役風)、診察で肺の副雑音ははっきりしなかったが、腹痛や背部痛もなく説明しにくい発熱なので胸部写真を撮影したところ右下肺野の細菌性と思われる肺炎だった。これは当院では治療できないのでと病院を勧めた。意外なことに医師が手薄で巷の評判はもう一つのH病院を希望された。聞かれればどこが良いとは言うが、肺炎であれば希望される病院をとやかく言うことはない。

 翌日ファックスで患者がどうしても入院できないと言うので、外来で抗生剤の点滴注射をすることになったと院長自らの返事が届いていた。ああなるほど、だからH病院を希望したんだ。私が肺炎だからと病院を紹介する段階で入院を拒否する積りだったと思われる。M氏の肺炎は外来でも治療可能な部類に入ると思ったが、肺炎は一つ間違うと命に関わる病気なので、細菌性と判断すれば90%病院に紹介している。外来で抗生剤の点滴をすることは当院でも可能で、時々病院への通院が大変だからと、病院から依頼されて何日か抗生剤を点滴することはある。

 他の業種ではあまりない感覚かもしれないが、医業では責任の分担、きつく表現すれば責任の拡散を考えることがしばしばある。殊に昨今は手を尽くしても結果が悪いと訴えられる恐れがあるので、病気を診て患者を見て、病院へ依頼することもある。

 入院を拒否するのは患者の権利なので、きちんと説明しても拒否される場合は次善の手段を取ることになる。そうした場合、結果が思わしくなくても、患者さん側にも大きな責任があることになるはずだ?。実際に訴えられたことはないので、本当にそうかは知らないが、訴える気持ちを抑える働きはあるだろう。

 M氏は一週間ほどの通院で軽快したようだ。だからこれでよかったと思っているだろうが、数%の命の危険や十数%の遷延する危険があったことをどの程度理解しているだろう、ちょっと気になる。

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