駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

休めなかった休日

2017年08月21日 | 診療

 

 昨日一昨日と末期がんの患者さんの様態が悪く電話が五回往診が三回(深夜に二回)あり、十分には休めなかった。結局、今朝午前三時に亡くなった。個人差はあるだろうが、こうした往診は六十歳くらいまでだなあと感じている。

 それでも多分もう少し続けることになるだろう。別に感謝されたくて往診しているわけではないが、亡くなったKさんの家族は感じがよく医者を医者として扱ってくれる丁重な人たちだった。Kさん宅は失礼ながら川端の陋屋で薄暗く、掃除もあまり行き届いていなかった。当初、これで在宅治療が大丈夫だろうかと危惧したのだが、奥さんは実直な人で手が良く動き息子も娘さんも父親を心遣いながら、別れを受け入れる覚悟はできていたようだった。訪問看護師も有能でフットワークの良い人でほとんど毎日のように患者宅に足を運び、状況を報告し、指示を仰いできた。

 駆け付けた家族の履物が並ぶ玄関で、こんな時間にありがとうございましたと赤い目でお礼を言われると在宅で看取れて良かったなと思えた。

 豊田真由子さんに一年ほど第一線で訪問看護師をしてもらえば、考えが少し変わるかもしれない。「何よこの汚い家」と怒鳴りつけられても、精一杯働きながらそうした家で暮らす人が大勢居られるのだ。決して自己責任などではない。

コメント (2)
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