文化と利益

2013-10-29 | 日記

樋口廣太郎著 『 前例がない。だからやる 』 (1996年 実業之日本社発行 ) 。もう、かれこれ樋口氏はアサヒビールの社長、会長だった方で、それまでは、風の前のともし火だったような会社を再建するべく、「 アサヒスーパードライ 」 の発売で会社のピンチを救った方であった。その著作に興味ある一文が掲載されていたので紹介する。タイトルは 「 文化活動は会社のエネルギー源 」 。

ビール会社のように、味や香りを大切にしている企業の社員は、豊かで高い感性が求められます。 ( 中略 ) 豊かな時代に育った豊かな感性をもつ世代の社員が、企業に入ってから品性が貧しくなってしまうことになれば、本人にとっても企業にとっても不幸な事です。しかし、社員に急に感性をもて、創造的になれといっても、それは無理というもの。ですから、社員も文化活動を通じて文化、教養、娯楽などに強い関心を示し、積極的に参加してほしいのです。素晴らしいオペラやクラシックを聴くとか、いい絵を見るなど、芸術に触れることは、素晴らしいものへの憧れにつながり、同時に、そこで養われた感性が、必ず商品づくりやデザインを考えるときにフィードバックされます。

企業が文化活動をやらなくなると、企業のエネルギーはなくなります。あまり現実的な利益ばかりを追求して、文化活動への資金協力や協賛を惜しんでいたら、その企業は社会に受け入れられなくなるでしょう。企業がコンサートなどに協賛するのは、もちろん、そのことで少しでもチケットが安くなって、多くの方々がチケットを求めやすくなればうれしいことですが、それは第二義的なことで、企業が行う文化活動の第一義は、企業自身が生存するための手段なのです。美や文化に憧れる心をもたない企業は伸びません。企業、社員にとって、文化活動は大事な栄養素なのです。

17年前に出版された本で、今日では “ 企業メセナ ” なんていう言葉はまだあるのだろうか。メセナ活動は、企業が直接の利益を求めない文化・芸術・スポーツへ資金など提供するいわば社会貢献のことなのだが、景気の下降低迷とともにあまり聞かれなくなったようである。しかしそうは言っても、そうではない企業も今も多くあるわけである。利益とはただ単にお金に関するものばかりではなく、 「 精神的利益 」 を積極的に追求することの方がむしろ “ 利益 ” になるのではないだろうか。最終的に、利益とは一体何処に行くのだろう。 「 栄養素 」 と言うことの意味を考えてみる必要があるかも知れない。

 


夜のグラス

2013-10-28 | 日記

長年愛用しているカイ・フランク ( 1911-1989 ) がデザインしたグラス ( カルティオ ) である。他にもこのカルティオ・シリーズでは、僕はこれともう一つ大きめサイズのものを使っている。どちらも色は緑と青と透明色の三種類があって、とてもシンプルなグラスである。この小さ目の一飲みサイズのグラスで、僕は朝に一杯、夜寝る前に一杯の水を飲む。シンプルな美しいデザインは美しい夢を見させてくれる、かも … 知れない。

 


gallery artbookchair 閉店

2013-10-27 | 日記

今日をもちまして、gallery artbookchair を閉じました。

1トントラックで一日中荷物の移動でした。今日は三人の助っ人が来てくれたので、まずはお礼を言わねばなりません。本当に感謝しています。きょうからまた画廊探しです、早くいい場所を見つけねばなりませんが、縁というものも大切なひとつだと思います。当ギャラリーは約半年余りの短い期間でしたが、皆さんとの出会いはとても素敵に刺激的でした。いつかまた皆さんと再会をしなければなりませんね。ひとまず長岡での第一ステージを閉じることにします。ありがとうございました!

 


夕陽の思想

2013-10-26 | 日記

10月14日午後5時16分に撮った柏崎・大湊海岸の夕景である。ちょうど、夕陽が日本海に没した瞬間である。世界がだんだん濃い紫色になって行った。ここから夜が始まるのである。夜の始まりはまた、朝 ( あした ) への始まりである。

今日のギャラリー・アートブックチェアーはほとんどの本が箱詰めされたので、ほとんど物置部屋状態になった。いよいよ明日はこの荷物の移動である。本だけで段ボール箱100箱以上はあるだろうか。ありがたいことに何人か手伝っていただくが、腰を痛めないよう慎重に作業をしなければいけないナ。閉じることはまた開くことへの準備である、ということを夕陽が教えてくれる。これを、夕陽の思想、というべきか。 … なんて思ったりして。 

 


名残りのスペースと夢想

2013-10-25 | 日記

    

今日はギャラリー最後の営業日週末になりました。今日を含めてあと3日間の営業です。が、もうあさっての日曜日には荷物を運び出しますので、今週はほとんど空っぽのギャラリーになってしまいます。写真のように、本の箱詰め作業はこの書棚のものを残すばかりになりました。今日もこれからダンボール詰めですが、その前に午前中は珈琲をいただいて、しばらくは回想の時間にしようと思います。

このスペースで過ごした時間は、僕にとっては、とても豊かな時間になりました。ありがたい豊かな日々でありました。僕には、どんな環境下にあっても 「 人生は美しくなければならぬ 」 という夢想があります。時に、夢想が背中を押してくれることがあり、夢想が何かを牽引してくれることがあります。夢想も無いよりは有ったほうがいいように思います、持ってても税金は取られないのですからね。そして、夢想とはエネルギーの一変種ではないか、とも思うふしもあります。訪れていただいた方々には、ただ、感謝ばかりです。そしてまたいつか、皆さんと再会をしたいと思っています。これもひとつの僕の夢想であります。