月明かり

2016-09-18 | 日記

      

これは一昨日の深夜の写真で、一時晴れていたが雲がかかっている。下に見えるばんやりした二つの明かりは田圃を隔てた隣家の窓。写真全体をキャンバス100号くらいのタブローに見立てても面白い。

今日は一日中雨降りで一時沛然とする。それで今日も一日中家の中でアンセイに暮らしていた。出しっ放しの本を元の書棚に戻して、机の上を整理しきれいに拭いたので、明窓浄机と言う言葉を実感する。それで永井荷風の「日和下駄」(岩波版『荷風全集第13巻』から)を読む。大正三年頃の東京市中の下駄とステッキの散策記で、変貌する東京市中を寂しみ、江戸の名残りに哀惜の情を傾ける荷風落涙のエッセイである。

今日(こんにち)東京市中の散歩は私の身に取つては生れてから今日に至る過去の生涯に對する追憶の道を辿るに外ならない。之に加ふるに日日(にちにち)昔ながらの名所古蹟を破却して行く時勢の變遷は市中の散歩に無常悲哀の寂しい詩趣を帶びさせる。およそ近世の文學に現れた荒廢の詩情を味はうとしたら埃及(エジプト)伊太利(イタリー)に赴かずとも現在の東京を歩むほど無殘にも傷ましい思(おもひ)をさせる處はあるまい。今日(きょう)看て過ぎた寺の門、昨日休んだ路傍の大樹も此(この)次再び來る時には必ず貸家か製造場になつて居るに違ひないと思へば、それほど由緒(ゆかり)のない建築も又はそれほど年經ぬ樹木とても何とはなく奥床しく又悲しく打仰がれるのである。

 

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