ART&CRAFT forum
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◆プライスプリット展会場風景
会期:2005年10月11日(祝)~15日(土) 会場:千疋屋ギャラリー

2006年1月10日発行のART&CRAFT FORUM 39号に掲載した記事を改めて下記します。

プライスプリット展報告


 撚りひもの撚りを割り、そのすき間に撚りひもを通しながら平面をつくるPLY-SPLIT(撚り割り技法)はインド西北部砂漠地帯の牧畜民がらくだの腹帯づくりのために発明したユニークな技法です。
 この技法については1980年頃より欧米の研究者による調査が行われ、ついに1998年、僻地に5回も足を運びつくり手より直接学んだ貴重な技法を網羅したPeter先生の完璧な技法書が出版されました。
 私はかなり以前にこの不思議な技法の腹帯に出会い、早速入手したものの織りでも組みでもない技法は永い間謎のままでしたが、この本で謎解きができたばかりでなく、たった二種類の基本技法だけで平面より立体に多様な展開が可能なことを学びました。
 織り、編み、組み構造の要素と重なりながら更に撚り特有の作用が加わることで表現の巾が拡がるPLY-SPLIT。このプリミティブな手仕事にひそむつきない魅力を多彩な作品に展開することができた第一回展も無事に終了。これからも意欲的なつくり手のお仲間と共に、互いに学び合いながら私も制作活動を続けたいと思ってます。  嶋貫昭子

雨森浩子 Hiroko Amemori

 プライ・スプリットの織や組や編みでもない組織・構造に興味を持ち、講習会に参加したことをきっかけに、学び始めました。
 グループ展では5点作品を展示しました。4点は同じ素材(ビニロン)同じ方法で制作し、糸の太さや撚り加減(甘撚りか強撚りか)が違うと出来上がるかたちや表情がどれだけ多様になるのかを意識したものです。
 もう一点は不安定な荒い網のような組織のパーツをつなぎ合せて構成した作品です。
 私は織で立体的な作品を制作する際、製織後何か手を加えることが多くあります。手を加えることに必然性があるのか作為的になっていないか常に気にかけています。プライ・スプリットの場合そのようなことを意識せずに立体作品ができてとても新鮮でした。  

杉山佳子 Yoshiko Sugiyama
かなり以前になりますが、Split-Ply Twining V.I.Harvey 1976 という本が手に入りました.それによると1974年の ある会合で、新しいテクニックが議論された、そのわずか 二年後に出版された本だったことになります。オフルームの 技法のひとつとして、気になっていたのですが、島貫先生の 講習会で、教えて頂くことができました。                 
 今回の作品はなるべくシンプルにとした結果、単色、表面は スムースで、凸面(あるいは裏返して凹面)のみで構成することにしました。重いものを通って、気泡のようなものが、もがきながらも突き上げていくイメージで、‘上へ’という題にしました。意に沿ったものができたとは考えにくいですが、これからも、思いが伝わるような作品を目指したいと思います。

田中通子 Michiko Tanaka
織ることを中心の作品づくりでなく、糸を用いて平面、立体の作品づくりが出来ないだろうか。組む、編む、もじる、結ぶ等の技法はあるけれど・・・と新しい技法を求めていた頃、島貫昭子先生のプライスプリット・ワークショップでの出会いが私にとって今まで考えられなかった作品づくりへのきっかけとなった。
この技法を用いて、平面、立体作品を制作する過程で様々な素材、自由なデザインとコンセプトで表現できる作品につながっていくことに、この上ない嬉しさを感じています。
今はまだ作りながら考え、試行錯誤を繰り返しながら、新しい技法への模索が始まったところです。今回の作品はプライスプリットの二つの技法を平面作品と立体作品を制作してみました。

原すがね Sugane Hara
 初めてこの技法に触れた時、撚りに添って紐が整然と配されること、組み方によっては自由自在な動きが展開できることに興味を持った。サンプル制作で用いた既成のロープから、どのようにしてその技法を自分の方へと引き寄せ、作品としていくか迷った。そして、普段ミシンワークに使用しているオーガンジーを細幅に切りステッチを掛けて組んでみたところ、柔らかく透明感のある表情そのままの作品が出来た。そこから発展させ、部分的には布地の状態を残し、撚りに強弱をつけ素材の変化を見せる「Metamorphosis」という作品へと結びついた。その後は和紙を撚って組んでみたり、素材づくりから関れる点が魅力だと感じている。今後はロープで組んだものに漆を施したり、大きな作品に取り組みたい、と興味は尽きず、自分の中にひとつの技法として定着したようだ。そして、引き続き研究会に参加させていただきながら、嶋貫昭子先生の指導者としてのあり方からも多くを学ばせていただきたいと願っている。

水谷恵子 Keiko Mizutani
 私は今まで織りの制約の範囲内で、半立体から立体に表現するのに、構造的な事を考える、張りを持たせるなどの試行錯誤を繰り返して取り組んできました。プライスプリットは織りと違って、気軽に糸によるドローイングをするかのように始めることが出来、それが面となり後で手を加えなくても自然に立体にする事もできます。それは私にとって、作る事の楽しさを改めて感じさせてくれるものでした。それに織りで表現するのが難しかった曲線を表現する事が出来るのも、魅力の一つでもあります。いつか織りとプライのコラボレーションによって、遊び心をプラスした新たな作品が展開できればなと思っております。

石橋みな美 Minami Ishibashi

プライスプリットという技法と初めてであったのは、島貫昭子氏の個展である。その後、東京テキスタイル研究所でのセミナーで、実際にやってみることが出来た。通常わたしが多い用いる技法は、棒針編み、鉤針編みなどの「編む」技法である。編むときには糸はほとんど切らない。一本につながっているのが基本である。ところがプライスプリットは、あらかじめ一定の長さに切られた糸を使う。何十本もの糸を測り切断しておく。このことに少々の抵抗感がある。そしてこの抵抗感に新鮮さを覚える。
 この技法はいたってシンプルである。糸の撚りの間に別の糸を通すことの繰り返しだ。単純であるがゆえに、多様な展開で作品にすることが出来る。規則性を重視した幾何学的なもの。密に組むことで出る色糸効果。硬くきっちりとした組織を生かした立体。さらには撚りを飛ばして通して透け感を出した軽やかなもの。
 今後は、その多様性の中に、更に編む技法を取り入れていきたい。どういう形で融合できるか探っていくのが当面の課題である。

高宮紀子 Noriko Takamiya
作品の素材はDIY店で購入した木綿コード。POTという方法(材同士が通し通される方法)で作っている。いつもはかごの方法で作品を作るので、それらの方法とどう違うのか関心があった。今回の作品は、かごの技法の組み技法とPOTの外見がよく似ていることから発展したもの。方法を限定して、どういう性質があるのかを探ってみた。
作品の中は空洞。それぞれの材の進む方向を変えて全体を曲げた。かごの組みの操作方法とは違う点があり、これでも曲がる!と思い面白かった。プライスプリットでは材の撚りの性質が鍵となっているが、私にとって撚り自体を追求することは難しい。むしろプライスプリットの原理を展開した作品を作りたいと思っている。

林 真紀 Maki Hayashi
私は今まで、経糸と緯糸(織り)の世界で製作を続けてきました。島貫先生と出会い、プライスピリットの技法を学ぶ機会にめぐり会い、表現方法が無限にある事に気づかされました。今回の展示会では、生糸とウール擬麻を使用し、仮織り、染色、本織し、上下の房に撚りをかけました。いくつもの房を思いままに組み、SomethingNice が生まれました。しかし漠然としたイメージのまま作業を進めた結果、自分の力不足を実感する作品となってしまいました。After Dark ではまず、どのように展示し見せるかを考え製作しました。そのせいでしょうか、いくらかまとまりのある小作品になったと思います。
これからも自分に挑戦し、作品を制作し続けていきます。第1回目の展示会を終え、いつも暖かく見守ってくださった三宅さん、熱心に指導をしてくださった島貫先生、すばらしい仲間に出会えたことを感謝いたします。

星野泰子 Yasuko Hoshino
 編んだり組んだりして出来上がったものを目にした時、その形ができる迄のプロセスはどのようであっただろうか、と考える。思いもよらぬ方法でできていることもある。
 結果的に縒りの間を他の糸が通っているということは、トワイニングでも、ブレイディングでも、ループ操作組紐などでも起こりうる。縒りの間を割って通すということは、思いもつかなかったので、虚を衝かれたような気がした。
 プライ・スプリット技法で、POTとSCOTとを組み合わせて立体をつくってみた。紙素材であることを利用して、片方又は両方共端をループにして、端が見えることを試してみた。縒ると同時に縒りを戻すことによっても、別の表情が現れることに面白さを感じた。

渡辺由紀子 Yukiko Watanabe
 プライを初めて見た時、不思議でおもしろくて、どこからでも始められ、交差でき、立体になり、すぐに魅力に引かれてしまいました。なんとか球にしたい欲求にかられ、何度か挑戦し、球体ができあがりました。始めは4本を1本の帯として作っていく時の糸の動きが見えにくいので、多色で制作していましたが、一色にしてみると何かもの足りない気がして、制作後に染めてみることにしました。撚りをこじ開けて組む技法なので、水に浸して水を含んでいる時は硬くパンと張りがあったものの乾燥すると糸の間がスカスカになってしまい残念でした。これもやってみないとわからないこと、また新しい形や組み方にチャレンジしていきたいと思っています。


ピーターコリンウッドさんの本は研究会のメンバーにとってバイブルのような存在です。展覧会の写真をお送りしたところ下記のようなメッセージをいただきました。

I was VERY impressed with the catalogue of the ply-split exhibition. You in Japan seem to have taken the technique to new areas. You are so inventive with shapes, materials, concepts. I now think Japan is the Ply-split Capital of the World!
Congratulations
Peter Collingwood

プライスプリット展のカタログはとても印象深いものでした。あなた方は独創的な形や素材、コンセプトにより、日本でその技術の新しい境地を開きました。今や世界の中で日本がプライスプリットの中心地だと思います。
おめでとうございます。
ピーター・コリンウッド

昨年、アメリカ・ポートランドでプライスプリット展を企画したリンダヘンドリクソンさんからも、「形、素材といい現代におけるプライスプリットの最も興味深い作品は、日本で展開されているのではないでしょうか」というメッセージを頂きました。


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