アートの周辺 around the art

美術館、展覧会、作品、アーティスト… 私のアンテナに
引っかかるアートにまつわるもろもろを記してまいります。

北斎 -富士を超えて- @あべのハルカス美術館

2017-11-09 | 展覧会

先日の「国宝展」につづき、この「北斎展」も、大盛況!会場は大混雑であります。また、浮世絵の展覧会は作品が小さいものだから、混んでいると作品がよく見えない(泣)。そこで、平日閉館前を狙って見に行ってまいりました。

今年は北斎の当たり年。東京でも北斎とジャポニスムにスポットを当てた展覧会が行われていますが、本展はロンドン・大英博物館で開催された展覧会の里帰り、北斎の長きにわたる画業の特に晩年30年に焦点を当て、肉筆画を多く集めているのが特徴です。11月1日から後期展示が始まり、いくつかの作品が入れ替わりましたが、私の最大のお目当ては、北斎ではなく娘の応為が描いた「吉原格子先之図」。これは、楽しみ~。

浮世絵(錦絵)を目にすると、いつもながら絵師・彫師・摺師の高度なコラボに驚嘆してしまいます。今回、出品されていた下絵は、作品の原型を見ることができた点で、かなり興味深かった!やっぱり下絵がおもしろいからこそ、彫師・摺師の腕を奮わせ、絵を最大限に活かし表現する錦絵が生み出されたのでしょう。

それにしても北斎の画力は素晴らしく達者です。本当に、自在に何でもどんな技法ででも描けた人だったんだろうなあ。90才まで衰えを知らぬ画力を見ると、北斎にとって描くこと=生きることだったんだな、と感じます。展示のキャプションの隅に描いたときの年齢が記されているのは良かった。常に「北斎」という人物を、意識しながら見ることができたように思います。

北斎の作品で、一番心に残ったのは、最後の作品、90才で描いた「雪中虎図」。何だか毛皮をパッチワークしたような虎の姿は、ふんわり宙に浮かんで、楽しそうに手足を掻いています。楽天的な表情とは対照的に鋭くとがった爪が、雪をかぶった木の葉の鋭さと呼応していて印象的でした。全体的な空気感は、神々しい!

そして、お目当ての葛飾応為「吉原格子先之図」は…思ったより小さな作品で、軸装されていました。ものすごい人だかりで、全然ゆっくり見れなかったのですが、北斎とは全く違ったすさまじい魅力のある作品です。何といっても、光と影の対比が素晴らしい。格子の向こうの光輝く世界、外から眺める人物たちの暗さ。でも格子の向こうの遊女たちの境遇を思うと…。とてもドラマチックで、この小さな絵に表現されているものの深さに、いつまでもいつまでも眺めていたくなる、そんな作品でした。実物を見ることができて、本当に良かった!

応為の作品は3点ほど見れたのですが、北斎と共作とされている「菊図」は、速水御舟を思わせるような、細密緻密な描き込みに圧倒されました。色彩が美しく、絵にとても重厚感があるように感じます。北斎が60~70才の頃に描いた、ライデンからやって来たちょっと西洋絵画を思わせる画風の作品も、もしかして応為の手になるものか?と思ったり。(この前のTVドラマではそうなってましたね)

里帰り展だけあって、大部分が大英博物館の所蔵、その他にも国内外のコレクションから珠玉の作品が集められた素晴らしい展覧会だと思いました。今回、時間も限られていて、実は版画作品をじっくり見ることができなかったのですが、「富嶽三十六景」を始めとする画面の斬新なデザイン感覚も素晴らしい。やはり、北斎は世界中が認める、優れたアーティストであることを再認識いたしました。

展覧会は11月19日(日)まで。これからますます混雑しそうですが、貴重な機会なのでぜひ! 


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2 Comments

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北斎 (dezire)
2017-11-18 22:07:23
こんにちは。
私も「北斎―富士を超えて―」展を見ましたので、大変興味を持ってブログを読ませていただきました。富士山を描かせたら、美術史の前にも後にも北斎のように、品位、安定感、迫力、変化、奇抜さなど多様な表現で見事に描いた画家はいないでしょうね。一方で北斎には珍しい洋風画に創意ある作品、色鮮やかな団扇絵、達磨の水墨画、朱描きの鐘馗図、から『北斎漫画』ので、北斎の絵画に対する幅広い才能を感ずることができました。

私も北斎の美術展を見て、その画号に沿って北斎の仕事と画風の変化を整理し、北斎の魅力を考察してみました、読んでいただけると嬉しいです。ご感想・ご意見などをブログにコメントいただけると感謝します。
dezire様 (art-around)
2017-11-20 00:40:39
はじめまして。
拙ブログをご覧いただき、またコメントも頂戴いたしまして、ありがとうございます。

大混雑の展覧会も、本日で終了、もっとゆっくりじっくり作品を拝見できればよかったですが、それは仕方ありませんね。
北斎の生涯を追ったdezaire様のブログ、参考にさせていただきます!

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