アーク・フィールドブック

四万十フィールドガイド・ARK(アーク)のブログ

ブナ林が黄葉する熊のコルで

2008-11-06 | 黒尊渓谷 黒尊山塊(春秋冬)滑床渓谷

時々 最高気温23度。

 「何かめずらしい物でもあるの?」ブナ林の尾根で、年配の女性がすれ違いざまに僕にたずねた。

「いや、えーと、葉が・・・もごもご」。ふいをつかれた僕は返答に困った。

その時僕は、尾根のブナ林に落ちていた一葉のブナの葉を手にとりジーッと見てた。

特に珍しいものは、なにもない。黄葉した小さなブナの葉を角度をかえて見てただけだ。

「あ、そう」

山歩きのベテランを思わせる格好をしていた年配の女性は、立ち止まるコトもなく

ザザザッと落ち葉を鳴らして、まるで競歩のような早足で登山口方面へ歩いて行った。

 

 つい1時間程前だろうか。

この近くで僕は、今とは逆の方向からやって来たその人とすれ違い「こんにちは」と挨拶したばかり。

「速いなぁ、もう三本杭山の頂上に行ってきたのか?いや、こちらが遅すぎるんだな・・・」

僕は今回もまた、ココロ誘われるままに寄り道してゆくのんびり山歩き、になっていた。

当初の目的地である三本杭山の頂上は、早々と登るのをあきらめていた。

「まぁ、いいや、茶でもわかそう」

空気がヒンヤリとしている黄葉の尾根に、午後の木漏れ日が差しこんでいる。

風が吹いて枯葉が舞い、パラパラと頭の上に落ちてきた。

 

 「そろそろ黒尊の山は、色づいたかな?」

11月の初旬のよく晴れた日、黒尊山塊のブナ林を歩いてきました。

八面山(1165m)~三本杭(1226m)の尾根(熊のコル)のブナ林は、

黄葉のピークを少し過ぎ、すでにその葉を落とし始めていました。

それと入れ替わるように、モミジ類の鮮やかな紅葉は、まだこれからといったところ。

今回は、全体的に黄葉が主役の山でした。

 黒尊山塊は、口屋内村で四万十川に合流する黒尊川、その渓谷一帯に広がる山域の総称です。

このあたりの山は、近年、森林の開発によりスギやヒノキの植林地帯が多くなり、自然林が少なくなった。

しかし、その自然林の一部は「黒尊山自然観察教育林」として残されている(熊のコルのブナ林など)。

そこでは、シイやカシの暖温帯~ブナなど冷温帯までの植生の変化が見られます。
 

 年平均気温が高い四万十川本流沿いの山は、植林のスギやヒノキが多数を占めます。

その次に多いのが、シイやカシなどの常緑樹。

本流沿いでは落葉樹は少なく、低い山や川岸の紅葉はとても地味です(ウルシ類、エノキ、クヌギなど)。

しかし、標高が高く平均気温が低い黒尊渓谷周辺~上部では

・ブナ・カエデ類・ハリギリ・ミズナラ・サワグルミなど紅葉(黄葉)する落葉樹の姿が多く見られます。

秋には、それらの紅葉が山や尾根を美しく彩ります。

 

 また、黒尊山塊には黒尊川の源流もあります。

この山々に降った雨が川となり、山の栄養分を下流に運び、頼りなくもまだ豊かな川と海を養っている。

四万十には、山、川、海の繋がりの面白さが、まだ残っているのです。

*熊はこの山域では、もう姿を見ない。ブナは四国の最西南限。

ブナ林と笹の小道をゆく。

実は黄葉時よりも冬芽の森の方が好きです。

ふた抱え以上あるブナや高木があって嬉しい。

黒尊川源流付近

こんな時は、一眼のデジカメが欲しいなぁ・・

眼下には、秋の午後の日差しに鈍く光る宇和海。



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3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
このページリンクさせてね! (「森のコテージ」)
2008-11-10 22:06:56
アーク様、お久しぶり!
っていうか、ブログではお初です。
八面山の紅葉きれいですね。
私は柚子の収穫期で忙しくて、紅葉撮影が間に合いません。
こちらに立ち寄ってみたら、素敵な画像があったので、「森のコテージ」HP上の紅葉情報にリンクさせていただいてもよろしいでしょうか
もうすでに、お返事いただく前にリンクしちゃいました
お許し下さい

RE 森のコテージ (ark佐野)
2008-11-10 23:31:37
森コテ様
ご無沙汰しています。
画像のリンク、承知しました。
もっと、高性能のカメラがあれば、鮮明な黄葉の写真が撮れて良かったのですが・・。
あの日、森コテさんの前を通りかかった時、沢山のコンテナが積んであって、ああ、今の時期は柚子の収穫で随分忙しいんだなぁと思いました。
また、森コテさんの都合が良い時にでも、寄らせて下さい。
あの素敵なテラスでのんびりお茶が飲みたいです。
まずはお礼まで! (「森のコテージ」)
2008-11-11 16:55:15
ありがとうございます
柚子の収穫期ではありますが、10時過ぎと3時過ぎにはいつもお茶していますので、いつでもお寄り下さい
取り急ぎ、まずはお礼まで

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