サマー2000シリーズの第4戦、札幌記念。実績馬の参戦が多く見られる一戦で、過去の優勝馬にはG1馬や後にG1を制する超一流馬が名を連ねている。今年はG1馬が実績通りの結果を出すのか、それともここをステップに大舞台を目指す馬が現れるのか。データから分析してみよう。
今週は札幌記念。過去の優勝馬にはエアグルーヴやセイウンスカイ、テイエムオーシャン、ファインモーションといったG1、そしてヘヴンリーロマンス、アドマイヤムーンといった後のG1馬が名を連ねており、夏のローカル重賞としては他と一線を画す、非常にレベルの高い一戦だ。 札幌記念をデータから分析してみよう。
このレースは「定量のG2」であることがひとつの注目点になる。G1の前哨戦でも、古馬戦ならば賞金や重賞勝ち鞍によって負担重量が増減されるレースが多いが、札幌記念は昨年から「3歳54、4歳以上57キロ、牝馬2キロ減」の定量戦だ。昨年の阪神C分析でも触れたが、まずこういったレースではどんな傾向があるのかを見てみたい。
細かな分析は第101回「新設重賞・阪神Cを分析する」をご覧頂きたいが、定量や馬齢の古馬重賞(除G1)では1番人気が水準級の成績を収める一方、7~9番人気の人気薄も健闘している。昨年の札幌記念は1→9→2番人気、阪神Cは8→6→4番人気。実績による斤量の増減がないからといって、平穏に収まるとは限らないのだ。
別定戦時代も含めた札幌記念の人気別成績を見ると、こちらは1番人気が連対率60%、複勝率80%と水準を超える好成績で、2~3番人気も上々。ただし、4~6番人気2連対、7~9番人気3連対、10番人気以下2連対と、4番人気以下では人気順がアテにならない傾向にあり、「穴を買うなら思い切って人気薄を」という作戦も考えられる。
第110回「今年は波乱か!? 中山記念を分析する」で触れた通り、出走頭数が増えれば波乱の可能性は高くなるもの。この札幌記念も同様の傾向で、6番人気以下で馬券に絡んだ8頭中7頭は、出走頭数14頭以上の年だった。出走頭数が増えれば「6番人気以下」の頭数も増えるので、これは当たり前といえば当たり前。ただ、今年もフルゲート(16頭)かそれに近い出走が見込まれるだけに、一応このデータも頭に入れておきたい。
続いて、好走馬の前走成績や実績について。前走の条件や着順にはかなりバラつきがあるのだが、「さすがに定量のG2戦」と言える傾向が出ているのが前走クラスだ。表4にある通り、連対馬20頭中17頭までの前走が重賞で、特にG1出走馬が好成績を収めている。以下、それぞれクラス(グレード)別に分析してみたい。
前走でG1に出走していた3歳馬は、札幌2(3)歳Sを制していることが共通点。また表にはないが、芝2000mの重賞連対実績も持っていた。古馬なら札幌実績は必要ないが、G1で3着以内の経験があることが必須条件になる。G1をステップとした馬は多くが休養明けの一戦となるだけに、このくらいの実績は必要ということだろう。
前走G2組の2頭は、芝2000mで重賞勝ちを含む連対率50%以上をマークしていた。サンプルが僅か2頭なので多少の幅をもって考えるべきだろうが、これを一応の目安としたい。ちなみに、ファレノプシスは札幌初出走、サイレントハンターは2戦着外と、札幌実績は問われていない。
最も好走数が多い前走G3組では、14頭中11頭が前走函館記念かクイーンS。まず「前走が北海道かどうか」という点がポイントになる。また、14頭中10頭に(条件を問わず)札幌芝での優勝経験があった。残る4頭のうち、ヘヴンリーロマンスを除く3頭はこのレース3着止まりとなっており、「連対条件」として考えるなら「札幌芝で優勝、または重賞連対」と読むことが可能。また、ヘヴンリーロマンス以外の3頭も、ノブレスオブリッジはローズS3着、コイントスは02年の本レース3着、そしてマチカネキララが芝2000m6戦5勝。札幌芝で優勝、または重賞連対がない馬なら、芝2000mで重賞好走実績があるか、かなりの高勝率をマークしていなければ苦しい、と考えたい。
最後に、前走オープン、条件戦組。この組は、前走がオープンなら3着以内、条件戦なら1着が必須条件。さらに、G1連対実績があるか、全成績で着外2回以下かつ芝2000m2勝以上、という厳しい条件がつく。ハイレベルの戦いだけに、重賞以外をステップにした馬ではそうそう簡単に好走できない、ということだろう。
定量戦といえども、人気薄の各馬にも注意が必要な札幌記念。前走G1組が好成績を収めるほか、G3組ならば札幌芝の実績が重要になる。前走がオープン特別や条件戦だった馬は、まったく底を見せていないか、既にG1で好走実績を持つ馬以外は苦しい。
では、今年の登録馬を前走の条件別に見てみよう。まず、好成績を残す前走G1組。フライングアップル、マツリダゴッホの2頭だが、3歳・フライングアップルは札幌2歳S勝ち馬ではない点と2000m実績がない点、マツリダゴッホはG1実績が前走の天皇賞(春)12着のみという点が減点材料になる。ともに札幌芝で優勝経験があり、「前走G1組に好走多し」というデータを特に重視すれば圏内とも考えられるが、中心視まではしづらく、他に有力馬が少なければ、という際の候補として考えたい。
前走G2の登録馬はアサカディフィートとマチカネオーラの2頭。いずれも芝2000mで重賞勝ちこそあるものの、連対率が50%以下。ただし、元のサンプルが2頭のみであり(表6)、芝2000m連対率40%のマチカネオーラは「ほぼクリア」と見なしてもいいだろう(ただし出走順18番目)。一方のアサカディフィートは、9歳という年齢もネックになる。
前走G3組は10頭だが、本稿執筆段階(水曜)でナムラマース(脚部不安)とディアチャンスが回避との報道がある。残る8頭のうち、札幌芝で優勝、または重賞連対があるのはエリモハリアー1頭のみ。5歳以下優勢の傾向は少々気になるが、7歳馬もダイワカーリアンの優勝があり、大きく割り引く必要はないだろう。
残る各馬では、まず前走北海道組から、芝2000mでラジオたんぱ杯2歳S勝ちのあるサクラメガワンダー、秋華賞3着のフサイチパンドラ、中京記念2着のシルクネクサス。前走北海道以外では、芝2000m重賞3勝、そして本レース10年で5勝の実績を誇る武豊騎手のメイショウカイドウ、芝2000m重賞2勝のサンバレンティンというあたり。ただし、札幌芝実績のない前走G3組はデータ上3着まで。購入する馬券種別次第で評価が変わる5頭だ。なお、人気の一角が予想されるアドマイヤフジは札幌芝の経験がなく、芝2000mの重賞も前走の4着が最高である。
最後に前走オープン・条件戦組だが、表8に該当する馬は見当たらず、芝2000mの実績不足ながら「着外2回以下」のサイレントプライド、前走4着でもG1連対実績のあるファストタテヤマがボーダーライン上。この2頭では、年齢を考慮するとサイレントプライド優位だろうか。
このように、今年はデータをすっきりクリアする馬が非常に少なく、表1~3で挙げたデータ通り、人気薄が食い込む可能性も十分にある。一応ここでは「連対候補」として、エリモハリアー、マチカネオーラの2頭を上位に、続いて「前走G1」を重視してフライングアップルとマツリダゴッホ、そして減点1のサイレントプライドの計5頭を挙げておくが、少々の減点材料くらいは覆して上位に食い込む馬が出てきても不思議のない混戦模様の一戦だ。
今週は札幌記念。過去の優勝馬にはエアグルーヴやセイウンスカイ、テイエムオーシャン、ファインモーションといったG1、そしてヘヴンリーロマンス、アドマイヤムーンといった後のG1馬が名を連ねており、夏のローカル重賞としては他と一線を画す、非常にレベルの高い一戦だ。 札幌記念をデータから分析してみよう。
このレースは「定量のG2」であることがひとつの注目点になる。G1の前哨戦でも、古馬戦ならば賞金や重賞勝ち鞍によって負担重量が増減されるレースが多いが、札幌記念は昨年から「3歳54、4歳以上57キロ、牝馬2キロ減」の定量戦だ。昨年の阪神C分析でも触れたが、まずこういったレースではどんな傾向があるのかを見てみたい。
細かな分析は第101回「新設重賞・阪神Cを分析する」をご覧頂きたいが、定量や馬齢の古馬重賞(除G1)では1番人気が水準級の成績を収める一方、7~9番人気の人気薄も健闘している。昨年の札幌記念は1→9→2番人気、阪神Cは8→6→4番人気。実績による斤量の増減がないからといって、平穏に収まるとは限らないのだ。
別定戦時代も含めた札幌記念の人気別成績を見ると、こちらは1番人気が連対率60%、複勝率80%と水準を超える好成績で、2~3番人気も上々。ただし、4~6番人気2連対、7~9番人気3連対、10番人気以下2連対と、4番人気以下では人気順がアテにならない傾向にあり、「穴を買うなら思い切って人気薄を」という作戦も考えられる。
第110回「今年は波乱か!? 中山記念を分析する」で触れた通り、出走頭数が増えれば波乱の可能性は高くなるもの。この札幌記念も同様の傾向で、6番人気以下で馬券に絡んだ8頭中7頭は、出走頭数14頭以上の年だった。出走頭数が増えれば「6番人気以下」の頭数も増えるので、これは当たり前といえば当たり前。ただ、今年もフルゲート(16頭)かそれに近い出走が見込まれるだけに、一応このデータも頭に入れておきたい。
続いて、好走馬の前走成績や実績について。前走の条件や着順にはかなりバラつきがあるのだが、「さすがに定量のG2戦」と言える傾向が出ているのが前走クラスだ。表4にある通り、連対馬20頭中17頭までの前走が重賞で、特にG1出走馬が好成績を収めている。以下、それぞれクラス(グレード)別に分析してみたい。
前走でG1に出走していた3歳馬は、札幌2(3)歳Sを制していることが共通点。また表にはないが、芝2000mの重賞連対実績も持っていた。古馬なら札幌実績は必要ないが、G1で3着以内の経験があることが必須条件になる。G1をステップとした馬は多くが休養明けの一戦となるだけに、このくらいの実績は必要ということだろう。
前走G2組の2頭は、芝2000mで重賞勝ちを含む連対率50%以上をマークしていた。サンプルが僅か2頭なので多少の幅をもって考えるべきだろうが、これを一応の目安としたい。ちなみに、ファレノプシスは札幌初出走、サイレントハンターは2戦着外と、札幌実績は問われていない。
最も好走数が多い前走G3組では、14頭中11頭が前走函館記念かクイーンS。まず「前走が北海道かどうか」という点がポイントになる。また、14頭中10頭に(条件を問わず)札幌芝での優勝経験があった。残る4頭のうち、ヘヴンリーロマンスを除く3頭はこのレース3着止まりとなっており、「連対条件」として考えるなら「札幌芝で優勝、または重賞連対」と読むことが可能。また、ヘヴンリーロマンス以外の3頭も、ノブレスオブリッジはローズS3着、コイントスは02年の本レース3着、そしてマチカネキララが芝2000m6戦5勝。札幌芝で優勝、または重賞連対がない馬なら、芝2000mで重賞好走実績があるか、かなりの高勝率をマークしていなければ苦しい、と考えたい。
最後に、前走オープン、条件戦組。この組は、前走がオープンなら3着以内、条件戦なら1着が必須条件。さらに、G1連対実績があるか、全成績で着外2回以下かつ芝2000m2勝以上、という厳しい条件がつく。ハイレベルの戦いだけに、重賞以外をステップにした馬ではそうそう簡単に好走できない、ということだろう。
定量戦といえども、人気薄の各馬にも注意が必要な札幌記念。前走G1組が好成績を収めるほか、G3組ならば札幌芝の実績が重要になる。前走がオープン特別や条件戦だった馬は、まったく底を見せていないか、既にG1で好走実績を持つ馬以外は苦しい。
では、今年の登録馬を前走の条件別に見てみよう。まず、好成績を残す前走G1組。フライングアップル、マツリダゴッホの2頭だが、3歳・フライングアップルは札幌2歳S勝ち馬ではない点と2000m実績がない点、マツリダゴッホはG1実績が前走の天皇賞(春)12着のみという点が減点材料になる。ともに札幌芝で優勝経験があり、「前走G1組に好走多し」というデータを特に重視すれば圏内とも考えられるが、中心視まではしづらく、他に有力馬が少なければ、という際の候補として考えたい。
前走G2の登録馬はアサカディフィートとマチカネオーラの2頭。いずれも芝2000mで重賞勝ちこそあるものの、連対率が50%以下。ただし、元のサンプルが2頭のみであり(表6)、芝2000m連対率40%のマチカネオーラは「ほぼクリア」と見なしてもいいだろう(ただし出走順18番目)。一方のアサカディフィートは、9歳という年齢もネックになる。
前走G3組は10頭だが、本稿執筆段階(水曜)でナムラマース(脚部不安)とディアチャンスが回避との報道がある。残る8頭のうち、札幌芝で優勝、または重賞連対があるのはエリモハリアー1頭のみ。5歳以下優勢の傾向は少々気になるが、7歳馬もダイワカーリアンの優勝があり、大きく割り引く必要はないだろう。
残る各馬では、まず前走北海道組から、芝2000mでラジオたんぱ杯2歳S勝ちのあるサクラメガワンダー、秋華賞3着のフサイチパンドラ、中京記念2着のシルクネクサス。前走北海道以外では、芝2000m重賞3勝、そして本レース10年で5勝の実績を誇る武豊騎手のメイショウカイドウ、芝2000m重賞2勝のサンバレンティンというあたり。ただし、札幌芝実績のない前走G3組はデータ上3着まで。購入する馬券種別次第で評価が変わる5頭だ。なお、人気の一角が予想されるアドマイヤフジは札幌芝の経験がなく、芝2000mの重賞も前走の4着が最高である。
最後に前走オープン・条件戦組だが、表8に該当する馬は見当たらず、芝2000mの実績不足ながら「着外2回以下」のサイレントプライド、前走4着でもG1連対実績のあるファストタテヤマがボーダーライン上。この2頭では、年齢を考慮するとサイレントプライド優位だろうか。
このように、今年はデータをすっきりクリアする馬が非常に少なく、表1~3で挙げたデータ通り、人気薄が食い込む可能性も十分にある。一応ここでは「連対候補」として、エリモハリアー、マチカネオーラの2頭を上位に、続いて「前走G1」を重視してフライングアップルとマツリダゴッホ、そして減点1のサイレントプライドの計5頭を挙げておくが、少々の減点材料くらいは覆して上位に食い込む馬が出てきても不思議のない混戦模様の一戦だ。