はるみのちょっとTea-time

日々の暮らしのなかで感じたこと、市民運動のことなどわたしのことばで、つづります。

大野病院事件・無罪判決

2008-08-20 | 医療と健康関連

2008年8月20日(水曜日)
このブログでも取り上げた箒木蓬生「インターセックス」は、
裁判の様子から物語が始まる。
その物語の中の裁判は、今日無罪判決が出た
「大野病院事件」そのものだったんだと
あらためて読み返してみた。

物語では、「大野病院事件」と違い
医師が子宮摘出したことが母体を死に
いたらしめたとなっている。

医療問題のニュースを中心に据えている
「キャリアブレイン」は様々な角度からのリポートも
載せられていて、興味深い。

総合病院でありながら、産科の医師が1人しかいないなど
周産期医療の問題は、医療関係者だけの手に負える
ものではないことは、明らかである。

ただ今回の裁判の無罪判決は、現場の医師には
大きな励みとなることは確かだ。
今後は、遺族が求めている手術で何が起きたのか、
わかりやすい納得のいく丁寧な説明は必要である。

「大野病院事件」は多くの課題をなげかけてきた。
憲法と医師法、患者と医師の関係、研修医制度・・・
とくに、産婦人科は精神的なケアも必要であり、
ジェンダーを含めて、様々な問題を抱えざるを得ない。

判決は出たけれど・・・
なぜか心がスッキリとしないままのわたし・・・

http://www.cabrain.net/news/article/newsId/17723.html
福島県立大野病院で、帝王切開手術を受けた女性が
2004年12月に死亡した事件で、業務上過失致死と医師法違反の
罪に問われた加藤克彦被告(40)に対する判決公判が8月20日、
福島地裁で開かれ、鈴木信行裁判長は無罪判決を言い渡した。
今年3月の論告求刑公判で検察側は、
禁固1年、罰金10万円を求刑していた。

判決によると、加藤被告は04年12月に女性の帝王切開手術を執刀。
その際、子宮と胎盤が癒着しており、加藤被告が
胎盤をはがしたところ、女性は大量出血し、死亡した。

鈴木裁判長は、女性の死亡が出血性ショックによる
失血死であると認定。
また、癒着を無理にはがせば大量出血やショックを引き起こし、
母体死亡の原因になり得ると加藤被告の所有する
医学書に記載されていることから、
「剥離を継続すれば剥離面から大量出血し、女性の生命に
及ぶ恐れがあると予見する可能性はあったと解するのが妥当」とした。

ただ、大量出血を防ぐため、癒着を認めた時点で剥離を中止し、
子宮摘出手術に移行すべきだったとする検察側の主張には、
こうした医学的準則が「一般性や有用性を具備したものとまでは
認められない」とし、胎盤剥離を中止する義務が
加藤被告にあったとは認められないと結論付けた。

さらに、診療を受けている当該疾病で患者が死亡した場合は、
医師法21条のいう異状の要件を欠くとし、
医師法違反の罪も成立しないとした。

http://mainichi.jp/select/jiken/news/20080821k0000m040107000c.html
【大野病院事件:医師無罪で双方会見 死亡女性の父「残念」】
帝王切開手術中の女性(当時29歳)が死亡し、
業務上過失致死などの罪に問われた福島県立大野病院産婦人科医、
加藤克彦被告(40)=休職中=に対し、
福島地裁が言い渡した20日の無罪判決。
鈴木信行裁判長は、最大の争点だった胎盤剥離(はくり)を
途中で中止すべきだったかについて
「中止して子宮摘出手術などに移行することが、
当時の医学的水準とは認められず、中止すべき義務はなかった」と
手術時の判断に関する刑事責任を否定した。

判決は、癒着胎盤を認識した時点で剥離を中止して
子宮摘出手術などに移行するのは可能だったことや、
大量出血の予見可能性などは検察側主張を認めた。
その一方で「剥離を継続した場合の具体的危険性が証明されず、
継続が注意義務に反することにはならない」と判断した。
医師法21条については「診療中の患者が、
その病気によって死亡した場合は、届け出の要件を欠き、
今回は該当しない」と指摘した。

言い渡しを終えた鈴木裁判長が、最後に「これが裁判所の結論です」と
述べると、加藤医師は深々と頭を下げ、
表情を崩さないまま法廷を後にした。

閉廷後、弁護団と福島市内で記者会見した加藤医師は冒頭「
信頼して受診してもらったのに、最悪の結果になり
本当に申し訳ない」と女性や遺族に謝罪した。
今後については「地域医療の現場で患者さんに
できることを精いっぱいやりたい。
医師の仕事が好きだし、やっていきたい」と語った。

加藤医師は逮捕からこの日までを「とても長い2年6カ月。
何もできない、何もしたくないもんもんとした日々だった」
と胸中を吐露。
「きょうの日を迎えることができたのは
支えてくれた方々のお陰です」と感謝した。
捜査当局には「言いたいことはいろいろあるが、
僕みたいな立場の人を作らないでほしい」と述べた。

主任弁護人の平岩敬一弁護士は
「弁護側主張を標準医療と認めた」と判決を評価した。
医師法21条については「かなり踏み込んでおり、
今後に大きな影響を与える」とした。

一方、女性の父親、渡辺好男さん(58)は福島県庁で会見し
「父として残念。今後の医療界に不安を感じざるをえない」
と無念の表情で語った。
そして「加藤医師には病院で何があったのか
説明を十分にしてほしい」と求めた。

福島地検の村上満男次席検事は「立証が不十分だったという以外、
なぜ無罪なのかと思うほど事実関係について主張が認められた。
控訴は今後、判決内容を精査し上級庁と協議のうえ適切に対処したい。
逮捕は当時必要と判断され、裁判官の令状も得ており
問題はなかった」と話した。【松本惇、西嶋正法、今井美津子】

 ◇「刑法になじむのか」
舛添要一・厚生労働相の話 
何をもって医師の過失とするのか判断が非常に難しい。
そもそも刑法犯罪としてなじむのか。
判決で参考にできるところは参考にし
(死因究明の第三者委員会である医療安全調査委員会の設置法案を)
来るべき臨時国会できちんとコンセンサスを得てまとめたい。
委員会だけでなく(医師の過失が立証できなくても補償金が受けられる)
無過失補償制度など、いろんな施策を組み合わせて
医療体制全体を再構築することが重要だ。

 ◇「専門家の手で究明」
日本医師会の木下勝之常任理事の話 
妥当な判決で、医療事故の原因究明は専門家で行うべきだ。
今後も同じように不幸な事件が起きてもおかしくない。
厚生労働省による第三者機関「医療安全調査委員会」の
設置を支援していきたい。
患者と真摯(しんし)に向き合い、溝を埋める努力をしていく。

 ◇「適切医療と言えず」
産科医療裁判の経験がある中央社会保険医療協議会の勝村久司委員の話 
加藤医師は減給1カ月の処分も受けており、
刑事責任は別にしても医療行為が適切だったとは言えない。
県が事故調査報告を作成する際に遺族から聞き取りをしないなど、
遺族対応も不十分だった。
今回の事故を全面的に正当化してしまうと、
重大な事故隠しなどにつながりかねず、
関係者は反省すべき点は反省してほしい。
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