花火、ときどき牛

花火について、またときどき牛について

[21] にわか左官屋の迷い 【花火】

2017-04-19 | 日記




「なんでわざわざ、きれいな壁紙の上に、下手くそな漆喰、塗るのん? わけわからん」

作業を見にきた母が、横で嘆いている。

学校を卒業して以来、二十年近く放っておいた自分の部屋に
いったん引き揚げようとしている。

でも、引っ越しの前に、まずは部屋づくりだ。
前の「ロルブー」(ノルウェーの漁師小屋)で妙な自信がついてしまい、
今回も、壁に漆喰を塗ってオリジナルな部屋を作ろうと張り切っていた。

トリセツの類を読めない私にしては珍しく、
漆喰の容器に小さな文字で書かれた「きれいな塗り方」をちゃんと読んで、
指示されているとおり、二度塗りするつもりでさえいた。

「端をいかに正確に緻密に仕上げるかが、全体の仕上がりを決める」

たまたまその日の朝刊に載っていた、
人間国宝の伝統工芸師の方のコメントまで、志高く実践しようとしていた。

――にわか左官屋のその意気込みは、6畳の部屋の半分もいかないところで消えた。

…腕が重い。

…肩がこる。

…どう見ても、漆喰が足りない。

十分な量を買い込んできたはずなのに、二度塗りどころか、一度塗るのに足りるかどうか。
なんで?


ここで、迷いが生まれた。
前のアパートでの漆喰塗りには、汚い土壁を隠すという明確な目的があった。

実家の壁紙は、まだ真っ白である。

なぜ、きれいな壁紙の上に、へたくそな漆喰を苦労して塗っているのか、
自分でもわけがわからなくなった。


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