花火、ときどき牛

花火について、またときどき牛について

[58] 贈りものの1日 【花火】

2017-05-26 | 日記



昨日が私にとって、今期最後の事務所への出勤日だった。

明日からはクロアチア・スロヴェニアへ添乗となる。

ふだんの私であれば、出発前日にあわてて荷造りして、たまってた仕事も片付けて、
翌朝はうんと早いのに、就寝するのはいつも以上に遅くなる…というパターンだった。

今回は珍しく、もう1週間前にスーツケースを荷造りし、関空に送っている。

だから、贈りもののようにぽっかりと空いた1日となった。

その1日を、頭のなかにぼんやりあるイメージの打ち込みに費やした。
これが、今の私にできるプロットだ。

明日、投函する予定。
宿題でもらってから、3ヶ月半もかかった。

そして、明日からクロアチア。
10日間ほど、留守にします。

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[57] 『樹影譚』 【花火】

2017-05-25 | 日記



とうとう完全に引っ越してしまったから、
今日から久しぶりに、電車に乗っての通勤。

これまで自転車で20分、または歩いて40分だった通勤が、
電車に乗って1.5時間になる。

出ぎわに、あわてて文庫本をカバンに放り込んだ。

薄くて軽そうだから、というだけで選んだ、丸谷才一さんの『樹影譚』。
たいぶん前に京都の古本屋で買って、そのままほったらかしていた本だ。

――読み終えて、とにかくびっくりした。

自分のことが書かれているのかと思った。


文芸評論家の三浦雅士さんによる解説には、こうある。

  『樹影譚』は、言ってみれば小説の小説、文学の文学だが、
  それを成立させもすれば、また不可能にもさせる
  解釈の零度のような場所が暗示されているからである。

  人は小説を読んだから小説を書く。
  書かれたものが読まれ、読まれたものが書かれてゆくこの無限の連鎖に終点はない。
  小説を書き、小説を読むということは、
  この無限につづく解釈の連鎖に加担することにほかならないのである。(後略)


書くことばかりに気がいき、読むことがおろそかになっていた。

これからは、確実に読む時間ができる。
電車通勤が、苦でなくなった。

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[56] 歩く木と鳥 【花火】

2017-05-24 | 日記

書くことは発見の連続だといわれる。
書くようになってその通りだと実感するけれど、心躍る発見ばかりではない。

思い、思われたと信じていた時間。
そこに呪いが潜んでいたのかと気づいたときは、崩れ落ちそうになった。

救われたのは、最後の最後になって、こう書けたときである。


  呪いは、世間で思われているように、悪意や怨念の表ればかりではない。

  人の生の哀しみが、目に見えない形で響きあい、寄り添うこと。
  哀しみや苦悩の只中にいる者どうしが、どうしようもなく共鳴してしまうこと。
  ――そんな呪いだってある。


この数行を書けたとき、時間の色合いがまるで違って見えた。

実際そうなったように、
どちらかがその場から歩き出さなければならなかったのだと、ようやく思えた。





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[55] 哀しみの居どころ 【花火】

2017-05-23 | 日記




引っ越したはずの部屋に、また舞い戻っている。

先週末、苦労して脚を外してもらった机や、扇風機や、鍋や、掃除機や、
部屋に残ったあれこれを積み込んだところ、
車がいっぱいいっぱいになってしまって積みこめなかったものがある。

布団一式と、掃除の段階で出た燃えるゴミ一袋と、燃えないゴミ一袋である。

だから、燃えるゴミと燃えないゴミの日を待つためだけに、
もう2~3日、こちらで眠ることにした。

ガスも止めてしまった。
電灯もメインの部屋のものは外してしまったので、
玄関や風呂やトイレの灯りをつけて、なんとかぼんやり明るさを保っている。

何より、部屋には何もない。

つい2週間前まで生活があった部屋なのに、見事に部屋はがらんどうだ。
やけに広くなった居間で歯をみがいていると、急に何かがこみあげてきた。

――久しぶりの、哀しみだった。

「あったはずのものが、もうない」

これが、哀しみの原形なのだと思う。


「喜怒哀楽」とあるなかで、哀しみが一番、取扱い注意なのではないだろうか。

哀しみからは目を背けたい。
乗りこえなければ、という無言の圧力もある。
蓋をして、無かったこと、済んだことにしたくなる。

でも、そんなことをしても、決して無かったことにはならない。
いつか、形を変えたそれに飲みこまれる。

失ったものと向きあう。
哀しみの居どころをつくってやる。

今のこの部屋は、それにはちょうど良いのだけれど。




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[54] 長い脚に苦労する③ 【花火】

2017-05-22 | 日記



2ブロックほど先の家が、たしか立て替え工事をしていたんである。

藁にもすがる思いで、ふらふらとその家を目指す。

平日の朝は、たいてい軽トラが横づけしてあるのに、
土曜日だからか、人の気配はなかった。

誰もいない? ダメ?

今日は工事の人もお休みか…と思ったときに、
2階の足場部分を歩く人影が見えた。

もしや…と、じっと見上げていると、
運よくその人は降りてきた。

あぁでもダメだ。

こざっぱりしてお洒落なお兄さんである。

きっとこの家の若主人が、工事の進み具合を見に来たのだろう。

「…あの、工事の方ですか?」と、それでも訊いてみたら、

「あ、はい、一応そうです」という答えが返ってきた。

やった!

急いで事情を説明し、「机の脚を外してくださいっ」とお願いする。

今日、引っ越しなんです。
なのに、車に乗らないんです。
すぐそこなんです。

…こっちの必死が伝わったのか、
あっさりと、「じゃぁ、見てみましょか」と言ってくれた。

「プラスのドライバーだけはあるんですけど、
 よく見たら、六角形か八角形やったんです…。」

恥ずかしさもあって、いろいろ言い訳するうちに、
車のトランクの後ろに置き去りにした机にたどりついた。

お兄さんはしゃがみこんで、繋ぎの部分をチェックすると、
「あ、なるほど、これですね」と明快に一本のドライバーを選びだし、
くるくるっと見る間に脚を一本外してくれた。

すごい!ありがとうございます!と大拍手する。

拍手だけではいけない…と私が一瞬、部屋に戻っている間に、
脚はすべてとりはずされ、トランクのなかに机と脚とが積み込まれていた。

あわてて包んだお礼を渡そうとしたら、
「いや、そんなの受け取れないです」と何度も手を振って、どうしても受け取ってくれない。

それどころか、そのぴったりの六角形のドライバーを
「これ、持って行ってください」と手渡してくれた。


*** *** ***


置き場所は変わったけれど、その長い脚の机で、また書きはじめている。

この机にはずっとお世話になるのだろう。

お兄さんがくれた六角形のドライバーは、封筒に大切に入れて、机の下に貼りつけた。




(これは五角形。いつも詰めが甘い)

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