本ブログでも『外患罪 - 一人人海戦術』で取り上げたように、例えば、政府与党の不手際によって尖閣諸島がチャイナに占領されることにでもなれば、それなりの人たちに外患罪が適用されることが期待される。しかしながら、以下に示すように、全く武力を用いずに占領されると、外患罪の適用が難しいのも事実だ。
以前紹介したように、昭和22年(1947年)、日本がまだGHQに支配されていた頃に削除された第83条から第86条までは利敵行為条項であり、「スパイ防止法」はもともと既に刑法にあったと言える。同じく削除された第89条は戦争時の同盟国に対する行為でも外患罪が適用されるという非常に重要な条文であるが、さらに、骨抜きにされていた部分を強調する必要がありそうだ。
即ち、
【改変前】
第81条[外患誘致]外国ニ通謀シテ帝国ニ対シ戦端ヲ開カシメ又ハ敵国ニ與シテ帝国ニ抗敵シタル者ハ死刑ニ処ス
第82条[外患援助]要塞、陣営、軍隊、艦船其他軍用ニ供スル場所又ハ建造物ヲ敵国ニ交付シタル者ハ死刑ニ処ス
【改変後】
第81条 外国と通謀して日本国に対し武力を行使させた者は、死刑に処する。
(外患援助)
第82条 日本国に対して外国から武力の行使があったときに、これに加担して、その軍務に服し、その他これに軍事上の利益を与えた者は、死刑又は無期若しくは2年以上の懲役に処する。
お気づきだろうか、量刑が何気なく減ったのも気にはなるが、武力の行使が伴うまで、外患罪が適用できなくなっている。特に第82条の改変が痛すぎる。本来なら、土地を提供しただけで死刑になるはずが、武力行使が開始されるまではお咎めなしである。誰かえらい人は気づいて欲しい。
また、最も大事な条文である、
第86条 前五条ニ記載シタル以外ノ方法ヲ以テ敵国ニ軍事上ノ利益ヲ与ヘ又ハ帝国ノ軍事上ノ利益ヲ害シタル者ハ二年以上ノ有期懲役ニ処ス
つまり、先人が知恵を絞って考えた、想定外の方法で敵国に利益を与えることを罰する条文が既に削除されている以上、いくらでも国土は他国に譲りたい放題である。憲法改正よりもかなり楽に戻せる部分であり、それをやろうと言わない政治家は皆グルと見てもいいかもしれない。