クルマの「スタッドレスタイヤ」、積雪時の運転には頼れるアイテムですが、それだけ夏タイヤとはずいぶん異なるものともいえます。そもそもどういうタイヤで、そしてどういった点に注意して使用すべきなのでしょうか。

そもそもスタッドレスタイヤとは?

 2016年11月24日(木)、関東甲信越地方は広い範囲で積雪に見舞われました。NHKが伝えたところによると、この雪の影響で関東地方だけでもクルマのスリップ事故が74件発生したといいます。降雪時はクルマに乗らない、というのもひとつの選択ですが、日常の足として使わざるをえない場合、こうした不意の事態に備えるためにも、やはり冬場はスタッドレスタイヤに履き替えておきたいものです。

雪道での走行性能に注力したスタッドレスタイヤ。メーカーごとにさまざまなトレッドパターン(溝や切れ込みのかたち)が見られる(写真出典:photolibrary)。

 

 そもそも「スタッドレスタイヤ」すなわち「スタッド(=鋲)」がないタイヤとは、かつて冬用タイヤの定番だった、接地面に鋲が打ち込まれた「スパイクタイヤ」に代わるものとして開発されました。スパイクタイヤはその鋲がアスファルトを削るなどして、環境問題を引き起こしていたからです。

 スタッドレスタイヤの基本的な性能は、雪が積もった路面でもタイヤがこれをしっかりつかんで摩擦を発生させ、スリップや空転をせずにクルマが前へ進む力(トラクション)を発揮させる、というものです。そうした性能を発揮するため、「夏タイヤに比べトレッド(接地面に相当)に多くの溝や細い切れ込み(サイプ)があり、ブロックも比較的高めに設計され、またゴムも低い温度下で柔軟性が保たれるやわらかいものが使用されています」と日本ミシュラン(東京都新宿区)の広報担当は説明します。

 こうした性能を備えると、それだけ夏タイヤ(ノーマルタイヤ)とは挙動や扱いが異なってきます。どういった点に注意すべきなのでしょうか。

スタッドレスタイヤ、夏タイヤとはこれだけ違う

 スタッドレスタイヤの注意点として、ブリヂストン(東京都中央区)の広報担当は「一般的に夏タイヤよりも排水性が劣る」ことを挙げています。この点については日本ミシュランも「氷上性重視のスタッドレスタイヤは『氷上の水膜を吸い上げ、氷にタイヤを密着させる』というのが一般的構造で、ゴムの特性も異なるため、夏タイヤ同様の『排水効果』を期待しての走行はお勧めいたしません」と説明します。排水性に劣るということは、タイヤと路面のあいだにできた水膜により、ハイドロプレーニング現象が起こりグリップを失うことになりかねない、ということです。

 また、前述のようにスタッドレスタイヤにはやわらかいゴムが使用されているため、夏タイヤに比べ摩耗が早くなっています。トレッドに刻まれた溝や切れ込みの深さは、タイヤの性能に直結するため、JATMA(一般社団法人 日本自動車タイヤ協会)は「積雪または凍結路走行時における(タイヤの)溝の深さ使用限度は、新品時の50%(プラットホーム露出)までです」と注意を喚起しています。

 ただ、こうした問題はもちろん、メーカー側も認識しています。前述の日本ミシュランは「非降雪の路面で、雨天時の走行も想定はしているため、スタッドレスタイヤの機能をタイヤとして『トータル』に発揮できるよう、溝やサイプの切り方や数、またゴム(コンパウンド)の選択などすべての要素をバランスよく考えて設計しています」といい、ブリヂストンも「弊社スタッドレスは、凍った道や雪道でしっかり止まる、曲がる、という氷上性能だけでなく、ドライ性能、ウエット性能もケアしており、総合性能の高さを追求しています」としています。

 スタッドレスタイヤで非降雪路面はなるべく走りたくないものですが、だからといって、ただちに危険というわけではなさそうです。もちろん、排水性に劣る点など、その特性は頭の片隅に留めておくべきでしょう。

ドライ路面での走行を推奨?

 スタッドレスタイヤを使用する場合のもうひとつの注意点として、「慣らし走行」が推奨されていることが挙げられます。これはもちろん、雪が降る前のドライ路面で行うものです。

「スタッドレスタイヤを安全に使用するために、速度80km/h以下で最低100kmは慣らし走行をして、さらに空気圧の管理をしていただくことを推奨いたします。理由は、新しいスタッドレスを履かれた際、ドライバーがその感覚に慣れていただくことが大事と考えるためです。それまで履いていたタイヤとの感覚のズレを補正する、つまり慣れることが必要というわけです」(日本ミシュラン 広報担当)

 またタイヤそのものについても、「ホイールとの篏合(かんごう)性が変化しますので、慣らし走行と再空気圧点検は『安全に走行するための重要部品であるタイヤ』という点からも、ミシュランでは推奨しています」と言います。つまり、ホイールにタイヤをなじませるためにも必要、ということのようです。

「慣らし走行」の目安については、JATMAも新品タイヤの場合「80km/h以下で走行距離100km以上」としていますが、たとえばブリヂストンは「60km/h以下で走行距離200km以上」としているため、購入したタイヤのメーカーが提示する目安を確認してください。

 なお、スタッドレスタイヤを履くことでタイヤチェーンが不要になると思っている人もいるかもしれませんが、高速道路や山道でのチェーン規制のなかには、スタッドレスを履いていてもチェーン必須とされる場合があることから、やはり緊急用にチェーンも必ず用意しておきましょう。

【写真】比較、スパイクタイヤとスタッドレスタイヤ

左がスパイクタイヤ、右がスタッドレスタイヤ。日本国内のタイヤメーカーは1990(平成2)年12月末をもって、スパイクタイヤの製造を中止した(写真出典:anyvidstudio/123RF)。