記者さんはいきなり団子の「いきなり」の意味は知ってますか? 熊本弁の辞書には「すぐできる」とありますが、私の出身地の益城町では「いきなり」は「飾り気がない」「散らかっている」です。いきなり団子は「飾り気がない団子」がしっくりくるのでは。(熊本市、医師・男、74)=7月6日掲載

 いきなり団子の語源については、「ハイこちら編集局」に寄せられた素朴な疑問をきっかけに、紙面上で“熱い論争”に発展した。6年前、小中学生新聞「くまTOMO」で、子どもたちの疑問に答えるコーナー「プリンス探偵社」を担当していた記者の魂にも火がついた。これは参戦しなければ…。

 いきなり団子は、サツマイモとあんを小麦粉の生地で包んだ郷土菓子。近年は人気アニメ「ケロロ軍曹」にも登場し、全国的にも有名になった。イモの品種や生地の配合によって、店ごとに個性的な味が楽しめるのも特徴だ。

 まず考えたのは、以前このテーマを取材した“先輩”に教えを請うことだ。訪ねたのは熊本市中央区の出水南小4年岡本一花[いちか]さん。熊日新聞コンクールに応募した親子新聞で昨年夏、いきなり団子の語源を探っていた。

 「いきなり団子が大好き」という岡本さんは、水前寺成趣園の近くにある一押しの「お菓子のふどきや」を取材し、店主から「急な(いきなりの)お客さんをもてなすために作った」という由来を聞き出していた。なるほど、説得力がある。

 ただ、「こちら編集局」では、ほかにもさまざまな説が飛び交っている。

 次に頼ったのが、県菓子工業組合(熊本市)。同組合は、地域ブランドを保護する特許庁の「地域団体商標」に「熊本いきなり団子」を出願し、今年6月に登録された。ここなら詳しいことが分かるかもしれない。

 組合員で「商標」登録に尽力した「コウヤマ」(益城町)を訪ねた。同社はサツマイモの生産から、いきなり団子の製造・販売まで手がけ、同町で直営店「芋屋長兵衛」を経営している。

 「『いきなり』の語源は諸説あって、定説はありませんよ。いまだに謎のままです」と堤洋介常務(55)。

 えっ、“いきなり”の調査終了?

 堤さんによると、県内でいきなり団子を販売する店では「短時間で作れる」や「簡単に作れる」、「不意の来客にも出せる」などの由来を客に紹介するところが多いという。

 ほかにも、イモを生のまま入れて蒸すことから「生き成り」とする説や「いきなり食べるとイモがのどに詰まるから」という説まであるという。

 「熊本県方言辞典」や郷土菓子に関する本の記述に今回の取材を加味して、主な説をまとめてみた=表参照。確かに、どの説も甲乙つけがたい気がする。

 「いきなり団子の始まりは古くは江戸時代とされますが、その点も諸説あって定かではありません」と堤さん。県民に身近なおやつでありながら、謎が多い。それもいきなり団子の魅力の一つかもしれない。